魔王が最弱でスライムが最強の世界!?

クソニート

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第4章最弱魔王は勇者のために頑張るそうです

第97話 修学旅行の後②

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 次の日は普通に授業が行われた。しかしながら、やはり、魔王の話題で持ちきりとなっている人間界。全てを知るメルには少し息苦しく感じるところである。

「――よし、今日の授業はここまでだ。今日も気をつけて帰るんだぞ」

 一日の授業を全て終えた。ダエフはやはり、まだ対応に追われているのか、授業を教え終えるとすぐに教室を出ていく。

 昨日、モカと少し喧嘩をしたイサムも何も言わず帰る。教室に残ったのは、結局いつもの三人――メル、ゴウカ、モカである。

 しかし、いつまでも教室に残っていてもすることもなく、教室を出る。教室を出るメル達を見ると変わりなくざわざわとするが、昨日のフィーの活躍もあり、その数は激減していた。

 スタレマン学園を出て、話しをしながら歩く三人。話す内容は今日の学園での話を適度にする。三人はサタンの話題にならないよう、それぞれが気をつけていた。

 と、すると――

「ねぇ、あれ……何かな~?」

 モカが少し先に出来ていた人集りを見て、首をかしげて言う。メルとゴウカにも当然予測出来ることなく分からない。

「何でしょう?」

「行ってみる?」

 ゴウカが言うと、メルとモカは首を縦に答え、小走りでそこまで行った。

「あれ……? イサム……?」

 ゴウカは人集りの中にイサムらしき影を見かけ声をかける。

「なんだ、ゴウカか……それと――メルにモカもいるのか……」

 ゴウカの目は正しかった。人集りの中にいたイサムは三人に気づき、人集りを退かしながらこちらまでやって来る。

「先に帰ったんじゃないの……?」

「……ふん、ここの人集りが邪魔で帰れなかったんだ」

「ふ~ん……」

 やはり、二人の間の空気は少しピリピリとしている。そのことを感じ取ったメルは咳払いをひとつし、イサムへと投げかける。

「そ、それで、この人集りは何なんですか? 凄く豪華にセッティングされていますが」

 人集りの視線は一点に集められていた。皆が皆、前を向く。そこには、とても大きな教壇と声を大きくする機械がセッティングされていた。

「そんなの知らん。俺にも何がどうなっているのか――」

 と、イサムが答えていると、人集りから、ウオォォォォォォ――という歓声が上がった。

 咄嗟の事に驚く四人。一斉に視線を前へ向ける。そして、メルは目を大きく見開いた。

「嘘……どうしてここに……」

 小さく呟く声は歓声にかき消され誰にも聞かれずにすむ。前へやって来たのは――

「諸君、声を抑えて頂きたい。俺の名前はガドレアル。人間界の王である――っ!」

 人間界の王であり、メルを勇者として育てるためラエルから預かると言って二人の時間を奪い取った男――ガドレアルだった。


 ◇


 ガドレアルの登場にメルは咄嗟に顔を下に向ける。ここにいることが知られるとまた王城へ連れていかれる。そうなると、ラエルとはまた暮らせなくなる。それどころか、ラエルを殺そうとしたガドレアルのこと。もう二度と会えないかもしれない。

「諸君……何故、俺がここに現れたのか分かるか?」

 ガドレアルの言葉には誰も答えられない。簡単に声を上げることが出来ないのだ。

「それは、諸君等が恐怖して怯えている魔王について何とかしようということを言うためである――っ!」

(……っ、やっぱり……)

 メルは顔を下に向けたまま目を瞑る。脳裏に浮かぶのはサタンの姿。

「実を言うと、俺は諸君等が新たな魔王が存在していることを知る前から知っていた。すまない……黙っていて。だが、決して隠していた訳じゃない! 諸君等を心配刺せたくなかったのだ!」

 あくまで、皆のことを思いやっている……という風に思わせるガドレアル。そして、まんまと引っ掛り涙すら流す人が現れる。

「俺は今、こうして諸君等を恐怖させ怯えさせている魔王が許せない……!」

 首を縦に振り、うんうんと頷く人集り。

「そこでだ! 俺は魔王を討伐しようと思っている。しかし、王城の傭兵騎士だけではどうすることも出来ない。だから、皆《みな》の力を貸してくれないか!?」

 一瞬、静まり返る。しかし、誰かがひとつ拍手した。すると、それに続き、まばらまばらから次第に盛大な拍手喝采へと変わっていく。

「ありがとう……ありがとう……」

 ガドレアルは涙を流しながら感謝する。そして、涙を拭き、勢いよく教壇を叩くと――

「三日後、魔王を討伐しよう! そして、再び安心して生活出来る日々を取り戻そうじゃないか!」

 ウォォォォォォォォォ――――!
 ガドレアル――ッ! ガドレアル――ッ!

 ガドレアルコールが響く中、ガドレアルは軽く一礼をし、後ろを振り返る。そして、乗ってきた場所に乗り込もうとして、酷く憎たらしく唇を緩ませ嗤った。

「ど、どうなっちゃうの!?」

「分からない……」

 魔王討伐。つまり、サタン討伐ということ。
 モカはそのことを頭で分かっていてもちゃんと整理することが出来ない。

「ヤバイ……ヤバイ……今すぐ伝えなければ……」

「メル……?」

 一人下を向いたまま、ぶつぶつと呟くメルを心配したモカが呼びかける。そして、肩に手を置こうとした途端メルは顔を勢いよく上げた。

「すいません! 私行かなければなりません! この事を伝えなければ!」

 そう言ってメルは呼び止めようとしたモカが声を出す間もない程の早さでその場を去っていく。

「メル、どこに行く気だろう……?」

「さぁ……? けど、きっとサンタの所に行ったんだよ」

「そっか~私達にも相談してほしいよね。あの時、助けてくれたお礼だってしたいのに」

「あの時……って言えばさ、メルと一緒にいたアズラって人……あの人も、魔王と何か関係があるのかな?」

 何気に呟いたゴウカ。そして、モカも思い出す。あの時、助けてくれた存在がもう一人いたことを。

「あ~確かに。サンタ君のことばっかで忘れかけてたけどアズラさんにも助けてもらったもんね~」

 しかし、それに一番反応したのはゴウカでもモカでもなかった。

「おいっ!」

 イサムだった。イサムは顔色を変えながら、アズラという言葉を発した二人に駆け寄り――

「今、アズラという名前を呼んだのか!? アズラというのがサンタと一緒にいたのか!? ソイツは悪魔か何かなのか――っ!?」

 やけにアズラのことを聞く。ゴウカとモカは少し驚いた。今まで、サタンが魔王だと言ってもあまり焦りを顔に出さなかったはずのイサムがここぞというばかりに何故だか焦っていた。

「ごめん、イサム。それは僕達にも分からない」

「そうか……」

 ゴウカに答えられ、イサムは落ち着いたかのように言い残し、どこかへと去っていった――。


 ◇


「――と、ここまでが、ついさっきまで起こっていたことです……」

 サタンと別れてから起こったことの全てを話したメル。そして、決意したようにこう言った。

「逃げましょう、サタン、アズラ……! ここにいては危険です! 今なら、まだ間に合います!」

 逃げる……今なら、逃げることは容易いだろう。まだ、三日の猶予がある。しかし、逃げるってどこへ逃げる? この世界に逃げる場所など存在しない。

「そうだな……逃げる――」

「サタン――ッ」

「――けど、逃げるのはアズラだけだ。俺はここに残る」

 逃げる……というよりも、リエノア村への避難だ。アズラのことは誰にも知られていない。サタンさえここに残ればアズラ達に危険は及ばない。しかし、そんなことは当然許してくれない二人。

「サタンさん!」
「サタン!」

 二人は声を揃えてサタンに大きめな声で言う。

「何を言っているんですか! 私はサタンさんと一緒にここに残ります! もし、サタンさんが逃げるというなら一緒に逃げます! ですが、サタンさんを一人にすることは出来ません!」

「アズラの言う通りです! サタンがたった一人残ったとしても何が出来るんですかっ!? みすみすやられるだけです!」

 二人の言う通り。と言うか、正論過ぎて、言い返す言葉が見つからない。……ただし、それは、今までのサタンだったならばの話。

「二人の言っていることは正しい。俺は一人じゃ何も出来ない。……けど、逃げるじゃダメなんだ。俺はもう、誰も危険にさせたくないんだ……」

 修学旅行でのことを思い返すと、危険になるのは自分だけで十分だ。

「それで、サタンだけが危険になってどうするんですか?」

「それは――」

「何も出来ないでしょう? だから、逃げましょうよ……私とアズラ、それにサタンがいれば逃げ切れるでしょう……」

 メルの言う通り。アズラのワープさえあれば、逃げ切れる確率はグッと上がるだろう。

 けど――

「それじゃ、意味がないんだよ……結局、一緒にいれば何が起こるか分からないんだ! だから、俺は逃げない! 早く、リエノア村に帰れ」

 もう、誰も傷つけない。傷つくのは自分だけ。この時のサタンの意思は強かった。

「じゃあ、約束はどうなるんですか……?」

「約束……?」

「約束したじゃないですか……! いつか、一緒に王城ドアベルガルに乗り込んでガドレアルと決着をつけようって……その約束を果たすのが今じゃないんですか!?」

 サタンもちゃんと覚えている。サタンは魔界を救うため、メルはラエルを殺そうとしたガドレアルと決着をつけるため。しかし、サタンはわざと嘘をついた。

「ああ……そんな約束もあったな。悪いが守れそうにない。あの約束は叶いそうにない。叶える気もない」

「……っ、嘘つき……サタンは嘘つきです!」

 メルは目にうっすらと涙を浮かべて言う。サタンはメルを後ろにして容赦なく続ける。

「ああ、俺は嘘つきだ。分かったらとっとと帰れ! そして、もう二度とここに来るな!」

 これも、全部メルを守るため。傷つけて離れさせるため。決別の刻――。

「分……かりましたよ……この嘘つき魔王……さようなら……」

 メルは泣きながらリエノア村へと走っていく。

「サタンさん……」

 辛そうに、拳を握り、震わせているサタンを見て、アズラも泣きそうになる。

「アズラも……メルを追ってリエノア村に避難してくれ……」

「出来ません! サタンさんを一人にしたくありません!」

 やはり、アズラは簡単にはいかない。しかし、サタンは知っていた。アズラに強く言われれば断れないのと共に、アズラも強く言われると断れないということを。

「頼む……リエノア村に行ってくれ……! アズラを危険にしたくないんだ……頼む――っ!」

「……っ、分かり、ました……ですが、私は戻って来ますから! 必ず、サタンさんを一人にはしませんから!」

「アズラ……ありがとう。メルとラエルさんのこと……頼むな……」

「……はい、私がここに近づかないようにします! 二人のために……」

 そして、アズラはワープを使ってリエノア村へと発った。おそらく、メルよりも早く、リエノア村へ着くことだろう。

 サタンは魔王城の扉を開けて中へ入った。その後ろ姿は妙に寂しく、酷く悲しいように見えた――。

 そして、その日の晩から、ご飯を自分で作らないといけないこととなった。しかし、サタンに自炊など出来ない。どうするか部屋にこもり悩む。そして、とにかく、何かないかを探しにキッチンまで向かうと机の上にいつの間にかご飯が置かれていた。さらに、ご飯と置き手紙が。

『サタンさん……ご飯だけは私が作りますから心配しないで下さいね』

 どこまでも自分を心配して、優しくしてくれるアズラにサタンは自然と涙を流した。そして、アズラが作り置きしてくれていたおにぎりを口にした。

 その翌日から人間が攻めてくる当日までアズラは朝、昼、晩とそれぞれご飯を用意してくれた。しかし、サタンは会わなかった。会うと悲しくなるから。

 そして、時間は進む――。

 ◇


「今日、この刻をもって魔王を討伐するぞーーー!」

 ウォォォォォォォォォーーー―――!

 魔王城から少し離れた場所に集まった沢山の人達。そう、ガドレアルに言われて魔王を討伐するために集まった人達である。各々に武器を持ったり、能力の確認をしている。

「しかし、ガドレアル様の言っていた王城の傭兵騎士は遅いな」

 そこに、王城の傭兵騎士の姿は一人もなかった。

「もしかして、ガドレアル様は俺達にチャンスを与えて下さったのかもしれない。魔王討伐で活躍すると大金をくれるのかもしれない」

「なるほど。だったらなんとしてでも活躍しないとな! そして、再び、安心できる生活を取り戻そう!」

 ウォォォォォォォォォーーー―――!


 ◇


 一人、玉座に座りながら、窓から見える空に浮かぶ満月を見上げる。

「クックッ……クックッ……」

 手で口元を隠すも、込み上げてくる嗤いを堪えられない。

「クックッ……アーッハッハッハッ! 今頃、魔王討伐を始める頃か――」

「ガドレアル様っ」

 そこへ、現れる王城の傭兵騎士達の姿。

「なんだ?」

「本当に我々も魔王討伐に向かうわなくて良かったのですか? 正直、騎士でもなんでもない人間に魔王を討伐することなど出来ないかと……」

「それならば、それで、別にいい」

「――え?」

「それよりも、お前達にもやってもらいたいことがある――」


 ◇


「魔王ーーー! いるならば、出てこい!」

 メルが言った通り、三日後の夜――魔王城の外から声が聞こえてきた。サタンは閉じていた目を開き――

「来たか……」

 と、小さく漏らす。そして、まだ魔王城に残っていた青い毛をした猫――アオニャンを抱き抱えると窓を開け外へと逃がした。外へと出たアオニャンは振り返り、心配そうに小さくニャ~……と鳴く。

「悪いな……お前も危険に巻き込む訳にはいかないんだ。好きな所に行ってくれ……元気でな……」

 窓を閉め、サタンは玄関の方へと歩いていく。

「魔王よ、いないのか――っ!?」

「いないのならば、こちらこそ突撃するぞ!」

 魔王城の外では魔王の登場を待つ人達でいっぱいだ。そして、返事がない魔王城に向かって一斉に突撃しようとした時――

 ギィ~~……と玄関の扉が開く。身構える人達。

 そして、扉の向こうから、魔王としてはあまりにもあり得ない登場の仕方――普通に玄関から魔王が出てきたのである。

「俺が魔王だ――!」
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