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サウスサウサ編
13話 酒場にて
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「そいつは森のヌシだな」
ここは冒険者ギルドに隣接されている酒場、〝ロマネス〟。俺はそこで、ズウルに色々と情報を聞こうとしていた。
手始めに、俺達が森で出くわした巨大猪について聞くことにしたのである。
「森のヌシ?まぁ確かに、だいぶ長寿そうな図体してたけど」
俺はそう言いながら、店に出されたジュースを飲む。
今日の俺達の報酬はゼロなので、ズウルが奢ってくれるとのことだったが、わるいから飲み物だけでいいと断った。
因みにエリュはラックの様子を見に行っている。
「森のヌシはだいぶ奥に進まないと出くわさない筈なんだがな。それに、よく無傷で帰ってこれたもんだ」
ズウルは何かの唐揚げをほうばりながらそう言う。
旨そうに見えるが、基本的に俺は食事が出来ない。
出来ない訳ではないが、以前、エリュに食事してもいいのか、と聞いたところ、「いいけど、内臓も機能していないから、食べたものが胃の中で腐って口臭がすごいことになるわよ」と言われた。
「無傷、ね。はは......」
俺は未だ傷む頬を撫でる。
死んでるのに痛みは感じるのか、と思いながら、俺は再びジュースを口に含んだ。
液体はすぐ蒸発するから、飲んでも平気だとエリュが言っていた。
「聞きてぇことはそれだけか?」
ごくりと唐揚げを飲み込んだズウルにそう聞かれる。
「いや、あと二つある。一つ目は、顔に青い刺青の入った、若い男のこと。何か知っているか?」
ズウルは手を顎に乗せ、暫く考え込んだ。
「いや、知らねぇな。そいつがどうしたんだ?」
「まぁ、ちょっとな」
俺は三度ジュースを口に入れた。
青い刺青の男、勿論俺を殺した張本人の事だが、一応そいつのことを知っておきたかった。
ぶっちゃけ好奇心半分だが、エリュがいたから良いものを、俺を殺した罪は重いのだ。
下手したら本当に地獄いきだったもんな。
「そんで、二つ目はなんなんだ」
「あ、そうそう、今日ギルドに来てた、茶色のローブの女の子さ、なんなんだあれ」
「あー、最悪の村出身のあいつか」
それだ。
最悪の村だとか、一体何なのだろう。
「なぁ、錬金術って知ってるか」
「錬金術?あの何も無いところから色んなもの作り出すやつ?それ今関係あるのか?」
ズウルは勿論と頭を振る。
「リンダースって村があった。ここ最近魔王軍に潰されたがな。その村ではどうも、禁忌と言われている錬金術について研究されていたらしい。だから最悪の村だ」
成る程、禁忌に触れたから最悪、か。
「じゃあさしずめ、昼間の女の子はその村の生き残りってとこか」
「そういうこった」
俺は残りのジュースを一気に飲み干した。
「ありがとうズウル。すっごく助かった。この借りはいつか奢るなりして返すよ」
「気にすんなよ。それより、知ってるかもしれねぇがクエストには期限があるからよ。無理しろとは言わねぇが気を付けな」
そういや、その期限とやらを過ぎたら罰金だっけな。
まぁそりゃそうだ。レストランでフルコース予約してたのに行かないのと一緒だからな。
俺は最後まで親切なズウルを残し、酒場を後にした。
ここは冒険者ギルドに隣接されている酒場、〝ロマネス〟。俺はそこで、ズウルに色々と情報を聞こうとしていた。
手始めに、俺達が森で出くわした巨大猪について聞くことにしたのである。
「森のヌシ?まぁ確かに、だいぶ長寿そうな図体してたけど」
俺はそう言いながら、店に出されたジュースを飲む。
今日の俺達の報酬はゼロなので、ズウルが奢ってくれるとのことだったが、わるいから飲み物だけでいいと断った。
因みにエリュはラックの様子を見に行っている。
「森のヌシはだいぶ奥に進まないと出くわさない筈なんだがな。それに、よく無傷で帰ってこれたもんだ」
ズウルは何かの唐揚げをほうばりながらそう言う。
旨そうに見えるが、基本的に俺は食事が出来ない。
出来ない訳ではないが、以前、エリュに食事してもいいのか、と聞いたところ、「いいけど、内臓も機能していないから、食べたものが胃の中で腐って口臭がすごいことになるわよ」と言われた。
「無傷、ね。はは......」
俺は未だ傷む頬を撫でる。
死んでるのに痛みは感じるのか、と思いながら、俺は再びジュースを口に含んだ。
液体はすぐ蒸発するから、飲んでも平気だとエリュが言っていた。
「聞きてぇことはそれだけか?」
ごくりと唐揚げを飲み込んだズウルにそう聞かれる。
「いや、あと二つある。一つ目は、顔に青い刺青の入った、若い男のこと。何か知っているか?」
ズウルは手を顎に乗せ、暫く考え込んだ。
「いや、知らねぇな。そいつがどうしたんだ?」
「まぁ、ちょっとな」
俺は三度ジュースを口に入れた。
青い刺青の男、勿論俺を殺した張本人の事だが、一応そいつのことを知っておきたかった。
ぶっちゃけ好奇心半分だが、エリュがいたから良いものを、俺を殺した罪は重いのだ。
下手したら本当に地獄いきだったもんな。
「そんで、二つ目はなんなんだ」
「あ、そうそう、今日ギルドに来てた、茶色のローブの女の子さ、なんなんだあれ」
「あー、最悪の村出身のあいつか」
それだ。
最悪の村だとか、一体何なのだろう。
「なぁ、錬金術って知ってるか」
「錬金術?あの何も無いところから色んなもの作り出すやつ?それ今関係あるのか?」
ズウルは勿論と頭を振る。
「リンダースって村があった。ここ最近魔王軍に潰されたがな。その村ではどうも、禁忌と言われている錬金術について研究されていたらしい。だから最悪の村だ」
成る程、禁忌に触れたから最悪、か。
「じゃあさしずめ、昼間の女の子はその村の生き残りってとこか」
「そういうこった」
俺は残りのジュースを一気に飲み干した。
「ありがとうズウル。すっごく助かった。この借りはいつか奢るなりして返すよ」
「気にすんなよ。それより、知ってるかもしれねぇがクエストには期限があるからよ。無理しろとは言わねぇが気を付けな」
そういや、その期限とやらを過ぎたら罰金だっけな。
まぁそりゃそうだ。レストランでフルコース予約してたのに行かないのと一緒だからな。
俺は最後まで親切なズウルを残し、酒場を後にした。
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