174 / 266
第2章 異世界でももふもふは正義!?
104
しおりを挟む
どんな悲しい過去があろうとも、やっていいことと悪いことがある。強姦、絶対だめ!
あぶねぇ……! また流されるところだった……!
ふぅ、と冷や汗を拭いながら、キッと気合いを入れ直すと、上目遣いでじっとこちらを無言で見詰めるクロと目が合う。
悲しげな潤んだ瞳に、胸がきゅうと締め付けられた。
そ、そんな捨てられた子犬みたいな目をするなよ……! 反則だ……!
今にでも抱き締めてあげたくなるような表情だが、ここで絆されてしまったら不穏分子をまたひとり抱え込むことになる。それは避けたい。
心の中で良心と警戒心とで葛藤していると、不意にクロが視線を逸らし、そのまま背中をくるりと向けた。
そして何も言わないままとぼとぼと森の方へ歩み始めた。
「やっと諦めたか、あの犬」
ふぅ、と溜め息を吐いてアーロンは剣を鞘にしまった。
「さぁ、俺たちも行くか」
「だいぶ予定より遅れているしね」
「クロちゃん元気でね~」
みんなあっさりとクロに背を向けて歩み出した。
え? うそ……、こんなあっさりお別れ……?
こちらが別れを切り出すまでもなくクロが黙って立ち去ってくれたおかげで、心の中の葛藤を自動的に打ち切られた。これは願ってもいない展開だ。
なのに胸が苦しい。
昨日の夜はひどい目にあったというのに頭に浮かぶのは、俺の呼び掛けに嬉しそうに尻尾を振って吠え返す姿や、俺を守るためにグーロの群れに果敢に立ち向かう姿、そして満月の下で涙を目尻に滲ませて「ありがとう」と言ったその微笑み――。
「……ソウシ、行こう」
ぽん、と優しくドゥーガルドが肩に手を置いた。
しかし気付けば俺はその手を振り払って、みんなとは逆方向、クロの方へと走っていた。
「……っ、クロ!」
呼び止めると、クロは歩みを止めゆっくりとこちらを振り返った。
そこに体当たりするくらいの勢いでその首元に腕を回して思いっきり抱き付いた。
「ソウシ……」
俺の行動が思いの寄らなかったのだろう。戸惑いの声が返ってくる。
俺はモフモフの毛に顔を埋めぐりぐりと額を押し付けてから顔を上げた。
「言っとくけど、昨日の夜のことは全然許してないからな!」
キッと目尻を吊り上げて睨むと、クロは怯むように視線を逸らした。
「す、すまない……。だがどうしてもソウシとの子が欲しくて……」
しゅん、と耳を垂らしてしどろもどろに言い訳をするクロは、いたずらをして飼い主に叱られる犬そのものだった。
「だからってあんなことしていい理由にならないからなっ。まだケツも痛いし!」
「すまない……」
ますます項垂れて体を縮めるクロに、俺は大きく溜め息を吐いた。
「謝ってすむ問題じゃないからな。こっちはそのせいでケツが痛くて歩くのもきついんだからな! ……だから罰として、王都まで俺を背中に乗せる刑だ!」
判決を下す裁判官のように言い放つと、クロがバッと勢いよく顔を上げた。
あぶねぇ……! また流されるところだった……!
ふぅ、と冷や汗を拭いながら、キッと気合いを入れ直すと、上目遣いでじっとこちらを無言で見詰めるクロと目が合う。
悲しげな潤んだ瞳に、胸がきゅうと締め付けられた。
そ、そんな捨てられた子犬みたいな目をするなよ……! 反則だ……!
今にでも抱き締めてあげたくなるような表情だが、ここで絆されてしまったら不穏分子をまたひとり抱え込むことになる。それは避けたい。
心の中で良心と警戒心とで葛藤していると、不意にクロが視線を逸らし、そのまま背中をくるりと向けた。
そして何も言わないままとぼとぼと森の方へ歩み始めた。
「やっと諦めたか、あの犬」
ふぅ、と溜め息を吐いてアーロンは剣を鞘にしまった。
「さぁ、俺たちも行くか」
「だいぶ予定より遅れているしね」
「クロちゃん元気でね~」
みんなあっさりとクロに背を向けて歩み出した。
え? うそ……、こんなあっさりお別れ……?
こちらが別れを切り出すまでもなくクロが黙って立ち去ってくれたおかげで、心の中の葛藤を自動的に打ち切られた。これは願ってもいない展開だ。
なのに胸が苦しい。
昨日の夜はひどい目にあったというのに頭に浮かぶのは、俺の呼び掛けに嬉しそうに尻尾を振って吠え返す姿や、俺を守るためにグーロの群れに果敢に立ち向かう姿、そして満月の下で涙を目尻に滲ませて「ありがとう」と言ったその微笑み――。
「……ソウシ、行こう」
ぽん、と優しくドゥーガルドが肩に手を置いた。
しかし気付けば俺はその手を振り払って、みんなとは逆方向、クロの方へと走っていた。
「……っ、クロ!」
呼び止めると、クロは歩みを止めゆっくりとこちらを振り返った。
そこに体当たりするくらいの勢いでその首元に腕を回して思いっきり抱き付いた。
「ソウシ……」
俺の行動が思いの寄らなかったのだろう。戸惑いの声が返ってくる。
俺はモフモフの毛に顔を埋めぐりぐりと額を押し付けてから顔を上げた。
「言っとくけど、昨日の夜のことは全然許してないからな!」
キッと目尻を吊り上げて睨むと、クロは怯むように視線を逸らした。
「す、すまない……。だがどうしてもソウシとの子が欲しくて……」
しゅん、と耳を垂らしてしどろもどろに言い訳をするクロは、いたずらをして飼い主に叱られる犬そのものだった。
「だからってあんなことしていい理由にならないからなっ。まだケツも痛いし!」
「すまない……」
ますます項垂れて体を縮めるクロに、俺は大きく溜め息を吐いた。
「謝ってすむ問題じゃないからな。こっちはそのせいでケツが痛くて歩くのもきついんだからな! ……だから罰として、王都まで俺を背中に乗せる刑だ!」
判決を下す裁判官のように言い放つと、クロがバッと勢いよく顔を上げた。
53
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。ユリウスに一目で恋に落ちたマリナは彼の幸せを願い、ゲームとは全く違う行動をとることにした。するとマリナが思っていたのとは違う展開になってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる