世継ぎのできない王太子妃は、離縁を希望します

桜百合

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本編

続編1

「エスメラルダ、また庭へ出たそうじゃないか。頼むからずっと僕のそばに座っていておくれ……」

「フィリップ様、私とてたまにはお外の空気が吸いたいのです! いつもいつもお城の中ばかりで……息が詰まりそうですわ」

 ああ、もう嫌になる。
 最近毎日顔を合わせればこんな言い争いばかりだ。

「だってエスメラルダ、今の時期外は肌寒い。もし風邪でも引いてしまったらどうするんだ」

「この前は、今はまだ暑さが残るからと仰っていたばかりですわ」

「……ぐっ……それでも僕は心配なんだよエスメラルダ!」

 全てがこの調子である。
 少しでも部屋の外に出れば無理は禁物だと部屋に戻され、庭に出ようものなら大反対される。
 どうしてもとお願いすると、フィリップ様の同伴でかつ十五分なら許された。
 でもそれもいつのことであったか……。

 とにかく、毎日自分の部屋に押し込められて息が詰まりそうなのだ。
 子どもが生まれたら今のように自由には動けなくなるだろう。
 ……もはや今ですら自由は無いけれども。
 体的には身軽なはずの今のうちに、好きな事をしておきたいのだ。
 その気持ちをフィリップ様は全くと言っていいほど理解してくれない。

 以前無断で避妊魔法を使用していたことが明らかになった際に私が離縁をチラつかせて以来、フィリップ様は私から離れることを極端に恐れるようになっていた。
 常にどこにいて何をしているのか、私の行動を把握していないと不安になるらしく。
 執務が一段落するたびに私の様子を確認しにきては、少しでもその姿が見えないとこの世の終わりのような顔で探し回っているという。

 そんなフィリップ様のことが大切なお方であることには変わりはないのだけれど。

「なんだか疲れてしまったわ……」

 そんな折、実家であるメイフィールド公爵家から手紙が届いた。
 久しぶりに上の兄二人が帰宅するため、私も実家へ遊びに来ないかという誘いである。 
 私には兄が四人いて、歳が離れた上の二人の兄とはもう数年会っていない。

 ──皆揃いも揃って私に甘いのは同じなのだけれど……。

 幼い頃から大好きだったお兄様たちに会って気分転換がしたくなった私は、早速フィリップ様にそのことをお話ししたのだが……。

「なんだって!? ダメだよエスメラルダ、それは許可できない」

 案の定、フィリップ様は首を縦には振ってくださらない。
 薄らわかってはいたものの、私は落ち込んだ。

「ああ、エスメラルダそんな顔をしないでくれ……私だって君を行かせてあげたい。だがメイフィールドの屋敷への往復で何かあったらどうする? もし屋敷にいるときに産気づくようなことがあったら?」

「そんなに心配なら護衛をつければよろしいでしょう? それに、実家とて公爵家ですわ。万全の体制は整っております。私もお母様に出産のお話をお聞きしたいですし」

「それならばお母上をこちらをお招きすれば良いだろう? 頼むエスメラルダ、もう産み月も近くなっているんだ。これ以上私を心配させないでくれ」

 その瞬間、私の中で我慢していた何かがプツリと切れたような気がした。

「もう結構ですわ」

「え、エスメラルダ……?」

「私のことを心配してくださっているようにおっしゃいますけど、実際は私のことを信じてくださっていないからでしょう? ご自分の不安を解消させたいだけなのでは?」

 いつもなら我慢していたが、もう限界だ。
 次から次へとフィリップ様に言葉をぶつけていく。

「大体、あなたが心配なさるような原因を作ったのはあなた自身でございましょう!?」

「なっ……エスメラルダ……」

「フィリップ様が元公爵親子に騙されて、避妊魔法を無断で私にかけたことをお忘れですか? それも三年間も」

「うっ……それは……」

「あれから変わられたと思っておりましたが、やはりそう簡単に人は変わることができないようですね。失礼いたします!」

 私は転移魔法で自室へと飛んだ。
 そしてフィリップ様が続き扉からこちらへ入ってこれないように鍵をかけ、転移魔法も使えないように結界を張る。

「エスメラルダ、エスメラルダ……私が悪かったよ……君がいないと私はダメなのに……」

 フィリップ様の叫ぶような悲痛な声が聞こえてきたけれど、今の私には逆効果だ。

 (泣きたいのはこちらの方ですわ)


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