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第四章:地味に平和が一番です
5-3.精霊の女神様(爆)は夢をみる
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<あのね、しろくてきれいなきつねさんだったの>
<いなりちゃんはこのくによりももっともっとむかしにいた>
<ときどきひめみたいなことをいうこだった>
<いいこだったね>
<うんうん、まりょくもおおくてきれいだったけど、やさしいこだったね>
<天狐と出会って子供を産んだ>
<いちぞくはいなりちゃんのなまえをなのってさかえていった>
<いなりちゃんはわたしたちとなかよしだったから、こどもたちはいなりちゃんを“みこ”とよんで、すごくたよりにしてたんだよ>
<生まれる前に住んでいた国で使っていた文字だという>
<ひともじひともじにいみがあって、すごくちからのあるもじだったね>
<ひくいまりょくじゃあつかえない>
<伝える者がいなくなって、そのうちに廃れていった高度な技術だった>
<だいをかさねるごとに、いなりちゃんのしそんはよわくなり、あるひ、けんりょくあらそいでまけたんだって>
<いってることも、やってることも、どっちもどっちだったけどねー>
<負けたイナリの子孫は、魔力とは違う技を使う者たちとして、侯爵の一派に迫害されて故郷を追われた>
<しろいねこちゃんは、おうさまをうらんでたんだって>
<かぞくからひきはなしたくせに、じぶんだけをえらばなかったおうさまも>
<あんなにだいじにしていたのに、じぶんをかえりみなくなったおうじさまも>
<おうさまは、みんなびょうどうにあつかった>
<おうじさまは、おかあさんがじぶんをみていないとかなしんだ>
<あのこはいつも、もっともっととほしがった>
<イナリの子孫とも思えない程、満ちるということを知らぬ、短慮な娘であったな…>
<でも、まりょくはすごくつよかった。むいしきにおうさまをのろうくらいに>
<いなりちゃんのもじはわすれられていったけど、ちからはときどきこどもたちにうけつがれていったの>
<本人たちがそれに気づく時もあれば、一生知らないまま過ごす場合もあったんだよ>
<おもいのいみをかんじであらわすと、ちからになるんだって>
<ちょっとおばかさんだったけど、かわいいねこちゃんだったのにね>
<のろいはかえされたら、のろったひとはしんじゃうんだよ>
<しらないうちにのろって、かえされて、わからないまましんじゃうんだね>
<かわいそう>
<かわいそうだね>
………なんだろう、私はすごく眠いのに、精霊さんたちが夢の中でとても悲しいことを話しているようで、胸が苦しくなる。
何を話しているのかわからないが気持ちだけがただ辛い。
きっと目が覚めたら私は全部忘れているんだろうな…ということだけは確信できた。
”いなりちゃん”って誰?
”しろいねこちゃん”って何?
浮かんでは消える、“いなりちゃん”という、白い狐耳のかわいらしい女の子の姿と、何も思い通りにならないといつも癇癪を起している子供の様な姿の“しろいねこちゃん”が泣いている姿。
私は何を見せられているのだろうか…。
夢の中で何を思うでもなく、ぼんやりと遠くからその映像を眺めていたのだったが……寝ている私の頬を誰かに撫でられて、ちょっとくすぐったかったので、思わず微笑んだら、目の端から温かいものが伝っていったのを誰かがそっと拭ってくれた。
自分が行ったことも知らずに“しろいねこちゃん”は、もうすぐこの世を去るのだろうか。
次々と流れる映像を見ながら、誰からも愛されて幸せそうに笑っている”いなりちゃん”とは対照的に、満たされるということを知らないため、何を与えられても常に飢えているかのように様々なものを欲しがったけれど、本当に欲しいものがわからなくなり、何も手に入れることができなかった可哀想な子だと思った。
できれば、どんなに注がれても漏れ出てしまうようなヒビだらけの心を癒して、次に生まれてくる時には他の人にも分けられるように、たくさんの愛情や優しさを蓄えることができるようになるといいな。
フワフワと微睡みながらそう願うと、映像で見せられていた小さな女の子のような姿の“しろいねこちゃん”が、優美な白い猫の女性に変わり、こちらを見て微笑んだ。
その微笑みを見て、全く似通ったところなんて見いだせないはずなのに、その笑った表情が知っている誰かに似ているような気がして夢の中で首を傾げたが、女性が手を振ってくるので、
じゃあね、バイバイ。
そんな風に彼女へ手を振り返して別れを告げると、私の意識は再び深く潜っていった。
<いなりちゃんはこのくによりももっともっとむかしにいた>
<ときどきひめみたいなことをいうこだった>
<いいこだったね>
<うんうん、まりょくもおおくてきれいだったけど、やさしいこだったね>
<天狐と出会って子供を産んだ>
<いちぞくはいなりちゃんのなまえをなのってさかえていった>
<いなりちゃんはわたしたちとなかよしだったから、こどもたちはいなりちゃんを“みこ”とよんで、すごくたよりにしてたんだよ>
<生まれる前に住んでいた国で使っていた文字だという>
<ひともじひともじにいみがあって、すごくちからのあるもじだったね>
<ひくいまりょくじゃあつかえない>
<伝える者がいなくなって、そのうちに廃れていった高度な技術だった>
<だいをかさねるごとに、いなりちゃんのしそんはよわくなり、あるひ、けんりょくあらそいでまけたんだって>
<いってることも、やってることも、どっちもどっちだったけどねー>
<負けたイナリの子孫は、魔力とは違う技を使う者たちとして、侯爵の一派に迫害されて故郷を追われた>
<しろいねこちゃんは、おうさまをうらんでたんだって>
<かぞくからひきはなしたくせに、じぶんだけをえらばなかったおうさまも>
<あんなにだいじにしていたのに、じぶんをかえりみなくなったおうじさまも>
<おうさまは、みんなびょうどうにあつかった>
<おうじさまは、おかあさんがじぶんをみていないとかなしんだ>
<あのこはいつも、もっともっととほしがった>
<イナリの子孫とも思えない程、満ちるということを知らぬ、短慮な娘であったな…>
<でも、まりょくはすごくつよかった。むいしきにおうさまをのろうくらいに>
<いなりちゃんのもじはわすれられていったけど、ちからはときどきこどもたちにうけつがれていったの>
<本人たちがそれに気づく時もあれば、一生知らないまま過ごす場合もあったんだよ>
<おもいのいみをかんじであらわすと、ちからになるんだって>
<ちょっとおばかさんだったけど、かわいいねこちゃんだったのにね>
<のろいはかえされたら、のろったひとはしんじゃうんだよ>
<しらないうちにのろって、かえされて、わからないまましんじゃうんだね>
<かわいそう>
<かわいそうだね>
………なんだろう、私はすごく眠いのに、精霊さんたちが夢の中でとても悲しいことを話しているようで、胸が苦しくなる。
何を話しているのかわからないが気持ちだけがただ辛い。
きっと目が覚めたら私は全部忘れているんだろうな…ということだけは確信できた。
”いなりちゃん”って誰?
”しろいねこちゃん”って何?
浮かんでは消える、“いなりちゃん”という、白い狐耳のかわいらしい女の子の姿と、何も思い通りにならないといつも癇癪を起している子供の様な姿の“しろいねこちゃん”が泣いている姿。
私は何を見せられているのだろうか…。
夢の中で何を思うでもなく、ぼんやりと遠くからその映像を眺めていたのだったが……寝ている私の頬を誰かに撫でられて、ちょっとくすぐったかったので、思わず微笑んだら、目の端から温かいものが伝っていったのを誰かがそっと拭ってくれた。
自分が行ったことも知らずに“しろいねこちゃん”は、もうすぐこの世を去るのだろうか。
次々と流れる映像を見ながら、誰からも愛されて幸せそうに笑っている”いなりちゃん”とは対照的に、満たされるということを知らないため、何を与えられても常に飢えているかのように様々なものを欲しがったけれど、本当に欲しいものがわからなくなり、何も手に入れることができなかった可哀想な子だと思った。
できれば、どんなに注がれても漏れ出てしまうようなヒビだらけの心を癒して、次に生まれてくる時には他の人にも分けられるように、たくさんの愛情や優しさを蓄えることができるようになるといいな。
フワフワと微睡みながらそう願うと、映像で見せられていた小さな女の子のような姿の“しろいねこちゃん”が、優美な白い猫の女性に変わり、こちらを見て微笑んだ。
その微笑みを見て、全く似通ったところなんて見いだせないはずなのに、その笑った表情が知っている誰かに似ているような気がして夢の中で首を傾げたが、女性が手を振ってくるので、
じゃあね、バイバイ。
そんな風に彼女へ手を振り返して別れを告げると、私の意識は再び深く潜っていった。
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