美しい彼女の好きな人

だましだまし

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私も結婚適齢期。


新しい婚約者を探して3年、様々な家の邪魔によって新しい婚約を結べぬまま私は年を重ねてしまいました。

しがない男爵家なので様々な誘いを無下には出来ないものの拮抗した権力を持つ家から複数婚約申し込みがあればどれも受けられません。
また、伯爵家以上の家からは暗に愛人として迎えたいとの申し出もあり、お父様は頭を抱える日々です。

私はこのまま年を経て醜くなるまで誰とも結ばれることなく一人寂しく晩年を迎えるのだと覚悟しなくてはならないかもしれない。
そう思うようになった頃でした。


王太子様主催の若者ばかりのパーティーでイベントのように告げられたのです。

「これよりリオネ・ラベノル嬢を妻にと考える者たちに求婚の機会を授ける!愛人希望の者は認めない。身分差などはこの際私が家を説得してみせる。彼女を妻にと望む者たちは広間の中央へ!」

この声が響いたタイミングで私は給仕の方々に促されるように中央に連れてこられました。

居並ぶ男性たちの前に私一人。


そんな私に王太子様が優しく言いました。

「皆、君を妻にと望む者たちだ。君を望み婚約を解消しようと動いたり婚約を断り続けている者も多いと聞くので君の結婚を決めたい。誰にも文句は言わせない。振り回されてきた君は君の望む者と結ばれるが良い」

「私の、望む…」

「そうだ。君にも好みはあるだろう?」


そう言われて私は一人の男性を探しました。

私に偉そうに愛人になる誘いをしてきた宰相補佐官の従者をしている彼の姿を。
私好みの見た目の彼に何度も助けられ、見た目だけでなく中身も素敵な方だといつしか好きになりずっと慕っていた彼を。

彼自身は私を妻にと望んでいなくてもきっとあの補佐官の傍に…いたわ!

「私を妻に…貰っていただけませんか?」

恥ずかしく思いながらも求婚を…男性陣の少し後ろにいる彼に声をかける。

傍にいる例の宰相の補佐官は驚きと怒りを含む目で私たちを見ているけど王太子様の手前何も言えない。
でも私の求婚出来る場まで彼を従えて来たのはあなたでしてよ。


「…本当に彼が良いのかい?後で無かったことには出来ないよ?」

王太子様も驚きつつ確認をしてくる。

「愛らしいこの方が私の好みなのです!」

はっきり、きっぱりと伝えた。

真っ赤になっている彼は子爵家の嫡男だというのに婚約者が出来ないので従者として働いているのを私は知っている。
私が婚約者になれば家を継ぐためにこの嫌な補佐官とも別れられるはずだ。
彼にとっても悪い話ではない。

「ほほほほほ…本当に僕…じゃなくて、私ですか?」

赤くなっている時点で私を悪く思っていないのだろうと正直安堵した。

茶色のクルクル激しい癖毛を少し震わせながら小さな目をパシパシと何度もまばたく姿は子犬のよう!
なんて愛らしいのかしら!

丸い鼻に散ったソバカスは真っ赤になると色濃くなり隠れないのを初めて知ったわ。
可愛い!

ぽってりした唇をキュッと結び、返事する覚悟を決めたのかしら?
緊張するわ。

しかし彼の表情から良い返事を聞けると思えてならない。
待つこの時間に心が弾む。
のに水差す声が響いた。

「まて!リオネ嬢!本当にその醜男が良いと!?醜くて婚約者が出来なかった男だぞ!?」


そう、貴族に嫌煙される癖毛にソバカス、太ってはいないけどずんぐりした体型の彼は、姿が醜いと婚約を申し込んだ家の令嬢にこっぴどく断られた経験があるらしい。

そして優しい彼は自分に婚約を申し込まれる令嬢は可哀想だと申し込み自体を諦めたのだと…。


でも!

「私、クルックル癖毛が大好きなのです!ソバカスの男性が可愛らしく見えて仕方ないのです!あと逞しい硬い方より物理的にも優しい抱擁力のある彼の様な体型の方が好ましく…とにかくこの方は好みド真ん中で…」
ああぁ!恥ずかしい事を大きな声で言ってしまいました!


誰からも美貌を讃えられた私ですが好みは他の方と激しく差があるようなのです。
私は私自身をそこまで美しいと思えていません。
ずっと様々な男性から誘われ困る事も、沢山の女性からやっかみや嫉妬で嫌がらせされることも私の容姿が原因とは理解していましたが『何故、そこまで?』と不思議でした。

それは私の容姿の美醜感覚が変わっているからだと家族に教えられていましたが好みは好みなのです。



そんな私の憧れの彼は世間的には醜男だったおかげで婚約者がいない、私には嬉しい偶然が整っていたのでした。
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