35歳からの楽しいホストクラブ

綺沙きさき(きさきさき)

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第4章 35歳にして、初のホストクラブ!!

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蓮さんのヘルプに入ったあの日から三日が経ったが、同伴やアフターで店の外で過ごし、店内にいる時もほとんどVIPルームにいたので、彼と顔を合わせることはなかった。
しかしだからといって、彼に言われた言葉が頭から消えることはなかった。
むしろその影は日を追うごとに濃くなり、前触れもなく気持ちを曇らせた。
仕事に集中しようとしても、頑張ろうとすると鼻で笑う彼が脳裏によぎった。
その度に思考が固まり、動きも止まった。
今のところ大きなミスはないが、時間の問題かもしれない。

閉店後のミーティングが終わり、いつも通り桜季さんの手伝いーー僕ができるのは材料を切るくらいだけれどもーーをしていると、肩を叩かれた。
振り向くと、肩の上に置かれた桜季さんの人差し指がぷにっと頬に刺さった。

「桜季さん!?」
「おつかれ~。りんご剥いたからちょっと一休みしようよぉ」

ウサギの形を模して切ったりんごをたくさんのせたお皿を持って、桜季さんがにっこりと笑った。
僕らは厨房の奥から丸イスを持ってきて、向かい合ってりんごを食べた。
痛む前なのか、りんご独特の歯ごたえはなく少し柔らかかったが、甘さは十分にあった。

「甘いですね、このリンゴ。擦りりんごにしてもおいしそう」
「青りんご、擦りりんご好きなのぉ? おれ、だめなんだよねぇ。あと大根おろしもぉ。大根は大丈夫だけど、おろしたらだめ。あれはもう大根とは呼べないよぉ」

本当に今大根おろしを食べたかのように舌を出して顔をしかめる桜季さんに僕は思わず小さく笑った。

「じゃあ味じゃなくってあの食感がだめなんですかね」
「そうだねぇ、あのじゃりじゃりした感じが嫌いかなぁ」
「僕は風邪を引いたときの擦りりんご好きなんですけどね」
「おれは風邪引いたときはキスするのがいいなぁ。そしたら治りも早い気がするしぃ」

「それは相手に風邪をうつしただけじゃ……」と苦笑いすると、突然まじめな顔でじっと見つめられ、戸惑った。

「あの、どうかしました?」
「んー? べつにぃ。ただ気持ちもキスで相手にうつせるといいのになって思っただけぇ。そしたら今、青りんごが何で悩んでいるかすぐに分かるのにぃ」

じゃりっ、とりんごを噛む音が響いた。
りんごの話から突然心の中を見透かしたような話に変わり驚く僕を置いて、桜季さんは話を進めた。

「青りんご、この前、レンコンのヘルプに入った時、何かあったでしょぉ?」
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