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第一章:生活基盤を整えます
7.フリーター、ペットを従える
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『何を見ている、人間。見世物ではないぞ。早く我を開放しろ』
『にゃんだって、吾輩がこんな目に合わないといけないにゃ!?』
玄関を開けたら、灰色のイヌと白いネコが庭のツタに絡まって…というか絡めとられて、逆さにぶら下がり、ステレオ放送でギャンギャン吠えている。 ハッキリ言ってうるさいが…この世界の犬猫は人の言葉をしゃべるのだろうか? おお、異世界ファンタジー……。
ちょっと動物とお話するというシチュエーションに萌えを感じながらも、この2匹をよく見てみた。
見かけも、白いネコは大きめの成猫位のサイズ感で、丸い耳に長めのしっぽ。身ぎれいにしているのか、艶のある白い毛皮をよく見ると、豹のような模様もうっすら見られる。
そして、犬の方はあまり身の回りを気にしないのだろうか、薄汚れてる感満載で所々泥などがこびりついていて、毛皮の色もくすんで見えた。大きさとしてはビーグル犬などの中型犬程度の大きさの…シェパードとかハスキー犬とか…みたいな容貌のイヌで、とにかく目つきが鋭く、威嚇で剥いてくる牙も立派 だが…。
しかし、突然家に何しにきたのだろうか?
私は、ツタに宙ぶらりんと逆さづりされる犬猫をじーっと見て考えた。
この2匹の目的はよくわからないが、家のツタ植物は、この家に侵入しようとする者に絡みつく万能セコムさんなのだ。しかし、多くの侵入者たる魔獣や虫さんなどは、玄関に来るまでもなく、精霊セキュリティの前に消滅の憂き目にあうか、そもそも恐れおののいて近寄らない…らしいと聞いていたのだが…。
…となると、この2匹はこの家に無断侵入を企てていたとはいえ、精霊さんにここまで侵入を許される何かがあったと思われるわけで…。 スマホを見るが、今のところ精霊さんは何も言わない。
「あなたたち、何?ここに何しに来たの?」
私はじとーっと目を細めて2匹に問いかけた。
『何しにとはどうこうことにゃ!吾輩をそのような目でみるでないにゃ!失礼にゃ!』
白いネコがギャンギャンというか、ニャンニャンと鳴き声を上げるが、質問には答えない。
…しかし、なんかニャンニャンってバカっぽいな。訛ってるのか?
一方の灰色のイヌは『グルㇽ…』と牙を剥いて黙って威嚇してくるが、ツタにグルグル巻きにされた状態で威嚇されても怖くもなんともないわけで。
「この家に侵入しようとすると、そのツタが侵入者に絡まる仕掛けになっているのよね。そのまま精霊さんに燃やしてもらったり、そこのスライム池に落としてもいいんだけど…」
そう言って、2匹の後ろを親指で指してやると、背後のピンクスライムの池が『カモン ベイベー☆』とばかりにザワザワと波立った。
すると、その不穏な気配を察知したのか、2匹はわかりやすくブルブルと震え、
『ひぃっ!!お前は悪魔にゃ!?こんな幼気な子猫ににゃんてことするにゃ!?』
『…っ!(ピルピルピル)』
幼気って…この状況でよく言うな、こいつ。子猫の悪戯で済ませようとしているのか?
…実家にいたときは犬飼ってたし、猫とか犬は普通にかわいいと思うんだけど、なんか胡散臭いんだよな。犬も敵視しか感じないし…。 というか、中型犬サイズのくせに、何気に威嚇してくる牙が立派すぎて、さすがにちょっと怖い。
私は一瞬片眉を上げてそう思ったが、表情を変えずに腕を組んで仁王立ちとなり、もう一度問いかけた。
「で。もう一回聞くけど、何しようとしてたの?」
答えなかったら、あのおっさんスライムの餌食にしてやろうと思って、回答を待った。
2匹は『ぐぐぅっ』と唸って、数秒沈黙した後におずおずと答える。
『……腹が減って、森を彷徨っていたら、にゃんか良い匂いがしたのでフラフラ近づいたら、捕まったにゃ…』
『…我も……無念』
如何にも「屈辱!」とでも言いたそうに2匹は項垂れて(逆さづりだけど)いる。
昨日捕ってきた魚を干物にしたり、内臓を団子にした時の匂いを嗅ぎつけて吸い寄せられたそうな…。
確かに、この2匹、この森で遭遇した巨大な動物や魔物に比べると小さな体格もそうだが、よく見るとガリガリに痩せている姿が哀れを誘わなくもない。よくもこんな森の奥までこの体でやってきたなと思う。案外強いのだろうか?
…だけどな……うーん。
この森の…というか、この世界の生き物に対する警戒がなくなるわけではないが、飢えた動物を放り出すのもなんか可哀そう…という哀れみよりも、この世界で初めて会話できる存在に遭遇でき、このやり取りですら、少しうれしいと思ってしまったのだ。
そう思って何気に2匹を見ると、軒下に吊るされた干し柿のように風に揺られてプーラプーラと……精霊さんに風を起こされて遊ばれている。
…ちょっと、2匹が絡まり合ってるからやめてあげて!(←言い方)
まあ、それはともかく、精霊さんたちとの交流がどうというわけではないのだが…姿も見えないし、メールだけでやり取りしてるような感じもやはり少し物足りなかったというか…(黒電話さんは時々一方的に電話されてたけど。あれ、業務連絡じゃね?)
いえ、正直なところ、自宅に引きこもってネットに埋没するニートの気分が結構いたたまれませんでした。
一人笑っても、声を上げても返ってくる答えはなく、メッセージのヒュコヒュコいう音だけが木霊する…
なんかさみしい…。とか。時々思いました…夜とか…。
…ごめんなさいごめんなさい、感謝はさせていただいているんです! それは偽りないんですっ!
私は心で必死に謝りながら、2匹の絡まったツタを解いて問いかけた。
「家や私に悪さしないんなら、ご飯くらい食べさせてあげる。どうする?」と。
すると、2匹は目を見開き、
『いいにゃ?精霊の加護があるとはいえ、森の物資は貴重にゃ。吾輩、遠慮はしないにゃ?』
『………かたじけない』
と、返してきた。驚いた顔が案外可愛い。私はくすっと笑って、リビングに案内し、昨日作った骨せんべいと魚団子や切り身の干物をふるまうと、2匹は無言でガツガツと平らげ、食べた後に満足そうにお礼を言った。
…なんだ、結構可愛いじゃない。
私は思わず、微笑んでいた。
そして、その後。
私は2匹をペット(従魔)にすることに成功した。従魔…すなわち下僕ともいう。
え?何があったの!? と、お思いかもしれませんが、まあ、計画通りと言いましょうか。
とりあえず、精霊さんは数日前からあの2匹がうちの周りをうろついていたことはお見通しだったそうで、時々隙をみては、魔力に満ち溢れつつ弱そうな私に襲い掛かろうともしていたようです。精霊セキュリティカメラはその映像を捕えていました。すごいな、異世界セコム。
そこで魚の匂いは確かに決定打となったようであるが、もともと、この家は私が住むようになってから、魔物を引き付ける力にあふれた場となっていたらしく、それに惹かれた魔物が時々周囲に出没していたそうな。しかし、精霊の気配の濃さにビビって近づけない小物は放っておいたが、あの2匹はそれなりに強力な魔物の幼体でもあったため、敷地内に到達できたと。そこで、精霊さんはあえて玄関まで誘導し、ツタでとらえて私と遭遇させたとか。
道理で、よくこんな小さな魔物が玄関まで近づけたと思ったんだよね。
いくら素質があっても、私と相性が悪そうなら、あの2匹は遥か彼方まで放り出されるか、エロスライムの餌食にされていたそうだけど、案外私が嬉しそうだったので、これはイケるとGOサイン。
で、少しずつ餌付けして懐柔し、囁くように問いかける。
「うちの子になったら、おいしいもの、たくさん食べられるよ?」と。
そこで、精霊さんおススメの従魔用の餌を投入。
この家の庭に自生する、その名も『フレイ草』を乾燥させて粉末にし、魚団子に混ぜて食べさせると、 あら不思議。ニャンコもワンコも素直ないい子に変☆身。
『ホントおいしいにゃーー…』
『くぅーんくぅーん(しっぽ全振り)』
くくく、かわいい奴らめ… と、私は餌をほおばる2匹を見て、こっそりほくそ笑んだ。
そして、≪ここで畳みかけろ≫ と、黒電話隊長からの指令メッセージが飛ぶ。 了解です。
「白ネコさんのお名前は、マーリンでいい?」
『いいにゃ…。うにゃうにゃ』
言質をとり、まずはネコが堕ちた。
白猫改め、マーリンは夢見心地でクッションで伸びをしている。
「ワンコの名前はタロウね」
『わんわん。クゥーン…』
…返答はこれでもいいらしい。問題は言葉ではなく、恭順する意志とのこと。
灰色犬改め、タロウは腹を出してクンクン言っているので、私はおなかを撫でてやった。
…しかし毛皮のゴワつきが気になった。
魔物を従属させるにはいくつかの手順が存在する。
まずは、魔物に食事(餌)か供物を与え、受け取らせる。→餌付けしました
そして、名づけを行い、それを受け入れさせる。→酩酊状態とはいえ、名づけ完了
それらが完了後、精霊さんがなんやかんや介入して、初めて従魔が誕生するという。
…それだけ!?
…なんという恐ろしいシステム…。異世界こえぇえ……。
そうも思ったが、しかし、彼らだって私を捕食しようと狙っていたのだ。情けは捨てろ!
私は、この世界の流儀にのっとったのだ!!……
と、自分に言い聞かせて罪悪感に圧死させられそうな良心を慰めるわけで……。
いかん、ブレるな私。私は私を守って生き抜くのだ!
≪ひゅーひゅー!≫
≪げぼくげぼく≫
≪これらの幼体は、長じればそなたを守る力となるだろう≫
…本当に私は間違っていなかったのか考えると不安にならなくもないが、ここは考えない方が良さそうだ…。考えたら泣いてしまう………(/_;)
そう思いながら、夢ウツツで眠っている2匹の毛皮を撫でていると、最近とんとご無沙汰になっていた温もりを感じて、胸が温かくなったような気がした。
『にゃんだって、吾輩がこんな目に合わないといけないにゃ!?』
玄関を開けたら、灰色のイヌと白いネコが庭のツタに絡まって…というか絡めとられて、逆さにぶら下がり、ステレオ放送でギャンギャン吠えている。 ハッキリ言ってうるさいが…この世界の犬猫は人の言葉をしゃべるのだろうか? おお、異世界ファンタジー……。
ちょっと動物とお話するというシチュエーションに萌えを感じながらも、この2匹をよく見てみた。
見かけも、白いネコは大きめの成猫位のサイズ感で、丸い耳に長めのしっぽ。身ぎれいにしているのか、艶のある白い毛皮をよく見ると、豹のような模様もうっすら見られる。
そして、犬の方はあまり身の回りを気にしないのだろうか、薄汚れてる感満載で所々泥などがこびりついていて、毛皮の色もくすんで見えた。大きさとしてはビーグル犬などの中型犬程度の大きさの…シェパードとかハスキー犬とか…みたいな容貌のイヌで、とにかく目つきが鋭く、威嚇で剥いてくる牙も立派 だが…。
しかし、突然家に何しにきたのだろうか?
私は、ツタに宙ぶらりんと逆さづりされる犬猫をじーっと見て考えた。
この2匹の目的はよくわからないが、家のツタ植物は、この家に侵入しようとする者に絡みつく万能セコムさんなのだ。しかし、多くの侵入者たる魔獣や虫さんなどは、玄関に来るまでもなく、精霊セキュリティの前に消滅の憂き目にあうか、そもそも恐れおののいて近寄らない…らしいと聞いていたのだが…。
…となると、この2匹はこの家に無断侵入を企てていたとはいえ、精霊さんにここまで侵入を許される何かがあったと思われるわけで…。 スマホを見るが、今のところ精霊さんは何も言わない。
「あなたたち、何?ここに何しに来たの?」
私はじとーっと目を細めて2匹に問いかけた。
『何しにとはどうこうことにゃ!吾輩をそのような目でみるでないにゃ!失礼にゃ!』
白いネコがギャンギャンというか、ニャンニャンと鳴き声を上げるが、質問には答えない。
…しかし、なんかニャンニャンってバカっぽいな。訛ってるのか?
一方の灰色のイヌは『グルㇽ…』と牙を剥いて黙って威嚇してくるが、ツタにグルグル巻きにされた状態で威嚇されても怖くもなんともないわけで。
「この家に侵入しようとすると、そのツタが侵入者に絡まる仕掛けになっているのよね。そのまま精霊さんに燃やしてもらったり、そこのスライム池に落としてもいいんだけど…」
そう言って、2匹の後ろを親指で指してやると、背後のピンクスライムの池が『カモン ベイベー☆』とばかりにザワザワと波立った。
すると、その不穏な気配を察知したのか、2匹はわかりやすくブルブルと震え、
『ひぃっ!!お前は悪魔にゃ!?こんな幼気な子猫ににゃんてことするにゃ!?』
『…っ!(ピルピルピル)』
幼気って…この状況でよく言うな、こいつ。子猫の悪戯で済ませようとしているのか?
…実家にいたときは犬飼ってたし、猫とか犬は普通にかわいいと思うんだけど、なんか胡散臭いんだよな。犬も敵視しか感じないし…。 というか、中型犬サイズのくせに、何気に威嚇してくる牙が立派すぎて、さすがにちょっと怖い。
私は一瞬片眉を上げてそう思ったが、表情を変えずに腕を組んで仁王立ちとなり、もう一度問いかけた。
「で。もう一回聞くけど、何しようとしてたの?」
答えなかったら、あのおっさんスライムの餌食にしてやろうと思って、回答を待った。
2匹は『ぐぐぅっ』と唸って、数秒沈黙した後におずおずと答える。
『……腹が減って、森を彷徨っていたら、にゃんか良い匂いがしたのでフラフラ近づいたら、捕まったにゃ…』
『…我も……無念』
如何にも「屈辱!」とでも言いたそうに2匹は項垂れて(逆さづりだけど)いる。
昨日捕ってきた魚を干物にしたり、内臓を団子にした時の匂いを嗅ぎつけて吸い寄せられたそうな…。
確かに、この2匹、この森で遭遇した巨大な動物や魔物に比べると小さな体格もそうだが、よく見るとガリガリに痩せている姿が哀れを誘わなくもない。よくもこんな森の奥までこの体でやってきたなと思う。案外強いのだろうか?
…だけどな……うーん。
この森の…というか、この世界の生き物に対する警戒がなくなるわけではないが、飢えた動物を放り出すのもなんか可哀そう…という哀れみよりも、この世界で初めて会話できる存在に遭遇でき、このやり取りですら、少しうれしいと思ってしまったのだ。
そう思って何気に2匹を見ると、軒下に吊るされた干し柿のように風に揺られてプーラプーラと……精霊さんに風を起こされて遊ばれている。
…ちょっと、2匹が絡まり合ってるからやめてあげて!(←言い方)
まあ、それはともかく、精霊さんたちとの交流がどうというわけではないのだが…姿も見えないし、メールだけでやり取りしてるような感じもやはり少し物足りなかったというか…(黒電話さんは時々一方的に電話されてたけど。あれ、業務連絡じゃね?)
いえ、正直なところ、自宅に引きこもってネットに埋没するニートの気分が結構いたたまれませんでした。
一人笑っても、声を上げても返ってくる答えはなく、メッセージのヒュコヒュコいう音だけが木霊する…
なんかさみしい…。とか。時々思いました…夜とか…。
…ごめんなさいごめんなさい、感謝はさせていただいているんです! それは偽りないんですっ!
私は心で必死に謝りながら、2匹の絡まったツタを解いて問いかけた。
「家や私に悪さしないんなら、ご飯くらい食べさせてあげる。どうする?」と。
すると、2匹は目を見開き、
『いいにゃ?精霊の加護があるとはいえ、森の物資は貴重にゃ。吾輩、遠慮はしないにゃ?』
『………かたじけない』
と、返してきた。驚いた顔が案外可愛い。私はくすっと笑って、リビングに案内し、昨日作った骨せんべいと魚団子や切り身の干物をふるまうと、2匹は無言でガツガツと平らげ、食べた後に満足そうにお礼を言った。
…なんだ、結構可愛いじゃない。
私は思わず、微笑んでいた。
そして、その後。
私は2匹をペット(従魔)にすることに成功した。従魔…すなわち下僕ともいう。
え?何があったの!? と、お思いかもしれませんが、まあ、計画通りと言いましょうか。
とりあえず、精霊さんは数日前からあの2匹がうちの周りをうろついていたことはお見通しだったそうで、時々隙をみては、魔力に満ち溢れつつ弱そうな私に襲い掛かろうともしていたようです。精霊セキュリティカメラはその映像を捕えていました。すごいな、異世界セコム。
そこで魚の匂いは確かに決定打となったようであるが、もともと、この家は私が住むようになってから、魔物を引き付ける力にあふれた場となっていたらしく、それに惹かれた魔物が時々周囲に出没していたそうな。しかし、精霊の気配の濃さにビビって近づけない小物は放っておいたが、あの2匹はそれなりに強力な魔物の幼体でもあったため、敷地内に到達できたと。そこで、精霊さんはあえて玄関まで誘導し、ツタでとらえて私と遭遇させたとか。
道理で、よくこんな小さな魔物が玄関まで近づけたと思ったんだよね。
いくら素質があっても、私と相性が悪そうなら、あの2匹は遥か彼方まで放り出されるか、エロスライムの餌食にされていたそうだけど、案外私が嬉しそうだったので、これはイケるとGOサイン。
で、少しずつ餌付けして懐柔し、囁くように問いかける。
「うちの子になったら、おいしいもの、たくさん食べられるよ?」と。
そこで、精霊さんおススメの従魔用の餌を投入。
この家の庭に自生する、その名も『フレイ草』を乾燥させて粉末にし、魚団子に混ぜて食べさせると、 あら不思議。ニャンコもワンコも素直ないい子に変☆身。
『ホントおいしいにゃーー…』
『くぅーんくぅーん(しっぽ全振り)』
くくく、かわいい奴らめ… と、私は餌をほおばる2匹を見て、こっそりほくそ笑んだ。
そして、≪ここで畳みかけろ≫ と、黒電話隊長からの指令メッセージが飛ぶ。 了解です。
「白ネコさんのお名前は、マーリンでいい?」
『いいにゃ…。うにゃうにゃ』
言質をとり、まずはネコが堕ちた。
白猫改め、マーリンは夢見心地でクッションで伸びをしている。
「ワンコの名前はタロウね」
『わんわん。クゥーン…』
…返答はこれでもいいらしい。問題は言葉ではなく、恭順する意志とのこと。
灰色犬改め、タロウは腹を出してクンクン言っているので、私はおなかを撫でてやった。
…しかし毛皮のゴワつきが気になった。
魔物を従属させるにはいくつかの手順が存在する。
まずは、魔物に食事(餌)か供物を与え、受け取らせる。→餌付けしました
そして、名づけを行い、それを受け入れさせる。→酩酊状態とはいえ、名づけ完了
それらが完了後、精霊さんがなんやかんや介入して、初めて従魔が誕生するという。
…それだけ!?
…なんという恐ろしいシステム…。異世界こえぇえ……。
そうも思ったが、しかし、彼らだって私を捕食しようと狙っていたのだ。情けは捨てろ!
私は、この世界の流儀にのっとったのだ!!……
と、自分に言い聞かせて罪悪感に圧死させられそうな良心を慰めるわけで……。
いかん、ブレるな私。私は私を守って生き抜くのだ!
≪ひゅーひゅー!≫
≪げぼくげぼく≫
≪これらの幼体は、長じればそなたを守る力となるだろう≫
…本当に私は間違っていなかったのか考えると不安にならなくもないが、ここは考えない方が良さそうだ…。考えたら泣いてしまう………(/_;)
そう思いながら、夢ウツツで眠っている2匹の毛皮を撫でていると、最近とんとご無沙汰になっていた温もりを感じて、胸が温かくなったような気がした。
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