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入学編
第二十二話 魔法実技試験(前編)
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―――数か月後。
「おい、聞いたか?ゴレアナのやつ死んだらしいな」
ギルドで依頼の確認をしているとそんな話が耳に入ってくる。
ギルド長の依頼はヨハン達の経験不足を補う為にあれから徐々にその内容を上げていった。
内容としては、低ランクの魔物の討伐から始まり、裏稼業を生業としている連中の壊滅、貴族の子女の誘拐の解決など表に出せないものを中心として行われていた。
表向きはEランクのパーティーだがギルド内では既にBランク相当で扱われているのは内部だけの秘匿情報。学生パーティーとしては異例の評価を得ており、そんな中、通常の依頼を行おうと掲示板に来ていたところで先程の話を耳にした。
「ああ、ジャイアントベアの討伐依頼に失敗して死んだらしいな」
「だが、あいつはもうすぐÅランクになるって息巻いていたぞ?今更ジャイアントベアなんかに?」
「そうやって何か調子に乗って失敗したんじゃないか?俺たちも気を付けようぜ」
ギルド内で冒険者同士が知り合いの冒険者の近況について話しているのだった。
「なぁおい、今の話。俺達が初めてギルドに来た時のあいつのことじゃないか?」
レインがひそひそと話し掛けて来る。
「そうなのかな?」
ヨハンは初めてギルドを訪れた時に受付で絡まれた男のことを思い出す。
「でも僕たちあの人の名前を知らないよ?」
「ジャイアントベアの依頼って言っていたじゃねぇか。ほら依頼板を見てみろ、まだ依頼達成されてないし、依頼受諾パーティーも0になっている。ほら」
レインが今現在見ている依頼書の掲示板を指差した。
依頼書で複数が受けられる物には『現在依頼受諾中』の件数が記載されるようになっている。
例えば、同じ依頼に対して2つのパーティーと単独で1人が受けていたとしても依頼書には3件と表示される。その依頼書の件数が現在0で表示されていたのであった。
「そっか、じゃああの人死んじゃったのか」
「みたいだな。あれだけ偉そうに言っていたのにな」
「それが冒険者の現実なんじゃないの」
「冒険者は常に死と隣り合わせなのですわね」
レインとヨハンが話しているところにモニカとエレナが話に入ってくる。
ほとんど面識もなかったが、少しばかりとはいえ関わりがあった人の死の報告を間接的に聞いたヨハン達は冒険者が直面する現実に対して身が引き締まる思いを抱かされた。
―――数日後。
学生生活にももう慣れた四人は寮の談話室に集まっていた。
「なぁ、授業面白いか?」とレインがヨハンに質問する。
「うん、面白いよ。僕はお父さんとお母さんから剣と魔法については色々教わってきてけれど、歴史とかは全く知らなかったしね。そりゃあ前みたいな野外授業みたいなのがあればっもっといいけど、知らないことをいっぱい知ることができるのはそれはそれで楽しいな。実技授業の方は少し退屈だけれどね」
「変わってるなお前」レインが呆れた様子で返す。
「ああいった授業は一年生の間はそれほど多くはありませんわ。なにせ命がかかっているのですから。それに、学外に関しましてはギルドの依頼で十分ではありませんか」
「それもそうだね」
「そういえば今度魔法の実技試験があるって先生言っていたわね」
ふとモニカが魔法授業の最後に教師が言っていたことを思い出す。
「ああ、確かそんなことを言っていたな」
「どんなことをするんだろう?」
「恐らく、例年通りでしたら対人での魔法使用に関してのはずですわ」
「そっか。(対人かぁ……うーん、どうしようかな)」
試験の内容が対人と聞いて悩む。
迎えた魔法実技試験当日。
魔法の実技試験を行うために生徒達は学内に設けられている闘技場に集まっていた。
闘技場は強力な結界が張られており、戦闘訓練や武術大会が時折開催されている。
「さて、これより魔法の実技試験を始める」
学生達の前で話しているのは教頭のシェバンニ。周りには魔法授業の教師が数人立っていた。
「試験を始める前に注意事項の説明をするが、よく聞いておくように」
「はぁ?んな説明はいいから早くやろうぜ」
そう言っているのはゴンザだった。
「ゴンザ、聞こえていますよ。自信があるのはいいことですが、魔法は魔物を狩るのに効率的ではあります。ですが、使い方を誤れば人の命を易々と奪う事もできますし奪われることもあります。そのため、こういった形ででも今自分がどれくらいの魔法を使用でき、魔法に対しての抵抗を見せることができるかが大事になります。中には魔法を使用する魔物もいますし、山賊や犯罪者にも魔法を使う者が多くいます。我彼の力の差を見極めなければ己の命を危めることにもなりますよ」
「ちぇっ。へいへい、わかりましたわかりました」
ゴンザがしぶしぶ納得する。
「はい、では、説明しますよ。今回の実技試験では一対一の魔法の戦闘を行ってもらいます。試験ですので、各自には魔法障壁をかけて魔法に対する抵抗力を上げた状態で臨みます。ですが、必ずしも全てを防ぎきれるものではなく、衝撃はありますし、仮に魔法障壁以上の威力があれば障壁が破壊され傷も負います」
シェバンニが生徒たちに安全性を話すと安堵が広がるのだが、続けて危険性を伝えると少しばかり困惑も見られた。
「そんなに心配しなくとも、さすがに君たちの魔法では障壁を突破して命を落とすようなことはありませんし、それに私達が施す障壁を破壊できる者はいませんよ。ですので、思う存分思いっきりして頂いてかまいませんが、それでも気は付けるように。ちなみにですが、殴るなどの物理的な攻撃手段を用いることは不可としますが、土魔法を用いた上での物理攻撃は可とします。それでは日頃の成果を存分に発揮してください。では名前を呼ばれたものから順番に行ないます」
「おい、聞いたか?ゴレアナのやつ死んだらしいな」
ギルドで依頼の確認をしているとそんな話が耳に入ってくる。
ギルド長の依頼はヨハン達の経験不足を補う為にあれから徐々にその内容を上げていった。
内容としては、低ランクの魔物の討伐から始まり、裏稼業を生業としている連中の壊滅、貴族の子女の誘拐の解決など表に出せないものを中心として行われていた。
表向きはEランクのパーティーだがギルド内では既にBランク相当で扱われているのは内部だけの秘匿情報。学生パーティーとしては異例の評価を得ており、そんな中、通常の依頼を行おうと掲示板に来ていたところで先程の話を耳にした。
「ああ、ジャイアントベアの討伐依頼に失敗して死んだらしいな」
「だが、あいつはもうすぐÅランクになるって息巻いていたぞ?今更ジャイアントベアなんかに?」
「そうやって何か調子に乗って失敗したんじゃないか?俺たちも気を付けようぜ」
ギルド内で冒険者同士が知り合いの冒険者の近況について話しているのだった。
「なぁおい、今の話。俺達が初めてギルドに来た時のあいつのことじゃないか?」
レインがひそひそと話し掛けて来る。
「そうなのかな?」
ヨハンは初めてギルドを訪れた時に受付で絡まれた男のことを思い出す。
「でも僕たちあの人の名前を知らないよ?」
「ジャイアントベアの依頼って言っていたじゃねぇか。ほら依頼板を見てみろ、まだ依頼達成されてないし、依頼受諾パーティーも0になっている。ほら」
レインが今現在見ている依頼書の掲示板を指差した。
依頼書で複数が受けられる物には『現在依頼受諾中』の件数が記載されるようになっている。
例えば、同じ依頼に対して2つのパーティーと単独で1人が受けていたとしても依頼書には3件と表示される。その依頼書の件数が現在0で表示されていたのであった。
「そっか、じゃああの人死んじゃったのか」
「みたいだな。あれだけ偉そうに言っていたのにな」
「それが冒険者の現実なんじゃないの」
「冒険者は常に死と隣り合わせなのですわね」
レインとヨハンが話しているところにモニカとエレナが話に入ってくる。
ほとんど面識もなかったが、少しばかりとはいえ関わりがあった人の死の報告を間接的に聞いたヨハン達は冒険者が直面する現実に対して身が引き締まる思いを抱かされた。
―――数日後。
学生生活にももう慣れた四人は寮の談話室に集まっていた。
「なぁ、授業面白いか?」とレインがヨハンに質問する。
「うん、面白いよ。僕はお父さんとお母さんから剣と魔法については色々教わってきてけれど、歴史とかは全く知らなかったしね。そりゃあ前みたいな野外授業みたいなのがあればっもっといいけど、知らないことをいっぱい知ることができるのはそれはそれで楽しいな。実技授業の方は少し退屈だけれどね」
「変わってるなお前」レインが呆れた様子で返す。
「ああいった授業は一年生の間はそれほど多くはありませんわ。なにせ命がかかっているのですから。それに、学外に関しましてはギルドの依頼で十分ではありませんか」
「それもそうだね」
「そういえば今度魔法の実技試験があるって先生言っていたわね」
ふとモニカが魔法授業の最後に教師が言っていたことを思い出す。
「ああ、確かそんなことを言っていたな」
「どんなことをするんだろう?」
「恐らく、例年通りでしたら対人での魔法使用に関してのはずですわ」
「そっか。(対人かぁ……うーん、どうしようかな)」
試験の内容が対人と聞いて悩む。
迎えた魔法実技試験当日。
魔法の実技試験を行うために生徒達は学内に設けられている闘技場に集まっていた。
闘技場は強力な結界が張られており、戦闘訓練や武術大会が時折開催されている。
「さて、これより魔法の実技試験を始める」
学生達の前で話しているのは教頭のシェバンニ。周りには魔法授業の教師が数人立っていた。
「試験を始める前に注意事項の説明をするが、よく聞いておくように」
「はぁ?んな説明はいいから早くやろうぜ」
そう言っているのはゴンザだった。
「ゴンザ、聞こえていますよ。自信があるのはいいことですが、魔法は魔物を狩るのに効率的ではあります。ですが、使い方を誤れば人の命を易々と奪う事もできますし奪われることもあります。そのため、こういった形ででも今自分がどれくらいの魔法を使用でき、魔法に対しての抵抗を見せることができるかが大事になります。中には魔法を使用する魔物もいますし、山賊や犯罪者にも魔法を使う者が多くいます。我彼の力の差を見極めなければ己の命を危めることにもなりますよ」
「ちぇっ。へいへい、わかりましたわかりました」
ゴンザがしぶしぶ納得する。
「はい、では、説明しますよ。今回の実技試験では一対一の魔法の戦闘を行ってもらいます。試験ですので、各自には魔法障壁をかけて魔法に対する抵抗力を上げた状態で臨みます。ですが、必ずしも全てを防ぎきれるものではなく、衝撃はありますし、仮に魔法障壁以上の威力があれば障壁が破壊され傷も負います」
シェバンニが生徒たちに安全性を話すと安堵が広がるのだが、続けて危険性を伝えると少しばかり困惑も見られた。
「そんなに心配しなくとも、さすがに君たちの魔法では障壁を突破して命を落とすようなことはありませんし、それに私達が施す障壁を破壊できる者はいませんよ。ですので、思う存分思いっきりして頂いてかまいませんが、それでも気は付けるように。ちなみにですが、殴るなどの物理的な攻撃手段を用いることは不可としますが、土魔法を用いた上での物理攻撃は可とします。それでは日頃の成果を存分に発揮してください。では名前を呼ばれたものから順番に行ないます」
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