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第一章:生活基盤を整えます
幕間―吾輩は猫ではないのニャ―※
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吾輩は猫ではないのニャ。
吾輩は霊猫族という強力な魔獣の幼体であって、決してそこらの愛玩獣(ペット)の家猫ではないのニャ。
今はまだ、100歳にも成らない幼体故に、このような可愛い姿をさらし、満足に餌をとれない日もあったため痩せこけているかもしれニャイが。しかし、長じれば、輝かんばかりに真っ白な毛皮の、しなやかにして優美な姿の大型獣となり、人など到底及ばぬ知性をもちながら、ドラゴンにすら匹敵する戦闘力を持つ、上位魔獣になるのニャ。
しかし、吾輩を騙して従えたこの小娘は、そこを理解していニャいので、今日も寝床で吾輩の喉をゴロゴロさせようと撫でまわすのニャ。あっちではすでに飼い犬と成り下がった神狼族の子狼がガツガツと魚の骨のせんべいを齧っている。
高貴な吾輩ほどではニャくても、あいつもそれニャりに上位魔獣の幼体だったはずだが、あいつはもうすでに犬畜生ニャ。
すっかり毛皮もサラッサラに洗われて、ご主人に撫でられて腹を出す座敷犬に成り下がっているニャ。
…かという吾輩の毛皮もベルベッドの様に艶めいてブラッシングされているニョだが…
そうやって、一緒に囚われ、従属させられた子犬を哀れに思っていたが、小娘はしつこく吾輩を構おうとする。
「マーリン、ゴロゴロ~」
この人間風情が…。可愛らしい吾輩に触れたいと思う気持ちはわかるが、図に乗るニャ。
ペットを見るような目を向けながら、気安く吾輩の毛皮をなでるご主人の手をビシッとパンチすると、ご主人はおもむろに干し魚の切り身を取り出した。
『ニャッ!?』
「マーリン、ゴロゴロは~?」
くぅっ、この小娘……!!
『ゴロゴロゴロゴロ…ンにゃぁ~ん』
吾輩は、目の前でチラチラと干し魚を左右に振られ、即座に恭順の意を示した。
仕方ないのニャ。吾輩はまだ幼体なので、成獣となるには栄養が必要なのニャ。
決してご主人が出してくる食事の栄養価が高くて旨すぎて、逆らえなくなっているわけじゃないのニャ!
タロウ、こっちを見て『へッ』とか鼻で笑うんじゃないニャ!
速攻で従属を受け入れたお前とは違う、吾輩は誇り高き霊猫族が末裔なのニャ!…と言いながら、
しかし、この切り身は絶品なのニャ………。
などと思わず、吾輩の思考はこの切り身の美味さに囚われてしまう。
この美味さは罪なのにゃ……。
思わずうっとりと味わってしまうと、ニャンかこのままでもいいかニャ…と思ってしまうわけで。
「…ウニャウニャ言いながら食べてる…。やだ、ウケる」
ご主人が『本当に残念な奴…』という目で我を見ていても、気にならない位、吾輩は餌付けされつつあったのニャ。
1か月ほど前、吾輩は森ゴブリンの群れに襲われる冒険者の一行を、木の上から見ていたニャ。
あの冒険者たちは異国出身のためか獣性も低く、それニャりの腕もあったと驕っていたニョだろう。元の出身地では、通常のゴブリンどもニャら蹴散らす程度の実力はあったようだが、この精霊の森周辺のモンスターは、そこらの通常種の様な姿を持ちながら、異常に強力なモンスターと成り上がることを知らニャかった様だったのニャ。愚かな奴らニャ。
奴らは森ゴブリンと通常のゴブリンとの違いに気づかず、討伐しようとしていたようだったが返り討ちにあい、女は種付けされて、男どもは喰われて全滅していったニャ。まあ、女もその後他の冒険者どもに発見されてどこかへ連れていかれたようニャのだが。……人間風情にニャンとかできる場所じゃないのニャ。
このあたりは、異常に魔素が濃く、精霊たちが密集して存在するため、精霊の森と呼ばれているニャ。そして、魔素を多く含んだ森には、それらを好む魔物たちも当然魅かれ、多くの魔獣が集まり、一種異様な生態系を織りニャしているのニャ。その中で、濃い魔素を取り込んで、より弱い魔物たちを吸収して成り上がった強力な魔物たちが、更なる弱肉強食の世界を繰り広げているニャ。
吾輩は、そこにいつの間にか幼体の霊猫族として存在していたのニャ。
というのも、吾輩の親は少しの間一緒にいたが、我々の種族は番には執着するものの、子育てにはそれ程熱心ではニャいので、吾輩が獲物を捕れる様になると、すぐにどこかへ移動していったニャ。
その後、吾輩は近場の獲物を狩りながら100年程過ごしていたのであるが、時々人里近くまで下りていき、人間や森の知性の高い存在などから様々な情報を得ては、知的好奇心を満たしていったのニャ。吾輩の一族は、孤高を好む反面、好奇心も強いので、そういう存在も珍しくニャい。
そこで吾輩は、近頃魔物たちの間で噂される、森の中での異変を知ったのニャ。
“最近、森の奥にあるという、精霊使いの家の方で急激に魔素が濃くなってきているらしい”
そんニャ話を耳して、吾輩はその地が無性に気になり、行ってみることにしたのニャ。
吾輩の、知りたいと思うと追及したくなる気質は、霊猫族特有のものニャので、仕方ニャい。その知的好奇心の赴くままに行動して、何度も危険な目にもあったのニャが、それでも知りたいと思ってしまったのニャ。この気質は、これまでも多くの同族の命を奪っていったとも聞いているが、これも一族の抱える業というモノなのにゃ。
そして、ようやく『精霊の友』とも言われた精霊使いの家を探し出したのニャ。
この精霊使いは、かつて300年程前だったかに、とある国屈指の強力な精霊魔法使いだったそうニャのだが、人間の世界に嫌気がさして、精霊たちと共に過ごすことを選び、ここで隠遁していたらしい。しかし、世捨て人となってもしがらみは振り払えず、その時代に起きた戦乱に巻き込まれて帰らなくなったとも聞いたニャ。その後、精霊がこの家を守っていたため、精霊使いが残した希少な蔵書やアイテムやレシピを目当てに人間どもが家を探そうとしても見つからなかったとか…。
まあ、吾輩は、人間どもなんかとはオツムの出来も魔力も察知能力も桁違いなので、見つける位、余裕だったのニャが。ニョホホw。
しかし、この辺りのジャイアントマンティスやらレアマッドベアーなどに追い回されたり、食料となる獲物が少なかったこともあり、ちょっと疲労していたのは認めるニャ…。
その頃、あの神狼族の幼犬とも出会ったのニャ。…あいつは、吾輩よりも頭が働かない分鼻が利くので、魔素が濃い部分を嗅いで辿って来たら、ここに到達したという出鱈目加減だったようニャのだが…何か納得いかないニャ。
そして、精霊の家近くで出会い、10m程距離が離れた状態でお互いの存在を認め、バチバチと視線を戦わせていたニャ。その時、ふと、空が陰ったので同時に二人で上空を見上げると、同じく魔素に惹きつけられたのか、緑色のドラゴンが家を襲おうと滑空していたのニャ。
『『っ!!』』
吾輩と神狼族の幼犬は、同時にその場から飛び退り、身を隠したニャ。…すると、ドラゴンが家を目掛けてドラゴンブレスを吐こうと、口を開けて口腔内に魔力を溜めていると……
『シュパッ』
光線のようなものが空を切り裂き、ドラゴンの急所を貫いたニャ!
そして、空中で即死したドラゴンは、数秒程滞空した後…
『ドゴォーーンッ!!』
と、精霊の家の庭に落下したニャ。
吾輩と神狼族の幼犬は、精霊により絶命したドラゴンを見ながら、お互いに目を見合わせブルブルと震えていたニャ。
その後、ローブ姿のご主人を目にしたわけニャのだが…。その存在に、我々はその目を疑ったニャ。
…というのも、この辺りの人間種は、いわゆる獣人と呼ばれ、上半身と尻尾が獣の姿であるとか、耳と尻尾にのみ種族的特徴を残す者など、その在りようは様々とはいえ、一様に動物的な特徴を持っている。そして、それらの特徴が少なければ少ないほど、魔力に優れ美しいとの評価を得るニャ。
もちろん、この島国から離れた中央大陸には獣性の少ない全人種の国もあるニョだが、そう言った人種は魔力も少なく毛髪や瞳の色素も薄いのが特徴ニャ。そして、獣人たちは強さを貴ぶので、全人種については顔かたち云々よりも、その魔力の濃さに魅かれやすい性質があるのニャ。
その辺は我々と近い価値観を持っているようニャ。
家から出て来たご主人は、どこにも種族的特徴がみられず、ローブから出ている肌は白いが、黄みがかっていて、体毛も薄くツルリとした顔や手足をしている。頭の上にあるべき耳も、尻にあるべき尻尾もない。そして、黒い瞳と背中まである長い黒髪や、目鼻立ちがつつましやかな顔貌も珍しい。それなりにメスらしい体つきには見えるが、15~16歳程度の小娘かニャ? なれど、ここらの人間的美観では、かなり美しい存在であるとされるだろうニャ。
その上、吾輩たちの価値観で見ても、なんと言ってもその濃厚な魔素というか、魔力。 …魔素をため込み力として使用できる状態となったものを魔力というので、まあ、同じようなものニャんだが。
…見ているだけでよだれが出そうな位のごちそうニャ。
…風に乗って、濃厚な魔力のいーい匂いがするのニャ~…。 なんか胸も熱くなってくる匂いニャ~…。
無性に吾輩の本能をズクズクと刺激してくる匂いがする。…神狼族の幼犬も同じような意見ニャのか、吾輩より鋭い嗅覚が刺激されたのか、静かにダラダラとよだれをこぼしニャがら食い入るように見ているのだが。
……ハァハァ言ってるのは、食欲だけかニャ? はて?
…しかし、人間の周囲にはシャレにならない位濃厚な精霊の気配も感じるので、おいそれと手は出せないのニャが。
どんな魔獣であろうと、精霊に敵視されることは死を意味する程ヤバいのニャ。
精霊の篤い加護があったればこそ、人間がこんな魔獣が跋扈する森の奥でのうのうと生きていられるのニャ。
また、ドラゴンが落下した跡に放り込まれたキング種のピンクスライムが、何故か本気で庭を守っており、余計に近づくことなどできなくなったニャ。
スライムといえば、低級モンスターの代表格と言われるが、上位種のスライムは知性もあり無限に増え続けるスキルを有するモノや、何でも溶かす酸を持つ獰猛なモノや、動物・魔物・魔獣関係なく捉えては媚薬漬けにして捕食する種族もおり、ある意味そこらの上位魔獣以上に厄介だったりするのニャ。しかも、このピンクスライムは多分、ネームド…。とある国の貴族たちを悉く媚薬漬けの中毒者に仕立て上げながらも一気に捕食しないでじわじわ精気を吸い上げて、長年君臨したといわれる伝説級のスライムだったはずニャ……。100年程前にどこかの魔法使いに討伐されたときいていたのニャが、こんなところで生き残って……。
…この家は、なんて恐ろしいお庭番を雇っているのニャ!? 精霊だけでもおなか一杯ニャ!
その後、人間が家に引っ込んでからもしばらく家の近くをウロウロとうろついて、人間が庭に出てくるのを待っていたり、家の周囲に時々ふぁ~っと風に乗って漂う濃厚な魔素を取り込んだりして過ごしたニャ。
なんか、ドキドキと動悸が激しくなって落ち着かなくなるのは何故かニャ?…とも思ったが、食欲をそそる匂いだと思って気にしなくなったニャ。
人間が森の池で魚を網で捕っているときは、普段は池の主が岸に立つ魔獣ですら陸に乗り上げて捕食するのに、あの人間が無邪気に網を投げているのには本気でびっくりしたニャ。まあ、精霊の気配を察知して、人間の近くには寄ってこなかったんだけどにゃ。あれがなかったら、入れ食いだっただろうに。…その代わり、フォレストワームが池の真ん中に落とされて、喜んで捕食していたわけにゃんだが。
しかしあの人間、なんだって池なんかに行ったニャ? 庭の恵みだけで、飢えることなどなかっただろうに。
時々よくわからない行動に出る所を、精霊に好まれているようにも感じるニョだが。まあ、変り者なのかもしれないニャ。 巷で言う『精霊の愛し子』という存在は、聖女であったり勇者であったり、存在が稀であるが、それだけに浮世離れした育ち方をするものなのかもしれないニャ。
吾輩は、そう結論づけて、いつかこの人間を捕食するチャンスができるかもしれないとの期待をもって、家の敷地の外から見守っていた訳だったのニャが…
家の中から魚を調理する芳しい匂いが流れて来た時、罠にかけられたことにも気づかず敷地に侵入して玄関まで近寄ったのが運の尽きだったニャ。
あれこれあった結果、吾輩マーリンと神狼族の幼犬・タロウは、ご主人と精霊のタッグに隷属化されてしまったのニャ。
…魚なんて喰えたの、30年ぶり位だったので、仕方なかったのニャ……うまかったのニャ……
そして、現在。吾輩とタロウは夜な夜なご主人と同じ寝台で眠っている。…というか、我々はそんなに眠りを必要とする種族ではないのニャが、ご主人にスリスリされると漂ってくる魔力の匂いには、本能が逆らえないのニャ。
今夜も吾輩は、眠っているご主人のローブの中に入り込み、体中ペロペロと舐め上げては、ご主人の匂いが濃厚に漂う空気に酔っている。ローブの中は裸なので、どこを舐めても芳しい。
「ンっ……あ…」
ご主人の滑らかな項や耳の裏などをやんわり刺激すると、より濃厚な匂いが立ち込める。そして、クンクン匂いを満喫しながら、舌を這わせると、ご主人のあえかな声が洩れる。
あんまり激しくやると、ご主人が起きてしまうので、ゆっくりネロリと舐るのがコツなのニャ。
「はっ……あン……」
くちゅ。くちゅ。
時々、声を上げて開いた口の中の唾液を舐めると、濃厚な甘い魔力の味がして、夢中になって舐めてしまう。そして、時々上あごのあたりをペロペロ舐めると
「あんっ!」
と、声を上げて、一際濃い魔力が放出される。一方、下の方ではタロウがご主人の股の間に頭を突っ込んで蜜をペロペロ舐める。その刺激でもご主人は
「んっ…はっ…ンっ」
と、声を上げながら腰を浮かす。
そっちはあんまりやると起きるから、ほどほどにするニャ!
吾輩は、ひそやかな声でタロウを注意するのだが、このバカ犬は必死にペロペロしているので聞いちゃいニャい。
「あんっ…んっ…」
ぬるぅーりとご主人の剥き出しの陰核を舐め上げて、漏れ出る蜜を啜っては、みだらな声を上げさせる。タロウはご主人の蜜をすすることに夢中になってるので、吾輩は、時々凝り固まった主人の胸の先っぽにチュウチュウと吸い付いては、そこからも漏れ出る魔力を吸い上げる。
「やんっ。何?…あっ…あんっ…?」
脇とか、喉のあたりとかも舐め上げると魔力が漏れ出るので、チロチロと舐め出すと止まらない。
「ふっ…うんっ……あン…」
切なそうに眉をひそめてブルブルと震え、鼻にかかった高い声を上げているんニャが……
…ご主人は、本当に起きていないのだろうか?
ここまで好き勝手に舐られて、魔力を吸われても起きないとか、生物として大丈夫かニャ?
というか、精霊が沈黙を守っていることにも、少し驚いているのニャ。
ひょっとして、精霊は……ご主人が明確に嫌がらなければ、案外性的な刺激は多めに見ている…というか、むしろ魔力を放出させるので、推奨しているのではないかと穿ってしまうニョだが。
…これは、もう少し様子を見る必要があると思われるニャ。
「ンあぁっっ!」
バカ犬がご主人の陰核に吸い付き、容赦なくベロベロと舐め上げたため、ご主人は全身をビクリと震わせて、声を上げた。
やりすぎニャ!! さすがに起きるニャ!!
吾輩とタロウは、急いでご主人のローブから出て眠ったふりをした。
「んっ……?」
その直後、ご主人はむくりと起き上がり、寝ぼけ眼で周囲を見回し、首を傾げた後で「パタリ」と再び横になった。ややすると、スースーと寝息が聞こえてくる…。
なんてチョロいのニャ? こいつ…ホント大丈夫ニャ?
吾輩はとタロウは、顔を見合わせて首を傾げる。
その後、それなりに魔力を吸収できた我々は今夜はここらで撤収し、ご主人の幸せそうな寝顔を覗いて、横向きで寝ているご主人の前後に丸くなって眠ることにした。
平和そうに眠っているご主人は、多分知らないニョだと思う。
ご主人のためを思って動いている精霊は、精霊独自の理で動いており、その利害が必ずしもご主人の意向に沿ったものとなるのかは不明であることを。
そして、真偽はともかく、獣人と言われるこの国の住民の祖先が、魔獣や神獣といった上位魔獣と魔力の強い人間種が交わったものであったと伝えられていることを。
吾輩は霊猫族という強力な魔獣の幼体であって、決してそこらの愛玩獣(ペット)の家猫ではないのニャ。
今はまだ、100歳にも成らない幼体故に、このような可愛い姿をさらし、満足に餌をとれない日もあったため痩せこけているかもしれニャイが。しかし、長じれば、輝かんばかりに真っ白な毛皮の、しなやかにして優美な姿の大型獣となり、人など到底及ばぬ知性をもちながら、ドラゴンにすら匹敵する戦闘力を持つ、上位魔獣になるのニャ。
しかし、吾輩を騙して従えたこの小娘は、そこを理解していニャいので、今日も寝床で吾輩の喉をゴロゴロさせようと撫でまわすのニャ。あっちではすでに飼い犬と成り下がった神狼族の子狼がガツガツと魚の骨のせんべいを齧っている。
高貴な吾輩ほどではニャくても、あいつもそれニャりに上位魔獣の幼体だったはずだが、あいつはもうすでに犬畜生ニャ。
すっかり毛皮もサラッサラに洗われて、ご主人に撫でられて腹を出す座敷犬に成り下がっているニャ。
…かという吾輩の毛皮もベルベッドの様に艶めいてブラッシングされているニョだが…
そうやって、一緒に囚われ、従属させられた子犬を哀れに思っていたが、小娘はしつこく吾輩を構おうとする。
「マーリン、ゴロゴロ~」
この人間風情が…。可愛らしい吾輩に触れたいと思う気持ちはわかるが、図に乗るニャ。
ペットを見るような目を向けながら、気安く吾輩の毛皮をなでるご主人の手をビシッとパンチすると、ご主人はおもむろに干し魚の切り身を取り出した。
『ニャッ!?』
「マーリン、ゴロゴロは~?」
くぅっ、この小娘……!!
『ゴロゴロゴロゴロ…ンにゃぁ~ん』
吾輩は、目の前でチラチラと干し魚を左右に振られ、即座に恭順の意を示した。
仕方ないのニャ。吾輩はまだ幼体なので、成獣となるには栄養が必要なのニャ。
決してご主人が出してくる食事の栄養価が高くて旨すぎて、逆らえなくなっているわけじゃないのニャ!
タロウ、こっちを見て『へッ』とか鼻で笑うんじゃないニャ!
速攻で従属を受け入れたお前とは違う、吾輩は誇り高き霊猫族が末裔なのニャ!…と言いながら、
しかし、この切り身は絶品なのニャ………。
などと思わず、吾輩の思考はこの切り身の美味さに囚われてしまう。
この美味さは罪なのにゃ……。
思わずうっとりと味わってしまうと、ニャンかこのままでもいいかニャ…と思ってしまうわけで。
「…ウニャウニャ言いながら食べてる…。やだ、ウケる」
ご主人が『本当に残念な奴…』という目で我を見ていても、気にならない位、吾輩は餌付けされつつあったのニャ。
1か月ほど前、吾輩は森ゴブリンの群れに襲われる冒険者の一行を、木の上から見ていたニャ。
あの冒険者たちは異国出身のためか獣性も低く、それニャりの腕もあったと驕っていたニョだろう。元の出身地では、通常のゴブリンどもニャら蹴散らす程度の実力はあったようだが、この精霊の森周辺のモンスターは、そこらの通常種の様な姿を持ちながら、異常に強力なモンスターと成り上がることを知らニャかった様だったのニャ。愚かな奴らニャ。
奴らは森ゴブリンと通常のゴブリンとの違いに気づかず、討伐しようとしていたようだったが返り討ちにあい、女は種付けされて、男どもは喰われて全滅していったニャ。まあ、女もその後他の冒険者どもに発見されてどこかへ連れていかれたようニャのだが。……人間風情にニャンとかできる場所じゃないのニャ。
このあたりは、異常に魔素が濃く、精霊たちが密集して存在するため、精霊の森と呼ばれているニャ。そして、魔素を多く含んだ森には、それらを好む魔物たちも当然魅かれ、多くの魔獣が集まり、一種異様な生態系を織りニャしているのニャ。その中で、濃い魔素を取り込んで、より弱い魔物たちを吸収して成り上がった強力な魔物たちが、更なる弱肉強食の世界を繰り広げているニャ。
吾輩は、そこにいつの間にか幼体の霊猫族として存在していたのニャ。
というのも、吾輩の親は少しの間一緒にいたが、我々の種族は番には執着するものの、子育てにはそれ程熱心ではニャいので、吾輩が獲物を捕れる様になると、すぐにどこかへ移動していったニャ。
その後、吾輩は近場の獲物を狩りながら100年程過ごしていたのであるが、時々人里近くまで下りていき、人間や森の知性の高い存在などから様々な情報を得ては、知的好奇心を満たしていったのニャ。吾輩の一族は、孤高を好む反面、好奇心も強いので、そういう存在も珍しくニャい。
そこで吾輩は、近頃魔物たちの間で噂される、森の中での異変を知ったのニャ。
“最近、森の奥にあるという、精霊使いの家の方で急激に魔素が濃くなってきているらしい”
そんニャ話を耳して、吾輩はその地が無性に気になり、行ってみることにしたのニャ。
吾輩の、知りたいと思うと追及したくなる気質は、霊猫族特有のものニャので、仕方ニャい。その知的好奇心の赴くままに行動して、何度も危険な目にもあったのニャが、それでも知りたいと思ってしまったのニャ。この気質は、これまでも多くの同族の命を奪っていったとも聞いているが、これも一族の抱える業というモノなのにゃ。
そして、ようやく『精霊の友』とも言われた精霊使いの家を探し出したのニャ。
この精霊使いは、かつて300年程前だったかに、とある国屈指の強力な精霊魔法使いだったそうニャのだが、人間の世界に嫌気がさして、精霊たちと共に過ごすことを選び、ここで隠遁していたらしい。しかし、世捨て人となってもしがらみは振り払えず、その時代に起きた戦乱に巻き込まれて帰らなくなったとも聞いたニャ。その後、精霊がこの家を守っていたため、精霊使いが残した希少な蔵書やアイテムやレシピを目当てに人間どもが家を探そうとしても見つからなかったとか…。
まあ、吾輩は、人間どもなんかとはオツムの出来も魔力も察知能力も桁違いなので、見つける位、余裕だったのニャが。ニョホホw。
しかし、この辺りのジャイアントマンティスやらレアマッドベアーなどに追い回されたり、食料となる獲物が少なかったこともあり、ちょっと疲労していたのは認めるニャ…。
その頃、あの神狼族の幼犬とも出会ったのニャ。…あいつは、吾輩よりも頭が働かない分鼻が利くので、魔素が濃い部分を嗅いで辿って来たら、ここに到達したという出鱈目加減だったようニャのだが…何か納得いかないニャ。
そして、精霊の家近くで出会い、10m程距離が離れた状態でお互いの存在を認め、バチバチと視線を戦わせていたニャ。その時、ふと、空が陰ったので同時に二人で上空を見上げると、同じく魔素に惹きつけられたのか、緑色のドラゴンが家を襲おうと滑空していたのニャ。
『『っ!!』』
吾輩と神狼族の幼犬は、同時にその場から飛び退り、身を隠したニャ。…すると、ドラゴンが家を目掛けてドラゴンブレスを吐こうと、口を開けて口腔内に魔力を溜めていると……
『シュパッ』
光線のようなものが空を切り裂き、ドラゴンの急所を貫いたニャ!
そして、空中で即死したドラゴンは、数秒程滞空した後…
『ドゴォーーンッ!!』
と、精霊の家の庭に落下したニャ。
吾輩と神狼族の幼犬は、精霊により絶命したドラゴンを見ながら、お互いに目を見合わせブルブルと震えていたニャ。
その後、ローブ姿のご主人を目にしたわけニャのだが…。その存在に、我々はその目を疑ったニャ。
…というのも、この辺りの人間種は、いわゆる獣人と呼ばれ、上半身と尻尾が獣の姿であるとか、耳と尻尾にのみ種族的特徴を残す者など、その在りようは様々とはいえ、一様に動物的な特徴を持っている。そして、それらの特徴が少なければ少ないほど、魔力に優れ美しいとの評価を得るニャ。
もちろん、この島国から離れた中央大陸には獣性の少ない全人種の国もあるニョだが、そう言った人種は魔力も少なく毛髪や瞳の色素も薄いのが特徴ニャ。そして、獣人たちは強さを貴ぶので、全人種については顔かたち云々よりも、その魔力の濃さに魅かれやすい性質があるのニャ。
その辺は我々と近い価値観を持っているようニャ。
家から出て来たご主人は、どこにも種族的特徴がみられず、ローブから出ている肌は白いが、黄みがかっていて、体毛も薄くツルリとした顔や手足をしている。頭の上にあるべき耳も、尻にあるべき尻尾もない。そして、黒い瞳と背中まである長い黒髪や、目鼻立ちがつつましやかな顔貌も珍しい。それなりにメスらしい体つきには見えるが、15~16歳程度の小娘かニャ? なれど、ここらの人間的美観では、かなり美しい存在であるとされるだろうニャ。
その上、吾輩たちの価値観で見ても、なんと言ってもその濃厚な魔素というか、魔力。 …魔素をため込み力として使用できる状態となったものを魔力というので、まあ、同じようなものニャんだが。
…見ているだけでよだれが出そうな位のごちそうニャ。
…風に乗って、濃厚な魔力のいーい匂いがするのニャ~…。 なんか胸も熱くなってくる匂いニャ~…。
無性に吾輩の本能をズクズクと刺激してくる匂いがする。…神狼族の幼犬も同じような意見ニャのか、吾輩より鋭い嗅覚が刺激されたのか、静かにダラダラとよだれをこぼしニャがら食い入るように見ているのだが。
……ハァハァ言ってるのは、食欲だけかニャ? はて?
…しかし、人間の周囲にはシャレにならない位濃厚な精霊の気配も感じるので、おいそれと手は出せないのニャが。
どんな魔獣であろうと、精霊に敵視されることは死を意味する程ヤバいのニャ。
精霊の篤い加護があったればこそ、人間がこんな魔獣が跋扈する森の奥でのうのうと生きていられるのニャ。
また、ドラゴンが落下した跡に放り込まれたキング種のピンクスライムが、何故か本気で庭を守っており、余計に近づくことなどできなくなったニャ。
スライムといえば、低級モンスターの代表格と言われるが、上位種のスライムは知性もあり無限に増え続けるスキルを有するモノや、何でも溶かす酸を持つ獰猛なモノや、動物・魔物・魔獣関係なく捉えては媚薬漬けにして捕食する種族もおり、ある意味そこらの上位魔獣以上に厄介だったりするのニャ。しかも、このピンクスライムは多分、ネームド…。とある国の貴族たちを悉く媚薬漬けの中毒者に仕立て上げながらも一気に捕食しないでじわじわ精気を吸い上げて、長年君臨したといわれる伝説級のスライムだったはずニャ……。100年程前にどこかの魔法使いに討伐されたときいていたのニャが、こんなところで生き残って……。
…この家は、なんて恐ろしいお庭番を雇っているのニャ!? 精霊だけでもおなか一杯ニャ!
その後、人間が家に引っ込んでからもしばらく家の近くをウロウロとうろついて、人間が庭に出てくるのを待っていたり、家の周囲に時々ふぁ~っと風に乗って漂う濃厚な魔素を取り込んだりして過ごしたニャ。
なんか、ドキドキと動悸が激しくなって落ち着かなくなるのは何故かニャ?…とも思ったが、食欲をそそる匂いだと思って気にしなくなったニャ。
人間が森の池で魚を網で捕っているときは、普段は池の主が岸に立つ魔獣ですら陸に乗り上げて捕食するのに、あの人間が無邪気に網を投げているのには本気でびっくりしたニャ。まあ、精霊の気配を察知して、人間の近くには寄ってこなかったんだけどにゃ。あれがなかったら、入れ食いだっただろうに。…その代わり、フォレストワームが池の真ん中に落とされて、喜んで捕食していたわけにゃんだが。
しかしあの人間、なんだって池なんかに行ったニャ? 庭の恵みだけで、飢えることなどなかっただろうに。
時々よくわからない行動に出る所を、精霊に好まれているようにも感じるニョだが。まあ、変り者なのかもしれないニャ。 巷で言う『精霊の愛し子』という存在は、聖女であったり勇者であったり、存在が稀であるが、それだけに浮世離れした育ち方をするものなのかもしれないニャ。
吾輩は、そう結論づけて、いつかこの人間を捕食するチャンスができるかもしれないとの期待をもって、家の敷地の外から見守っていた訳だったのニャが…
家の中から魚を調理する芳しい匂いが流れて来た時、罠にかけられたことにも気づかず敷地に侵入して玄関まで近寄ったのが運の尽きだったニャ。
あれこれあった結果、吾輩マーリンと神狼族の幼犬・タロウは、ご主人と精霊のタッグに隷属化されてしまったのニャ。
…魚なんて喰えたの、30年ぶり位だったので、仕方なかったのニャ……うまかったのニャ……
そして、現在。吾輩とタロウは夜な夜なご主人と同じ寝台で眠っている。…というか、我々はそんなに眠りを必要とする種族ではないのニャが、ご主人にスリスリされると漂ってくる魔力の匂いには、本能が逆らえないのニャ。
今夜も吾輩は、眠っているご主人のローブの中に入り込み、体中ペロペロと舐め上げては、ご主人の匂いが濃厚に漂う空気に酔っている。ローブの中は裸なので、どこを舐めても芳しい。
「ンっ……あ…」
ご主人の滑らかな項や耳の裏などをやんわり刺激すると、より濃厚な匂いが立ち込める。そして、クンクン匂いを満喫しながら、舌を這わせると、ご主人のあえかな声が洩れる。
あんまり激しくやると、ご主人が起きてしまうので、ゆっくりネロリと舐るのがコツなのニャ。
「はっ……あン……」
くちゅ。くちゅ。
時々、声を上げて開いた口の中の唾液を舐めると、濃厚な甘い魔力の味がして、夢中になって舐めてしまう。そして、時々上あごのあたりをペロペロ舐めると
「あんっ!」
と、声を上げて、一際濃い魔力が放出される。一方、下の方ではタロウがご主人の股の間に頭を突っ込んで蜜をペロペロ舐める。その刺激でもご主人は
「んっ…はっ…ンっ」
と、声を上げながら腰を浮かす。
そっちはあんまりやると起きるから、ほどほどにするニャ!
吾輩は、ひそやかな声でタロウを注意するのだが、このバカ犬は必死にペロペロしているので聞いちゃいニャい。
「あんっ…んっ…」
ぬるぅーりとご主人の剥き出しの陰核を舐め上げて、漏れ出る蜜を啜っては、みだらな声を上げさせる。タロウはご主人の蜜をすすることに夢中になってるので、吾輩は、時々凝り固まった主人の胸の先っぽにチュウチュウと吸い付いては、そこからも漏れ出る魔力を吸い上げる。
「やんっ。何?…あっ…あんっ…?」
脇とか、喉のあたりとかも舐め上げると魔力が漏れ出るので、チロチロと舐め出すと止まらない。
「ふっ…うんっ……あン…」
切なそうに眉をひそめてブルブルと震え、鼻にかかった高い声を上げているんニャが……
…ご主人は、本当に起きていないのだろうか?
ここまで好き勝手に舐られて、魔力を吸われても起きないとか、生物として大丈夫かニャ?
というか、精霊が沈黙を守っていることにも、少し驚いているのニャ。
ひょっとして、精霊は……ご主人が明確に嫌がらなければ、案外性的な刺激は多めに見ている…というか、むしろ魔力を放出させるので、推奨しているのではないかと穿ってしまうニョだが。
…これは、もう少し様子を見る必要があると思われるニャ。
「ンあぁっっ!」
バカ犬がご主人の陰核に吸い付き、容赦なくベロベロと舐め上げたため、ご主人は全身をビクリと震わせて、声を上げた。
やりすぎニャ!! さすがに起きるニャ!!
吾輩とタロウは、急いでご主人のローブから出て眠ったふりをした。
「んっ……?」
その直後、ご主人はむくりと起き上がり、寝ぼけ眼で周囲を見回し、首を傾げた後で「パタリ」と再び横になった。ややすると、スースーと寝息が聞こえてくる…。
なんてチョロいのニャ? こいつ…ホント大丈夫ニャ?
吾輩はとタロウは、顔を見合わせて首を傾げる。
その後、それなりに魔力を吸収できた我々は今夜はここらで撤収し、ご主人の幸せそうな寝顔を覗いて、横向きで寝ているご主人の前後に丸くなって眠ることにした。
平和そうに眠っているご主人は、多分知らないニョだと思う。
ご主人のためを思って動いている精霊は、精霊独自の理で動いており、その利害が必ずしもご主人の意向に沿ったものとなるのかは不明であることを。
そして、真偽はともかく、獣人と言われるこの国の住民の祖先が、魔獣や神獣といった上位魔獣と魔力の強い人間種が交わったものであったと伝えられていることを。
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