S級冒険者の子どもが進む道

干支猫

文字の大きさ
547 / 724
紡がれる星々

第五百四十六話 スフィンクスの帰還

しおりを挟む

「やっと帰ってきたな」
「ああ」
「女は怖いな」
「ああ」

王都を一望出来る草原に立つアトムとラウル。その顔は満足感と開放感に満たされていた。

「ほんにどうしようもない弟子じゃ」
「ならばさっさと帰れッ!」

後ろから聞こえるいがみ合う声。毎度のこと。パバールとシルビア、師弟関係にあるそれは道中何度も魔法合戦を繰り広げていた。

「まぁまぁ、もう王都はすぐそこじゃ」

宥めるガルドフ。これもいつもの役割。
加えて心労の原因にはもう一組の存在。

「はいあたしの勝ちぃ」
「私の勝ちに決まってるじゃない!」

普段はまるで姉妹かのような仲の良さを発揮しているクーナとエリザ。しかし事あるごとに喧嘩をしている。今現在は手に入れた魔石の権利がどちらにあるのかという主張。

「「はぁ」」

溜息を吐くアトムとラウル。ようやくこれから開放されるのかと。

「あっ! もう王都が見えるじゃない!」

軽やかにアトムの背に乗るクーナ。手を額に当て王都を眺めた。

「おい、降りろっての」
「なによそんなこと言いながらアトムもあたしの胸の感触しっかりと確認してるんでしょ?」
「そりゃあそうだけどさ……。だいたい、そもそもお前の胸ってそんなにねぇじゃねぇかよ」
「なにそれひっどぉい。泣くわよ?」
「おぅ泣け泣け――っ!」

適当にいなしていたらそれどころじゃないのは得る殺気。

「ねぇアトム? 何の感触ですって?」
「ちょ、ちょっと待てエリザ! 俺じゃねぇだろ俺じゃ!」
「わっと」

視界に飛び込んで来る水の塊を慌てて横っ飛びで回避する。アトムがいた場所、バンッと土を抉るエリザの水撃魔法。

「はぁ。なぁいつまでやっているのだ。さっさと行こうぜ」

ラウルは呆れつつ、なるべく干渉しないようにさっさと歩いていった。
そうして程なくして着いたシグラム王都の外壁の外で入都手続きを行う。

「では参ろうか」
「あー、ガルドフ、俺は後で行っていいか?」

外壁を潜り抜けた先で立ち止まるアトム。

「ん? どうかしたかの?」
「別に今日は報告だけだろ?」
「確かにそうじゃな?」
「もしかして、どこか行くの?」
「ああ。せっかく帰って来たんだ。ちょっと、飲んでくらぁ」

問い掛けるクーナに対してくいッと口元に器を運ぶ仕草をするアトム。旅の疲れを癒すには酒が一番。

「まったく、ほどほどにしてよね」
「ああ。すまねぇなエリザ。じゃあまた後でな」

そうしてアトムは手をひらひらと振ってすぐさま雑踏の中に姿へと消していった。

「本当、いつまでも自由だなあいつは」

重大な案件が後に控えているというのに普段と変わらないアトムに呆れるラウル。

「だからこそ、なのよ」
「ああ。あやつの気持ちもわからないでもない」

エリザとガルドフ。共に付き合いが最も長い二人が知るアトムの心情。
とはいえ、ラウルにしても付き合いの長さはそれなりにある。

「……なるほどね。そういうことか」

姿を消した方向を見やりながらアトムの性格を考える。
二人の言葉から連想するのは、同じようにして付き合いの長いローファスへ向けるアトムの気持ち。魔王の呪い、その真相に迫れるかもしれないと思うと、昂る気持ちを抑えきれなかった。一人になって鎮めたかったのだと理解する。

(あの時は結局わからずじまいだったものな)

かつてエルフの里を訪れた時のこと。その世界樹。最後の活動にして最大の謎に迫れるのだから。それがまさかローファスが関係しているともなれば。

「それにラウル、あなたも妹のことは気になるでしょ?」
「そうだな。少しはな」
「少し、なのね」
「ああ。ヨハンに預けた以上、心配はしていない」
「あら嬉しいこと言ってくれるわね。でもまぁせっかくだし、顔を見せに行ってあげたら?」
「それもそうだな。ではそうさせてもらおう」
「しかし全員で行く必要もあるまい。ワシもしばらく別に行動させてもらう」

周囲を見回しながら歩き始めるシルビア。その後ろをピタリと歩くパバール。

「……なにをしておる?」
「いやなに、案内してもらおうかと思っての、馬鹿弟子。流石に年月が経つと多くが変わっておる」
「ちっ、調子に乗りおってからにババアが」
「あ?」
「なんでもないわ」

お願いだから問題だけは起こさないでとエリザは内心で祈りながらいがみ合う二人の姿を苦笑いして見送った。

「お主はどうするエリザ?」
「そうね、報告も兼ねてお父様のところに行かせてもらうわ」
「じゃああたしも一緒に行く!」
「ではローファスへの報告は儂だけで行くとする。遅くとも夜にはそれぞれ王宮に赴いてくれ。それまでに話はまとめておく」

そうしてガルドフ一人だけが王宮へと向かっていった。





「しっかし王都も変わんねぇな。ま、今回は期間もそんなに空いてないから当たり前か。 さぁて、どこで飲もうか」

アトムが歩いているのは東の商業地区。多くの冒険者達が行き交うのは、居酒屋を中心とした飲食店が多く並んでいる区域。

「にしても懐かしいなこの辺りは」

もう二十年程昔、最盛期の現役時代。依頼を終えてはよくこの辺りで飲んでいた。

『今日は俺の活躍のおかげだな。ばっちり決まったぜ』
『何を言っておる。俺に決まってるだろう。最後のトドメは俺だったんだからな』
『いいやローファス。あれは俺のお膳立てがあったおかげだろうがよ。てめぇ一人じゃ無理だっての』
『なんだと? なら俺が一人で十分だったってことを証明するためにそろそろ決着を付けようか?』
『いいぜ。っつってもいまのところ俺の全勝だけどな』
『もうっ、二人ともやめてよこんなところで』
『おっ? 今日もアトムとローファスの奴がやるってよ! みんな見に来いよ!』

遠い記憶の中の回想。毎日わいわい楽しく飲み歩いていた時のこと。

「ガンテツの野郎まだ店開けてるかな? 今度見に行ってやろう。あれ? ここは確か……――」

ふと足を止め見上げる一件の店。他の店舗とは異なり、落ち着いた雰囲気の店。

「そっか、確かここだったな、ヨハンとニーナちゃんの話をしたのは」

ぼんやりとしか思い出せない当時のサシ呑み。

「あとはリシュエルのやつがいれば最後の全員が揃うんだけどな」

エルフの里襲撃事件で里を救うために奔走したアトム達スフィンクス。それに加えてラウルとリシュエルの主だった最上級の戦闘力を持つ人物。それ以外、他にもシェバンニやカトレア卿など多くの関係者の協力の下にそれらが未然に防がれている。

「今頃なにしてんだか」

願わくばこのまま当分会わなくても良いと考えていた。そうでなければ話が一層にややこしくなる。

「ここにするか」

そうしてドアを開けようとしたのだが、ドアの方から先に開かれた。

しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

処理中です...