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勇崎シュー

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二章ー止まない街ー

46 裏切りと赦し

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 ガンゾルドに仕えているという執事を撃破し、扉に手をかける。
 しかし、どうやら施錠されているらしく扉は微動だにしない。
 急いでいるので破壊しようかと剣を振り上げたところで、後方から焦り声を掛けられる。

「ま、まて! ……ほら」

 振り返ると同時に片腕を失ったリリバーが何かを放り投げた。
 何とか掴み見てみると、右手には銀の鍵が握られている。

「仕来りですので……それと、仲間の元へは行かぬ方が良いです。この屋敷に魔法を仕掛けたガンゾルド様を倒さぬ限りどの道開けられないのでね」

 それだけ言うと、リリバーは自らの止血作業に入った。
 俺はひとつ頷き鍵を徐に突っ込む。
 どうやら鍵の原理は俺の世界と同じだったようで、普通に解錠出来た。
 振り向きたい様な気持ちを追いやって、俺はフーロちゃん探しを再開する。

 暫く歩いたところで、大部屋に辿り着いた。
 一戸建てが丸々入りそうな程の空間。端々には屋敷を支える丸みを帯びたアイボリーの石柱が並んでおり、その中央には二階へ上がるためのこれまた大きな階段が設けられている。
 流石に王城ほどでは無いものの、一室でこれだけデカい部屋を作れるのは流石領主と言った所か。

「ふむ、やはり貴様が来たか。想定より少しばかり早かったな」

 上階から冷たい声が室内に響き、その方へ顔を向ける。

「ガンゾルド……!」

 その姿を視認した瞬間、思わず奴の名が零れた。

「ガンゾルド……フーロちゃんはどこだ」

 改めて質すと、ガンゾルドは自らの顎を優雅に摩って見せる。

「ふむ……まぁそう急くな、勇者よ」

 大広間にて、階段上のガンゾルドをエントランスより見上げつつ奥歯を噛み締める。すると、此方がもう一度吼える前に左手を横へ出した。

「来なさい」

 奴の声にて現れたのは……。
 木製の首輪のような物を付けた、フーロちゃんだった。

「なっ……!」

 あまりの異質な光景に、怒りと驚きを内包した声を上げてしまう。
 彼女が俯きながらガンゾルドの元へ歩むと、奴はその肩を手袋越しで徐に掴んだ。瞬間、フーロはびくりと身体を震わす。

「ほれ、お前の探し物だ」

 無表情のような微笑を浮かべたガンゾルドに殺意を向けていると、奴は更に笑みを深め新たに口を開いた。

「だが……この娘を助ける価値など無いと思うぞ」

 奴の言葉に「そんなわけ……」と言うが、僅かに張った声に跳ね返されてしまう。

「不思議に思わなかったのか? 何故我々が貴様らの隠れ家を知っていたのか。何故貴様の移動先を把握していのか」

 それを聞いて、一瞬の後理解する。
 まさかーー。

「そう! この娘にスパイをやらせていたのだ!」

 ガンゾルドは、愉快そうに右手を天に掲げた。

「いやぁ彼女は従順だったよ。母親を生き返させるのを条件にしていたとはいえ、それはもう献身的だった。お陰でこの数日は楽しめたよ」

 彼の一言一句に気分が害されるが、今はひとつの疑問が強く浮かび上がる。

「生き返させるって……そんな事が可能なのか?」

 俺の質疑に口を結ぶガンゾルドだったが、直ぐに醜く大口を開け高笑で唱った。

「そんな事が出来るわけ無いだろう!」

 奴の言葉に、俺とフーロは目を見開いた。恐らく、彼女もこの場で初めて知ったのだろう。

「確かに、我々の一族は他の生物へ血を流し込む事により眷属として仕えさせることが出来る。が、その間仮死状態になるだけで死んだ者を生き返らせるなど不可能だ! 加えて、彼女の母親に血を流し込んでからかなりの時間が立っている。三日経っても目覚めんという事は血に順応出来ず、単なる屍に堕ちたのであろうな」

 ガンゾルドがべらべらと話し込んでいる様だったが、俺の耳には半分も入ってこなかった。
 それだけ、奴のことが憎い。
 フーロちゃんという子供から母親を殺害したばかりか、騙し利用するなんて、残酷という言葉以上の嫌悪を感じざるを得ない。

「おっと、そうだった。この娘はもう用済みだ。貴様に返してやろう」

 そう言うと、ガンゾルドは俯き震え、眼を潤わせている彼女を引き寄せーー。
 階段から蹴り落とした。

「この野郎ッ!」

 今から駆け出しても間に合わないと悟った俺は、フーロちゃんに届くよう特大サイズの次元の裂け目を招来させ吸収力を生み出した。
 力の入っていない彼女は地面にぶつかる前にこちらに引き寄せられる。
 裂け目が閉じた時点で直ぐ俺の目の前まで来ていたので、そのまま優しく抱き寄せた。

「……許せない」

 俺の呟きに、腕中の彼女が大きく震える。

「ふむ。そうだろうなぁ。仲間だと思っていた娘に騙されたのだから」

 見当違いな事を言うガンゾルドと、フーロちゃんに大丈夫である事を伝えるため、俺は深く息を吸った。


「許さないぞ、ガンゾルドぉぉおおおッ!」


 俺の絶唱に、辺りの空気が振動しガンゾルドは冷ややかな目線を送る。

「ほう。許さない、か。私としてはどうでも良いが、許さないからと言って貴様に何が出来る?」

 俺は奴の言葉を無視し、彼女の頭に左手を乗せ、右手の剣をガンゾルドに向けた。

「お前は……フーロちゃんの絶望の象徴そのものだ。だからお前を倒して……彼女を絶望の淵から救い上げてみせる」

 もう一度左手でぽんと頭を撫で、彼女を下げさせる。

「あの、私……」
「いいよ。大丈夫」

 それだけ言って微笑を浮かべてから、階段上の奴に向き合った。

「ふむ。私を倒すか。やってみろ。出来るならな」
「うるせぇよ。その口、もう二度と開けないようにしてやる」

 俺と奴の視線が交錯し、火花となって散った所で……。

 互いに地面を踏み切って、己が腕を振り被った。
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