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相手がレイピアを構えた瞬間に感じた既視感。
一太刀刃を交わせば、誰だかわかった。
アーサーが、何も告げずに挑んできたと言う事はおそらく、本当に戦いたかったのだろう。
彼は、初めて会った時に確かそう言っていた。
「いつか、君に勝てる騎士になる!!待っててくれ!」
と。私は騎士では無いが。アーサーには身分があったので騎士を目指すんだと思っていた。だけど、彼は身分を捨てる覚悟で騎士ではなく軍にはいった。
それこそ、血の滲む努力を重ねて軍の隊長にまでなった。
まだまだ、私に勝てる力はないが彼はきっと、今よりももっと強くなる。それこそ、国の英雄と呼ばれるくらいには。
剣を重ねているうちに、胸の中が熱くなった。
今まで追いかけられる事はあっても、追いつくところまで来るものはいなかった。アーサーはきっと、私を追い抜いていく。
試合が終わって退場しようと後ろを向き、ふと、客席に目をやるとシリルが満面の笑みでこちらを見ていた。あぁ、いい席だ。一番前の一番目立つ場所だ。ちょうど入退場する通路の上。
退場しなければいけないのはわかっていたが、腰から剣を鞘ごと抜き、シリルに向かって差し出す。
段差があるのでもちろん届かないが。
そして片手で彼がくれたリボンをそっと触る。
「シリルの心、受け取った。私の誇りと忠誠を君に。」
シリルはかぁ、と顔を赤くして手をこちらに伸ばし、グッと握り拳を作った。剣を受け取ったとジェスチャーで表してくれたんだろう。
周りで見ていた女子生徒達が黄色い歓声を、上げた。
何人かが手を振っていたので、そっと振り返すととても喜んでいるのか、ピョンピョン飛び跳ねていた。
座席から落ちないように気をつけてほしい。
それを見てシリルは少しムッとしたような複雑な顔をしていた。何だか、可愛くてつい笑ってしまった。
その後の試合は順調に進んだ。
私のように首にリボンを巻いた生徒達もたくさんいたが、伝統なんだろうか…リボンを首に巻くのは昔からある事なのかと、隣で見ていたラブリに聞いてみる。
「何言ってるんですか!こんな…こんな独占欲丸出しのリボンを恥ずかしげもなく首に巻いて…あれだけ素晴らしい戦いをした貴女に憧れてみんなが真似してるんですよ!」
独占欲?と思い首を傾げるとジョルジュが、シリルをジトッとした目で見た。
「シリルは説明してないと思いますけど、リボン、最近のトレンドは相手の色を片方取り入れるんですけど、濃紺のリボンに銀の糸、ガッツリ『シリル』なんですよ。そこまで執着心を出すのは流行ってない。さらに、もらった相手も手首や足首、剣の持ち手など目立たないところにさりげなく付けるのがオシャレだったんですけど…そこまで堂々と付けているのは珍しいんですよ。何が言いたいかというと相思相愛で、さらにあんな闘いと終了後のイチャイチャを見せられてみんな憧れちゃったってわけです」
ジョルジュはよく喋る。強弱の付け方も上手いので、話を理解することが苦手な私でも成程と一回で納得してしまう。
ラブリが『私も騎士様にリボン送りたくなったなー』とぼやいている。ジョルジュは『俺が送ったみたいになるからなんかヤダ』とからかった。
ラブリがシリルに助けを求めると、「ラブリは瞳の色が少し明るいからそうならないように僕が色を合わせるよ」と笑っていた。
その会話を聞いていた女子生徒がソワソワとシリルに話しかけたそうにしている。
きっと、アドバイスをもらいたいのだろう。
こうやって、シリルの“好きな物”が認められていくのは嬉しい。初めて会った時の、全てを諦めて自分を否定している悲しい空気は今やほとんどない。
友達、仲間、時々敵。彼の周りが賑やかになれば私も…
トーナメントが終わり家に帰ると、辺境から一通の手紙が届いていた。宛先は『シリル・トラティリア』封を開け、手紙を読んだシリルは、はてなマークがたくさん飛んでいるような、腑に落ちないような顔をしている。
許可をとって目を通す。
「スイと、セイがここにくるそうだ。申し訳ないが滞在させてもらえないだろうか?宿泊は街の宿を取ってるそうなので大丈夫だ。」
手紙には大きく「果し状」と書かれている。
シリルに私を取られたと思った妹が書いたのだろう。
首を洗って待っていろ。と書いてあるのでおそらく尋ねてくるつもりだろう。
しょうがないからアーサーにも教えてやるか。
久しぶりにスイに会えるとわかれば、喜んで飛んでくるだろう。流石に二人同時に相手をするのはシリルには酷である。アーサーに生贄になってもらうしかない。
シリルに視線を戻すと、青白い顔をして固まってしまっていた。
申し訳ない。
一太刀刃を交わせば、誰だかわかった。
アーサーが、何も告げずに挑んできたと言う事はおそらく、本当に戦いたかったのだろう。
彼は、初めて会った時に確かそう言っていた。
「いつか、君に勝てる騎士になる!!待っててくれ!」
と。私は騎士では無いが。アーサーには身分があったので騎士を目指すんだと思っていた。だけど、彼は身分を捨てる覚悟で騎士ではなく軍にはいった。
それこそ、血の滲む努力を重ねて軍の隊長にまでなった。
まだまだ、私に勝てる力はないが彼はきっと、今よりももっと強くなる。それこそ、国の英雄と呼ばれるくらいには。
剣を重ねているうちに、胸の中が熱くなった。
今まで追いかけられる事はあっても、追いつくところまで来るものはいなかった。アーサーはきっと、私を追い抜いていく。
試合が終わって退場しようと後ろを向き、ふと、客席に目をやるとシリルが満面の笑みでこちらを見ていた。あぁ、いい席だ。一番前の一番目立つ場所だ。ちょうど入退場する通路の上。
退場しなければいけないのはわかっていたが、腰から剣を鞘ごと抜き、シリルに向かって差し出す。
段差があるのでもちろん届かないが。
そして片手で彼がくれたリボンをそっと触る。
「シリルの心、受け取った。私の誇りと忠誠を君に。」
シリルはかぁ、と顔を赤くして手をこちらに伸ばし、グッと握り拳を作った。剣を受け取ったとジェスチャーで表してくれたんだろう。
周りで見ていた女子生徒達が黄色い歓声を、上げた。
何人かが手を振っていたので、そっと振り返すととても喜んでいるのか、ピョンピョン飛び跳ねていた。
座席から落ちないように気をつけてほしい。
それを見てシリルは少しムッとしたような複雑な顔をしていた。何だか、可愛くてつい笑ってしまった。
その後の試合は順調に進んだ。
私のように首にリボンを巻いた生徒達もたくさんいたが、伝統なんだろうか…リボンを首に巻くのは昔からある事なのかと、隣で見ていたラブリに聞いてみる。
「何言ってるんですか!こんな…こんな独占欲丸出しのリボンを恥ずかしげもなく首に巻いて…あれだけ素晴らしい戦いをした貴女に憧れてみんなが真似してるんですよ!」
独占欲?と思い首を傾げるとジョルジュが、シリルをジトッとした目で見た。
「シリルは説明してないと思いますけど、リボン、最近のトレンドは相手の色を片方取り入れるんですけど、濃紺のリボンに銀の糸、ガッツリ『シリル』なんですよ。そこまで執着心を出すのは流行ってない。さらに、もらった相手も手首や足首、剣の持ち手など目立たないところにさりげなく付けるのがオシャレだったんですけど…そこまで堂々と付けているのは珍しいんですよ。何が言いたいかというと相思相愛で、さらにあんな闘いと終了後のイチャイチャを見せられてみんな憧れちゃったってわけです」
ジョルジュはよく喋る。強弱の付け方も上手いので、話を理解することが苦手な私でも成程と一回で納得してしまう。
ラブリが『私も騎士様にリボン送りたくなったなー』とぼやいている。ジョルジュは『俺が送ったみたいになるからなんかヤダ』とからかった。
ラブリがシリルに助けを求めると、「ラブリは瞳の色が少し明るいからそうならないように僕が色を合わせるよ」と笑っていた。
その会話を聞いていた女子生徒がソワソワとシリルに話しかけたそうにしている。
きっと、アドバイスをもらいたいのだろう。
こうやって、シリルの“好きな物”が認められていくのは嬉しい。初めて会った時の、全てを諦めて自分を否定している悲しい空気は今やほとんどない。
友達、仲間、時々敵。彼の周りが賑やかになれば私も…
トーナメントが終わり家に帰ると、辺境から一通の手紙が届いていた。宛先は『シリル・トラティリア』封を開け、手紙を読んだシリルは、はてなマークがたくさん飛んでいるような、腑に落ちないような顔をしている。
許可をとって目を通す。
「スイと、セイがここにくるそうだ。申し訳ないが滞在させてもらえないだろうか?宿泊は街の宿を取ってるそうなので大丈夫だ。」
手紙には大きく「果し状」と書かれている。
シリルに私を取られたと思った妹が書いたのだろう。
首を洗って待っていろ。と書いてあるのでおそらく尋ねてくるつもりだろう。
しょうがないからアーサーにも教えてやるか。
久しぶりにスイに会えるとわかれば、喜んで飛んでくるだろう。流石に二人同時に相手をするのはシリルには酷である。アーサーに生贄になってもらうしかない。
シリルに視線を戻すと、青白い顔をして固まってしまっていた。
申し訳ない。
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