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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?
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しおりを挟む桜季さんは予想外に協力的で、蘭香ちゃんとそつなく、むしろ僕なんかよりよっぽど上手に話を合わせられていた。
「レンコンはそこのスーパーではアイドルなんだよぉ」
「そうなんですか!」
「そうそう、大人気~。おばぁちゃんキラーだからねぇ」
「やめろ、その言い方」
「え~、だってそうじゃん~。この間なんか七十近くのおばぁちゃんに手作りエコバッグもらってたしぃ。大きい花の飾りがついてるそれをマジで普通に使ってるの見た時は思わず笑ったよぉ」
「うるせぇ、使わねぇと悪いだろ」
バツが悪そうに視線を逸らす蓮さんに、桜季さんはにやにやと、蘭香ちゃんはくすくすと笑っている。
僕もこの微笑ましい話題に心を和ませて一緒に笑いたいのだけれど……、
「……あの、そろそろ下ろしてもらってもいいかな?」
あぐらをかいた桜季さんの膝の上に座らされた状態で、僕はおずおずと申し出た。
桜季さんが居留まることを許した蓮さんだったけれど、「お前に入れる茶はない」と言って断固として立ち上がらなかった。〝招かざる客にもてなしなし〟の姿勢を貫く蓮さんに対して、桜季さんの方は全く気にした様子はなく「いいよぉ、おれは青りんごとシェアするからぁ」と言って僕の湯飲みに口をつけた。
僕は別に構わなかったけれど、一人分のお茶を二人で飲めば当然減りが早い。すると桜季さんは勝手知ったる他人の家といった様子で台所にお茶を汲みに行き、ついでに茶菓子をいくつか持って来た。
普段から桜季さんが蓮さんの家に遊びに来ていることが窺えて、なんやかんや言いつつも仲がいいんだなぁと頬を緩めていると、桜季さんは席に着くなり僕の腰を両手で掴みそのまま僕を自分の膝の上にのせたのだ。
そしてそのまま今に至る。
もちろんすぐに膝の上から降りようとしたけれど、桜季さんが腰に腕を巻いてそれを阻止した。抵抗すればするほど「どうしたのぉ? 恥ずかしがって……夜はもっとべったりくっつくでしょぉ?」などいかがわしさを漂わせた発言を甘い声でするので、膝の上で大人しくするより他なかった。
最初こそ、蘭香ちゃんは目を丸くし、蓮さんは顔を顰めていたけれど、見慣れてしまったのか普通に会話を続けている。
この和やかな空気を壊すのは躊躇われたけれど、居心地の悪さが限界だった。
けれど僕の願いを却下するように、腰に巻いた腕にぎゅっとさらに力が込められた。
「えぇ、なんでぇ? いつも家に居る時はおれの膝に自分から座ってるじゃん~」
な、なんですか、その設定!?
さらりととんでもない設定を追加された僕は慌てて否定しようとしたけれど、
「ふふふ、青葉さんは恋人には甘えるタイプなんですね」
目元を緩ませて蘭香ちゃんにそう言われてしまっては、否定の言葉は呑み込むしかなかった。
僕が下手に否定してボロを出したら元も子もない。
「桜季君、そういう話は人前でやめてね……」
場の空気に身を委ねるしかない僕は、桜季さんの悪ふざけを小声でたしなめるしかなかった。
「本当にお二人は仲がいいですね。羨ましいです。お兄様にもこんな風に寄り添える恋人が出来るといいんですけど……」
蘭香ちゃんは小さく肩を竦めると、ちらりと蓮さんの方を窺い見た。
桜季さんの来る前に出た話題だが、あまりその手の話はしたくないようで蓮さんは少しげんなりした様子で眉根を寄せた。
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