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二章ー止まない街ー
31 住居不法侵入
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止まない街、レアル。
この街には、最近奇妙な事件が立て続けに起こっていた。それを聞いた相棒のユズリは……。
「そんなの、絶対捕まえなきゃ!」
ですよね。と俺は呆れ半分で苦笑を浮かべた。
「……って言いたい所だけど、今回は止めておくわ」
その言葉を聞いて、閉じかけていた瞳を見開く。
正義感と慈愛が服を着て歩いているような彼女が、何故。
「まだ状況も理解しきれていないし、貴方達や住民の方が居て足取りも掴めないような相手に、辿り着ける保証もないし」
弱気な彼女の説明に、男三人は眉を下げる。
しかし、俺だけはその理由が分かっていた。恐らく、いやほぼ間違いなく、俺の放った言葉が原因だろう。
ハーシンの村の件で、俺は彼女に出来ない事は最初から受けるなと叱責した。
ユズリはその場でも反省の色を示していたし、事実今回の台詞はその結果が出たのだと言える。
だが……俺の余計かつ上から目線の物言いのせいで、彼女の良い部分である真っ直ぐな信念を揺るがしてしまったのなら……。
俺はどこと無い罪悪感に身体が締め付けられる様な感覚に見舞われる。
「そうですね……いくらユズリ様といっても、今回の事件は妙すぎます。用を済ませ次第離れるのが得策かと」
「ごめんなさいね……。もし何か分かったら報告します」
二人の番兵が即座に道を開いて敬礼した。
ユズリは礼を言ってから街へと踏み入れ、俺も二人に会釈してから追いかける。
「ね、ねぇ、ユズリ……」
「なに?」
決して暗くは無く含みの無い返しをされるが、どこか気まずく次の言葉が出てこない。
「えっと、親方の従兄弟……確かヴェルギさん、だっけ? どうやって見つけるのかなーって」
いつまでも無言ではいられない為、取り敢えずそんなことを聞くと彼女もなんでもないように答えてくれる。
「取り敢えず、中心街で聞いて回りましょ」
「分かった。でも、中心街って……?」
辺りを見回す俺に、ユズリはストリートの先を指した。
「ほら、あそこにある大きな建物。あの中に色々なお店があるの。あれがレアルの中心街よ」
彼女の指の先には、黒いレンガっぽいもので出来た屋根が特徴的な、俺の世界で言うショッピングモール……程ではないが中々に大きいサイズの建物が見える。
十分ほど真っ直ぐ歩いただけで辿り着き、鋼材から作ったような引戸を開いて中へと入った。
光源はどうしているのだろうと思ったが、どうやら天井のあちこちにLEDに比肩する光量を放つランタンが置かれているようだ。お陰で視界には不自由しない。
「それじゃあ。手分けして情報収集しましょ」
とあう彼女の提案を受け、二人で中心街の人達に片っ端から聞き込んだ。
中には客じゃねぇ奴に話す事はねぇとそっぽを向く店員も居たが、何人か知っている人が居たので、ツテを辿って住所を特定した。
予め決めておいた待ち合わせ場所でユズリと合流し、お互いの情報を照らし合わせてからその場へ向かう。
「ここ、かな?」
「そう、みたいね」
メモを片手にアパート風の住居を二人で見上げる。
この建物もレンガ状の物で構築されており、やはり暗い印象を持った。
少し物怖じするが、意を決して敷地内に入る。
管理人みたいな人も居なかったので勝手にうろうろしていると、直ぐに聞いていた部屋を見つけ出した。
「ヴェルギさん……って、どんな人なんだろうね?」
「うーむ。聞いた話だと社交的で明るい人らしいね。なんか従兄弟なのに親方と真逆だなぁ」
ホントだ。と彼女が微笑を浮かべたところで、俺は再び意を決して扉を三回ノックする。
数秒待つが、何の反応も無い。
「あれ、出かけてんのかな」
「返事もないって事は、そうなんじゃない?」
そうだよな、と頷きかけるが、俺はふと気になってドアノブに手を伸ばした。
手にかけ、軽く力を込めると、扉は簡単に開く。
「ちょ、勝手に開けちゃまずいじゃない!」
「いや、そうだけどさ、無用心過ぎない? 中で寝てんのかも」
部屋の中に入ったらヴェルギさんの死体が! という展開が頭に過ぎるが、ここへ来たのはたまたまだし、まさかそう都合よく巻き込まれはしないだろう。
恐らく自室で居眠りでもしているのだろう。完全に不法侵入だが、理由を説明すればヴェルギさんも分かってくれるはずだ。
何より雨の中ずっと外に居るのが嫌なので、扉を開けて一応呼びかける。
「ヴェルギさーん。風の都からお届け物でーす」
宅配員を装っているみたいだが、嘘はついていない。
やはり返事は無く鼻から溜息を流すと、後ろにいたユズリが突如前へ躍り出る。
「……ねぇ、これって……?」
どうやら何かのメモが玄関の隅に落ちていたらしく、彼女が拾い上げた。
大切な物かもしれないので、一応持っておく事に。
もう一度呼びかけてから玄関を進んでいくと、突き当たりを曲がった所に空きっぱなしの扉がある事に気がつく。
外出していたなら扉を閉めている筈なので、やはりあの部屋で居眠りでもしているのだろうと近づいた。
そして、再度名前を呼びつつ扉に手をかけ部屋に入ると……。
「なっ……!」
乾いて変色した血が部屋を黒く染め上げ、その中央に……中肉中背の男が倒れていた。
この街には、最近奇妙な事件が立て続けに起こっていた。それを聞いた相棒のユズリは……。
「そんなの、絶対捕まえなきゃ!」
ですよね。と俺は呆れ半分で苦笑を浮かべた。
「……って言いたい所だけど、今回は止めておくわ」
その言葉を聞いて、閉じかけていた瞳を見開く。
正義感と慈愛が服を着て歩いているような彼女が、何故。
「まだ状況も理解しきれていないし、貴方達や住民の方が居て足取りも掴めないような相手に、辿り着ける保証もないし」
弱気な彼女の説明に、男三人は眉を下げる。
しかし、俺だけはその理由が分かっていた。恐らく、いやほぼ間違いなく、俺の放った言葉が原因だろう。
ハーシンの村の件で、俺は彼女に出来ない事は最初から受けるなと叱責した。
ユズリはその場でも反省の色を示していたし、事実今回の台詞はその結果が出たのだと言える。
だが……俺の余計かつ上から目線の物言いのせいで、彼女の良い部分である真っ直ぐな信念を揺るがしてしまったのなら……。
俺はどこと無い罪悪感に身体が締め付けられる様な感覚に見舞われる。
「そうですね……いくらユズリ様といっても、今回の事件は妙すぎます。用を済ませ次第離れるのが得策かと」
「ごめんなさいね……。もし何か分かったら報告します」
二人の番兵が即座に道を開いて敬礼した。
ユズリは礼を言ってから街へと踏み入れ、俺も二人に会釈してから追いかける。
「ね、ねぇ、ユズリ……」
「なに?」
決して暗くは無く含みの無い返しをされるが、どこか気まずく次の言葉が出てこない。
「えっと、親方の従兄弟……確かヴェルギさん、だっけ? どうやって見つけるのかなーって」
いつまでも無言ではいられない為、取り敢えずそんなことを聞くと彼女もなんでもないように答えてくれる。
「取り敢えず、中心街で聞いて回りましょ」
「分かった。でも、中心街って……?」
辺りを見回す俺に、ユズリはストリートの先を指した。
「ほら、あそこにある大きな建物。あの中に色々なお店があるの。あれがレアルの中心街よ」
彼女の指の先には、黒いレンガっぽいもので出来た屋根が特徴的な、俺の世界で言うショッピングモール……程ではないが中々に大きいサイズの建物が見える。
十分ほど真っ直ぐ歩いただけで辿り着き、鋼材から作ったような引戸を開いて中へと入った。
光源はどうしているのだろうと思ったが、どうやら天井のあちこちにLEDに比肩する光量を放つランタンが置かれているようだ。お陰で視界には不自由しない。
「それじゃあ。手分けして情報収集しましょ」
とあう彼女の提案を受け、二人で中心街の人達に片っ端から聞き込んだ。
中には客じゃねぇ奴に話す事はねぇとそっぽを向く店員も居たが、何人か知っている人が居たので、ツテを辿って住所を特定した。
予め決めておいた待ち合わせ場所でユズリと合流し、お互いの情報を照らし合わせてからその場へ向かう。
「ここ、かな?」
「そう、みたいね」
メモを片手にアパート風の住居を二人で見上げる。
この建物もレンガ状の物で構築されており、やはり暗い印象を持った。
少し物怖じするが、意を決して敷地内に入る。
管理人みたいな人も居なかったので勝手にうろうろしていると、直ぐに聞いていた部屋を見つけ出した。
「ヴェルギさん……って、どんな人なんだろうね?」
「うーむ。聞いた話だと社交的で明るい人らしいね。なんか従兄弟なのに親方と真逆だなぁ」
ホントだ。と彼女が微笑を浮かべたところで、俺は再び意を決して扉を三回ノックする。
数秒待つが、何の反応も無い。
「あれ、出かけてんのかな」
「返事もないって事は、そうなんじゃない?」
そうだよな、と頷きかけるが、俺はふと気になってドアノブに手を伸ばした。
手にかけ、軽く力を込めると、扉は簡単に開く。
「ちょ、勝手に開けちゃまずいじゃない!」
「いや、そうだけどさ、無用心過ぎない? 中で寝てんのかも」
部屋の中に入ったらヴェルギさんの死体が! という展開が頭に過ぎるが、ここへ来たのはたまたまだし、まさかそう都合よく巻き込まれはしないだろう。
恐らく自室で居眠りでもしているのだろう。完全に不法侵入だが、理由を説明すればヴェルギさんも分かってくれるはずだ。
何より雨の中ずっと外に居るのが嫌なので、扉を開けて一応呼びかける。
「ヴェルギさーん。風の都からお届け物でーす」
宅配員を装っているみたいだが、嘘はついていない。
やはり返事は無く鼻から溜息を流すと、後ろにいたユズリが突如前へ躍り出る。
「……ねぇ、これって……?」
どうやら何かのメモが玄関の隅に落ちていたらしく、彼女が拾い上げた。
大切な物かもしれないので、一応持っておく事に。
もう一度呼びかけてから玄関を進んでいくと、突き当たりを曲がった所に空きっぱなしの扉がある事に気がつく。
外出していたなら扉を閉めている筈なので、やはりあの部屋で居眠りでもしているのだろうと近づいた。
そして、再度名前を呼びつつ扉に手をかけ部屋に入ると……。
「なっ……!」
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