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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?
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「それにしても買いすぎだろ。こういうのって賞味期限すぐ切れるだろ」
「あ……!」
蓮さんの指摘にハッとした。とにかく甘いものをいっぱい食べて元気になって貰いたいと思って買ったのだけれど、賞味期限まで考えていなかった。
「ほ、ほんとですね。どうしよう……。あ! 冷凍庫で保存したらどうでしょう!」
「いや、解凍どうするんだよ」
「あ……」
僕の頭の悪い提案に、蓮さんは呆れたように溜め息を吐いたけれど、その口元は優しい笑みを浮かべていた。
「つーか、別に冷凍とかしなくても……」
「三人で食べればよくなぁい?」
桜季さんが蓮さんに背後からのし掛かってきて言った。前のめりにつんのめった蓮さんはキッと目尻を吊り上げて振り返った。
「急にのし掛かんな! 重いっ」
「ええ~、おれ別に重くないよぉ。レンコンが力ないだけじゃなぁい?」
「うるせぇっ。というかくっつくな! 離れろ」
「おれだってレンコンにくっつきたくないよぉ。青りんごのところ行きたいのにレンコンが立ち塞がってるのが悪いんだよぉ」
「わけ分かんねぇ。というか、なに普通にお前も数に入れてんだよ。お前にやるものは何もない。帰れ」
「レンコンのけち~。でもこれ二人で食べきれるのぉ?」
桜季さんの言葉に、蓮さんがうっと言葉を詰まらせる。
確かに二人で食べるには多すぎる量だ。甘いものは好きだけれど、僕もそんなに多くは食べられない。
若い頃はもっと食べれてたのになぁ……。
「青りんごもおれがいた方がいいよねぇ?」
消化力の衰えになんだかもの悲しい気持ちになっていると、桜季さんから話を振られて慌てて頷いた。
「も、もちろんです! みんなで食べた方が美味しいですし、桜季さんがいると場が明るくなるのでぜひ!」
食べ物を無駄にしたくないという気持ちもあるけれど、それを抜きにしても桜季さんにはいてもらいたかった。
話し上手な桜季さんがいれば沈黙というものがまず訪れない。口下手な僕にとっては心強い存在だ。
「ほらぁ、買ってきた青りんごがこう言ってるんだよぉ」
鬼の首を取ったかのように桜季さんが言うと、蓮さんは小さく溜め息を吐いた。
「……分かった。仕方ねぇからお前も食っていい」
「わぁい、スイーツパーティーだぁ」
「でも食ったらさっさと帰れよ」
「分かってるよぉ。あ~! せっかくなら夕ご飯も一緒に食べようよぉ。おれ作るよぉ。いいワインも家にあるから持ってくるしぃ」
「……お前、絶対長居する気だろ」
呆れた目で蓮さんが桜季さんを睨む。けれど、もちろん桜季さんは平然としている。
「まぁまぁ、いいじゃない~。おれがごはん作ってあげるからさぁ」
桜季さんの言葉に、迷惑極まりないといった顔をしていた蓮さんの眉間の皺が微かに緩んだ。
そして諦めたように溜め息を吐いて「あんまり騒ぐなよ。近所迷惑になるから」と言うと、背後の桜季さんを押し退けて部屋に戻っていった。
「大丈夫だよぉ。おれ耳元で囁く派だからぁ。あ、でも青りんごはつい大きな声が出ちゃうってタイプそうだよねぇ」
振り返ってそう問われて、確かに、と思う。
昔お化け屋敷で驚いて思わず大きな悲鳴を上げて係員さんがやって来たというちょっとした騒動を起こしてしまったこともあるほどだ。
「そですね、驚くとつい大きな声が出てしまいますね。近所迷惑にならないよう気をつけます」
苦笑しながら答えると、桜季さんは笑顔でうんうんと頷いた。
「おれ的には声出してもらった方が好きだけど家主様がだめっていうなら仕方ないよねぇ。声が出そうな時はおれが口をいろんな方法で塞いであげるからねぇ」
ピアスが光る口の端を持ち上げて笑う桜季さんに、なぜかぞくりと背中が走る。
なんだか穏やかでない方法で口を塞がれそうな気がする……。
僕は絶対に大きな声を出さないようにしようと、心の中で固く決意して部屋の中に入った。
「あ……!」
蓮さんの指摘にハッとした。とにかく甘いものをいっぱい食べて元気になって貰いたいと思って買ったのだけれど、賞味期限まで考えていなかった。
「ほ、ほんとですね。どうしよう……。あ! 冷凍庫で保存したらどうでしょう!」
「いや、解凍どうするんだよ」
「あ……」
僕の頭の悪い提案に、蓮さんは呆れたように溜め息を吐いたけれど、その口元は優しい笑みを浮かべていた。
「つーか、別に冷凍とかしなくても……」
「三人で食べればよくなぁい?」
桜季さんが蓮さんに背後からのし掛かってきて言った。前のめりにつんのめった蓮さんはキッと目尻を吊り上げて振り返った。
「急にのし掛かんな! 重いっ」
「ええ~、おれ別に重くないよぉ。レンコンが力ないだけじゃなぁい?」
「うるせぇっ。というかくっつくな! 離れろ」
「おれだってレンコンにくっつきたくないよぉ。青りんごのところ行きたいのにレンコンが立ち塞がってるのが悪いんだよぉ」
「わけ分かんねぇ。というか、なに普通にお前も数に入れてんだよ。お前にやるものは何もない。帰れ」
「レンコンのけち~。でもこれ二人で食べきれるのぉ?」
桜季さんの言葉に、蓮さんがうっと言葉を詰まらせる。
確かに二人で食べるには多すぎる量だ。甘いものは好きだけれど、僕もそんなに多くは食べられない。
若い頃はもっと食べれてたのになぁ……。
「青りんごもおれがいた方がいいよねぇ?」
消化力の衰えになんだかもの悲しい気持ちになっていると、桜季さんから話を振られて慌てて頷いた。
「も、もちろんです! みんなで食べた方が美味しいですし、桜季さんがいると場が明るくなるのでぜひ!」
食べ物を無駄にしたくないという気持ちもあるけれど、それを抜きにしても桜季さんにはいてもらいたかった。
話し上手な桜季さんがいれば沈黙というものがまず訪れない。口下手な僕にとっては心強い存在だ。
「ほらぁ、買ってきた青りんごがこう言ってるんだよぉ」
鬼の首を取ったかのように桜季さんが言うと、蓮さんは小さく溜め息を吐いた。
「……分かった。仕方ねぇからお前も食っていい」
「わぁい、スイーツパーティーだぁ」
「でも食ったらさっさと帰れよ」
「分かってるよぉ。あ~! せっかくなら夕ご飯も一緒に食べようよぉ。おれ作るよぉ。いいワインも家にあるから持ってくるしぃ」
「……お前、絶対長居する気だろ」
呆れた目で蓮さんが桜季さんを睨む。けれど、もちろん桜季さんは平然としている。
「まぁまぁ、いいじゃない~。おれがごはん作ってあげるからさぁ」
桜季さんの言葉に、迷惑極まりないといった顔をしていた蓮さんの眉間の皺が微かに緩んだ。
そして諦めたように溜め息を吐いて「あんまり騒ぐなよ。近所迷惑になるから」と言うと、背後の桜季さんを押し退けて部屋に戻っていった。
「大丈夫だよぉ。おれ耳元で囁く派だからぁ。あ、でも青りんごはつい大きな声が出ちゃうってタイプそうだよねぇ」
振り返ってそう問われて、確かに、と思う。
昔お化け屋敷で驚いて思わず大きな悲鳴を上げて係員さんがやって来たというちょっとした騒動を起こしてしまったこともあるほどだ。
「そですね、驚くとつい大きな声が出てしまいますね。近所迷惑にならないよう気をつけます」
苦笑しながら答えると、桜季さんは笑顔でうんうんと頷いた。
「おれ的には声出してもらった方が好きだけど家主様がだめっていうなら仕方ないよねぇ。声が出そうな時はおれが口をいろんな方法で塞いであげるからねぇ」
ピアスが光る口の端を持ち上げて笑う桜季さんに、なぜかぞくりと背中が走る。
なんだか穏やかでない方法で口を塞がれそうな気がする……。
僕は絶対に大きな声を出さないようにしようと、心の中で固く決意して部屋の中に入った。
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