バツイチアラフォー女とUMA (未確認生物)の同居生活

京川夏女

文字の大きさ
10 / 35

#8【持つ者と持たざる者】

しおりを挟む
「転生とか転移とかループする主人公って、スキル高過ぎない?!もはや、共感出来なくなってきたわ~」
『元々[共感]していたことに驚くな』

本日のテレワーク業務も終了し、出掛ける予定のない私は簡単に夕食を済ませ1人侘しく梅酒を飲みしながらUMAに絡む。

「そこは恋愛小説を読む醍醐味でしょーよ。主人公に自分を置き換えて楽しむものでしょ~」
『まー、分からなくもないな』
「おっ!UMAさんも置き換えちゃったりするの?!」

いつも偉そうな俺様超絶美形UMAが案外可愛いことしてるんじゃな~いと、ニヤニヤしながら揶揄うように言うと、

『はっ、それはないな。[人間の心理としてあるんだろうな]ということだ』
「何だよ、つまんない奴だなー」

私はぷくーっと頬を膨らませながら「プンプン」とUMAを睨む。

『はっ、何だ?歳で頬がけて来たから意識的に空気を入れているのか?』

UMAの口が愉しそうに弧を描き、私に容赦のない言葉を投げかけて来た。確かに……年甲斐のない事をしましたよっ!恋愛小説の主人公とかが怒るとするでしょー!

梅酒6杯目となり、完全に酔いが回って来ているようだ。いつもなら絶対しないことをしてしまった………酔いと羞恥心で顔が火照る。

とりあえず、話しの方向性を少し変えることにする。

「じゃ、あれは?攻略対象のイケメン達がこぞって主人公を好きになるとかは?なくない?」
『逆ハーか?何が悪いんだ?』
「だって、元々断罪されるような悪役令嬢が[転生]とか[ループ]とか認識しただけでモテ期到来するのはどうなの?」
『容姿も良いからだろう』

そうでした、悪役令嬢は家柄が良いだけでなく容姿端麗な設定が大半だ。

「いや、家柄と容姿は元の設定のままでしょ?それに加えて性格が良くなった程度であんなにモテるかな?!」
『いや、むしろ、容姿と性格の他にあと何が必要なんだ?』

確かに!!と、一瞬怯んだが持ち直す。

「いや………いやいやいやいや、容姿も性格も好みは千差万別でしょっ!」
『なるほどな。確かに、嗜好は人それぞれだな』
「でしょ、こぞって主人公を好きになるのはどうでしょう?!」
『アイドルとかはそんなもんだろう。万人受けする容姿と性格はあるだろうからな。』

畜生……何も言えないっ。

返す言葉が見つからない私を尻目にUMAは続ける。

『話の都合上もあるだろうしな。それに主人公に自己投影するならモテる方が嬉しいんじゃないか?お前のような2次元に恋愛を求める側としては』
「身も蓋もないな!」
『つまり、恋愛面も含めて主人公に自己投影はするけど、モテ過ぎるとそれはそれで共感しにくくなり投影出来なくなる——と言うことだろ?ふっ、可哀想だな』
「分析要らない」

真綿で首を絞めるように追い詰められて行く……堪らず私はUMAに掌を向け、それ以上の発言を制止する。

話を戻そう…

「性格はまぁ、断罪を避ける為に良くなるのは分かるけど、スキルは?経営なり、料理なり、コミュ力なり、高すぎない?!しかも、転生前は大体モテてなかったりパッとしなかったりなのに、異世界では何もかも上手く行き過ぎると思うんだけど?!」
『いや、そう言うものだろ?ご都合主義』
「……あ、思い出した。そうでしたねぇ~(ご都合主義)」

いつかのUMAとのやりとりを思い出し、私は遠い目をする。そして溜息を吐きながら訴える。

「あ~、現実はこんなに厳しいのにな~私も転生したーーい!!」

悲痛に叫ぶ私にUMAは眉尻を下げ、卑下するように口を開く。

『はっ、バツイチのアラフォーじゃーな、転生したところで——』

プシャーーー

殺虫剤噴射っ!!今日の会話はこれにて終了!!!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...