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第1章 異世界でも俺はこき使われる
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「え、お前、なんでそんなところいんの?」
「いやいや、アンタが倒したモンスターが俺に覆い被さったんですよ!」
「へぇ、人がいたんだ。気づかなかった。お前、影が薄いな」
ほっとけ!
けれど助けてもらう手前、邪険にはできない。
俺は浮き上がるこめかみの青筋を撫でつけてなんとか怒りを抑えた。
「お願いします! 助けてください!」
残りの力を振り絞って叫ぶ。
しかし男は簡単には頷かなかった。
「どうしよっかなぁ~」
「は?」
もったいぶった言い方に俺は思わず眉間に皺を寄せた。
「俺、今モンスター倒して疲れたしなぁ」
は? え? 嘘だろ?
男の非情な反応に絶句した。
普通、人が困っていたら助けるもんだろ!
「まぁでもお前の気持ち次第だな」
「は?」
唐突に男が手を差し出した。
てっきり俺を引き出してくれるものだと思い手を伸ばすとペちりとはたかれた。
「違ぇよ。なんで俺が男と手なんか繋がねぇといけないんだよ」
俺の手を汚らしいもののような目つきで見て男は吐き捨てた。
「はぁ? じゃあ今の手はなんだよ!」
「決まってるだろ。救出代、一万ピーロだ」
「はぁ!?」
一万ピーロがどのくらいするのか正直分からないが、金を請求されていることだけは分かった。
人が目の前で困っているというのに、金を要求するとか……こいつ、クズか!
慶介も大概のクズだったが、この男も負けず劣らずのクズだ。
「どうする? 俺はどっちでもいいぜ。ただ、ここはモンスターがウジャウジャいる森だ。次に来るのはお前を食べるためにやってきたモンスターかもしれないぜ」
にやにやと笑う男の顔面に、届くことなら拳をめり込ませてやりたかった。
「……あの、たいへん申し訳ないんですけど、金は持っていないです」
「はぁ!? じゃあ用はねぇ。せめてモンスターに食べられる前にここで餓死することを祈っておいてやるよ」
「いやいや待て待て待て!」
どんだけ薄情なんだ!
金がないと分かるや否や、踵を返す男を呼び止めるが男の足は遠くへ行ってしまった。
「そ、そんなぁ……」
まさか、異世界でこんな死に方するなんて……。
がくりと項垂れて、涙が滲む溜め息を漏らしていると、
ザッ、ザッ、ザッ……--
力強く規則正しい足音が近づいてきた。
その足音の方を向こうとした瞬間、体の上にのしかかる重さがなくなった。
「え……!」
驚いて顔を上げると、黒髪の男がモンスターを持ち上げていた。
切れ長の目は澄んだ青色で、冷たくこちらを見下ろしていたが、その秘境の湖のような綺麗な瞳に思わず見とれて動けなかった。
「……早く出ろ」
「あ、は、はい!」
男に促され、俺は慌ててモンスターの体の下から這い出した。
先ほどの薄情な男に比べ、低く暗い声だったが、どこか優しさを感じるものだった。
「いやいや、アンタが倒したモンスターが俺に覆い被さったんですよ!」
「へぇ、人がいたんだ。気づかなかった。お前、影が薄いな」
ほっとけ!
けれど助けてもらう手前、邪険にはできない。
俺は浮き上がるこめかみの青筋を撫でつけてなんとか怒りを抑えた。
「お願いします! 助けてください!」
残りの力を振り絞って叫ぶ。
しかし男は簡単には頷かなかった。
「どうしよっかなぁ~」
「は?」
もったいぶった言い方に俺は思わず眉間に皺を寄せた。
「俺、今モンスター倒して疲れたしなぁ」
は? え? 嘘だろ?
男の非情な反応に絶句した。
普通、人が困っていたら助けるもんだろ!
「まぁでもお前の気持ち次第だな」
「は?」
唐突に男が手を差し出した。
てっきり俺を引き出してくれるものだと思い手を伸ばすとペちりとはたかれた。
「違ぇよ。なんで俺が男と手なんか繋がねぇといけないんだよ」
俺の手を汚らしいもののような目つきで見て男は吐き捨てた。
「はぁ? じゃあ今の手はなんだよ!」
「決まってるだろ。救出代、一万ピーロだ」
「はぁ!?」
一万ピーロがどのくらいするのか正直分からないが、金を請求されていることだけは分かった。
人が目の前で困っているというのに、金を要求するとか……こいつ、クズか!
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「どうする? 俺はどっちでもいいぜ。ただ、ここはモンスターがウジャウジャいる森だ。次に来るのはお前を食べるためにやってきたモンスターかもしれないぜ」
にやにやと笑う男の顔面に、届くことなら拳をめり込ませてやりたかった。
「……あの、たいへん申し訳ないんですけど、金は持っていないです」
「はぁ!? じゃあ用はねぇ。せめてモンスターに食べられる前にここで餓死することを祈っておいてやるよ」
「いやいや待て待て待て!」
どんだけ薄情なんだ!
金がないと分かるや否や、踵を返す男を呼び止めるが男の足は遠くへ行ってしまった。
「そ、そんなぁ……」
まさか、異世界でこんな死に方するなんて……。
がくりと項垂れて、涙が滲む溜め息を漏らしていると、
ザッ、ザッ、ザッ……--
力強く規則正しい足音が近づいてきた。
その足音の方を向こうとした瞬間、体の上にのしかかる重さがなくなった。
「え……!」
驚いて顔を上げると、黒髪の男がモンスターを持ち上げていた。
切れ長の目は澄んだ青色で、冷たくこちらを見下ろしていたが、その秘境の湖のような綺麗な瞳に思わず見とれて動けなかった。
「……早く出ろ」
「あ、は、はい!」
男に促され、俺は慌ててモンスターの体の下から這い出した。
先ほどの薄情な男に比べ、低く暗い声だったが、どこか優しさを感じるものだった。
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