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目を覚ますと同時に体に強い痺れを感じる。
つい、口から「う…」と声を漏らしてしまった。
その声に反応したのか、側に誰かがやってきた。
なんとか、目だけを開けて首を動かすと質素な、小屋の中のベットに寝かされているようだった。
「気がついた?」
「…ここは?」
近づいてきた女性は私の体を起こすと、じっと顔を見つめてきた。そして、フッと笑ってすぐに水差しから水を汲んで私の口にコップをつけて飲ませてくれた。
「ここは、私に与えられた小屋。あなた、川で倒れてたのよ。子供と一緒に」
「子供?私の子供か?」
「…知らないわよ。そんな事。肩に矢は刺さっているし、腕には酷い切り傷がある、死んでもおかしくないわよ。傷を負ったまま川を泳ぐなんて」
川を、泳いだ?何故?矢に切り傷?なぜ?
私の頭の中は混乱した。そもそも、、、
「私は誰だ?」
「あなたは…」
私の名前はなんだったか、思い出せない。女性も困っているようで、黙ったまま部屋から出ようとしている。
「あ…お嬢さん…」
そう呼び止めると振り返り、困ったような顔のまま私に向かってはぁ、とため息をついた。
「私はアリア、お嬢さん、なんて呼ばないで。」
「アリア、助けてくれたのだよね。ありがとう。それで、子供は?」
「子供は私の…親のところにいる。一人で二人も面倒見れないから。とにかく今は休んで。お医者様を連れてくるから。」
そう言ってバタンと思いの外優しくドアを閉めた。
ベットから降りてみようと体を動かすも、ギシギシと軋むような痛みに右足を床につけるだけで冷や汗をかいてしまった。
痺れるような、重い身体に違和感を感じる。肩と腕はヒリヒリと熱い。忘れてはいけない何かを忘れているのはわかるし、思い出さなければいけないということもわかる。
でも、考えてみても何も思い浮かばない。
そのままの姿勢でしばらく止まっていると、部屋の扉が再び開きアリアが入ってきた。
「ちょっと!なんで起きてるのよ。ちゃんと寝てなきゃダメじゃない」
そう言って、優しく体をベットへ戻してくれた。手にはお盆になった暖かそうな食べ物とハサミ。
「ミルクで煮たパンよ。食べられそう?あと、髪を整えさせて。そんな…髪型、耐えられないから。」
ベットサイドにお盆を置いて煮たパンを私に見せてくれた。食べようと思って手を伸ばすが、片手しか動かせない。それをみたアリアは、クスッと笑ってサジで掬い、口元に運んでくれた。
一口食べると、ほんのりとした甘さと温かさが口の中に広がった。
「美味しい。」
ポロリと漏れた言葉にアリアは嬉しそうに笑った。
「よかった。料理を始めたばかりだから。自信なかったんだ。」
アリアの手の中に収まるくらいの小さな器に盛られた煮たパンはすぐになくなった。「また、あとでね。一気に食べるとお腹に悪いから。」と言って食器を下げ、髪を切ってくれた。
しばらくすると「よし!」と満足そうに私から離れた。耳も隠れないほど、短く切り揃えられた髪を見てアリアは何故かため息をついた。
「綺麗な…色なのに。自分で切ったの?何故こんなに短くしたの?って覚えてないか」
「ありがとう。アリア、私は何日くらい眠っていたんだ?」
「川から助けてから3日。時々目を覚ましていたけど、覚えてないかしら?水を飲ませるとまた気絶するように眠ったの」
「…そう…か」
お腹に温かいものが入ったからか、なんだか眠気が一気に襲ってきた。アリアはそれを察したのか、そっと頭に手を添えてくれてそのまま寝かせてくれた。
「思い出せるといいわね…」
眠りに入る寸前に、アリアに名前を呼ばれたような気がした。その部分を聞く前に、私は再び眠りについた。
つい、口から「う…」と声を漏らしてしまった。
その声に反応したのか、側に誰かがやってきた。
なんとか、目だけを開けて首を動かすと質素な、小屋の中のベットに寝かされているようだった。
「気がついた?」
「…ここは?」
近づいてきた女性は私の体を起こすと、じっと顔を見つめてきた。そして、フッと笑ってすぐに水差しから水を汲んで私の口にコップをつけて飲ませてくれた。
「ここは、私に与えられた小屋。あなた、川で倒れてたのよ。子供と一緒に」
「子供?私の子供か?」
「…知らないわよ。そんな事。肩に矢は刺さっているし、腕には酷い切り傷がある、死んでもおかしくないわよ。傷を負ったまま川を泳ぐなんて」
川を、泳いだ?何故?矢に切り傷?なぜ?
私の頭の中は混乱した。そもそも、、、
「私は誰だ?」
「あなたは…」
私の名前はなんだったか、思い出せない。女性も困っているようで、黙ったまま部屋から出ようとしている。
「あ…お嬢さん…」
そう呼び止めると振り返り、困ったような顔のまま私に向かってはぁ、とため息をついた。
「私はアリア、お嬢さん、なんて呼ばないで。」
「アリア、助けてくれたのだよね。ありがとう。それで、子供は?」
「子供は私の…親のところにいる。一人で二人も面倒見れないから。とにかく今は休んで。お医者様を連れてくるから。」
そう言ってバタンと思いの外優しくドアを閉めた。
ベットから降りてみようと体を動かすも、ギシギシと軋むような痛みに右足を床につけるだけで冷や汗をかいてしまった。
痺れるような、重い身体に違和感を感じる。肩と腕はヒリヒリと熱い。忘れてはいけない何かを忘れているのはわかるし、思い出さなければいけないということもわかる。
でも、考えてみても何も思い浮かばない。
そのままの姿勢でしばらく止まっていると、部屋の扉が再び開きアリアが入ってきた。
「ちょっと!なんで起きてるのよ。ちゃんと寝てなきゃダメじゃない」
そう言って、優しく体をベットへ戻してくれた。手にはお盆になった暖かそうな食べ物とハサミ。
「ミルクで煮たパンよ。食べられそう?あと、髪を整えさせて。そんな…髪型、耐えられないから。」
ベットサイドにお盆を置いて煮たパンを私に見せてくれた。食べようと思って手を伸ばすが、片手しか動かせない。それをみたアリアは、クスッと笑ってサジで掬い、口元に運んでくれた。
一口食べると、ほんのりとした甘さと温かさが口の中に広がった。
「美味しい。」
ポロリと漏れた言葉にアリアは嬉しそうに笑った。
「よかった。料理を始めたばかりだから。自信なかったんだ。」
アリアの手の中に収まるくらいの小さな器に盛られた煮たパンはすぐになくなった。「また、あとでね。一気に食べるとお腹に悪いから。」と言って食器を下げ、髪を切ってくれた。
しばらくすると「よし!」と満足そうに私から離れた。耳も隠れないほど、短く切り揃えられた髪を見てアリアは何故かため息をついた。
「綺麗な…色なのに。自分で切ったの?何故こんなに短くしたの?って覚えてないか」
「ありがとう。アリア、私は何日くらい眠っていたんだ?」
「川から助けてから3日。時々目を覚ましていたけど、覚えてないかしら?水を飲ませるとまた気絶するように眠ったの」
「…そう…か」
お腹に温かいものが入ったからか、なんだか眠気が一気に襲ってきた。アリアはそれを察したのか、そっと頭に手を添えてくれてそのまま寝かせてくれた。
「思い出せるといいわね…」
眠りに入る寸前に、アリアに名前を呼ばれたような気がした。その部分を聞く前に、私は再び眠りについた。
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