私と母のサバイバル

だましだまし

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2 意外

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しばらくは平坦な落ち葉の道が続いている。
木々が生い茂っているからか下草もあまり無く歩きやすかった。

しかし荷物が重い。特にカゴ。
お母様と一旦荷物の確認をすることにした。

カゴの覆いを取るとお母様の持つお弁当のカゴにはベーコンとレタスの挟んだバゲット、そしてその下に日持ちがしそうなハードパンとバター、ジャムがそれぞれ瓶にギッシリと詰められていた。

私の持つティータイムセットだというカゴには包丁とまな板、水たっぷりの水筒が2本、鍋にフライパン、小さく切られた干し肉の入った紙袋、木のお皿が4枚、小型のバーナーとバーナーを動かす魔石が入っていた。
うん、重いはずだ。

使用人たちは私達が森に捨てられるのを知っていたのだろう。
「皆…ありがとう…」
その優しさに涙ぐむお母様…と、私。
でも、水…重い…。

私は火と風の魔法を、お母様は水の魔法が使える。
お母様に魔法の水は飲めないのか聞いてみた。

「普通はね、飲めないの」
「やっぱりそうよね…聞かないもの…」
「でもね、お母様のは飲めるの」
え?っと顔を上げるといたずらっぽく笑ってるお母様の手が光っていた。
「まさか!」
「じゃーん♪実はお母様、光魔法が使えます!」

びっくりし過ぎて声が出ない。
光魔法は怪我を治癒出来る魔法だがとても希少だ。
魔力が豊富な高位貴族や王族にたまに現れるらしいが初めて見た。

「お母様が産まれた国でも珍しくはあったんだけどね、この国ほど珍しくなくて平民でも発現する事があるの。でもどの国でも希少な属性だし旅してると危険だから座長が隠すよう教えてくれたのよ」
「お父様にも…?」
「もちろん!だって私、ずっと逃げたかったもの。この国じゃ特に珍しい属性だからこんなの持ってるなんてバレたらもっと監視が厳しくなりそうじゃない!」

それは間違いないだろう。
光属性持ちなら今回だってお母様が巻き込まれて捨てられる事は絶対に無かったはずだ。
私の驚きを余所にお母様は話し続ける。

「でね、この光魔法って治癒だけじゃなくて浄化ってのも出来るの。毒を無毒にしたり呪いを跳ね除けたり出来ちゃう力なんだけど、魔法の水ってなんで飲めないか分かる?」
「考えた事無かったから分かんない…」
「正解はー…不純物が多くてばっちいから!」

不純物という言葉に私は首を傾げる。
他の人の術を見たことあるが澄んで見えるし植木にかけたりしていたはずだ。
「魔法って魔力と自然を組み合わせて発動するでしょ?だから水魔法の水って雨水みたいなモノなのよ。沸かせば飲めるけどそのままは良くないの」
雨水…たしかにそのまま沢山飲むのは少し抵抗がある。
「そこで光魔法♪浄化かけて水を出せばキレイな飲める水になっちゃいます!お母様、一座では踊り子としてより道中での活躍が大きかったんだから!」
意外な魔法の知識に驚く私と対象的に明るく笑うお母様。
こんな楽しそうなお母様見たの、いつぶりだろう。

「てなわけで、使用人の皆には悪いけど水だけ捨てようか。重かったわよね」


幾分か軽くなったカゴを持って更に奥へ進むと岩が増えてきた。
所々に倒れた木も見るようになり人が立ち入らない深い所まで来たのだと実感する。
そろそろ休憩しようかと言っていた時にそれは立ち塞がった。

巨石の壁だ…。

巨石と言っても私の背の倍程度。
ゴツゴツした岩肌だから登れるかもしれない。
でも片手じゃキツそう…。
それにお母様に登れるかしら?
そんな事を考える私に軽く話すお母様。
「岩に登る前に先にお昼食べちゃおっか」

登る前提だった。


日持ちがしなさそうなバゲットのサンドイッチを食べながらあたりを観察する。
少し離れた所に木が倒れているが伝い登るには苔が生えていて滑りそうだ。
岩の無い所は絶壁に近い斜面。
見えないくらい離れた所は分からないが真っ直ぐにジャメリアを目指すならお母様の言う通り登ったほうが良さそうな気がする。

「食べてるうちにお母様が知ってるこの森について話すわね」
「この森について知ってる事?」
昔別宅に囲われた時に脱走したくて隣接するこの森について調べてたらしい。

本当、今日はお母様に驚かされてばかり。
だけど気持ちはとても楽しかった。
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