異世界の石像

鯖になりたい人

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第一章

同じ者(6)

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ヒュォォォォォォ

 空中にいる間、俺の思考はとんでもなくテンパっていた。
(なんだあの鹿、でかすぎない!?どうしようこのままだと着地する場所が鹿の上だ。   鹿の上?そうだ!)
 俺は剣を両手で真っ直ぐ構えて振りかぶった。
 そして、落下スピードをこの剣に乗せて鹿目掛けて振り下ろした。

バゴォン

 剣は鹿の背中に命中した。
(よっしゃ狙い通り。)
 そう思ったのは一瞬だけだった。
ギリギリギリギリ
 なんと剣と鹿の皮膚が鍔迫り合いをしていた。
 なんて硬さだ。そう思ったのも束の間、鹿が首を振り回し、角が俺の脇腹に打撃を加える。
「グハッ」
 吐血した。
 しかし、身体強化を使っていたおかげか分からないが、骨が折れたりはしていないようだ。
 だが、衝撃はさすがにカバー出来なかったようで、内蔵にダメージを与えられた、そのため吐血したのだろう。
 そんなことを考察していたが、鹿の角に吹き飛ばされた俺は自由落下を待つしか無かった。
 地面が迫り来る。
 ドンッ  ゴロゴロ
 俺は着地を失敗し、こけて、転がってしまった。

ヴォォォォォン!!!

 鹿の咆哮が聞こえる。
 ドドッドドッ
 そのまま突進して来た。
 そのスピードはチーターでも追いつけないだろう。
「クソっ、【解除】!【技術:回避】!!」
 その突進を俺は能力技術を使って、避ける。
 同時に剣が無くなり、力が抜けていく。
 ドンッ!!!
 俺が避けた鹿の突進は、大木にぶつかったが、そのまま森を薙ぎ倒す勢いで進んでいく。
 止まったかと思えば、くるりとこちらに向き直り、また突進してくる。
「またかよ!【技術:回避】【第1能力:剣】!!」
 そして、剣が生成され、鹿の突進を回避、その後鹿の腹に剣を突き刺した。

ブスッ

 背中には傷1つすらつけることが出来なかったが、どうやら、背中に比べて腹の方は柔らかいらしい。
 俺はそのまま剣で力いっぱい押し切り、鹿の腹を裂いた。
 頭に鹿の血がかかる。
 全身が真っ赤に染まり、生臭くなった。
 
ドォン!

 鹿の体が倒れる。
 それと同時に土煙がたつ。
(勝った…のか?)
 そこで俺の意識は途切れた。




________


パチパチパチ

 匂いがする。
 肉の焼けるいい匂いだ。
 目を開ければ、そこには見たことも無い、綺麗な星空が顔上に広がる。
 てことは俺は今寝ているのか?
 その星空を遮るように、見知った顔が覗き込む。
「アキレウス様!」
 ラベだ。
 そこで思い出した、巨大な鹿のことを。
 鹿がどうなったのか、生きていたらどうしよう、そんな事が頭をよぎり、俺は起き上がった。

と、思ったら
 
ゴンッ

「いって!」
 まぁ顔を覗きこまれてるのに勢いよく起き上がれば、まぁぶつかるわな。
 (※ぶつかったのはおでこです。)
 まぁとりあえず起き上がりまして、周りを見渡すと、焚き火が燃えていた。
 さらに見渡すと、泉があり、ラベと分かれたところだと分かった。
「なんで俺ここに…」
 よく自分を見れば、さっきまで血まみれだったのに、いつもの服に変わっていた。

 パキッ   パキッ

 !
 枝が折れる音がこっちに近づいてくる。
「【第1能力:剣】」
 戦った後で、敏感になっていたのか、俺はすぐに立ち上がり、剣を出し、構える。
「ちょ、アキレウス様!?」
 ラベにハンドサインで静かにと送る。

ガサガサ

 目の前の草むらが揺れ、黒い影が飛びだす。
 その正体は…



 鹿だった。
 それもさっきの鹿をそのまま小さくしたような感じだ。
 一気に力が抜ける。
 さっき焚き火を見たところ、肉串が刺さって、焼かれていた。
 なら、もう動物を狩る必要はないだろう。
 もうどっかに行ってくれと、手でゞ(o`Д´o) シッシとした。
 だが、俺の思いとは逆に鹿はトコトコ歩いてきて、顔を俺の脚になすりつけてきた。 
 その様子に俺は(´꒳`)ホッコリし、頭を撫でる。
 すると、鹿が輝かしい目でこちらを見てくる。
 ん?
 なんかこの目どこかで見たような…
 そう思い、ラベの方に目をやると、同じ目をしていた。
 もしかしてと思い、ラベの頭を撫でてみると、うっとりしていた。
 そういや、コイツケモっ娘だったなと思いつつ、ラベに説明を求めた。
「で、ラべこの鹿は?ただの鹿に思えないんだけど。」
 手を離すと、ラベは少し残念そうにしながら、説明をしてくれた。
「えっとですね、その子はアキレウス様の精霊ですね。」
「はい?セイレイ?」
「精霊っていうのはですね、出会うことが全くないと言っていいほどレアな存在で、出会うと、精霊に試練を課せられ、その試練に見事合格したら、その精霊が合格した者に取り憑くんです。」
「へー、でも俺、試練なんて受けてないよ?」
「え?そうなんですか?倒れていたので、てっきり試練に疲れたのかと…」
「え?」
「え?」
「倒れてたの?俺。」
「はい、あまりにも帰ってくるのが遅かったので、能力技術を使って探してみたら、森のど真ん中に倒れていので、助けに行ったんです。そしたらこの子が突然現れて、見てみたら精霊の紋章があったんです。それで、精霊の試練を受けてたのかなって。」
 と、ラベが鹿の顎を擽りながらせつめいしてくれた。
「で、まとめるとラベは俺が巨大鹿を倒したあと迎えに来てくれて、その時にこの鹿もついてきた、と。」
「巨大鹿?」
「あー、実はカクカクシカジカ」
 俺はラベに、分かれた後、何があったのかを説明した。


「なるほど。多分その巨大鹿がこの子の試練だっのではないでしょうか?」
「そうなの?」
 俺は鹿に尋ねてみた。
 すると、“((・∀・*)コクリとしてくれたので、試練だった事が分かった。
 てかこの鹿可愛い!!
「ねぇラベ、試練に合格したらどうなるの?」
 そういえば肝心なことを聞き忘れたと思って、ラベにまた説明を求めた。
「精霊は、試練に合格した者から名前を授かる事によって、一生涯のパートナーになってくくれるらしいですよ。」
「そっか、じゃあ名前決めていいかな?」
「どうぞ。」
「じゃあ、『ゼム』!今日からお前の名前はゼムだ!」
 名付けた瞬間俺の左手が光る。
 眩しすぎて目を瞑った。
 
 目を開けて、光が生じた左手を見てみると、謎の紋章のようなものが刻まれていた。
 剣を3振り、重ねたような模様だった。
「…これは?」
「アキレウス様、ゼムの首を見てください。」
 ラベにそう促され、ゼムの首元を見てみると、俺の左手にある紋章と同じ紋章があった。
「これでお2人(?)はパートナーって訳です。」
 (๑¯﹀¯๑)
 ゼムが満足そうな顔でこちらに近づいてくる。
「よろしくな、ゼム!」
 そう言って俺はゼムの頭にポンと手を乗せた。
 
 なんやかんやあったが、こうして、4日目の夜は終わった。
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感想 2

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みんなの感想(2件)

🄵
2020.02.27 🄵

鯖らしい作品やな。続きも楽しみにしとります。

解除
尾石 志々雄

斬新な作品ですね!
今後の展開を楽しみにしてます。

解除

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