勇者様の荷物持ち〜こんなモテ期、望んでない!〜

綺沙きさき(きさきさき)

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第1章 異世界でも俺はこき使われる

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「自殺行為だな。つーかもしかして自殺目的でここに来たのか? それなら俺が楽に殺してやるよ。お代は、うーん、そうだな、三万ピーロくらいだな」

クズ野郎が笑顔で腰から大剣を抜いて構える。

「んなわけあるか!」

こんな人生で終わってたまるか!
というかもし死にたくなってもコイツにだけは絶対頼まねぇ!

自殺名所には心優しい言葉を並べた看板を百枚設置するよりもコイツ一人いた方が有効なんじゃないかと思えるほどだ。
きっとコイツにはびた一文やりたくねぇという強い気持ちが生きる意欲に変わるだろう。

「じゃあなんでこんなところに一人でいるの~?」

チェルノが首を傾げる。
もっともな質問だ。
信じてもらえるかは分からなかったが、俺は正直に話した。

「……実は、信じてもらえないかもしれないけど、俺はこの世界の人間じゃなくて、別の世界から来た人間で……」
「あ~なるほどね~」

神妙に打ち明けた俺だったが、チェルノがあっさり納得したことに戸惑った。
てっきり「はぁ?」と素っ頓狂な声と訝しげな視線を向けられるものだと覚悟していたので彼の反応は意外だった。

「え? そんな簡単に納得しちゃうんですか!?」
「たまにそういう人いるしね~」
「そう頻繁でもないけど、信じられないというほど理解できないという話じゃないよ」
「……魔王のせいで異界との境界が崩れやすくなっているという話も聞くからな」

彼らの納得の早さに、俺は肩すかしを食らった気分だった。

すげぇご都合主義……!

「もしかして、自分は異世界から来た特別な存在とでも思ったのか?」

クズ野郎が鼻で笑った。

うるせぇ!
本当に嫌な奴だな!

奴への悪印象は留まることを知らない。

まぁ、何はともあれ理解が早いのは有り難かった。
おかげで説明する手間がはぶけた。

「それなら話は早いです。元の世界に戻りたいんですけど、どうしたら帰れるんですか?」

クズ野郎以外の顔を見て訊ねた。

俺のように異世界トリップしてきた人間がいるのだから、当然帰る方法も何かあるだろう。

そう高をくくっていた。
しかし、寄越された返事は無慈悲なものだった。

「う~ん、分かんな~い」
「聞いたことないな。ごめんね」
「……俺も知らない」

え!? マジで!?
うそだろ!?

クズ野郎の方も一応確認のためちらりと見てみたが、俺の話など聞いていないようで、さっきモンスターから奪った斧を振りながら「五千ピーロはいくかな」などと鼻歌交じりに呟いていた。

「そ、そんな……」

絶望的な気持ちに足元の力が抜けて、俺はその場にへたり込んだ。
元いた世界も決していい世界ではなかったけれど、獰猛なモンスターがいるこの世界よりはマシだ。

一体、俺はこれからどうしたら……。

不安や心細さで涙が滲んだ。
すると項垂れる俺の傍に黒髪の男が膝をついて顔を覗き込んできた。
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