137 / 228
第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!
28
しおりを挟む****
「ここですか?」
「そうです」
女の子に連れられて来たのは、ゲームセンターの奥にある男子トイレの前だった。
「もう三十分くらい出てこなくて……。携帯に連絡入れても返事がないし……」
女の子が不安げに言った。
彼女の話によると、一緒に来た彼氏さんがお腹が痛いと言ってトイレに入ってからずっと出てこないらしい。
心配だけれどまさかうら若き女の子が男子トイレに入るわけにもいかず、途方に暮れていたそうだ。
「それは心配ですよね。分かりました。じゃあ僕が中を見てきますね。ドアが閉まっていてもノックをすれば倒れたりしていなければ返事があるでしょうし」
「ありがとうございます!」
目を輝かせて女の子が頭を下げた。
若い女の子に感謝されるのは、やっぱり男として悪い気はしない。
というか、単純に嬉しい。
顔がにやける前に女の子に背を向け、トイレへ向かった。
トイレは無人だった。
洗面台を通り過ぎて、奥の個室トイレを覗く。
どの個室も空だったけれど、一番奥のトイレだけがドアが閉まっていた。
恐らく女の子の彼氏さんがここに入っているのだろう。
控えめにノックをして呼び掛けた。
「……あの、すみません。あなたの彼女さんが外で心配しています。もし体調悪ければ店員さん呼びましょうか?」
返事はない。
まさか倒れているのだろうか……。
心配になってもう一度大きめにノックをすると、ガチャ、とドアが開いた。
あ、よかった。
倒れてなかったみたい。
ほっとしたのも束の間、出てきた金髪の目つきの鋭い少年が、ニヤッと口の端を嫌な感じに吊り上げたと同時に、腹部に衝撃が走った。
その衝撃に吹き飛ばされるようにして、床に倒れた。
突き出された少年の足を見て、ようやく自分が蹴られたことに気づいた。
「やっぱりオタクちょろいわ~。女子高生の頼みとあればホイホイ来るもんな」
金髪の少年がニヤニヤと笑いながら言った。
すると、さらに三人、明らかに不良といった感じの少年がぞろぞろとやって来た。
「マジちょろいな」
「外はミホに見張りさせてるから大丈夫」
「一応、清掃中の看板も置いてきたし」
「サンキュ」
自分より圧倒的に若く、体格のいい少年達に取り囲まれゴクリと唾を飲み込む。
すると金髪の少年が僕の前にしゃがんで手を差し出した。
その手が救いの手でないことは明らかだ。
少年はニヤリと笑った。
「状況は分かってるよな? ケガしたくなければ有り金全部出せ、このクソオタク」
31
あなたにおすすめの小説
モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
転生したが壁になりたい。
むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。
ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。
しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。
今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった!
目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!?
俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!?
「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」
彼はオレを推しているらしい
まと
BL
クラスのイケメン男子が、なぜか平凡男子のオレに視線を向けてくる。
どうせ絶対に嫌われているのだと思っていたんだけど...?
きっかけは突然の雨。
ほのぼのした世界観が書きたくて。
4話で完結です(執筆済み)
需要がありそうでしたら続編も書いていこうかなと思っておいます(*^^*)
もし良ければコメントお待ちしております。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
人気アイドルが義理の兄になりまして
三栖やよい
BL
柚木(ゆずき)雪都(ゆきと)はごくごく普通の高校一年生。ある日、人気アイドル『Shiny Boys』のリーダー・碧(あおい)と義理の兄弟となり……?
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます
クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。
『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。
何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。
BLでヤンデレものです。
第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします!
週一 更新予定
ときどきプラスで更新します!
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる