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黒の街 ヴァロラブリーデリ
赤の時代 ②
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生後数日しても魔法の兆候はなく、とりあえず無差別に撒き散らす魔法では無さそうだ。
もしかしたら魔法を持っていないかもしれない。
ヴァロは一安心した。
聞いた話の中には産まれた直後にその子を中心に竜巻が起きて、一つの村が壊滅するなんて事もあったらしい。
今腕の中にいる我が子は、むにゃむにゃと何かを言いながら難しい顔で眠っているだけだ。
「あら、寝顔がパパそっくりね。
難しい顔して寝るのよ、あなたも。
知らなかったでしょ。」
「そうなんだ。
自分の寝顔はわからないものなぁ。
ルージュ。
君は寝相はいいだろうか、僕は静かに寝る方だけど、ママはよく動くタイプなんだ。」
それに応えるように、腕の中でワキワキと動いてる愛娘。
「ダメみたいだ。寝相は君似だね。」
「そう?運動になって、良いんじゃないかしら。」
真顔でそう言う彼女に何度掛けものを奪われたり、ベッドから蹴落とされたものか。
まぁでも、なんでも良いか。
健やかそうによく動く。
ルージュをフェリノに預けて、椅子に座りスケッチを始める。
ここから毎年恒例になっていく、ルージュの誕生日付近で描かれる絵の、初めの一枚だ。
これはルージュが14歳になる迄毎年続けられることとなる。
始めは母の腕の中で、自分で立てるようになる頃に膝の上へ。
そばに立ち、椅子に座ったフェリノとルージュの高さが同じくらいになる頃、ルージュは10歳で、フェリノは36歳、ヴァロは31歳になっていた。
この頃ようやく、ヴァロはもう一つの魔女の血を感じ始めていた。
魔力が何かはよく分かってはいないが、それを紡ぐ濃い血族を魔女と呼んでいた。
男が産まれることは珍しく全体の0.1%程度。
村では種馬にはなれない役立たずだとヴァロは感じていたが、実際は血が濃くなり過ぎるのを防ぐために魔女と魔女の男との交わりは禁止されていた。
特徴としては彼女達のみが使う強力な術や、知識。
先に記した女のみの集団。
整った顔立ちと、はっきり黒い髪の毛。
そして、長寿。
ヴァロの見た目は20歳頃から変化しておらず、村で見た魔女の特徴を携えていることを、鏡を見る度に突きつけられた。
◆
ある日ヴァロが自室で絵の仕上げをして、額装の構想を紙に描いていると、急にドアが開いた。
10歳になったばかりのルージュ以外は、無遠慮にドアを開けることなどしないので、そっちを見ないでもルージュだと分かる。
いつものことなので、声を掛けるが返答がない。
「ルージュ?
ちょうどいいや。
この絵には、どんな額が合うと思うかな。
パパを手伝ってくれないか?」
そう言いながら振り向くと、筋骨隆々な男が立っていた。
「あ、いや、すまない。
怪しい物ではないのだ。
俺は、あの、この部屋の元の主というか…。
フェリノの、兄だ。」
大きな身体を小さくしながら話す彼はどこか愛する妻に似ていた。
「ええ、お聞きしています。
お帰りなさい、クリムさん。
お部屋、頂いてしまいました。」
ヴァロが手を差し出すと、クリムはその大きな両手で掴みぶんぶんと振られた。
あぁ、この人も赤色の人だなぁと思った。
この家の人は皆、赤色だ。
「俺も手紙で聞いていたよ。
ヴァロ、よろしくな!
フェリノと仲良くしてくれてありがとう。
俺も会いたかった。」
クリムの帰宅は家族を明るくした。
性格がカラッとしてよく働く事もあるが、彼にも妻と娘がおり、フェリノやルージュと年齢も近いので気が合うようで、5人で過ごしていた家が8人になり明るくなった。
クリムはよそ者であるヴァロにも優しく、兵士と絵描きという全く違う世界を持つもの同士だったが、尊重しあって仲良く過ごす事が出来た。
もしかしたら魔法を持っていないかもしれない。
ヴァロは一安心した。
聞いた話の中には産まれた直後にその子を中心に竜巻が起きて、一つの村が壊滅するなんて事もあったらしい。
今腕の中にいる我が子は、むにゃむにゃと何かを言いながら難しい顔で眠っているだけだ。
「あら、寝顔がパパそっくりね。
難しい顔して寝るのよ、あなたも。
知らなかったでしょ。」
「そうなんだ。
自分の寝顔はわからないものなぁ。
ルージュ。
君は寝相はいいだろうか、僕は静かに寝る方だけど、ママはよく動くタイプなんだ。」
それに応えるように、腕の中でワキワキと動いてる愛娘。
「ダメみたいだ。寝相は君似だね。」
「そう?運動になって、良いんじゃないかしら。」
真顔でそう言う彼女に何度掛けものを奪われたり、ベッドから蹴落とされたものか。
まぁでも、なんでも良いか。
健やかそうによく動く。
ルージュをフェリノに預けて、椅子に座りスケッチを始める。
ここから毎年恒例になっていく、ルージュの誕生日付近で描かれる絵の、初めの一枚だ。
これはルージュが14歳になる迄毎年続けられることとなる。
始めは母の腕の中で、自分で立てるようになる頃に膝の上へ。
そばに立ち、椅子に座ったフェリノとルージュの高さが同じくらいになる頃、ルージュは10歳で、フェリノは36歳、ヴァロは31歳になっていた。
この頃ようやく、ヴァロはもう一つの魔女の血を感じ始めていた。
魔力が何かはよく分かってはいないが、それを紡ぐ濃い血族を魔女と呼んでいた。
男が産まれることは珍しく全体の0.1%程度。
村では種馬にはなれない役立たずだとヴァロは感じていたが、実際は血が濃くなり過ぎるのを防ぐために魔女と魔女の男との交わりは禁止されていた。
特徴としては彼女達のみが使う強力な術や、知識。
先に記した女のみの集団。
整った顔立ちと、はっきり黒い髪の毛。
そして、長寿。
ヴァロの見た目は20歳頃から変化しておらず、村で見た魔女の特徴を携えていることを、鏡を見る度に突きつけられた。
◆
ある日ヴァロが自室で絵の仕上げをして、額装の構想を紙に描いていると、急にドアが開いた。
10歳になったばかりのルージュ以外は、無遠慮にドアを開けることなどしないので、そっちを見ないでもルージュだと分かる。
いつものことなので、声を掛けるが返答がない。
「ルージュ?
ちょうどいいや。
この絵には、どんな額が合うと思うかな。
パパを手伝ってくれないか?」
そう言いながら振り向くと、筋骨隆々な男が立っていた。
「あ、いや、すまない。
怪しい物ではないのだ。
俺は、あの、この部屋の元の主というか…。
フェリノの、兄だ。」
大きな身体を小さくしながら話す彼はどこか愛する妻に似ていた。
「ええ、お聞きしています。
お帰りなさい、クリムさん。
お部屋、頂いてしまいました。」
ヴァロが手を差し出すと、クリムはその大きな両手で掴みぶんぶんと振られた。
あぁ、この人も赤色の人だなぁと思った。
この家の人は皆、赤色だ。
「俺も手紙で聞いていたよ。
ヴァロ、よろしくな!
フェリノと仲良くしてくれてありがとう。
俺も会いたかった。」
クリムの帰宅は家族を明るくした。
性格がカラッとしてよく働く事もあるが、彼にも妻と娘がおり、フェリノやルージュと年齢も近いので気が合うようで、5人で過ごしていた家が8人になり明るくなった。
クリムはよそ者であるヴァロにも優しく、兵士と絵描きという全く違う世界を持つもの同士だったが、尊重しあって仲良く過ごす事が出来た。
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