魔王が最弱でスライムが最強の世界!?

クソニート

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第1章最弱魔王は魔界で頑張ると決めたそうです

第24話 メール②

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「――私たち家族はこれからもきっと幸せに暮らしていく――私はそう思っていたわ・・・だけど、しばらくしてエメは帰らぬ人となってしまった・・・」
「帰らぬ人・・・それは一体どうして・・・?」
「それはね・・・」

 ラエルは悔しそうに手を強く握り言った。

「それは――この国の王、ガドレアルのせいよ・・・!」
「ガド、レアル・・・」
「そう・・・! 奴は、奴は――」


 ◇


「――リヴァイアサンの討伐・・・ですか?」

 ある日、エメに一つの依頼が申し込まれた。依頼主は人間界の王であるガドレアルという男だった。

「ああ。実は王城付近の海に突如リヴァイアサンが出現して人々が困っている。そこで国をあげて討伐しようということになったのだが、勇者であるそなたにも手をかしてほしいほしいのだ! もちろん、大量の金額を払わさせてもらう! どうだろうか?」

 それは、王城付近の海に現れたリヴァイアサン討伐の依頼だった。リヴァイアサンとは海に住む怪物。青色、紫色、水色が混じりあった体で、太く長く巨大な怪物である。悪魔や、天使、人、生物を襲い、倒すには相等の強さが必要。

「それは構いませんけど・・・一体何故、突然リヴァイアサンが出現したんです!?」
「分からない・・・普段は海深くで眠っているはずなのに突然出現したんだ! 既に奴は沢山のモノを喰っている・・・だから、これ以上被害が出ないよう、皆で討伐しようとしているんだ! ・・・もう一度頼む! そなたの力を貸してくれ!」

 ガドレアルは椅子に座りながら、頭を机につくまで下げた。

「あ、頭を上げて下さい! 僕もリヴァイアサン討伐に手を貸させていただきます!」
「本当か・・・?」
「はい!」
「そうか・・・本当にありがとう!」

 ガドレアルはもう一度エメに深く頭を下げた。

「それで、討伐の時間はどれほどかかるのでしょうか?」
「時間はそれほどかからせないつもりだ!」
「分かりました!」
「では、俺はこれで失礼する。討伐の時期がいつになるかはまた手紙で通達させてもらう」

 そう言うとガドレアルは勇者屋を出ていった。

(リヴァイアサンの討伐、か・・・)


「リヴァイアサンの討伐なんて危険な事大丈夫なの!?」

 その日の夜、私はエメからリヴァイアサン討伐の話を聞かされた。

「大丈夫です! 僕一人だと到底出来ない危険な事ですが国をあげての討伐にちょっと手を貸すだけですから」
「大丈夫、ならいいけど・・・でも、やっぱり心配よ・・・」
「大丈夫だよラエルさん! 僕は必ず帰ってくる! 僕の愛する大切な二人のために!」
「エメ・・・!」
「だから、二人で僕の帰りを待ってて下さいね!」
「ええ!」

 その翌日、王城の遣いから一通の手紙が勇者屋に届けられた。手紙の内容はもちろん、リヴァイアサン討伐の話だった。

「今から一週間後ですか・・・」


 そして一週間後、その時がやってきた。

「じゃあ、行ってきます!」

 エメは腰に剣を携え、身を守るための服を着て、勇者屋の前に立つ。

「行ってらっしゃい・・・! 気をつけてね!」
「パパ、頑張ってね!」

 私とメルは手をグーにしてエメを応援する。

「うん、絶対帰ってくるよ!」

 私たち三人は抱きあった。

「約束ね」

 私達三人はゆびきりをした。そしてエメはリヴァイアサン討伐に向かった。

「ママ・・・」

 エメの後ろ姿を見て、メルが私の手をキュット握った。

「どうしたの?」
「パパはきっと帰ってくるよね・・・?」
「当然よ! パパはメルとママの事を放ってどこにもいかないわ! だから、帰ってくるのを待ってようね!」

 私はメルの頭を撫でて優しく強く言った。

「うん!」

 するとメルも元気に答えた。

(絶対にエメは帰ってくる・・・! だから、私はメルと信じて待つ!)


 しかし、どれだけ待ってもエメが帰ってくる事はなかった。

「ママ・・・パパ遅いね・・・」
「そうね・・・でも、もう少ししたら帰ってくるわ・・・!」

 それから、少しして王城の遣いからエメのケータイだけが私に渡された。

「これだけしか残っていなかったとのことです・・・」
「そんな・・・!」

 私は体が震えだし膝からくずれ落ちた。

「では、私はこれで・・・」

 王城の遣いは頭を下げると帰っていった。

「エメ・・・エメェ・・・! ウワアァァァァン!」

 私は大声で泣いた。

「ママ・・・?」

 私は声が聞こえて、ハッとした。メルが私を見ている。

「メル・・・ご、ごめんね、急に泣いたりなんかして、ビックリしたよね」

 私は急いで手で涙を拭う。

「パパ、は・・・パパはもう帰ってこないの・・・?」 

 私は答えなかった。するとメルは大きな涙の粒を流して泣き出した。

「うっ・・・ひっく・・・パパ・・・うわぁ、うわあぁぁぁん! パパーーー!」
「メル・・・おいで・・・」
「マッ、ママーーー!」

 私は泣いているメルをこっちにおいでと手で呼んだ。すると、メルは私の胸に飛び込んで泣き続ける。そんなメルを私はおもいきり抱きしめた。

「これからはママとメルの二人になっちゃったけどメルのことはママが絶対に守るからね・・・!」
「マ、ママァ・・・! うわあぁぁぁん!」
「っ・・・・・・!」

 私とメルはおもいきり泣いた。泣いて泣いて泣きわめいた。やがて泣きつかれたメルは眠った。

「パ・・・パ・・・」

 メルは寝ながらエメを呼ぶ。

(エメ・・・どうして死んじゃったのよ・・・! 嫌よ・・・これから二人だけなんて・・・! これからも私達は三人で幸せに過ごすんじゃないの!? ねぇ、なんとか言ってよ・・・エメ!)

 その時、突然エメのケータイが起動し画面が光始めた。

「な・・・に・・・?」

 私はケータイに目をやった。するとそこには未送信のメールが一件残っていた。送り先は私になっていた。私はその未送信のメールを開いた。するとそれは――。

『愛するラエルさん、メルへ』

 私とメルに宛てたメッセージだった。

『多分このメールを見ているということは僕はもういないんだね・・・必ず帰るって約束したのに守れなくてごめん・・・』
『メル・・・僕とラエルさんの子どもに産まれてきてくれてありがとう。パパはいなくなっちゃったけどママの言うことをよく聞いて、よく食べて、よく寝て、よく笑って、ずっと元気に過ごすんだよ』
『そして、ラエルさん・・・ラエルさんに初めて会った日、実を言うと僕はあなたに一目惚れしていました。でも、どうやって声をかけようかと悩んでたんだ。僕みたいな人間があなたのような美しい人に声なんてかけられない、と・・・そんな事を思ってる内にラエルさんの目の前に突然巨大な岩が転がってきたね。あれには驚いたけど僕は正直チャンスだと思ったよ。これで僕が助けたら少しでも話せるかもって・・・でも、緊張してひと言しか声をかけないで去ってしまった。僕はあれからスゴく後悔してたんだ・・・けど、次の日ラエルさんが僕のところを訪ねて来てくれた。もう僕は嬉しくて一人で舞い上がってたんだ。そして、初めてデートした日、想いが叶ってラエルさんと付き合えて本当に嬉しかった。付き合ってからの日々は楽しすぎてあっという間に過ぎていったよ。ううん、付き合ってからじゃない・・・きっと初めて会った日から僕の時間はあっという間に過ぎていったんだと思う。きっとこの先もずっと一緒にいれると思ってた。メルの七五三や小学校や中学校、高校の入学式や卒業式、そして、出来ればあんまりしてほしくないけど結婚式・・・きっと色々なことが待っていて、その度に思い出が増えていって・・・やがてメルも子どもを産んで僕たちはおじいちゃん、おばあちゃんになって。どれだけ歳をとってもきっと僕たちなら楽しく過ごしているんだろうね。やがて、死ぬ時がきたらラエルさんには悪いけど僕が先に天国へいくよ。きっとラエルさんが先にいっちゃったら僕は立ち上がれないと思うから。そんな・・・そんな楽しいことがいっぱい待っていたはずなのにごめんね・・・けど、ラエルさんとメルは二人になっちゃったけど幸せに暮らしていってね。僕はいつまでも二人を見守っているよ。最期に本当に僕の人生は二人に逢えて幸せだった。ありがとう・・・!』

「エメェ・・・エメェ・・・!」

(何よこれ・・・こんなのズルいわよ! そんなの私の方こそエメに出逢えて幸せだったわよ! いつも独りだった私がエメと出逢えたおかげでこんなにも楽しくて幸せな時が過ごせたんだもの!)

 私の目から大粒の雫が頬を伝う。

(だから・・・だから、いつまでも私とメルの事を見守っていてね・・・! エメ大好き・・・!)

 私はメールを閉じてケータイの電源を切った。そして、ケータイを手で抱きしめて泣き続けた――。


「――それから、私は一生懸命働いてメルを育て続けたわ。けれど、どうしても育てることが難しかった・・・そんな時、また、あのガドレアルが現れてメルを王城で預かってやると言ったのよ。勇者はこの人間界の宝子だと言ってね」
「でも、それなら断れば・・・」
「もちろん断ろうとしたわ! ・・・でも、このまま私がメルを育てても満足に成長できるか分からない・・・もし、メルに何かあったらと考えると安全で元気に育てられる王城に預けるしかなかったのよ・・・月に一度会うことを約束としてね。それから私は一人でこのリエノア村に来たの」
「そんな・・・」
「酷い母親でしょ? あの子のためと言いながら結局王城に預けてしまうなんて母親失格だわ。それでも私はメルに会いたくて月に一度会える約束を破って隠れてこそこそとメルの事を陰から何度も見てたわ」
「そうだったんですか・・・すいません・・・思い出したくないことを思い出させてしまって・・・」
「いいのよべつに・・・それに、今はサタン君の所で暮らしているんでしょ?」
「それは・・・はい・・・」

 サタンは申し訳なく答えた。

「まぁ、メルが元気でいてくれるならそれでいいわ・・・そろそろ洗いものも終わった頃ね・・・はい、この話はここまで! これでお仕舞い」

 ラエルがそう言ったのと同時にメルが手を拭きながら台所から出てきた。

「洗いもの終わったよ~お母さん~」
「ありがとう、メル。じゃあもう、遅いしそろそろ今日は帰りなさい。サタン君も」
「うん」
「はい・・・」


 ラエルはサタンとメルを玄関の外まで見送りに出る。

 別れる前にラエルはメルを強く抱きしめた。

「メル・・・これからも元気でね・・・!」
「うん!」
「絶対、また会いにきてね・・・!」
「うん!」
「いっぱい食べて、いっぱい寝て、元気でね! 風邪をひいたりしないでね!」
「うん!」
「何があっても私は絶対メルの味方だからね・・・!」
「うん!」
「よし・・・! じゃあ、行きなさい。サタン君もまた来てね。メルの事をよろしくね・・・!」

 ラエルはサタンを見つめてメルの事を任せる。

「はい!」

 サタンはしっかりと返事した。

「またね、お母さん!」

 サタンはラエルに軽く会釈する。メルはラエルに手を振る。ラエルもメルに手を振って別れた。

「バイバイ・・・!」


 帰り道、サタンとメルは黙って歩いていたがサタンが先に口を開いた。

「いいお母さんだな・・・」
「はい! 大好きです!」
「それにしても・・・ハハっ」

 突然サタンは笑いだした。

「な、何ですかいきなり? 怖いですよ」

 突然笑いだすサタンに驚くメル。

「いや、お母さんの前だと口調が変わるんだなと思ってさ」
「なっ・・・! い、いいじゃないですか別に! お母さんの前だとあれが普通なんですから!」

 すねたように口をとがらせて言うメル。

「ハハ・・・悪い悪い・・・また会いに行こうな!」
「当然です! 絶対にまた会いに行きますよ! いつか、また私はお母さんと一緒に暮らすんですから!」

 メルが夜空を眺めて力強く言う。

 そう話していた時、突然リエノア村が爆発した。
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