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二十一話 恋の味
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バレンタインデー。
女性が男性にチョコを贈る日として有名だが、その実態は、チョコを貰えた数によりその人の価値が決まるという残酷な日なのだ。
「ってことで美園。チョコ何個貰った?」
朝のホームルーム前、百合木がそう聞いてくる。
「まだゼロ。でもま、これから一個は確実に貰えるよ」
「えっ?誰から?」
「秘密だよ」
「おまっ、まさか彼女か?彼女ができたのか!?」
俺はさあなと会話をながした。
「てか、そういう百合木はどうなんだよ」
百合木は待ってましたと言わんばかりにふふんと鼻を鳴らした。
「九つ」
「......」
やはりクラスの人気者は違うな。
そんなこんなで放課後。
庭理に先に帰るよう促されたので、一人下駄箱で靴を取り出す。
「ん?」
すると、そこに包みが置いてあることに気がついた。
そうか庭理め。自分の目の前で俺がチョコを手にするとこ見るのが恥ずかしかったんだな。
俺はチョコをリュックに入れ、上機嫌で帰宅した。
「よっと」
おんぼろアパートに帰り、おもむろにリュックを降ろす。
チョコ、どうしよう。
先に食べといて、庭理が帰ってきたら感想を言うか、帰ってくるのを待ってから食うか。
本音を言えば、今すぐ食べたい。
けど、なんか一人で食うのもあっさりしてるというか、ともかく、勿体無い気がしてならないのだ。
「あれ?そういや今日、バイトじゃん」
ヤバい。チョコもらって調子のってた。
バレンタインデー、恐るべし。
俺は急いでバイト先へ向かった。
気づくのが早かったため、遅刻することはないだろう。
「ただいまー」
夜の七時過ぎ、俺は帰宅した。
「お帰り海斗。ご飯もうすぐできるよ」
「あーい」
バイト帰り程気だるい時間はないが、庭理の声を聞くとある程度疲れが回復する......気がする。
「そういや、庭理はチョコとか貰ったりしたのか?」
庭理は学校では男なのだから、貰っていてもおかしくない筈だ。
「ははっ、今年もゼロだよ」
「そうか」
「それより、ご飯出来たよ。運ぶの手伝って」
俺は庭理に言われた通り、二人分のアジフライと白飯を運ぶ。
庭理が味噌汁を運び、いつものところで座る。
「「いただきます」」
「ふー、食った食った」
俺が腹をぱんぱんと叩きながらそう言う。
「あっ、そうだ海斗」
庭理が近くに置いてある自分のリュックから、一つの包みを取り出した。
「はい、バレンタインのチョコ」
庭理がそういい、チョコの入った可愛らしい包みを渡してくる。
うん。なんかおかしいね。
「庭理、俺もう貰ったっつーか......あれ?」
俺は自身のリュックから、下駄箱に入っていたチョコを取り出す。
「これ、庭理のじゃないの?」
庭理に聞くが、きょとんとしている辺り、知らないようだ。
「えっ、じゃあこれ誰のだ?」
俺がチョコをまじまじと見る。
「開けてみれば分かるんじゃない」
そう言われ、そうだなと庭理を向くと......。
「............」
庭理は腕組みをしながら頬を膨らませていた。
「......すみません」
「ん?なんで謝ってんの?」
「いや、なんか、あの、すみません」
俺はなんとなく謝った。
「ま、いいや、とりあえずこれ、はい」
俺は庭理のチョコを受けとる。
一旦庭理のチョコを机に置き、謎のチョコを開けた。
メッセージカードとかもなく、本当に誰が送ったかわからないチョコだ。
「どうしよう。なんか怖い。てかこれ送ったの本当誰?」
「日比野さんとかじゃない?」
庭理が皮肉混じりでそう言う。
まぁ、俺もそう考えてたけど。
てか、他に知ってる女子で送りそうなのは......。
「あ、あのばばあじゃね?」
「え?誰?」
「あのー、保険室の」
「あ、根津先生ね」
「そうそう」
あの先生ならしかねない。
「あ、でもそれなら庭理にも渡すような気がする」
「うーん」
俺と庭理で考えるが、答えは出ない。
「ま、いっか、食おう」
チョコの箱を開けると、6つのチョコが部屋ごとに仕切られた、高級そうなのが出てきた。
「......庭理も食う?」
「いらない」
俺はアーモンドのチョコから食べる。
「っ!?」
旨っ!?
何これ?甘味だけじゃなく苦味もあってアーモンドの旨味とかもひきだされているまさしく高級な味!
俺は残りのもばくばくとほおばる。
「旨かったー」
「じー」
庭理がなにやら俺を見つめるので、次は庭理のチョコを開けた。
すると、そこには大きなハートのチョコが出てきた。
「おおっ」
俺は庭理を見る。
「ありがとうございます」
そして深々と頭を下げた。
「召し上がれ」
俺は庭理のチョコをひとかじりする。
素朴な味で、さっきのよりは安っぽい。
でも、こっちの方が旨かった。
俺は、このチョコを食べながらにこやかに微笑んでいた。
それを見ていた庭理も、微笑んだ。
女性が男性にチョコを贈る日として有名だが、その実態は、チョコを貰えた数によりその人の価値が決まるという残酷な日なのだ。
「ってことで美園。チョコ何個貰った?」
朝のホームルーム前、百合木がそう聞いてくる。
「まだゼロ。でもま、これから一個は確実に貰えるよ」
「えっ?誰から?」
「秘密だよ」
「おまっ、まさか彼女か?彼女ができたのか!?」
俺はさあなと会話をながした。
「てか、そういう百合木はどうなんだよ」
百合木は待ってましたと言わんばかりにふふんと鼻を鳴らした。
「九つ」
「......」
やはりクラスの人気者は違うな。
そんなこんなで放課後。
庭理に先に帰るよう促されたので、一人下駄箱で靴を取り出す。
「ん?」
すると、そこに包みが置いてあることに気がついた。
そうか庭理め。自分の目の前で俺がチョコを手にするとこ見るのが恥ずかしかったんだな。
俺はチョコをリュックに入れ、上機嫌で帰宅した。
「よっと」
おんぼろアパートに帰り、おもむろにリュックを降ろす。
チョコ、どうしよう。
先に食べといて、庭理が帰ってきたら感想を言うか、帰ってくるのを待ってから食うか。
本音を言えば、今すぐ食べたい。
けど、なんか一人で食うのもあっさりしてるというか、ともかく、勿体無い気がしてならないのだ。
「あれ?そういや今日、バイトじゃん」
ヤバい。チョコもらって調子のってた。
バレンタインデー、恐るべし。
俺は急いでバイト先へ向かった。
気づくのが早かったため、遅刻することはないだろう。
「ただいまー」
夜の七時過ぎ、俺は帰宅した。
「お帰り海斗。ご飯もうすぐできるよ」
「あーい」
バイト帰り程気だるい時間はないが、庭理の声を聞くとある程度疲れが回復する......気がする。
「そういや、庭理はチョコとか貰ったりしたのか?」
庭理は学校では男なのだから、貰っていてもおかしくない筈だ。
「ははっ、今年もゼロだよ」
「そうか」
「それより、ご飯出来たよ。運ぶの手伝って」
俺は庭理に言われた通り、二人分のアジフライと白飯を運ぶ。
庭理が味噌汁を運び、いつものところで座る。
「「いただきます」」
「ふー、食った食った」
俺が腹をぱんぱんと叩きながらそう言う。
「あっ、そうだ海斗」
庭理が近くに置いてある自分のリュックから、一つの包みを取り出した。
「はい、バレンタインのチョコ」
庭理がそういい、チョコの入った可愛らしい包みを渡してくる。
うん。なんかおかしいね。
「庭理、俺もう貰ったっつーか......あれ?」
俺は自身のリュックから、下駄箱に入っていたチョコを取り出す。
「これ、庭理のじゃないの?」
庭理に聞くが、きょとんとしている辺り、知らないようだ。
「えっ、じゃあこれ誰のだ?」
俺がチョコをまじまじと見る。
「開けてみれば分かるんじゃない」
そう言われ、そうだなと庭理を向くと......。
「............」
庭理は腕組みをしながら頬を膨らませていた。
「......すみません」
「ん?なんで謝ってんの?」
「いや、なんか、あの、すみません」
俺はなんとなく謝った。
「ま、いいや、とりあえずこれ、はい」
俺は庭理のチョコを受けとる。
一旦庭理のチョコを机に置き、謎のチョコを開けた。
メッセージカードとかもなく、本当に誰が送ったかわからないチョコだ。
「どうしよう。なんか怖い。てかこれ送ったの本当誰?」
「日比野さんとかじゃない?」
庭理が皮肉混じりでそう言う。
まぁ、俺もそう考えてたけど。
てか、他に知ってる女子で送りそうなのは......。
「あ、あのばばあじゃね?」
「え?誰?」
「あのー、保険室の」
「あ、根津先生ね」
「そうそう」
あの先生ならしかねない。
「あ、でもそれなら庭理にも渡すような気がする」
「うーん」
俺と庭理で考えるが、答えは出ない。
「ま、いっか、食おう」
チョコの箱を開けると、6つのチョコが部屋ごとに仕切られた、高級そうなのが出てきた。
「......庭理も食う?」
「いらない」
俺はアーモンドのチョコから食べる。
「っ!?」
旨っ!?
何これ?甘味だけじゃなく苦味もあってアーモンドの旨味とかもひきだされているまさしく高級な味!
俺は残りのもばくばくとほおばる。
「旨かったー」
「じー」
庭理がなにやら俺を見つめるので、次は庭理のチョコを開けた。
すると、そこには大きなハートのチョコが出てきた。
「おおっ」
俺は庭理を見る。
「ありがとうございます」
そして深々と頭を下げた。
「召し上がれ」
俺は庭理のチョコをひとかじりする。
素朴な味で、さっきのよりは安っぽい。
でも、こっちの方が旨かった。
俺は、このチョコを食べながらにこやかに微笑んでいた。
それを見ていた庭理も、微笑んだ。
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