隣の席の美少女お嬢様の彼氏のフリをした日から、何故かお嬢様が甘々に

月姫乃 映月

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お嬢さまの彼氏役

1話

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 放課後を知らせるチャイムが校内に響き渡った。
 周りの生徒は、友達とショッピングモールやゲームセンターに出掛けようと話し合っている。
 高校二年になってもうすぐ一か月が経とうとしているが、まだ新しいクラスにはなじめていない。
 実際、放課後の遊びの誘いなんて一度もされたことがない。
 だから俺は直ぐに帰る支度を済ませ、カバンを肩にかけた。

「ねぇ、ちょっと待って遥翔はると

 俺が教室を出ようと歩き出した時、俺――八神遥翔やがみ はるとの名前を呼んで彼女が止めてきた。
 彼女は腰まで伸びた綺麗な茶色の髪を揺らし、俺の目を見つめる。

「どうしたんだよ、愛奈あいな

 彼女は俺の隣の席で、お嬢様でもある桜咲愛奈おうさか あいな。去年も同じクラスで隣の席だ。まさか今年も同じクラスで隣の席だとは思わなかった。
 まぁ、そう言う事もあり、愛奈とはそこそこ仲が良いと自分の中では思っている。
 愛奈の父親は超大手会社の社長、母親は元人気アイドル。結婚を機に引退したらしい。
 愛奈は母親に似たのか、アイドル顔負けの綺麗で可愛らしい容貌をしている。
 そしてすらりと伸びた綺麗な脚、モデルのような抜群のスタイル。そして可愛らしい声をしていて学校でも屈指の人気を誇る。誰がどう見ても美少女だ。
 
「ちょっと今から付き合ってほしい所があるのだけれど……」
「付き合ってほしいところ?」

 愛奈が放課後にどこか誘うなんて珍しいなんてものじゃない。
 それに、この俺に放課後のお誘いがあることに驚いている。
 愛奈は小さく首を縦に振った。

「近くのカフェに一緒に行ってほしいの」
「近くのカフェ? ああ、最近新しくできたあのカフェの事か?」

 カフェができることは結構昔から知っていたが、つい最近オープンした綺麗な外見のお洒落なカフェ。
 そんなお洒落なカフェに一人で行く勇気がない俺はまだ一度も行っていない。
 
「でもなんで俺とカフェなんて? 一緒に行く相手なら他にも居るだろ」
 
 愛奈からの誘いなら殆どの生徒は喜んで付き合うだろう。
 それかただ隣の席ってだけで誘ってきたのか?
 でもなんで二人でカフェに行かないといけないんだ? もしかして愛奈も俺と同じで一人で行く勇気がないのか?
 
「どうせ暇なんだから良いでしょ?」
「確かに暇だけど……」

 愛奈の言う通り俺はこの後の用事なんて一切ない。
 学校から徒歩十分ほどの場所にあるアパートに帰ったら直ぐに制服から私服に着替え、ベッドに寝転がってスマホを見て時間を潰すだけだ。
 
「なら良いじゃない」

 愛奈は笑顔でそう言った。
 そしてスマホを取り出して画面を俺に見せてきた。

「パフェ?」

 愛奈のスマホには巨大なパフェが映し出されていた。
 写真を見る限り、通常のパフェの二倍……いや、三倍はありそうだ。
 最下層にはマンゴーとメロンがあり、その上にバニラアイスクリームがあり、生クリームそして苺の順で乗せられている。
 生クリームにはイチゴソースがかけられていて美味しそうだ。

「うん。今日からあのカフェでこのパフェが販売されるの」
「それが食べたいと」

 愛奈はもう一度可愛らしく小さく頷いた。
 
「でもこれね、カップル限定なの。だからね、遥人には私の彼氏のフリをしてほしいの」
「…………は? 彼氏のフリ? 俺が?」

 俺は自分の顔を指さしそう言った。
 
「そ、そうよ! あなたに頼んでるの!」
「なんで俺なんだよ、別にお前なら誰に頼んでも快く受け入れてくれるだろ」
「ならあなただって快く受け入れてくれるわよね?」
「なんでだよ」
「だってあなた、今さっき私の頼みなら誰でも快く受け入れてくれるだろって言ったじゃない? なら当然あなたも入るでしょ?」
「…………お前って意外と頭回るんだな」

 まさか愛奈からそう反撃が来るとは思ってもいなかった。
 確かに愛奈はそこまで頭が悪い方ではなかった。定期テストでも学年順位が毎回五十位以内には入っていた。
 俺が通っている学校は上位五十位は廊下に名前と点数が張り出される。
 そこに愛奈の名前は毎回入っていたのを確認している。
 お金持ちなだけあって、やはり優秀な家庭教師でも雇っているのだろうか。

「私だってそれくらいの事は気づくわよ」
「そうだな、少し下に見すぎていたかもしれない」
「分かればいいのよ。それより、早く行くわよ」
「俺が行くのは決まってるんだな」

 愛奈を好き男子生徒は数えられないほど居る。
 そんな愛奈とこうして喋っているだけでも視線を集めているというのに、一緒に歩いているところまで見られたら今の何倍も注目を浴びるから嫌なんだけどな……
 そんな俺の事なんてお構いないしに愛奈は「当たり前でしょ?」と言って席を立ち、カバンを手にかけた。

「あ、ちょっと待って」

 教室を出る直前、愛奈はそう言って立ち止った。
 そして再びスマホを取り出した。

「どうかしたのか? もしかしてさっきのパフェ、明日からだったとか?」
「違うわよ、そんな間違いするわけないでしょ? 玲奈れなに連絡するのよ」
「玲奈?」
「私の家で雇っている私専属のメイドよ。何時も玲奈が送迎してくれるのだけれど、用事ができたから送迎は必要ないって連絡するのよ。もう来てもらっているから玲奈には申し訳ないけど」

 そういえば、愛奈は毎日車で学校を通っていたんだったな。
 
「よし! 行こっか!」

 愛奈は満面の笑みでそう言って教室を出た。
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