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第2章 異世界でももふもふは正義!?
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さて、この男が非常に厄介な客だった。
男の言動は酔っ払いで賑わう酒場でも目に余るもので、侍らせている美少年の胸元や太腿を触って甘い声を引き出したり、濃厚なキスをかましたりと、とにかく店内の風紀を乱しかねないものだった。
正直、見ていて気持ちがいいものではない。
ゲルダさんも男の方を見て「胸糞が悪い……」とぼやいていたが、男はこの街の長の知り合いらしく機嫌を損ねるわけにはいかないそうだ。だからどんなに目に余る行為にも目をつぶらなければならないとのことだ。
早く帰ってくれねぇかなぁ、と思いながら五杯目のワインを運びに行くと、今まで俺に少しも関心を寄せていなかった男が、急に俺の腕を掴んだ。
そして酔いで濁った目でじろじろと、まるで値踏みでもするように上から下まで不躾な視線で俺を見始めた。
「あ、あの、なんですか?」
男の失礼な態度に苛ついたがゲルダさんのために堪え、愛想笑いを口の端に引っかけて首を傾げた。
「君、この辺じゃ珍しい顔立ちしてるねぇ」
にやにやと嫌な笑みを浮かべながら男が言った。
確かに男の言う通り俺はこの世界では珍しい顔立ちをしていた。というのも、この世界の人達は彫りの深い人が多いからだ。いかにも日本人といったのっぺりとした俺の顔立ちを珍しがるのも無理はない。
「ちょっと遠い国から来たもので……」
空笑いしながら頭を掻いてお茶を濁す。異世界から来たなんて言ったら面倒な事になりそうだったからだ。
「へぇ、そうか。出稼ぎでここで働いてるの?」
「あ、いえ、旅をしていて、今日は宿代をタダにしてもらうために一日限定で働かせてもらってます」
「そうか、金に困ってるんだねぇ。……じゃあ今晩三万ピーロでどうだ?」
ねっとりとした声で持ちかけられた話と、俺の腕を掴む手とは逆の手でケツを撫でられ、ゾワゾワゾワと全身に鳥肌が駆け巡った。
うぉぉぉぉ! き、気持ちわる……っ!
「ひ、え、えっと、いやでもここの仕事があるんで……」
すぐにでも蹴飛ばして男から離れたかったが何とか堪えて穏便に済まそうともっともらしい理由を並べる。
しかし男は引かなかった。
「それなら私が店主さんに話をつけてあげるよう。こんなところで働くより楽だし金もいっぱい入るし、何しろ気持ちがいいし、最高のお仕事だよ」
卑猥な笑いを喉で震わせながら、男は手の平を押し付けるようにして俺のケツを撫で回した。
ひぃぃぃぃ! 気持ちわる……っ!
心の底から湧き出る悲鳴を何とか飲み込んで愛想笑いしながら、ちらりと助けを求めるように俺のボディーガードと言う名のストーカーであるドゥーガルドの方を見た。
しかしちょうど席を外していた。恐らくトイレだろう。
あの野郎ぉぉぉ! なんでこのタイミングでいないんだよ! だからあれほど酒を飲み過ぎるなと言ったのに……!
いや、でもあいつがいたら殺しかねないから、それはそれでゲルダさんの迷惑になるしな……。
「で、返事は? もちろんおじさんと気持ちいいことしたいよね?」
にやにやと俺が頷くことを確信した腹立たしい笑みで言いながら男は腰を引き寄せた。
「あ、いや、その、俺が抜けると店が困るので……」
もっともらしい理由付けをしてやんわりと断ると、男の眉が不機嫌そうにピクリと動いた。
男の言動は酔っ払いで賑わう酒場でも目に余るもので、侍らせている美少年の胸元や太腿を触って甘い声を引き出したり、濃厚なキスをかましたりと、とにかく店内の風紀を乱しかねないものだった。
正直、見ていて気持ちがいいものではない。
ゲルダさんも男の方を見て「胸糞が悪い……」とぼやいていたが、男はこの街の長の知り合いらしく機嫌を損ねるわけにはいかないそうだ。だからどんなに目に余る行為にも目をつぶらなければならないとのことだ。
早く帰ってくれねぇかなぁ、と思いながら五杯目のワインを運びに行くと、今まで俺に少しも関心を寄せていなかった男が、急に俺の腕を掴んだ。
そして酔いで濁った目でじろじろと、まるで値踏みでもするように上から下まで不躾な視線で俺を見始めた。
「あ、あの、なんですか?」
男の失礼な態度に苛ついたがゲルダさんのために堪え、愛想笑いを口の端に引っかけて首を傾げた。
「君、この辺じゃ珍しい顔立ちしてるねぇ」
にやにやと嫌な笑みを浮かべながら男が言った。
確かに男の言う通り俺はこの世界では珍しい顔立ちをしていた。というのも、この世界の人達は彫りの深い人が多いからだ。いかにも日本人といったのっぺりとした俺の顔立ちを珍しがるのも無理はない。
「ちょっと遠い国から来たもので……」
空笑いしながら頭を掻いてお茶を濁す。異世界から来たなんて言ったら面倒な事になりそうだったからだ。
「へぇ、そうか。出稼ぎでここで働いてるの?」
「あ、いえ、旅をしていて、今日は宿代をタダにしてもらうために一日限定で働かせてもらってます」
「そうか、金に困ってるんだねぇ。……じゃあ今晩三万ピーロでどうだ?」
ねっとりとした声で持ちかけられた話と、俺の腕を掴む手とは逆の手でケツを撫でられ、ゾワゾワゾワと全身に鳥肌が駆け巡った。
うぉぉぉぉ! き、気持ちわる……っ!
「ひ、え、えっと、いやでもここの仕事があるんで……」
すぐにでも蹴飛ばして男から離れたかったが何とか堪えて穏便に済まそうともっともらしい理由を並べる。
しかし男は引かなかった。
「それなら私が店主さんに話をつけてあげるよう。こんなところで働くより楽だし金もいっぱい入るし、何しろ気持ちがいいし、最高のお仕事だよ」
卑猥な笑いを喉で震わせながら、男は手の平を押し付けるようにして俺のケツを撫で回した。
ひぃぃぃぃ! 気持ちわる……っ!
心の底から湧き出る悲鳴を何とか飲み込んで愛想笑いしながら、ちらりと助けを求めるように俺のボディーガードと言う名のストーカーであるドゥーガルドの方を見た。
しかしちょうど席を外していた。恐らくトイレだろう。
あの野郎ぉぉぉ! なんでこのタイミングでいないんだよ! だからあれほど酒を飲み過ぎるなと言ったのに……!
いや、でもあいつがいたら殺しかねないから、それはそれでゲルダさんの迷惑になるしな……。
「で、返事は? もちろんおじさんと気持ちいいことしたいよね?」
にやにやと俺が頷くことを確信した腹立たしい笑みで言いながら男は腰を引き寄せた。
「あ、いや、その、俺が抜けると店が困るので……」
もっともらしい理由付けをしてやんわりと断ると、男の眉が不機嫌そうにピクリと動いた。
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