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甘噛の休日
しおりを挟む「來瑠美、こっちにおいで」
結城の静かな声に誘われて、わたしは彼の胸に身を預けた。温かな体温と、慣れ親しんだ柑橘系の香りが鼻をくすぐる。シャツの生地越しに感じる彼の心音が、わたしの頬に伝わってきた。
「今週も頑張ったね」
耳元で囁かれた言葉と共に、結城の腕がわたしをそっと包み込んだ。その瞬間、一週間分の緊張がまるで溶けた蝋のように全身から抜けていくのを感じた。
彼の指先がわたしの黒髪を優しく梳いていく。まるで貴重な絹糸を扱うような、丁寧で愛おしさに満ちた仕草。わたしが安堵したように目を閉じると、結城は慈しむように首筋に顔を寄せてきた。
「かわいいな」
そっと呟かれた言葉が、肌に直接触れるような感覚で響いた。次の瞬間、彼はわたしの首筋にやわらかく唇を当てた。そして愛情を込めて、花びらに露を置くような繊細さで、そっと歯を立てる。
その後、ぎゅっと強く。所有への愛しい印として。
「あぁ...」
甘い痛みが首筋を走った瞬間、わたしの体は小さく震えた。それは単なる痛みではなく、結城の所有欲が形となって刻まれる瞬間。彼の歯型が肌に残ることへの予感に、わたしの心は不思議な悦びで満たされていった。
「このまま來瑠美を食べてしまいたい」
小さく身を震わせたわたしを、結城はさらに深く抱きしめた。首筋にじんわりと残る痛みは、次第に温かな疼きへと変わっていく。明日、鏡を見たときにそこに残っているであろう小さな痕を想像すると、胸の奥が甘く痺れた。それは誰にも見えない場所にある、わたしたちだけの秘密の印。
「今日はたまらなく、來瑠美のことが欲しいんだ」
その言葉と共に、額にそっと唇を寄せられる。それは単なる口づけを超えた、魂の結びつきを確認するような、神聖で温かな儀式のようだった。結城の唇の温もりが額に残り、わたしはさらに深く彼の胸に身を委ねていった。首筋の小さな痕が、わたしが彼のものであることを静かに物語っている。
「もっと來瑠美の声が聞きたい」
結城の願いを込めた囁きが、わたしの心の奥深くまで染み渡った。彼の唇が再びわたしの首筋を求めてくる。今度はより情熱的に、より深く。
「あっ…」
最初の甘噬がわたしの唇から小さな驚きを引き出した。結城はその反応に満足したように微笑み、今度は耳の下の敏感な場所に歯を立てる。
「んっ…ああ…」
わたしの声が少しずつ大きくなっていく。結城はその音色を愛でるように、肩の線に沿って唇を這わせた。そして愛おしそうに、また一口。
「はぁ…あっ…」
「そう、その声だ」
結城の賞賛の言葉がわたしの羞恥心と快感を同時に刺激する。鎖骨の谷間に、彼の歯がそっと食い込んだ。
「あぁっ…んっ…」
わたしの声はもはや抑えることができない。結城はわたしの腕を優しく持ち上げ、内側の柔らかな肌に唇を寄せた。そこに刻まれる愛の歯形。
「ああっ…だめ…声が…」
「いいんだ、全部聞かせて」
結城の許可に安堵したわたしは、もう声を隠そうとしなかった。肩から腕へ、腕から手首へ。彼の愛情がわたしの肌に無数の花を咲かせていく。
「んあっ…あっ…ああっ…」
それぞれの甘噬に、それぞれ違う音色で応えるわたし。結城はその交響曲に酔いしれながら、愛おしい恋人であるわたしの身体に、彼だけの庭園を作り上げていった。
休日の甘い午後の光の中で、愛の歌声が静かに響き続けていた。
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