他の何よりアイが欲しい。R15

勇崎シュー

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二十話 凩吹く頃に

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 結局、俺には手紙の内容は分からなかった。
 いや、別に庭理が見せてくれなかったからではないけど。
 まぁ、俺が見て良いものでは無さそうだし、気にしないようにしよう。
 そんなこんなで、冬休みも終わりだ。
 殆どバイトしてた冬休みだったけど、今年は結構充実したと思う。
 それは、きっと全て、庭理のおかげだ。
 俺は目の前で朝食を食べている庭理を見て、ニコッと笑う。
「何笑ってるの?気持ち悪いよ」
 俺は笑顔をひきつらせた。

「おーっす二人とも。あけおめ」
 いつかのように、後ろから百合木が俺達に声をかける。
「おー、百合木。あけおめ」
「明けましておめでとう」
 俺達も百合木に挨拶をする。
「いやー、今日から学校かぁ。まぁ、結構楽しいから良いんだけどな」
 百合木がニコニコしながらそう言う。
「そうか?俺は怠くてしょうがないよ」
 そんなことを言い合っていると、偶々校門前を歩いていた日比野と目があった。
「あ、美園君おはよう」
「おう、あけおめ日比野」
 なんだこのデジャヴ。
 てか気まずい。
 俺は過去に、いや過去って言っても数ヶ月前の話だが、俺は一度、日比野をふったことがある。
 あの日から気まずくてずっと喋ってこなかったが、久しぶりに日比野の声を聞いたな。
 すると、庭理が俺の腰の辺りを小突いてきた。
「な、なんだよ庭理」
「べつに」
 そう言うと庭理はそそくさと下駄箱へ向かった。
 ......俺と百合木を置いて。
「松芝に嫌われちゃったな」
「うっせ」
 俺達も下駄箱へ向かった。

 今日は始業式と、担任が云々いって、午前中で学校は終わった。
 帰宅した俺達は、昼飯はどうするか話し合う。
「やっぱボクが作るよ」
「いやいや、それはなんかわるいって、俺がなんか奢るからさ、牛丼とか食いに行こうぜ」
 庭理と俺で意見が割れ、なかなか会話が前進しない。
「なんかわるいってさー、ボクは料理するの楽しいし、そんな気を使わなくてもいいのに」
 庭理がぷくりと頬を膨らます。
「わかったよ。こういう時は男が折れるもんだってどっかで聞いたし。シェフに任せます」
「畏まりました」
 可愛らしくニコッと笑う庭理が、キッチンへ向かう。
「ふぅ」
 俺が息を吐きながら、庭理の母親について考える。
 あの日、庭理は手紙を読んで泣いていた。
 次の日からいつも通りに接していたが、きっと庭理の心の中はいつも通りじゃない。まぁ、なんとなく俺がそう思っているだけだが。
 しかし、それを追及すると、庭理を傷つけることになるかもしれないと、とくに聞いたりしなかった。

 ......庭理は今、どう思っているのだろう。

 幾分かの時がすぎ、庭理に食事を運ぶよう言われる。
 今日のメニューはペペロンチーノだった。
 具材はベーコンと玉ねぎだけの簡易的なものだったが、うちのシェフはそれでも絶品料理を作ることが出来る。
「よし、じゃあ食べよっか」
 エプロンを外しながら庭理がそう言う。
「「いただきます」」
 何でこんな毎度毎度旨い飯を作れるんだうちのシェフは。と、俺は今日も感心した。
 そんなシェフを見てみると、庭理は納得したように頷きながらペペロンチーノを食べている。
 ふと、エプロンが目に入った。
 庭理が二年間使い続けている、藍色のエプロンだ。
 そろそろ新しいのを買った方が......あっ。
 俺はとある名案を頭に思い浮かべた。
「海斗、何にやにやしてるの?」
 あれ?この台詞今朝も聞いたような......?
 またデジャヴってやつか?
「シェフの料理が最高だからだよ」
「......ボナペティ」
 庭理がほんのりと顔を赤くしながらそう言う。
 なんか色々違う気がするが、まぁ、気にしないようにしよう。
 いつものように完食した俺達は、食器をキッチンのシンクへ運ぶ。
 この時と皿洗いする時のみ、俺は厨房に入ることを許される。
 まぁ、庭理に監視はされているけど。
 そういえば、やけにここら辺厳重だよな。

 ......何か秘密でもあるのだろうか?
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