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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?

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 というか、次期国王に抱きかかえられているだけでも無礼者だと怒られそうなのに、さらにそれがノーパン女装野郎だなんて知られた日には有無を言わさず処刑台行き間違いなしだ。
 想像しただけで全身からサッと血の気が引いた。
 
 こ、これは、なんとか降ろしてもらわないと……!
 
「お、お気遣いは大変ありがたいのですが、その、エグバード様に抱きかかえてもらっているなんて他の者に見られたら何と言われるか……ッ」
「気にするな。私が好きでしているのだ。何か言う者がいれば私が黙らせよう」

 にこりと、泰然とした笑みを浮かべるエグバード。
 
 わぁ~! 男前!

 何とも頼もしいことを言ってくれるが、遠慮ではなく本心から降ろしてほしいと思っている俺には有り難迷惑以外の何物でもない。
 
 いいから、さっさと降ろしてくれ……!

 もう心の中では半泣き状態だった。
 
「あ、ありがとうございます。で、ですが、やはり……」
「よいよいよい。遠慮するな。ダイナを一緒に探してもらうのだ当然のことだ。それに女性が困っていたら男が助ける、これもまた当然のことだ」

 そう言って高貴に微笑むエグバードは紳士そのもので、とても十二歳には思えなかった。
 
 まぁ俺、男なんだけどな! ついでに言わせてもらうと、今困ってるのはお前が俺を抱きかかえているからなんですけど!
 
 的外れな紳士的振る舞いにいよいよ頭が痛くなってきた。
 だが、これはもう何を言っても降ろしてはくれないだろう。
 むしろしつこく食い下がることでかえってエグバードの不興を買ってしまう可能性もある。
 俺は仕方なく言葉と溜め息を喉の奥に押し込んだ。
 
「では行くぞ。落ちないようしっかり私に掴まっておけ」
「……はい、分かりました」
 
 観念してエグバードの胸元をぎゅっと掴む。
 万が一、落ちた拍子にスカートがめくれて一糸まとわぬ下半身を見られたら一大事だからだ。
 
 かくして、ノーパンに女装という犯罪すれすれの変態姿で次期国王に抱きかかえられながらというある意味スリル満点な猫探しが始まった。
 
 ****
 
 ダイナを求めて三千里、とまではいかなくとも、俺たちは結構な距離を歩き回りダイナを探した。
 一時間くらい前に部屋から逃げ出したらしく、ダイナを探している最中にエグバードも迷子になったようだ。
 もちろん本人は自分が迷子だとはつゆほども思っていないようだが……。

「ダイナー! 出ておいでー!」
「ダイナー! 私はここにいるぞー!」
 
 薔薇が咲き誇る大きな庭園に俺たちの声が響き渡る。
 だが、返事は皆無で、時々風に揺れる葉の微かな音が返ってくるだけだ。
 前にこの庭園でひなたぼっこをしていたことがあるということで入ったのだが、俺の身長より頭三つ分大きい生け垣が迷路のように道を作っているので、下手をすれば俺たちの方が迷い込んでしまいそうだ。

「いないですね……」
「おかしいな、ここにいると思ったのだが……」

 うーん、と眉根を寄せて唸るエグバード。
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