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第1章 異世界でも俺はこき使われる
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「あ、ありがとうございます……! 本当に命の恩人です!」
俺は男の足元で土下座してお礼を言った。
「……別にいい。顔を上げろ」
男に言われ顔を上げた。
あらためて見ると恐ろしいほど整った顔をした男だった。
そんな綺麗な顔なのに、腰に携える大剣に見合うしっかりとした体つきをしていて、自分の貧相な顔と体と比べるとなんだか泣きたくなってきた。
「おいおいおいおい! 何、助けてんだよ!」
少し離れたところから、先ほどの薄情な男と思われる奴が目尻を吊り上げてこちらにやって来た。
男がドシドシと歩くたびに、ひとつに束ねた綺麗な金髪が背中で跳ねた。
「邪魔すんなよ! もう少しで金を払うって泣きついてくるって寸法だったのに!」
「……つくずく最低な奴だな」
黒髪の男が目を眇めて冷たい視線を向けた。
いや、全くもって本当に。
俺も共感して頷いた。
「うるせぇ! 世の中金だろうが!」
うわぁ……。マジで最低だコイツ……。
最低さに輪をかける台詞を平然と口にする男に、軽蔑の視線を向けていると、
「あはは~! アーロンの最低っぷりが炸裂だね~」
茂みからガサガサと音を立てながら、自分と同じ歳くらいか少し幼く見える少年が出てきた。
身長も同じくらいの黒目黒髪で親近感を一瞬覚えたが、焦点の合わない暗い瞳と、その下で不自然なほど陽気に笑みを吊り上げている口元になんとも言えない不気味さを感じた。
目が笑ってねぇ……!
笑っていない目をフォローするように大袈裟に笑う声がなんだか信用ならない感じがした。
「ふふふ、本当にアーロンは最低だね、チェルノ」
影のように寄り添うような近さで黒髪の少年の隣を歩く茶髪の男が、クスクスと笑いながら言った。
男が歩くたびに弓の束と弓矢が背中で揺れる。
恐らく弓使いだろう。
だが、その柔らかな微笑みと甘い顔立ちにはまるで王子か貴族のような気品が漂っていて、とても戦う姿なんて想像できない。
けど、正直一番話が通じそうと思った。
クズは論外だし、黒髪の少年はイッてる感じだし、俺を助けてくれた男は情はありそうだけど顔が怖い。
「うるせー、お前がこの世で一番最低だクソ野郎」
チェルノと呼ばれた少年は、弓使いの青年に視線を向けることもなく不気味な笑みを浮かべたまま淡々と辛辣な言葉を放った。
こわっ……!
笑ってない目がさらに闇の色を濃くしている。
「ふふ、チェルノのこの世で一番になれるなんて幸せだなぁ」
弓使いの青年はへこたれることなく笑顔でチェルノの言葉を受け流す。
どんだけポジティブ解釈だよ……。
ある意味羨ましいほどだ。
「……ところでお前、こんなところで一人で危険だ。親とはぐれたのか?」
黒髪の男が無表情のまま訊ねてきた。
こちらを心配しての優しい問い掛けだが、男の醸し出す威圧感や大きな体のせいで尋問のように聞こえるから不思議だ。
つーか、親とはぐれたって……、子供扱いかよ!
自分が大きいからって調子乗るなよ!
と、心の中で怒鳴ったが、もちろん口に出せることもなく……、
「あ、いえ、親は一緒じゃなくて……」
「そんな丸腰で、一人でこの森に来たのか?」
黒髪の男は信じられないという風に目を見開いて俺を凝視した。
俺は男の足元で土下座してお礼を言った。
「……別にいい。顔を上げろ」
男に言われ顔を上げた。
あらためて見ると恐ろしいほど整った顔をした男だった。
そんな綺麗な顔なのに、腰に携える大剣に見合うしっかりとした体つきをしていて、自分の貧相な顔と体と比べるとなんだか泣きたくなってきた。
「おいおいおいおい! 何、助けてんだよ!」
少し離れたところから、先ほどの薄情な男と思われる奴が目尻を吊り上げてこちらにやって来た。
男がドシドシと歩くたびに、ひとつに束ねた綺麗な金髪が背中で跳ねた。
「邪魔すんなよ! もう少しで金を払うって泣きついてくるって寸法だったのに!」
「……つくずく最低な奴だな」
黒髪の男が目を眇めて冷たい視線を向けた。
いや、全くもって本当に。
俺も共感して頷いた。
「うるせぇ! 世の中金だろうが!」
うわぁ……。マジで最低だコイツ……。
最低さに輪をかける台詞を平然と口にする男に、軽蔑の視線を向けていると、
「あはは~! アーロンの最低っぷりが炸裂だね~」
茂みからガサガサと音を立てながら、自分と同じ歳くらいか少し幼く見える少年が出てきた。
身長も同じくらいの黒目黒髪で親近感を一瞬覚えたが、焦点の合わない暗い瞳と、その下で不自然なほど陽気に笑みを吊り上げている口元になんとも言えない不気味さを感じた。
目が笑ってねぇ……!
笑っていない目をフォローするように大袈裟に笑う声がなんだか信用ならない感じがした。
「ふふふ、本当にアーロンは最低だね、チェルノ」
影のように寄り添うような近さで黒髪の少年の隣を歩く茶髪の男が、クスクスと笑いながら言った。
男が歩くたびに弓の束と弓矢が背中で揺れる。
恐らく弓使いだろう。
だが、その柔らかな微笑みと甘い顔立ちにはまるで王子か貴族のような気品が漂っていて、とても戦う姿なんて想像できない。
けど、正直一番話が通じそうと思った。
クズは論外だし、黒髪の少年はイッてる感じだし、俺を助けてくれた男は情はありそうだけど顔が怖い。
「うるせー、お前がこの世で一番最低だクソ野郎」
チェルノと呼ばれた少年は、弓使いの青年に視線を向けることもなく不気味な笑みを浮かべたまま淡々と辛辣な言葉を放った。
こわっ……!
笑ってない目がさらに闇の色を濃くしている。
「ふふ、チェルノのこの世で一番になれるなんて幸せだなぁ」
弓使いの青年はへこたれることなく笑顔でチェルノの言葉を受け流す。
どんだけポジティブ解釈だよ……。
ある意味羨ましいほどだ。
「……ところでお前、こんなところで一人で危険だ。親とはぐれたのか?」
黒髪の男が無表情のまま訊ねてきた。
こちらを心配しての優しい問い掛けだが、男の醸し出す威圧感や大きな体のせいで尋問のように聞こえるから不思議だ。
つーか、親とはぐれたって……、子供扱いかよ!
自分が大きいからって調子乗るなよ!
と、心の中で怒鳴ったが、もちろん口に出せることもなく……、
「あ、いえ、親は一緒じゃなくて……」
「そんな丸腰で、一人でこの森に来たのか?」
黒髪の男は信じられないという風に目を見開いて俺を凝視した。
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