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二十二話 青春の一瞬
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春は、別れと出会いの季節。
いつの間にか、二ヶ月後には三年生だ。
だが、その前に、先輩たちの卒業式がある。
けど、俺と庭理に仲の良い先輩はいない。
だから、卒業式が近いことに、とくに何か特別な気持ちを浮かべることは無かった。
「なぁ、美園、話がある」
それは、帰りのホームルームが終わり、帰宅しようと席をたった時。
「なんだ百合木」
「ここじゃなんだから、ちょっと来てくれ」
俺は百合木についてった。
たどり着いたのは、校舎裏。
百合木にベンチに座るよう促される。
俺への告白ではないようだが、一体話とはなんだろう。
「あのさ」
意を決した百合木が喋り出した。
「俺、三年の先輩で、好きな人がいるんだ」
「まじか。でもなんで俺に?」
率直な疑問だった。
「頼む!告白するの手伝ってくれ!」
百合木が手を合わせ、俺に迫る。
「いやいや、だからなんで俺?」
「だってお前彼女いるだろ?だからさ、なんつーか、良い告白の仕方とか教えてくれ!」
「彼女?そんなのいないけど」
本当はいるけど。
「えっ、だってバレンタインデーの時、ひとつは確実に貰えるって言ってたじゃんか。それって彼女からだろ?」
「えっ、いやそれはっ」
俺は言葉を詰まらせる。
「やっぱいるんじゃねぇか」
いるけれど、彼女は庭理ですって素直に言える訳もない。
「なぁ、明日ここで告白しようと思うんだけどさ」
「えっ、明日?」
「あぁ、3月に入る前に告白しとこうと思って」
「あ、そうですか」
「それでさ、練習相手とか、あと当日ここら辺で見ててくれよ」
「いや、練習相手はいいけど、なんで百合木がコクるとき俺いなきゃなんだよ」
俺が当然のように断る。
「頼む!一人じゃ小心細い!」
百合木の強い押しに負け、ついに俺は頷いてしまった。
次の日の放課後。
「結局昨日は俺相手に何回か告白の練習しただけだけど、大丈夫かな」
「大丈夫じゃない?」
何故か隣にいる庭理が、そう答える。
「......なんでいるんだよ」
「今日こそ一緒に帰りたいなって思って」
「いや、昨日は悪かったけど」
「ちょっ、お前ら静かにしといてくれよ!」
百合木が茂みに隠れている俺達に注意する。
それから俺達は律儀に黙りこんだ。
ぶっちゃけ、これからバイトだから早く終わらせてほしい。
その思いが伝わったのか、一人の女性が校舎の死角から現れた。
黒髪のロングで、抜群のスタイル。顔も綺麗に整っていて、かなりの美人だ。
百合木、この人と釣り合うのか?
そんな失礼なことを考えていると、百合木が緊張混じりに口を開く。
「来てくれてありがとうございます、峰月先輩っ......」
こんなに緊張している百合木は初めて見た。
俺が告白したときは、ここまで緊張していなかったが、なんかナルシストっぽいというかキザというか、おちゃらけた告白だったな。
ヤバい、思い出したら死にたくなってきた。
「どうしたの百合木君。話って」
峰月という先輩が、後ろで手を組ながら百合木に聞く。
「峰月先輩、前に助けてもらった時から好きです!付き合って下さい!」
そう言って、百合木は頭を下げる。
シンプルながらも想いの伝わりやすい良い告白だったと思う。
「ごめんなさい」
即答だった。
百合木は、うちのクラスでもモテる方だ。
バレンタインデーの時に貰っていたチョコもエグいくらいの数だったし、高身長で顔立ちも悪くない。
「あの、なんでか聞いてもいいですかね」
百合木が頭を下げたまま聞いた。
俺としても、気になる所だ。
「私、好きな人がいるの」
百合木は顔をしかめ、下唇を噛む。
「じゃあ、もういくね」
峰月先輩がそう言うと、足早に去っていった。
すると、百合木はゆっくりと頭を上げ、俺達に近づく。
「やっぱフラれちまった」
ぺかっと笑う百合木だが、その笑顔が心からのものではないと思えた。いや、誰でもそう感じるだろう。
「やっぱってことは、フラれるって薄々感じてたのか」
「ははっ、まぁな。峰月先輩に好きな人がいるってとこまで分かってた。けど、告白しときたかったんだ」
頬を掻きながら百合木はそう言う。
「あー、やっぱ峰月先輩には悪いことしたなぁ」
「ん?どういうこと?」
余程気になったのか、庭理が聞く。
「いや、だって相手からの告白断るのってさ。意外と心痛むんだよ」
成る程、百合木も何回か告白されてそうだし、そういう気持ちは結構分かるんだな。
「ってことで、二人とも、俺の心のケアよろしくー」
「成る程な、だから俺を見届け人に選んだわけか」
百合木がそうだと頷く。
流石に、フラれた後の百合木をほっとくわけにはいかないな。
「ちょっと待て、バイト先に電話してくる」
そう言い、俺はスマホを取り出す。
「えっ、美園今日バイトなんか?じゃあそっち優先してくれよ」
「いや、いいって今日くらい」
「俺の心が痛むの!これ以上俺に罪悪感を与えない為にも、行ってくれよ。なっ」
寂しそうな表情で言われるが、やはり気乗りはしなかった。
しかし、このままここに居座るわけにもいかず、俺はバイト先に向かった。
庭理も今日はバイトの為、そこへ向かう。
百合木、本当に大丈夫だろうか。
いつの間にか、二ヶ月後には三年生だ。
だが、その前に、先輩たちの卒業式がある。
けど、俺と庭理に仲の良い先輩はいない。
だから、卒業式が近いことに、とくに何か特別な気持ちを浮かべることは無かった。
「なぁ、美園、話がある」
それは、帰りのホームルームが終わり、帰宅しようと席をたった時。
「なんだ百合木」
「ここじゃなんだから、ちょっと来てくれ」
俺は百合木についてった。
たどり着いたのは、校舎裏。
百合木にベンチに座るよう促される。
俺への告白ではないようだが、一体話とはなんだろう。
「あのさ」
意を決した百合木が喋り出した。
「俺、三年の先輩で、好きな人がいるんだ」
「まじか。でもなんで俺に?」
率直な疑問だった。
「頼む!告白するの手伝ってくれ!」
百合木が手を合わせ、俺に迫る。
「いやいや、だからなんで俺?」
「だってお前彼女いるだろ?だからさ、なんつーか、良い告白の仕方とか教えてくれ!」
「彼女?そんなのいないけど」
本当はいるけど。
「えっ、だってバレンタインデーの時、ひとつは確実に貰えるって言ってたじゃんか。それって彼女からだろ?」
「えっ、いやそれはっ」
俺は言葉を詰まらせる。
「やっぱいるんじゃねぇか」
いるけれど、彼女は庭理ですって素直に言える訳もない。
「なぁ、明日ここで告白しようと思うんだけどさ」
「えっ、明日?」
「あぁ、3月に入る前に告白しとこうと思って」
「あ、そうですか」
「それでさ、練習相手とか、あと当日ここら辺で見ててくれよ」
「いや、練習相手はいいけど、なんで百合木がコクるとき俺いなきゃなんだよ」
俺が当然のように断る。
「頼む!一人じゃ小心細い!」
百合木の強い押しに負け、ついに俺は頷いてしまった。
次の日の放課後。
「結局昨日は俺相手に何回か告白の練習しただけだけど、大丈夫かな」
「大丈夫じゃない?」
何故か隣にいる庭理が、そう答える。
「......なんでいるんだよ」
「今日こそ一緒に帰りたいなって思って」
「いや、昨日は悪かったけど」
「ちょっ、お前ら静かにしといてくれよ!」
百合木が茂みに隠れている俺達に注意する。
それから俺達は律儀に黙りこんだ。
ぶっちゃけ、これからバイトだから早く終わらせてほしい。
その思いが伝わったのか、一人の女性が校舎の死角から現れた。
黒髪のロングで、抜群のスタイル。顔も綺麗に整っていて、かなりの美人だ。
百合木、この人と釣り合うのか?
そんな失礼なことを考えていると、百合木が緊張混じりに口を開く。
「来てくれてありがとうございます、峰月先輩っ......」
こんなに緊張している百合木は初めて見た。
俺が告白したときは、ここまで緊張していなかったが、なんかナルシストっぽいというかキザというか、おちゃらけた告白だったな。
ヤバい、思い出したら死にたくなってきた。
「どうしたの百合木君。話って」
峰月という先輩が、後ろで手を組ながら百合木に聞く。
「峰月先輩、前に助けてもらった時から好きです!付き合って下さい!」
そう言って、百合木は頭を下げる。
シンプルながらも想いの伝わりやすい良い告白だったと思う。
「ごめんなさい」
即答だった。
百合木は、うちのクラスでもモテる方だ。
バレンタインデーの時に貰っていたチョコもエグいくらいの数だったし、高身長で顔立ちも悪くない。
「あの、なんでか聞いてもいいですかね」
百合木が頭を下げたまま聞いた。
俺としても、気になる所だ。
「私、好きな人がいるの」
百合木は顔をしかめ、下唇を噛む。
「じゃあ、もういくね」
峰月先輩がそう言うと、足早に去っていった。
すると、百合木はゆっくりと頭を上げ、俺達に近づく。
「やっぱフラれちまった」
ぺかっと笑う百合木だが、その笑顔が心からのものではないと思えた。いや、誰でもそう感じるだろう。
「やっぱってことは、フラれるって薄々感じてたのか」
「ははっ、まぁな。峰月先輩に好きな人がいるってとこまで分かってた。けど、告白しときたかったんだ」
頬を掻きながら百合木はそう言う。
「あー、やっぱ峰月先輩には悪いことしたなぁ」
「ん?どういうこと?」
余程気になったのか、庭理が聞く。
「いや、だって相手からの告白断るのってさ。意外と心痛むんだよ」
成る程、百合木も何回か告白されてそうだし、そういう気持ちは結構分かるんだな。
「ってことで、二人とも、俺の心のケアよろしくー」
「成る程な、だから俺を見届け人に選んだわけか」
百合木がそうだと頷く。
流石に、フラれた後の百合木をほっとくわけにはいかないな。
「ちょっと待て、バイト先に電話してくる」
そう言い、俺はスマホを取り出す。
「えっ、美園今日バイトなんか?じゃあそっち優先してくれよ」
「いや、いいって今日くらい」
「俺の心が痛むの!これ以上俺に罪悪感を与えない為にも、行ってくれよ。なっ」
寂しそうな表情で言われるが、やはり気乗りはしなかった。
しかし、このままここに居座るわけにもいかず、俺はバイト先に向かった。
庭理も今日はバイトの為、そこへ向かう。
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