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第1章最弱魔王は魔界で頑張ると決めたそうです
第30話 魔王様ありがとうございました
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小鳥のさえずりがどこからか聞こえてくる。気持ちのいい木漏れ日がテントの中に射し込む。そんな中目覚めたい。サタンはそう思った。
だって・・・あのひざ枕されてるんだから目覚めも気持ちいいのがいい!
しかし、現実はそうはいかなかった。どこからかにわとりの大きな鳴き声が鳴り響いた。
にわとりの鳴き声に驚きサタンはうっすらと目を開けた。サタンの体はしっかりと布団で寝かせられていた。
アズ、ラ・・・?
サタンは目を動かしてアズラの姿を探すがアズラの須賀田はどこにもない。
そうか・・・またアズラが俺をきちんと布団で寝かせてくれたのか・・・
サタンはアズラに感謝してテントから出た。体を軽く伸ばし気合いを入れる。今日も快晴。安全な場所探し日和だ。
今日は学校を休んで安全な場所を探さないと・・・!
するとそこへパジャマ姿のメルがやって来た。メルのパジャマには小さな猫のアップリケが縫い付けられている。メルによく似合っていて正直めちゃくちゃ可愛い。
「サタン~!」
「どうした?」
「いえ、あの・・・昨日は本当にありがとうございました。お母さんを助けてくれた事、そして、私の事を助けてくれて・・・」
「そんなの当たり前だろ。俺たちは仲間なんだからな」
「後、今まで魔王だという事を馬鹿にしててすいませんでした・・・昨日のサタンは本当に魔王でした!」
「そうだろ、そうだろ? 分かればいいんだ」
サタンはメルに言われて鼻を伸ばした。
「だから――私は決めました!」
「・・・何を?」
「これからは私もサタンとアズラと一緒に魔界を救うという事をです!」
「メル・・・いいのか?」
「はい! 少し――私の話をしてもいいですか?」
「それは・・・いいけど」
メルは自分の事を話始めた。
「私は王城に預けられて勇者として育てられました。王城での生活は何一つ不自由がありませんでした。もちろん王城に預けられた事でお母さんを恨んだりしていませんよ。だって、お母さんは私の事を思っての事だって知っていますからね。そして、私が勇者として成長した時、あなたを殺して来いと言われたんです」
「そうだったのか・・・」
「私はもう王城に帰る気もありませんし、ここで魔界を救う事に手を貸します! そして、いづれ私はガドレアルとの決着をつけに行きます! お母さんを殺そうとしたことを私は絶対に許しません!」
「メル・・・」
「ですから・・・」
メルはひざまづきサタンの手をとった。そして、サタンの手へそっと唇で触れた。
「な、何をしてるんだ・・・っ?」
「これは約束です。さっき言った事を誓うために」
「や、約束?」
「はい、勇者に二言はありませんから」
にこやかに笑いながら話すメル。その姿にサタンはドキッとした。
サタンとメルは本当の仲間みたいなものになった。
「では、私は戻ってアズラの手伝いでもしてきます」
「アズラは城にいるのか?」
「ええ。皆の朝ごはんを作っている最中です」
そう言うとメルは城へと帰っていった。
「おはようございます~サタンさん!」
アズラが城の外のサタンに朝ごはんを持ってきてくれた。
「あ、ああ、おはよう・・・」
ひざ枕のお陰で少し照れるサタン。
「ゆっくり寝られましたか?」
「お陰さまでな」
「あっ、そ、そうですね・・・」
アズラも少し恥ずかしくなる。
「これを食べたら安全な場所を探しましょう。城にいる皆さんにはもう食べてもらいましたから後はサタンさんだけですよ」
そう言うとアズラはサタンの隣に座った。
「じゃあ、早く食べて安全な場所を探さないとな」
「はい」
サタンもアズラの隣に座り朝ごはんを食べ始めた。
「ここなら、安全ですし生活に苦労する事もない最適の土地だと思います」
サタンは朝ごはんを食べ終えるとすぐに安全な場所探しを始めた。何回かアズラのワープでとんでいる内に見つけた何もない土地。ここに新たなリエノア村を作る。
「じゃあ、皆さん頑張っていきましょう!」
サタンはリエノア村の皆に声をかけた。
さ、流石能力持ちの人達だな・・・!
サタンは昼過ぎから始めた村作りが夕方にはすっかりと完成した事に関心した。
軽々と木を家に組み立てたり水道を堀当てたり電気が通るようにしたりと――能力を使い淡々と村が出来ていった。
「皆さん、お疲れ様でした。お茶です~」
アズラが城から皆の分の淹れたてのお茶を持ってきてくれた。
「はい、サタンさんもどうぞ」
「ありがとう・・・っても、ほとんど俺がしたことなんてないんだけどな・・・」
そう、サタンの魔能力では村作りに何も貢献出来なかったので、サタンはただ見ているだけしかしていなかった。
「いえいえ、そんなことないですよ~・・・多分・・・」
サタンはアズラが淹れてくれたお茶を飲んだ。
ふ~・・・何もしてないけど体にしみる・・・
サタンがお茶を飲んで一服している時――。
「魔王様!」
リエノア村の代表らしき老婆がサタンに声をかけてきた。よく見るとリエノア村の全員が老婆の後ろに並びサタンを拝んでいる。
「この度は本当にありがとうございます。我々、見ず知らずのためにこんなにも素晴らしい気配りをして頂き真に感謝致します」
老婆が頭を深々と下げたのと同時に村の全員がありがとうございます、と言って頭を下げた。
「や、やめてください! 頭を上げてくださいっ!」
サタンは大勢に頭を下げられて焦った。
うん・・・なんで俺が魔王だって事を知っているんだ!?
サタンはこう思ったが昨日の内にしっかりとラエルがリエノア村の皆にサタンが魔王だという事を話していたのだ。
「こんなにも私達に優しくしてくださった方は初めてでございます。ああ、ありがとうございます、ありがとうございます・・・」
深々とお礼を言い続ける老婆。
「この村に住む者はいかなる理由があり、一人になってしまった女ばかりでございます。社会からも除外された私達にこんなにも構っていただきありがとうございます。人生の終わり近くに私は感動いたしました」
「人生の終わりだなんて言わないでください。きっとまだまだ元気でいられます!」
「おお・・・この老いぼれにそのような言葉を・・・本当に何から何までありがとうございます・・・」
リエノア村の皆は一人ずつサタンに礼を言うとそれぞれの新しい家へと帰っていった。
「お母さんっ!」
ラエルも一人、新しい家へ帰ろうとするのをメルが呼び止めた。
「メル・・・」
「帰っちゃうの・・・?」
「ええ、やっぱりこれ以上皆に迷惑はかけられないもの・・・それに、私のせいで村がなくなったのに私だけメルと住んで村からいなくなるなんて村の皆に悪いわ」
「でも・・・」
ラエルはメルを抱きしめた。
「私はどこに居てもメルのお母さんよ・・・だからね――」
メルは泣きそうになる。
「メル・・・」
「メルさん・・・」
するとそこへ、先程の老婆がやって来た。
「ラエルや・・・」
「婆様・・・」
「お前はお行き」
「でも・・・」
「いいんじゃよ・・・確かに村は無くなったがここにある。それに暮らせるならば一緒に暮らした方がいいに決まっておる。ラエルもずっとそう願っていたじゃろ?」
「それは・・・」
ラエルは答えを濁す。
「ここはリエノア村。一人になった女のためにある村じゃ。しかし、ラエルにはメルがいるじゃろ? 行きなさい・・・」
老婆がラエルを説得するもなかなか返事をしないラエル。
「そうですよ、ラエルさん」
「サタン君・・・?」
「一緒に住みましょう!」
「住んでもいいのかしら・・・?」
「住んでいいに決まってるじゃないですか! 住みたいか、住みたくないか、それはラエルさんが決める事です!」
サタンは言った。するとラエルは目からポロポロと涙を流し答えた。
「住みたい・・・メルと一緒に暮らしたい!」
「お母さん・・・」
「じゃあ、一緒に暮らしましょう!」
「ええ・・・!」
こうして皆のお陰でラエルはサタンの城で暮らす事となった。
「さぁ、帰りましょう」
アズラがワープを展開する。
サタン達はワープに向かって歩き出した。
「魔王様・・・ラエルのことをこれからもよろしく頼みます。メルと過ごす事が出来るようになったのも魔王様のお陰です。村を代表して、本当にありがとうございます」
歩いているサタンに老婆がコソコソと話してきた。
「それから、あなたが魔王様だということは決して誰にも話しませんので安心してくだされ」
「あ~それはありがとうございます・・・」
サタンは結局どうして魔王だという事を知られているのか分からなかったが村の人達を信じることにした。
「では、私はこれで」
「お元気で」
老婆が家に向かってヨロヨロとアルイテ行くのをサタンは見送った。
そして、アズラのワープで城まで戻った。
「サタン君、アズラちゃん、親子共々これからよろしくね! アズラちゃん家事や料理は私も手伝うから色々と教えてね」
「はい。こちらこそ頼りにしていますラエルさん!」
アズラとラエルは早速仲良くなっている。
「良かったな・・・」
サタンはメルにこっそりと言った。
「はい・・・これも全てあなたのお陰です・・・ありがとう、サタン・・・!」
メルはサタンに向かって満面の笑顔で返事した。
「さ、ラエルさん城に入ってください」
サタンが城の扉を開けてラエルを向かい入れる。
「入りましょう、ラエルさん!」
アズラがラエルの背中を押す。
「入ろう、お母さん!」
メルがラエルの手を引いていく。
「ええ!」
サタン、アズラ、メル、ラエルの四人は城に入った。
サタンは勇者のお母さんラエルを仲間にした。
こうして、魔界にきてサタンの初めての大きな物語が一つ終了した。
◇
「何ぃぃ!? メルの奴が魔王と一緒に行動していただとぉ!?」
「は、はい! そうでございます王様!」
ツラリに怒鳴るのはこの国の王、ガドレアル。ガドレアルは二人の美女を側に遣えさせ、大きな椅子に座りながらツラリの話を聞いている。
「そうかぁ・・・メルの奴、なかなか帰って来ないと思っていたら魔界に寝返るとはな・・・いい度胸だぁ」
体を震わせ嗤い出すガドレアル。
「俺に逆らうとどうなるか覚えておけよ、メル・・・それで、その魔王とやらはどういう奴なんだ?」
「は! それが子どもなのに妙に強く、さらに言うには魔王であるにも関わらず正義・・・を大事にしている用に見えました!」
アゴを触りながら話を聞くガドレアル。
「ほ~う、まだ子ども・・・これは、もしや使えるかもしれんなぁ・・・ユウキ・ラエルの暗殺はもういい。その代わり、その魔王とやらとメルのことを調べさせよ! 奴等には利用すべきところがまだまだあるかもしれん! 待っていろよぉ、魔王――それにメル・・・!」
不気味に嗤うガドレアルに恐怖を覚えたツラリ。
「ところで、ツラリ。そなたは何故まだ生きておるのだ?」
「・・・は?」
「ユウキ・ラエルの暗殺とメルを連れ戻してこいという俺の命令を果たせなかったのだ。死ぬのが当然だろう?」
「なっ・・・!?」
ガドレアルの後ろから仮面をつけた二人の男が現れる。
「奴を捕らえてあれのエサにしろ」
コクッと頷く仮面をつけた二人の男。頷いた瞬間恐怖を感じたツラリが逃げ出すが、仮面をつけた二人の男は一瞬でツラリの背後まで移動しツラリを捕まえた。
「行け」
ツラリを捕まえたのを見るとガドレアルは命令した。無言でツラリを引きずり、連れていく仮面をつけた二人の男。
「お、王よ・・・た、助けてください・・・わ、私にもう一度チャンスを・・・!」
引きずられながらガドレアルに許しを乞うツラリ。しかし、ガドレアルは既に二人の美女と戯れていた。
「そ、そんな・・・」
仮面をつけた二人の男はツラリを引きずり何かを研究している部屋に入った。
そして、ドロドロとした液体のようなモノが入ったカプセルの中へとツラリを投げ入れた。
「い、嫌だ・・・死にたくなぁぁぁイィぃぃ!?」
カプセルの中に入れられたツラリはそう言いながら溶けて消えた。
ツラリが溶け消えるとドロドロとした液体のようなモノが軽く震えた。
だって・・・あのひざ枕されてるんだから目覚めも気持ちいいのがいい!
しかし、現実はそうはいかなかった。どこからかにわとりの大きな鳴き声が鳴り響いた。
にわとりの鳴き声に驚きサタンはうっすらと目を開けた。サタンの体はしっかりと布団で寝かせられていた。
アズ、ラ・・・?
サタンは目を動かしてアズラの姿を探すがアズラの須賀田はどこにもない。
そうか・・・またアズラが俺をきちんと布団で寝かせてくれたのか・・・
サタンはアズラに感謝してテントから出た。体を軽く伸ばし気合いを入れる。今日も快晴。安全な場所探し日和だ。
今日は学校を休んで安全な場所を探さないと・・・!
するとそこへパジャマ姿のメルがやって来た。メルのパジャマには小さな猫のアップリケが縫い付けられている。メルによく似合っていて正直めちゃくちゃ可愛い。
「サタン~!」
「どうした?」
「いえ、あの・・・昨日は本当にありがとうございました。お母さんを助けてくれた事、そして、私の事を助けてくれて・・・」
「そんなの当たり前だろ。俺たちは仲間なんだからな」
「後、今まで魔王だという事を馬鹿にしててすいませんでした・・・昨日のサタンは本当に魔王でした!」
「そうだろ、そうだろ? 分かればいいんだ」
サタンはメルに言われて鼻を伸ばした。
「だから――私は決めました!」
「・・・何を?」
「これからは私もサタンとアズラと一緒に魔界を救うという事をです!」
「メル・・・いいのか?」
「はい! 少し――私の話をしてもいいですか?」
「それは・・・いいけど」
メルは自分の事を話始めた。
「私は王城に預けられて勇者として育てられました。王城での生活は何一つ不自由がありませんでした。もちろん王城に預けられた事でお母さんを恨んだりしていませんよ。だって、お母さんは私の事を思っての事だって知っていますからね。そして、私が勇者として成長した時、あなたを殺して来いと言われたんです」
「そうだったのか・・・」
「私はもう王城に帰る気もありませんし、ここで魔界を救う事に手を貸します! そして、いづれ私はガドレアルとの決着をつけに行きます! お母さんを殺そうとしたことを私は絶対に許しません!」
「メル・・・」
「ですから・・・」
メルはひざまづきサタンの手をとった。そして、サタンの手へそっと唇で触れた。
「な、何をしてるんだ・・・っ?」
「これは約束です。さっき言った事を誓うために」
「や、約束?」
「はい、勇者に二言はありませんから」
にこやかに笑いながら話すメル。その姿にサタンはドキッとした。
サタンとメルは本当の仲間みたいなものになった。
「では、私は戻ってアズラの手伝いでもしてきます」
「アズラは城にいるのか?」
「ええ。皆の朝ごはんを作っている最中です」
そう言うとメルは城へと帰っていった。
「おはようございます~サタンさん!」
アズラが城の外のサタンに朝ごはんを持ってきてくれた。
「あ、ああ、おはよう・・・」
ひざ枕のお陰で少し照れるサタン。
「ゆっくり寝られましたか?」
「お陰さまでな」
「あっ、そ、そうですね・・・」
アズラも少し恥ずかしくなる。
「これを食べたら安全な場所を探しましょう。城にいる皆さんにはもう食べてもらいましたから後はサタンさんだけですよ」
そう言うとアズラはサタンの隣に座った。
「じゃあ、早く食べて安全な場所を探さないとな」
「はい」
サタンもアズラの隣に座り朝ごはんを食べ始めた。
「ここなら、安全ですし生活に苦労する事もない最適の土地だと思います」
サタンは朝ごはんを食べ終えるとすぐに安全な場所探しを始めた。何回かアズラのワープでとんでいる内に見つけた何もない土地。ここに新たなリエノア村を作る。
「じゃあ、皆さん頑張っていきましょう!」
サタンはリエノア村の皆に声をかけた。
さ、流石能力持ちの人達だな・・・!
サタンは昼過ぎから始めた村作りが夕方にはすっかりと完成した事に関心した。
軽々と木を家に組み立てたり水道を堀当てたり電気が通るようにしたりと――能力を使い淡々と村が出来ていった。
「皆さん、お疲れ様でした。お茶です~」
アズラが城から皆の分の淹れたてのお茶を持ってきてくれた。
「はい、サタンさんもどうぞ」
「ありがとう・・・っても、ほとんど俺がしたことなんてないんだけどな・・・」
そう、サタンの魔能力では村作りに何も貢献出来なかったので、サタンはただ見ているだけしかしていなかった。
「いえいえ、そんなことないですよ~・・・多分・・・」
サタンはアズラが淹れてくれたお茶を飲んだ。
ふ~・・・何もしてないけど体にしみる・・・
サタンがお茶を飲んで一服している時――。
「魔王様!」
リエノア村の代表らしき老婆がサタンに声をかけてきた。よく見るとリエノア村の全員が老婆の後ろに並びサタンを拝んでいる。
「この度は本当にありがとうございます。我々、見ず知らずのためにこんなにも素晴らしい気配りをして頂き真に感謝致します」
老婆が頭を深々と下げたのと同時に村の全員がありがとうございます、と言って頭を下げた。
「や、やめてください! 頭を上げてくださいっ!」
サタンは大勢に頭を下げられて焦った。
うん・・・なんで俺が魔王だって事を知っているんだ!?
サタンはこう思ったが昨日の内にしっかりとラエルがリエノア村の皆にサタンが魔王だという事を話していたのだ。
「こんなにも私達に優しくしてくださった方は初めてでございます。ああ、ありがとうございます、ありがとうございます・・・」
深々とお礼を言い続ける老婆。
「この村に住む者はいかなる理由があり、一人になってしまった女ばかりでございます。社会からも除外された私達にこんなにも構っていただきありがとうございます。人生の終わり近くに私は感動いたしました」
「人生の終わりだなんて言わないでください。きっとまだまだ元気でいられます!」
「おお・・・この老いぼれにそのような言葉を・・・本当に何から何までありがとうございます・・・」
リエノア村の皆は一人ずつサタンに礼を言うとそれぞれの新しい家へと帰っていった。
「お母さんっ!」
ラエルも一人、新しい家へ帰ろうとするのをメルが呼び止めた。
「メル・・・」
「帰っちゃうの・・・?」
「ええ、やっぱりこれ以上皆に迷惑はかけられないもの・・・それに、私のせいで村がなくなったのに私だけメルと住んで村からいなくなるなんて村の皆に悪いわ」
「でも・・・」
ラエルはメルを抱きしめた。
「私はどこに居てもメルのお母さんよ・・・だからね――」
メルは泣きそうになる。
「メル・・・」
「メルさん・・・」
するとそこへ、先程の老婆がやって来た。
「ラエルや・・・」
「婆様・・・」
「お前はお行き」
「でも・・・」
「いいんじゃよ・・・確かに村は無くなったがここにある。それに暮らせるならば一緒に暮らした方がいいに決まっておる。ラエルもずっとそう願っていたじゃろ?」
「それは・・・」
ラエルは答えを濁す。
「ここはリエノア村。一人になった女のためにある村じゃ。しかし、ラエルにはメルがいるじゃろ? 行きなさい・・・」
老婆がラエルを説得するもなかなか返事をしないラエル。
「そうですよ、ラエルさん」
「サタン君・・・?」
「一緒に住みましょう!」
「住んでもいいのかしら・・・?」
「住んでいいに決まってるじゃないですか! 住みたいか、住みたくないか、それはラエルさんが決める事です!」
サタンは言った。するとラエルは目からポロポロと涙を流し答えた。
「住みたい・・・メルと一緒に暮らしたい!」
「お母さん・・・」
「じゃあ、一緒に暮らしましょう!」
「ええ・・・!」
こうして皆のお陰でラエルはサタンの城で暮らす事となった。
「さぁ、帰りましょう」
アズラがワープを展開する。
サタン達はワープに向かって歩き出した。
「魔王様・・・ラエルのことをこれからもよろしく頼みます。メルと過ごす事が出来るようになったのも魔王様のお陰です。村を代表して、本当にありがとうございます」
歩いているサタンに老婆がコソコソと話してきた。
「それから、あなたが魔王様だということは決して誰にも話しませんので安心してくだされ」
「あ~それはありがとうございます・・・」
サタンは結局どうして魔王だという事を知られているのか分からなかったが村の人達を信じることにした。
「では、私はこれで」
「お元気で」
老婆が家に向かってヨロヨロとアルイテ行くのをサタンは見送った。
そして、アズラのワープで城まで戻った。
「サタン君、アズラちゃん、親子共々これからよろしくね! アズラちゃん家事や料理は私も手伝うから色々と教えてね」
「はい。こちらこそ頼りにしていますラエルさん!」
アズラとラエルは早速仲良くなっている。
「良かったな・・・」
サタンはメルにこっそりと言った。
「はい・・・これも全てあなたのお陰です・・・ありがとう、サタン・・・!」
メルはサタンに向かって満面の笑顔で返事した。
「さ、ラエルさん城に入ってください」
サタンが城の扉を開けてラエルを向かい入れる。
「入りましょう、ラエルさん!」
アズラがラエルの背中を押す。
「入ろう、お母さん!」
メルがラエルの手を引いていく。
「ええ!」
サタン、アズラ、メル、ラエルの四人は城に入った。
サタンは勇者のお母さんラエルを仲間にした。
こうして、魔界にきてサタンの初めての大きな物語が一つ終了した。
◇
「何ぃぃ!? メルの奴が魔王と一緒に行動していただとぉ!?」
「は、はい! そうでございます王様!」
ツラリに怒鳴るのはこの国の王、ガドレアル。ガドレアルは二人の美女を側に遣えさせ、大きな椅子に座りながらツラリの話を聞いている。
「そうかぁ・・・メルの奴、なかなか帰って来ないと思っていたら魔界に寝返るとはな・・・いい度胸だぁ」
体を震わせ嗤い出すガドレアル。
「俺に逆らうとどうなるか覚えておけよ、メル・・・それで、その魔王とやらはどういう奴なんだ?」
「は! それが子どもなのに妙に強く、さらに言うには魔王であるにも関わらず正義・・・を大事にしている用に見えました!」
アゴを触りながら話を聞くガドレアル。
「ほ~う、まだ子ども・・・これは、もしや使えるかもしれんなぁ・・・ユウキ・ラエルの暗殺はもういい。その代わり、その魔王とやらとメルのことを調べさせよ! 奴等には利用すべきところがまだまだあるかもしれん! 待っていろよぉ、魔王――それにメル・・・!」
不気味に嗤うガドレアルに恐怖を覚えたツラリ。
「ところで、ツラリ。そなたは何故まだ生きておるのだ?」
「・・・は?」
「ユウキ・ラエルの暗殺とメルを連れ戻してこいという俺の命令を果たせなかったのだ。死ぬのが当然だろう?」
「なっ・・・!?」
ガドレアルの後ろから仮面をつけた二人の男が現れる。
「奴を捕らえてあれのエサにしろ」
コクッと頷く仮面をつけた二人の男。頷いた瞬間恐怖を感じたツラリが逃げ出すが、仮面をつけた二人の男は一瞬でツラリの背後まで移動しツラリを捕まえた。
「行け」
ツラリを捕まえたのを見るとガドレアルは命令した。無言でツラリを引きずり、連れていく仮面をつけた二人の男。
「お、王よ・・・た、助けてください・・・わ、私にもう一度チャンスを・・・!」
引きずられながらガドレアルに許しを乞うツラリ。しかし、ガドレアルは既に二人の美女と戯れていた。
「そ、そんな・・・」
仮面をつけた二人の男はツラリを引きずり何かを研究している部屋に入った。
そして、ドロドロとした液体のようなモノが入ったカプセルの中へとツラリを投げ入れた。
「い、嫌だ・・・死にたくなぁぁぁイィぃぃ!?」
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