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夏の宴 告白 編
宴3
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昼食を食べ終え、お茶用のお湯を沸かしていると、トゥラン達が俺達の個室へやって来た。アッシュが椅子を並べ、エルードは俺が入れたお茶を運んだ。
ファウストは食後すぐ退室して、アイの元へと向かったので居ない。
「ファウスト様の話は、何だったアルか?」
お茶を飲んでいたトゥランとフラリスは、アッシュの不遜な俺への質問に咽せそうになっていた。口外できない内容なら、俺の「言える訳がないだろ。」の一言で済むと、アッシュは見越しているのだ。
「ファウストの誕生祝賀会に『炎の舞』の舞踊団体を呼ぶのは、防火対策上不可能なので中止したんだって。『仮面亭』の視察も出来ないから、・・他に、イコリスの気晴らしになることはないかなってさ。」
元々、王命で誕生祝賀会にイコリスを招待できないと判明した時点で、炎の舞は中止にしていたらしい。
しかし、炎の舞が誕生祝賀会で披露されるのに見られないと思ったイコリスは悲観し、学院を三日間休んだ一因となっていた。だからファウストは偽りの中止理由として、王城の防火対策上不可能だと、イコリスへ騙ったのだ。
「私を励まそうと、改めて個室のある洋菓子店へ誘ってくれたのだけど・・・休んでる間、ばかすか甘いおやつを食べていたから遠慮したの・・・。気遣ってくれたファウストに、悪いことしたわ。」
泣き続けるイコリスに、両親が一時的におやつを無制限解禁したので、イコリスはここぞとばかりにおやつを食べたのだった。
「『仮面亭』に興味があるんですか?」
エルードが意外そうに聞いてきた。
「俺達だけだと、絶対行けないからね。ファウストの威を借りてどうにか視察できないかと思ったが、駄目だった。」
「『仮面亭』は酒場アルよ。僕でもお忍びで変装してなければ無理アル。」
「変装しないと無理って・・・。さては、行ったことがあるな。」
「無いアルよ。」
心なしかアッシュの返答速度が早かったので、とても怪しい。
「俺達って・・あの酒場にイコリスも行きたいの?」
フラリスは箱入りなのに、仮面亭を知っているようだ。
「『炎の舞』は『仮面亭』ではしていないって聞いたけど・・もちろん、行ってみたいわ。筋骨隆々の男性の踊りってどんなのか、とても興味深いから。」
「秋の文化祭で、飲み物をお酒から紅茶に変えた『仮面亭喫茶』をクラスの出しものにするのはどうでしょう?」
「・・非現実的だな。エルード、『仮面亭』の詳細を知らないだろう・・。」
眼鏡を押し上げながらトゥランが指摘する。
「目元に仮面を付けた男女の店員が、『仮面亭』の制服を着て踊ると聞きましたが・・。」
「『仮面亭』の制服は水着だよ。」
したり顔でフラリスがエルードに教えた。
「え??そ、そうなんですか?じゃあ、絶対に出来ませんね。・・すみません。」
「そうだ、夏休みにある『クラス対抗地引き網大会』に『炎の舞』の舞踊団体を呼べば良いアル。そうすれば僕ら平民の生徒も、一緒に楽しめるアル。」
「・・アッシュ。『炎の舞』を見るなら陽が落ちてからだろ。俺とイコリスは宿泊出来ないから、夕刻には帰るんだ・・。」
「・・・トゥラン様とフラリス様が泊まる貴族用宿泊施設に、泊まれないアルか?」
「ああ。プラントリーの者は泊まれないから、いつも日帰りだ。それと今年は、入寮して校外に出れない生徒が多く、『クラス対抗地引き網大会』の開催自体が危ぶまれている。」
トゥランが厳しい表情でアッシュに答えた。
「・・そうだったアルか・・。」
「それにしても、君達、平民は面白いね。文化祭で『仮面亭喫茶』や、地引き網大会で『炎の舞』を見ようとか、・・僕は思いつかなかったよ。」
「・・フラリス様、ご容赦ください。」
エルードが苦笑いしながら、申し訳なさそうに言った。
「名案だと思ったけど、不発に終ったアル。」
一応、アッシュなりに謙遜している。
「それと、さっきイコリスにお礼を言われた時の『シャンス・グランドル』も可笑しかったね。」
俺達がいる1年の官僚クラスへ訪ねて来たフェリクスとシャンスに、校門まで厳戒態勢で送り届けてくれた感謝をイコリスは深く頭を下げて伝えた。
するとシャンスは、片膝はつかなかったが交差した両手を胸に当て、天を仰ぎ目を閉じ「身に余るお言葉です。」と言って一筋の涙を流した。
アッシュの予想を越えたシャンスの反応に、俺とイコリスは和み、癒やされたのだった。
「何がきっかけなのか聞いてないけど、シャンス先輩は何年も前からプラントリーの人々を、尊敬しているらしいアル。」
「・・コホンッ。」
シャンスの大仰な反応を思い出して、顔がほころびそうになったイコリスが咳払いをした。
「みんな、いろいろと考えを巡らせてくれてありがとう。まだまだ先のことは置いといて、とりあえずは目前の行事に集中しましょう。」
「そうだな。まず、来週から始まる試験だ。」
「サイナス、違う違う。試験じゃない・・『球技大会』に集中。」
「はぁ???」
ファウストは食後すぐ退室して、アイの元へと向かったので居ない。
「ファウスト様の話は、何だったアルか?」
お茶を飲んでいたトゥランとフラリスは、アッシュの不遜な俺への質問に咽せそうになっていた。口外できない内容なら、俺の「言える訳がないだろ。」の一言で済むと、アッシュは見越しているのだ。
「ファウストの誕生祝賀会に『炎の舞』の舞踊団体を呼ぶのは、防火対策上不可能なので中止したんだって。『仮面亭』の視察も出来ないから、・・他に、イコリスの気晴らしになることはないかなってさ。」
元々、王命で誕生祝賀会にイコリスを招待できないと判明した時点で、炎の舞は中止にしていたらしい。
しかし、炎の舞が誕生祝賀会で披露されるのに見られないと思ったイコリスは悲観し、学院を三日間休んだ一因となっていた。だからファウストは偽りの中止理由として、王城の防火対策上不可能だと、イコリスへ騙ったのだ。
「私を励まそうと、改めて個室のある洋菓子店へ誘ってくれたのだけど・・・休んでる間、ばかすか甘いおやつを食べていたから遠慮したの・・・。気遣ってくれたファウストに、悪いことしたわ。」
泣き続けるイコリスに、両親が一時的におやつを無制限解禁したので、イコリスはここぞとばかりにおやつを食べたのだった。
「『仮面亭』に興味があるんですか?」
エルードが意外そうに聞いてきた。
「俺達だけだと、絶対行けないからね。ファウストの威を借りてどうにか視察できないかと思ったが、駄目だった。」
「『仮面亭』は酒場アルよ。僕でもお忍びで変装してなければ無理アル。」
「変装しないと無理って・・・。さては、行ったことがあるな。」
「無いアルよ。」
心なしかアッシュの返答速度が早かったので、とても怪しい。
「俺達って・・あの酒場にイコリスも行きたいの?」
フラリスは箱入りなのに、仮面亭を知っているようだ。
「『炎の舞』は『仮面亭』ではしていないって聞いたけど・・もちろん、行ってみたいわ。筋骨隆々の男性の踊りってどんなのか、とても興味深いから。」
「秋の文化祭で、飲み物をお酒から紅茶に変えた『仮面亭喫茶』をクラスの出しものにするのはどうでしょう?」
「・・非現実的だな。エルード、『仮面亭』の詳細を知らないだろう・・。」
眼鏡を押し上げながらトゥランが指摘する。
「目元に仮面を付けた男女の店員が、『仮面亭』の制服を着て踊ると聞きましたが・・。」
「『仮面亭』の制服は水着だよ。」
したり顔でフラリスがエルードに教えた。
「え??そ、そうなんですか?じゃあ、絶対に出来ませんね。・・すみません。」
「そうだ、夏休みにある『クラス対抗地引き網大会』に『炎の舞』の舞踊団体を呼べば良いアル。そうすれば僕ら平民の生徒も、一緒に楽しめるアル。」
「・・アッシュ。『炎の舞』を見るなら陽が落ちてからだろ。俺とイコリスは宿泊出来ないから、夕刻には帰るんだ・・。」
「・・・トゥラン様とフラリス様が泊まる貴族用宿泊施設に、泊まれないアルか?」
「ああ。プラントリーの者は泊まれないから、いつも日帰りだ。それと今年は、入寮して校外に出れない生徒が多く、『クラス対抗地引き網大会』の開催自体が危ぶまれている。」
トゥランが厳しい表情でアッシュに答えた。
「・・そうだったアルか・・。」
「それにしても、君達、平民は面白いね。文化祭で『仮面亭喫茶』や、地引き網大会で『炎の舞』を見ようとか、・・僕は思いつかなかったよ。」
「・・フラリス様、ご容赦ください。」
エルードが苦笑いしながら、申し訳なさそうに言った。
「名案だと思ったけど、不発に終ったアル。」
一応、アッシュなりに謙遜している。
「それと、さっきイコリスにお礼を言われた時の『シャンス・グランドル』も可笑しかったね。」
俺達がいる1年の官僚クラスへ訪ねて来たフェリクスとシャンスに、校門まで厳戒態勢で送り届けてくれた感謝をイコリスは深く頭を下げて伝えた。
するとシャンスは、片膝はつかなかったが交差した両手を胸に当て、天を仰ぎ目を閉じ「身に余るお言葉です。」と言って一筋の涙を流した。
アッシュの予想を越えたシャンスの反応に、俺とイコリスは和み、癒やされたのだった。
「何がきっかけなのか聞いてないけど、シャンス先輩は何年も前からプラントリーの人々を、尊敬しているらしいアル。」
「・・コホンッ。」
シャンスの大仰な反応を思い出して、顔がほころびそうになったイコリスが咳払いをした。
「みんな、いろいろと考えを巡らせてくれてありがとう。まだまだ先のことは置いといて、とりあえずは目前の行事に集中しましょう。」
「そうだな。まず、来週から始まる試験だ。」
「サイナス、違う違う。試験じゃない・・『球技大会』に集中。」
「はぁ???」
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