旅人が之く

焼きそば

文字の大きさ
6 / 7
一章

帝都の裏町

しおりを挟む
   退職金400万ルツ、毎月の軍人年金、25万ルツ。因みに帝都の平均世帯年収が250万ルツ。退職金は銀行口座に全部入れた。今の手持ちは2万ルツ。カバンに生活必需品は全部入れた。あとは旅立ちを迎えるのみである。
   軽快なステップを踏んで歩いていく。念願の第二の人生、再就職の予定無しである。辛い職場はもうこりごりであった。
   そう、職場が悪い、社会が悪い、そんなことをナチュラルに考えるクソニートであった。財布を盗まれるまでは…

「あれっ?」

   財布がない。馬車に乗るのに払う前金がないのだ。少し考えて、さっきぶつかった時にスリにあったことに気づく。

「あんの野郎ォ!!」
「どうしたね、あんちゃん、財布でもすられたけ?」

   馬車のおっちゃんはかなりのほほんとしたおっちゃんはであった。ヒゲがモフモフしている。ドワーフか何かなのかもしれない。ドワーフでも驚かない。

「ああ、すられちまったよ。すまんが、他の客あたってくれや、乗れそうにねぇわ。」

   軽く謝っておくと、おっちゃんはは頰を掻いて、

「まあ、よくあることだ。他の街で金引き出してもいいね。乗ってくけ?」

と、誘っていただいたが、丁重にお断りした。ただ単に他人が泡銭を稼ぐのと、自分の働いて得た金が奪われるのが気に障ったのだ。
   クソガキは少しいったところの果物屋でくっちゃべっていた、狸鍋にしてやる。

「こんのクソガキャァ、掻っ捌いて狸鍋にぶち込んでやる!」

   怒気を発して怒鳴りつけると、クソガキはやべっ、と言って走り去っていく。

「おいあんちゃん、お願いだから、剣は抜いてくれんなや!」

   果物屋のおっさんがなにやら言っているが無視だ無視!腰に手をかけながら走る。クソガキは通路を左に曲がる。細道に逃げ込むつもりらしい。

「待ちやがれ、ンの野郎ォ!」
「わたたっ!ちょっ、このおっさん走るの超速え」
「元騎士道舐めんなァ!」

   クソガキは右手に、左に、何度も十字路を曲がる、ある程度距離があるからどこで曲がったかわからないようにするつもりかもしれないが甘い、近衛騎士の記憶力と視力はピカイチだ。
そして、三つ目の十字路を右折すると…


誰もいなかった。


「アレ?」

   キョロキョロと辺りを見回すが人っ子一人、、、いや、十人以上いる。

「おいおい、にいちゃん、どーしたんでぇ?こんなところによぉ~。」

   細身の緑の服を着たアスパラガスがいた。

「あ、アスパラガス、だと…?」
「じゃかぁしい!誰がアスパラガスじゃ、ここ一帯を仕切っているマフィア、グリーンスモーカーを知らんのか!」
「知らないんだが」
「はぁ?お前俺らを知らんやと?痛い目見してやらぁ!お前らァ!やれぇ!」

   十数人の男が前、後ろでピストルを構えている。

「チッ…」

   楽しい旅の毎日がここでぶっ壊されるとは思ってもみなかった。ヤりにいく。そう決めて、腰の剣を抜きながら走り出した瞬間である。
   乾いた音が響き、手前の男の側頭部が柘榴の様にかち割れる。

「賞金首が、1,2ィ、3ン、4,5ぉと?ありゃ、若い兄ちゃんだな。おい、そこの兄ちゃん!一緒に人狩りでもしないかぇ?」

ショートカットの若い女だった。ラフな服装をして、銃を構えている。およそ兵士とは思えない。あと、おっぱいがでかい。

「ああ、いいぜ、そこのいい乳した姉ちゃんよ。あとで飲み屋でもどう?」
「舐めた男だッ!」

   そう言って女は銃をホルスターから引き抜くと二丁構えて、撃ちだした。それと同時に剣を構えて斬りかかる。
   鮮血が頭上に降り注ぐ。血は賊の討伐で見慣れていた。体当たりして、突き飛ばされた相手を剣で叩き斬る。全部、実戦で身につけた剣技だ。剣だけは誰からも師事してもらっことがない。モーガン曰く、早死にの剣だが、極めている、らしい。だから、最初から剣技で負けたことはない。公式では失格になることはあるが。今となっては道場剣術は過去の遺物、ダンスの一種と間違われることも、一流の剣使いに言わせれば当たり前のことであった。
   兎にも角にも死体にも、血にも既に慣れきっていた。だが、頭上から弾を撃たれるのは少し怖い。一発が鼻先を掠める。

「おい、危ねえじゃねぇか、帰ったら乳揉ませろ」
「うるせぇ、あんたこそケツの穴増やしてやんよ!」

   女は銃の向きを変えてアスパラガスに向けて構え、数初撃った。アスパラガスは赤い血を吹いて倒れる。ビクン、ビクンと陸に打ち付けられた魚のように跳ねて、そして、痙攣は静かになっていく。
   そして、最後の1人を斬り倒すと、10人以上いたマフィアの男たちは全員血の海に沈んでいた。

「いやぁ、やるねぇ、あんた。ピストル相手にビビらず当たりにかかるなんてねぇ。」

   女は既に下に降りてきていた。まだ、子供っぽさを外見に残している。ただ、乳はでかい。いいぐらいにスリムな女だった。

「おう、あんたもいいサービスだったぜ。また頼むよ。」
「うるせぇよこの色男ロメオが」

   同じ戦場にいた者が、最初は知らない仲でも、終われば憎まれ口を叩きあう、これはよく命をやりとりする職業ではよくあることだった。それは賞金稼ぎでも言えることだ。尤も軍人と賞金稼ぎが仲良くなる、など聞いたこともないことなのだが、それはグリーンがただ単に変人なだけであろう。

「まあ、いいや、やるかぇ?」

   そう言って女はニッと笑って煙草を突き出す。雑な仕草だ。男がやる職業をやっていれば、女も大抵こんな風になるのだろう。

「煙草か?やらねぇよ。」
「ちげぇよ。ヤクだよ。気持ちいいぜ」
「馬鹿野郎、やるわきゃねぇ…」

   そう、答えると女は目を細めた。

警察サツか?」
「ちげぇよ、馬鹿。」

   ふうん、と女は頷くと

「そうか、よくわからねぇが、まあ、深い詮索は無しだな。それがここの流儀だ。」

と言って、続けて

「まあ、あたしゃ、ジアってんだ。稼ぎだ。宜しく頼むぜ。」
「グリーンだ。」

   お互いに握手する。女の手だがゴツゴツしている。それは女がベテランのガンマンであることを意味していた。これなら背中を任せるに、まあ、誤射からして、信頼はできないが、技量は足りるだろう、と思った。

「細けぇこたぁ、まあ、おいおいでいいや、まあ、とりあえずいっぱいやろうぜ」

   軽くウインクして、ジアが言う。それが妙にキマっている。不思議な女だ、と思った。身体は華奢な方だ。裏町の女というのはこうなのかもしれない。この女も帝都の闇の中で、逞しく生きてきたのだ、グリーンはそう思った。

「すまねぇが、財布盗まれちまってな。茶髪で、グレーのランニングをきたクソガキだ。そいつを狸鍋にしてつつきながら、まあ、しっぽりいこうぜ」
「ど変態が。まあいい。そのガキのことならあたしが知ってる。まあ、呑んでからでいいだろ。それくらいはあたしがおごってやる。」
「りょーかい。ありがたくいただくぜ」
「返事が早いね」
「タダより美味い飯はねぇからな」
「チッ、後でとりたててやらぁ!」

   そう言ってジアは歩き出した。その姿も妙にキマっている。見ていて快いものだった。

   風が東に向かって吹いている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...