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#22【10年目の真実〜其ノニ〜】
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「で?どうして咲ちゃんのお家にルーラー様がいらっしゃるのかな?」
元旦那はいつもの様子に戻り、柔らかな笑顔を浮かべながら言って来た。
「「ルーラー様?」」
私と雅が同時に尋ねる。
「この世界を統べる方達の総称で、君達でも発音出来るように僕達が作った言葉だよ。」
(〈ルーラー様〉に〈僕達が作った〉…ねぇ……本当に人間じゃなかった訳ね…)
改めて元旦那が人間ではなかったと言う現実を突きつけられ、私の胸が何となく切なさを覚える。
「まだ動ける個体が残っていたとはな。」
元旦那にアールが言うと、奴はニッコリと微笑みながら答える。
「それはそちらも一緒でしょ?未だに留まってる方がいらっしゃるとは思いもしませんでしたよー」
「………」
何となく含みのある言い方に私と雅は会話に入れない。しかし、我等が雅さんは怯まない。人ならざる者2体(?2匹?やっぱり2人?)を前にその場を仕切り出す。
「それで?貴方は別れた妻にどんな用事で来た訳?」
「ふふ、やっぱり君は苦手だなぁ。」
口端を上げ奴は答える。弓形に細められた目の奥は笑ってはいない。
「そちらのルーラー様から聞いてるんでしょ?僕が停止しない為に咲ちゃんが必要だって。」
私はコクリと喉を鳴らす。
「つまり、貴方にとって咲と会うのは停止しない為だけな訳ね?」
「ふふ、ほら、どんどん詰めてくる。そんな色気の無い言い方は好きじゃないんだけどなぁ。」
と答えながら奴は私を見て、ニッコリと笑って口を開く。
「僕とのSEX気持ち良いでしょ?」
(はい、それはもう)
私は無言を貫く——が、この無言が肯定の意味である事は皆にバレバレだろう……
「バランス取れてて良い関係だと思うけど?僕は停止しないで済むし、咲ちゃんは気持ち良いし、ね。」
奴はそう言いながら首を傾け、私にウィンクして来る。たじろぐ私を冷ややかに見下しながらアールが口を開く。
「原始に近い魂であれば人間である必要はないだろう。今の世でも探せば他の生物が居ると思うが?」
「え?人以外とも…その繋がれるって事?」
アールの言葉に雅が問いかける。その問いに元旦那が答える。
「僕達もルーラー様と一緒でどんな生物にも対応出来るように出来てるんだよ。新種の生物が誕生した時に先ずするのは、繁殖方法を教える事だからね。」
「それって、実技で?」
「そうだよー」
雅の更なる問いかけに元旦那は飄々と答える。私の脳内である考えがグルグルと巡る。
(えっ、って事は…)
「っ!アールもそう言う事するのっ!!?」
私は驚いて声を上げる。私の気迫に周りが呆気にとられた顔をしているのを見て自分の失言に気付く。そして慌ててゴニョゴニョと弁解する。
「…いや、別にアールとそう言う事したいとかそう言う訳ではなくて…その、この完璧な顔がどんな風にそう言う行為に及ぶのかなー…とか、その、考えた事もなかったから…ちょっと驚いただけであって……別に他意はないのです……」
居た堪れなくなり、早口なうえ後半はかなり尻窄みな言い方になってしまった。私の脳内に先日購入したバーガンディの紐パンが浮かぶ…が、私はその映像を振り払うように頭を左右に動かす。
そんな私に元旦那がふわりと微笑みながら言って来た。
「流石は原始の魂だね。ルーラー様にはより感じるモノがあるよねぇ。それより、ルーラー様に名前付けてるの?恐れ多いことするなー」
と、感心したように言う。話題が変わって助かった。そんな元旦那にアールが再び問いかける。
「俺の問いかけに対する答えはどうした?」
やはり絶世の美人が凄むと怖い…私の失言により緩んだ空気が張り詰める。
「だって、他の生物にとっては繁殖行為でしかないでしょ?僕は繁殖したい訳でもないし、そもそも出来ないしね。だったら、気持ちが良くて楽しめる方が良いでしょ?」
と、私の方を見ながら答える。二人を前にとてもじゃないが頷く事は出来ないが……その事に関しては元旦那サイドな為、理由には納得してしまう。しかし、アールの次の言葉に私は驚く。
「停止するまで50年以上はあるようだが、頻繁に咲と繋がるのは何故だ?」
(え?そうなの?そんなの分かるの?)
私は驚いてアールを見る。アールは私が言いたかった事を察っしたかのように答える。
「直接会えばその個体の状態が視えるからな。」
(便利ですねぇ~。ん?50年以上も停止しないの?じゃ、何でしたがるの?やっぱり私としたいってこと?)
「やっぱりルーラー様には分かっちゃいますよね。でも…人間ってすぐ死んじゃうでしょ?いつ咲ちゃんの器が亡くなるか分からないから……念の為?」
(っ!?何とっ!私が生きてるギリギリまで充電したいが為だけのようだ?!こいつ、本気で人の事、コンセントの差し込み口としか思ってない訳っ!?)
流石の発言に雅もアールも憐れんだ目で私を見てくる…二人の視線を感じる前は怒りの感情しかなかったのだが……その視線の方が辛いです……私は居た堪れず視線を落とす。
「何でそんなに停止したくないの?人間だっていつかは死ぬし、貴方はもう既に人間以上に十分この世界を生きて来たと思うけど?」
雅の問い掛けに奴は雅に視線を移す。だがその瞳には雅はおろか、私達も何も写してはいない様に見える。奴は何処か遠くを見つめながら語り出す。
「そうだね、1秒でも長く動いていたいんだよね。僕はルーラー様のように永遠の存在ではないし、君達と違ってこの器しかないから、解脱も出来ないし、転生もない。僕の停止は永遠の死——本当に終わりなんだ。」
……重い……まかさ奴がそんな闇を抱えて居たなんて思いもしなかった。いつもフワフワと掴み所の無い根無草だと思っていたのに…シリアスな雰囲気に私は黙り込む。
しかし、そんな空気を物ともせずに雅とアールが問いかける。
「死ぬのが怖いって事?貴方はその生にも、この世界にも執着している様には見えないけど?」
「何か目的があるのか?」
(重い話題に引いてない…流石だわ、二人共。言ってやれ、言ってやれ!)
私は完全にガヤに徹する。二人の問いかけに奴は切なそうに微笑んで答える。
「僕の魂の番ちゃんを見つける為だよ」
「「!?」」
私と雅は顔を見合わせ驚くが、アールは答える。
「そんなモノはない。一部で勘違いしている————が居るとは聞いていたが、悪いがそんな風には作っていない。」
(魂の番?そん風には作っていない?何か一部聞き取れない言葉も入って入ってましたよ?)
「ルーラー様、————は咲ちゃん達では聞き取れないですよ。僕達の事はコピーで。」
奴の言葉にアールは頷き、話を続ける。
「分かった。コピー達の中で〈魂の番〉を見つけ、繋がる事で俺達のようになれるという幻想を抱いているモノがいると聞いていたが、それは全くの出鱈目だ。」
……何か…悲しい話ですかね?私は再びシリアス雰囲気を覚悟する。すると奴は寂しそうに微笑んで答えた。
「ふっ、そんな事、分かってますよ。僕は別にルーラー様のようなりたい訳じゃ無いんで。僕が彼女の事を最愛の意味を込めてそう呼んでいるだけで…僕に〈ナツ〉と言う名をくれた…僕の瞳の色がヘーゼルナッツ見たいで美味しそうって言って……ふふ」
そう言うとナツは悲しそうに微笑んでから、再び話し始めた。
「彼女は…彼女の器は……もう何百年も前に流行り病で亡くなってしまったから…僕はずっと彼女の今の器を探し続けてる…だがら僕は1秒でも長く動き続けていたいんだよね。」
そう言って再び悲しそうに微笑む。……この世の中で最も薄っぺらく、最も軽薄で、最も碌でもない生き物だと思っていた元旦那のナツ……何と、たった一人の愛する魂を求めて何世紀も生き続けて来たらしい……
結婚している間、何日も何週間も何ヶ月も奴がふらっと居なくなっていたのは、その彼女を探していたのだろう……一途な上に…純愛過ぎでしょっ!?
思いもよらない10年目の真実に私はショックで言葉を失くす。正直、こいつよりは感情なり、愛情なりは人として上だと思っていた…ショックだ……こいつより自分が人として劣っていると感じる日が来るなんて……
そして、10年間連れ添ったナツが自分以外に向けて、一途な純愛の想いを語っているのに…私は恋愛感情による喪失感を一切感じていない。
(やっぱり、人として感情の機微が著しく欠如しているんだな…)
と改めて気付き、自傷気味に笑う。そんな私の様子を雅は心配そうに見ている。そう言う落ち込みではないのだと説明したいが…今は未だ続くナツの話に耳を傾ける。
「——彼女が5歳の時に偶然出会ってね。その頃から大切に大切に見守って、邪魔な虫が付かないように早々に繋がって、大切に大切に育んでいたのに……本当に…彼女程の存在は居ないよ…今でも残念でならない……魂だけじゃなく、器も処女なんて最高だったのにな。」
(っ!はい、やっぱり最低っ!とんだロリ発言が出ましたよ!?いや、ペドフィリアか?!何だよ、其の処女至高主義!?クソ思想だなっ!)
しんみりムードが瞬時に吹き飛ぶ。〈一途〉と〈純愛〉って何だろうねっ!やっぱりこいつはコンプライアンス的にも倫理的にもNGだなっ!
3人共、ゴミを見る様な目で奴を見る。当時の話に夢中なナツはその様子に気付きもせずに更に大きな爆弾を落とす。
「ほら、君が真っ新なのは魂だけでしょ?」
(っ!!ほざくなっ!人を汚れみたいに言いやがって!処女がそんなに偉いのか!?結局は膜があるかの違いだろっ!破るのがそんなに至高なのか!破った後は皆同じだろーっ?!)
私は脳内で怒りを爆発させる。怒りで肩が震える。固く握り締めた拳は爪のあたる部分の血が止まり、周辺の皮膚が白くなっている。
そんな私の様子に気付いた雅が私の肩を優しく叩いて宥める。漸く私の怒りに気付いたナツがいつもの調子で言ってくる。
「咲ちゃんが僕の可愛い奥さんである事に変わりはないよ?」
(っ?!——甘い声で囁かないで~)
私は瞳を大きくし、口元が緩むのを何とか堪えていると私の脇腹に激痛が走る。
「痛っ!痛い痛い、ちょっ、雅っ!?」
簡単に陥落しそうになっている私に気付いた雅が、かなりのお怒りな表情で私の脇腹を抓って来たのだ。しかもかなり本気の強さで!そして、ナツに向かって口を開く。
「奥さんじゃないですよね?離婚届け出してるんだから。」
「ん?離婚届け?——僕の気持ち的に咲ちゃんが可愛い奥さんなのは変わらないよ?」
「ちょっ!待っ!最初のっ!!離婚届で何で疑問系?!離婚届出してるんでしょーね?!」
私はテーブルを叩きながら声を上げて立ち上がる。テーブルに左手を肘を突き、右手の人差し指でナツを指差しながら詰め寄る。そんな私にいつもの飄々とした様子で言い放つ。
「出してないよ?」
「「!?」」
私と雅は目を見開き、顔を見合わせる。「どう言う事っ?!」と私に詰め寄る雅に「こっちの方が聞きたい!」と首と手を左右に振って、自分は何も知らないアピールをする。そんな私達にナツは平然と言って退ける。
「だって僕、戸籍とかないしね。」
——部屋に沈黙が流れる——
(………ん?つまり?アレですか?)
「私…離婚どころか、結婚もして無かったって事?」
「うん、そう言う事になるよね。だって僕、戸籍ないからね。」
ナツは今日一番の笑顔でもう一度答える。
——部屋に再び沈黙が流れる——
10年目の真実っ!私は驚愕の表情で暫くの間固まった。部屋に長い沈黙が流れた後、アールが口を開く。
「——まぁ、そうだろうな。」
分かってたかのようなアールの相槌に、私は何時ぞやの油の切れたブリキ人形のようにギギギギギとアールの方に首を向ける。
アールは視線を斜め上に向け、私の視線をかわす。次に私はギギギギギと雅の方に首を向ける。雅は私の肩を優しくポンポンと叩きながら、慰めるように呟く。
「……良かった……ね…?戸籍も真っ新みたいよ?」
10年目の真実っ!!!
元旦那はいつもの様子に戻り、柔らかな笑顔を浮かべながら言って来た。
「「ルーラー様?」」
私と雅が同時に尋ねる。
「この世界を統べる方達の総称で、君達でも発音出来るように僕達が作った言葉だよ。」
(〈ルーラー様〉に〈僕達が作った〉…ねぇ……本当に人間じゃなかった訳ね…)
改めて元旦那が人間ではなかったと言う現実を突きつけられ、私の胸が何となく切なさを覚える。
「まだ動ける個体が残っていたとはな。」
元旦那にアールが言うと、奴はニッコリと微笑みながら答える。
「それはそちらも一緒でしょ?未だに留まってる方がいらっしゃるとは思いもしませんでしたよー」
「………」
何となく含みのある言い方に私と雅は会話に入れない。しかし、我等が雅さんは怯まない。人ならざる者2体(?2匹?やっぱり2人?)を前にその場を仕切り出す。
「それで?貴方は別れた妻にどんな用事で来た訳?」
「ふふ、やっぱり君は苦手だなぁ。」
口端を上げ奴は答える。弓形に細められた目の奥は笑ってはいない。
「そちらのルーラー様から聞いてるんでしょ?僕が停止しない為に咲ちゃんが必要だって。」
私はコクリと喉を鳴らす。
「つまり、貴方にとって咲と会うのは停止しない為だけな訳ね?」
「ふふ、ほら、どんどん詰めてくる。そんな色気の無い言い方は好きじゃないんだけどなぁ。」
と答えながら奴は私を見て、ニッコリと笑って口を開く。
「僕とのSEX気持ち良いでしょ?」
(はい、それはもう)
私は無言を貫く——が、この無言が肯定の意味である事は皆にバレバレだろう……
「バランス取れてて良い関係だと思うけど?僕は停止しないで済むし、咲ちゃんは気持ち良いし、ね。」
奴はそう言いながら首を傾け、私にウィンクして来る。たじろぐ私を冷ややかに見下しながらアールが口を開く。
「原始に近い魂であれば人間である必要はないだろう。今の世でも探せば他の生物が居ると思うが?」
「え?人以外とも…その繋がれるって事?」
アールの言葉に雅が問いかける。その問いに元旦那が答える。
「僕達もルーラー様と一緒でどんな生物にも対応出来るように出来てるんだよ。新種の生物が誕生した時に先ずするのは、繁殖方法を教える事だからね。」
「それって、実技で?」
「そうだよー」
雅の更なる問いかけに元旦那は飄々と答える。私の脳内である考えがグルグルと巡る。
(えっ、って事は…)
「っ!アールもそう言う事するのっ!!?」
私は驚いて声を上げる。私の気迫に周りが呆気にとられた顔をしているのを見て自分の失言に気付く。そして慌ててゴニョゴニョと弁解する。
「…いや、別にアールとそう言う事したいとかそう言う訳ではなくて…その、この完璧な顔がどんな風にそう言う行為に及ぶのかなー…とか、その、考えた事もなかったから…ちょっと驚いただけであって……別に他意はないのです……」
居た堪れなくなり、早口なうえ後半はかなり尻窄みな言い方になってしまった。私の脳内に先日購入したバーガンディの紐パンが浮かぶ…が、私はその映像を振り払うように頭を左右に動かす。
そんな私に元旦那がふわりと微笑みながら言って来た。
「流石は原始の魂だね。ルーラー様にはより感じるモノがあるよねぇ。それより、ルーラー様に名前付けてるの?恐れ多いことするなー」
と、感心したように言う。話題が変わって助かった。そんな元旦那にアールが再び問いかける。
「俺の問いかけに対する答えはどうした?」
やはり絶世の美人が凄むと怖い…私の失言により緩んだ空気が張り詰める。
「だって、他の生物にとっては繁殖行為でしかないでしょ?僕は繁殖したい訳でもないし、そもそも出来ないしね。だったら、気持ちが良くて楽しめる方が良いでしょ?」
と、私の方を見ながら答える。二人を前にとてもじゃないが頷く事は出来ないが……その事に関しては元旦那サイドな為、理由には納得してしまう。しかし、アールの次の言葉に私は驚く。
「停止するまで50年以上はあるようだが、頻繁に咲と繋がるのは何故だ?」
(え?そうなの?そんなの分かるの?)
私は驚いてアールを見る。アールは私が言いたかった事を察っしたかのように答える。
「直接会えばその個体の状態が視えるからな。」
(便利ですねぇ~。ん?50年以上も停止しないの?じゃ、何でしたがるの?やっぱり私としたいってこと?)
「やっぱりルーラー様には分かっちゃいますよね。でも…人間ってすぐ死んじゃうでしょ?いつ咲ちゃんの器が亡くなるか分からないから……念の為?」
(っ!?何とっ!私が生きてるギリギリまで充電したいが為だけのようだ?!こいつ、本気で人の事、コンセントの差し込み口としか思ってない訳っ!?)
流石の発言に雅もアールも憐れんだ目で私を見てくる…二人の視線を感じる前は怒りの感情しかなかったのだが……その視線の方が辛いです……私は居た堪れず視線を落とす。
「何でそんなに停止したくないの?人間だっていつかは死ぬし、貴方はもう既に人間以上に十分この世界を生きて来たと思うけど?」
雅の問い掛けに奴は雅に視線を移す。だがその瞳には雅はおろか、私達も何も写してはいない様に見える。奴は何処か遠くを見つめながら語り出す。
「そうだね、1秒でも長く動いていたいんだよね。僕はルーラー様のように永遠の存在ではないし、君達と違ってこの器しかないから、解脱も出来ないし、転生もない。僕の停止は永遠の死——本当に終わりなんだ。」
……重い……まかさ奴がそんな闇を抱えて居たなんて思いもしなかった。いつもフワフワと掴み所の無い根無草だと思っていたのに…シリアスな雰囲気に私は黙り込む。
しかし、そんな空気を物ともせずに雅とアールが問いかける。
「死ぬのが怖いって事?貴方はその生にも、この世界にも執着している様には見えないけど?」
「何か目的があるのか?」
(重い話題に引いてない…流石だわ、二人共。言ってやれ、言ってやれ!)
私は完全にガヤに徹する。二人の問いかけに奴は切なそうに微笑んで答える。
「僕の魂の番ちゃんを見つける為だよ」
「「!?」」
私と雅は顔を見合わせ驚くが、アールは答える。
「そんなモノはない。一部で勘違いしている————が居るとは聞いていたが、悪いがそんな風には作っていない。」
(魂の番?そん風には作っていない?何か一部聞き取れない言葉も入って入ってましたよ?)
「ルーラー様、————は咲ちゃん達では聞き取れないですよ。僕達の事はコピーで。」
奴の言葉にアールは頷き、話を続ける。
「分かった。コピー達の中で〈魂の番〉を見つけ、繋がる事で俺達のようになれるという幻想を抱いているモノがいると聞いていたが、それは全くの出鱈目だ。」
……何か…悲しい話ですかね?私は再びシリアス雰囲気を覚悟する。すると奴は寂しそうに微笑んで答えた。
「ふっ、そんな事、分かってますよ。僕は別にルーラー様のようなりたい訳じゃ無いんで。僕が彼女の事を最愛の意味を込めてそう呼んでいるだけで…僕に〈ナツ〉と言う名をくれた…僕の瞳の色がヘーゼルナッツ見たいで美味しそうって言って……ふふ」
そう言うとナツは悲しそうに微笑んでから、再び話し始めた。
「彼女は…彼女の器は……もう何百年も前に流行り病で亡くなってしまったから…僕はずっと彼女の今の器を探し続けてる…だがら僕は1秒でも長く動き続けていたいんだよね。」
そう言って再び悲しそうに微笑む。……この世の中で最も薄っぺらく、最も軽薄で、最も碌でもない生き物だと思っていた元旦那のナツ……何と、たった一人の愛する魂を求めて何世紀も生き続けて来たらしい……
結婚している間、何日も何週間も何ヶ月も奴がふらっと居なくなっていたのは、その彼女を探していたのだろう……一途な上に…純愛過ぎでしょっ!?
思いもよらない10年目の真実に私はショックで言葉を失くす。正直、こいつよりは感情なり、愛情なりは人として上だと思っていた…ショックだ……こいつより自分が人として劣っていると感じる日が来るなんて……
そして、10年間連れ添ったナツが自分以外に向けて、一途な純愛の想いを語っているのに…私は恋愛感情による喪失感を一切感じていない。
(やっぱり、人として感情の機微が著しく欠如しているんだな…)
と改めて気付き、自傷気味に笑う。そんな私の様子を雅は心配そうに見ている。そう言う落ち込みではないのだと説明したいが…今は未だ続くナツの話に耳を傾ける。
「——彼女が5歳の時に偶然出会ってね。その頃から大切に大切に見守って、邪魔な虫が付かないように早々に繋がって、大切に大切に育んでいたのに……本当に…彼女程の存在は居ないよ…今でも残念でならない……魂だけじゃなく、器も処女なんて最高だったのにな。」
(っ!はい、やっぱり最低っ!とんだロリ発言が出ましたよ!?いや、ペドフィリアか?!何だよ、其の処女至高主義!?クソ思想だなっ!)
しんみりムードが瞬時に吹き飛ぶ。〈一途〉と〈純愛〉って何だろうねっ!やっぱりこいつはコンプライアンス的にも倫理的にもNGだなっ!
3人共、ゴミを見る様な目で奴を見る。当時の話に夢中なナツはその様子に気付きもせずに更に大きな爆弾を落とす。
「ほら、君が真っ新なのは魂だけでしょ?」
(っ!!ほざくなっ!人を汚れみたいに言いやがって!処女がそんなに偉いのか!?結局は膜があるかの違いだろっ!破るのがそんなに至高なのか!破った後は皆同じだろーっ?!)
私は脳内で怒りを爆発させる。怒りで肩が震える。固く握り締めた拳は爪のあたる部分の血が止まり、周辺の皮膚が白くなっている。
そんな私の様子に気付いた雅が私の肩を優しく叩いて宥める。漸く私の怒りに気付いたナツがいつもの調子で言ってくる。
「咲ちゃんが僕の可愛い奥さんである事に変わりはないよ?」
(っ?!——甘い声で囁かないで~)
私は瞳を大きくし、口元が緩むのを何とか堪えていると私の脇腹に激痛が走る。
「痛っ!痛い痛い、ちょっ、雅っ!?」
簡単に陥落しそうになっている私に気付いた雅が、かなりのお怒りな表情で私の脇腹を抓って来たのだ。しかもかなり本気の強さで!そして、ナツに向かって口を開く。
「奥さんじゃないですよね?離婚届け出してるんだから。」
「ん?離婚届け?——僕の気持ち的に咲ちゃんが可愛い奥さんなのは変わらないよ?」
「ちょっ!待っ!最初のっ!!離婚届で何で疑問系?!離婚届出してるんでしょーね?!」
私はテーブルを叩きながら声を上げて立ち上がる。テーブルに左手を肘を突き、右手の人差し指でナツを指差しながら詰め寄る。そんな私にいつもの飄々とした様子で言い放つ。
「出してないよ?」
「「!?」」
私と雅は目を見開き、顔を見合わせる。「どう言う事っ?!」と私に詰め寄る雅に「こっちの方が聞きたい!」と首と手を左右に振って、自分は何も知らないアピールをする。そんな私達にナツは平然と言って退ける。
「だって僕、戸籍とかないしね。」
——部屋に沈黙が流れる——
(………ん?つまり?アレですか?)
「私…離婚どころか、結婚もして無かったって事?」
「うん、そう言う事になるよね。だって僕、戸籍ないからね。」
ナツは今日一番の笑顔でもう一度答える。
——部屋に再び沈黙が流れる——
10年目の真実っ!私は驚愕の表情で暫くの間固まった。部屋に長い沈黙が流れた後、アールが口を開く。
「——まぁ、そうだろうな。」
分かってたかのようなアールの相槌に、私は何時ぞやの油の切れたブリキ人形のようにギギギギギとアールの方に首を向ける。
アールは視線を斜め上に向け、私の視線をかわす。次に私はギギギギギと雅の方に首を向ける。雅は私の肩を優しくポンポンと叩きながら、慰めるように呟く。
「……良かった……ね…?戸籍も真っ新みたいよ?」
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