レベル“0”ですが、最強です。

勇崎シュー

文字の大きさ
26 / 81
一章ー風の都ー

26 独りじゃない

しおりを挟む
「……ちょっと、行ってくる」

 それだけバックに言い残し、俺は……。
 マシンの留め具を黒剣で切断した。

「い、けえええぇあぁぁぁぁッ!」

 ギュンッ! と身体が黒鳥へ吸い込まれる様に、フックショットの鎖部分が収束して行く。

「あんちゃぁあああああんッ!」

 後方からバックの叫びが耳に届くが、今はカースベルグのみを目にし、我が黒剣を担ぎながら臨戦体勢を取る。

「ず、ぉうらぁああああああああぁぁあッ!!」

 そして、俺は大黒鳥の背に向けて……。
 黒き一閃を刻みつけた。

「キョォオオオオオオー…………ン……」

 奴は今までで一番の甲高い鳴き声を上げ、幾数もの黒羽根が天を舞う。
 これで終わってくれれば良いのだが。

「……キョ、エェアアアアアアアアッ!」

 一瞬重力に負けかけた黒鳥だったが、異次元の裂け目が閉じた瞬間、再び空へ舞い上がる。
 どうやら、六メートルという体躯を収めるには、あの程度の裂け目では全く足りなかったらしい。
 やはり、もっと大胆に行かなくては。と思った瞬間。

「ギキョエルァアァァァァァー!」

 聞いたことも無い程荒ぶるカースベルグ。
 すると、奴は身を捩って樹木へと叩きつけようとしてきた。

「やべっ……!」

 どうする。手を離したところで命を投げ出すだけだ。だからといってこのままでは潰される。
 頭を高速で回転させ名案を模索していくが、焦りが邪魔して時間だけが過ぎる。
 その時ーー。

「こっちだぁッ!」

 俺は振り向き、全てを察する。
 剣を脇で挟み、フックショットを引き抜く。右手でカースベルグの体毛を掴みながら、慎重にエアロマシンに向けてフックを射出した。

 届け。届いてくれ……!
 縋るようにそう願ったが、その想いを嘲るように、無惨にもフックの先端は届かなかった。

「う、そぉ……っ」

 顔が青ざめ、胸が縮こまるような恐怖に駆られる。
 ここで、終わるのか……?
 そんな恐怖に囚われかけたその時。

「う、おぉおおッ!」

 バックは雄叫びをあげながら急旋回し、フックをエアロマシンの後方に引っ掛ける様にフライトする。
 一瞬の出来事だったが、数秒かけて助かった事を認識し、安堵の息を吐く。同時に神がかったバックの技術に舌を巻くが、恐らく火事場の何とやらだろう。勿論今までの努力あってこそだろうが。

「んぎっ……!」

 とか無駄な事を考えている内に、またしても腕に負担がかかる。この世界に来たばかりの俺だったらもげていたかもしれない。

「登ってこれっか?」
「無理!」

 即答する俺に対し、バックは微妙な顔をする。

「そんじゃあ、ここは一旦引き返そうぜ!」

 それを聞いて、アリだなと素直に思う。
 既に戦況は想定していたものより大きく異なっているのだ。
 だが……。

「……いや、奴は今日、ここで倒す!」

 ここで逃げたら、何かを失ってしまう様な気がして。

「勿論、ここからは俺一人で戦う。バックは安全な所に……」

 そこまで言うと、思わぬ怒号が飛んでくる。

「ふざけんな!」

 俺が目を見開くと、彼の背中が寂しげに見えた。

「これは……本当なら俺の問題だ……! 全部あんちゃん任せになんて出来っか! 頼む、最後まで一緒に戦わせてくれよ!」

 それを聞いて、暫く迷う。
 しかし、仄かに微笑を浮かべ、叫び返した。

「わかった。頼む!」

 その後カースベルグに顔を向けた所で、ひとつの作戦が思い浮かぶ。
 これならば……。

「バック! 出来る限り上空へ飛んでくれ!」
「あいよ!」

 打てば響くやり取りに力が入る。
 そして、同じようにバック最高のマシンは天へ向かって翔け始めた。

「キョェエエエェェエエエーッ!」

 カースベルグも当然付いてくる、が。
 下降や真横に飛ぶのは得意でも、真上へは飛び慣れて無いらしく、追いつきそうには無い。
 ここはチャンスをものにする為にも、出来る限り上へ飛行を続けた。

「あと、少し……ここだ! バック、急降下してくれ!」
「……っ! 俺とマシンはともかく、あんちゃんに相当負担がかかるぞ!?」
「そこはバックの腕で何とか頼む!」
「……へっ! 分かったよバカヤロー!」

 彼が嬉しそうにそう吐き捨てると、同時に急下降が開始される。
 カースベルグが明らかに驚いた。それはそうだ今までしてきた事が今度は俺達にされているのだから。

「今度こそ……っ、終われぇぇぇえええッ!」

 大黒鳥を横切る直前に空中に刃をいれ、そのまま身体が引っ張られると同時に空間が裂かれていく。
 そして、十メートル程刃を通したところで勢い良く振り抜いた。
 すると、空に巨大な別次元の大穴が開き、近くの全てを呑み込んでいく。
 エアロマシンは巻き込まれないよう、全速力で大地へと向かった。

「ぐ、ぉおおおおお……!」

 しかし、次元の裂け目があまりに巨大なため、振り解けない。

「キョェアアアアアァァァアッ!」

 カースベルグもかなり耐えているようだが、その吸引力には適わず、徐々に引き込まれてゆく。
 早く、早く呑み込まれろ……! という願いは届き、三十秒程でその全身が呑まればっくりと空いていた裂け目も何とか閉じた。

「…………ふぅ」

 終わったのだ。
 ……いや。バックの人生は、ここから始まるのだろう。
 彼を包んでいた黒翼は、別次元に呑まれたのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...