Paranoia

伽藍堂

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異質

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  ドアを叩いても返事がなかった。
それをいいことに、僕はドアを引っ張った。
鍵はかかっていないらしい。

  中に入るとそこは、外の世界とは遮断された
なんとも言えない異様な空気が流れていた。
普通ならここで引き返して家に帰るのだが、
僕は異様な空気に毒されたのか、前に進んだ。
周りに目をやると、ラベルの文字が消えかけている
薬品が並んだ古びた棚。
骨董品の様なものから古びた人形が無造作に入った
木箱や、沢山の本が乱雑に並べられている天井まである本棚。
この小屋は見かけとは裏腹に、中は広く感じられた。
これらのものが、この小屋の中に異様な空気を
流しているのかもしれない……

  そんな感じで周りを探索していると、足に何かが突っかかって転びかけた。
足元を見ると、そこにはドアノブの様なものがあった。
 僕はしゃがみこみ、そのドアノブを回し引っ張った。
その中には、梯子が一本掛かった人が一人入れそうな空間があり、ざっと見て10mぐらいは高さがありそうだった。
僕は梯子を降りて行った。
梯子を降りていると、足場が見えた。

  梯子を降りると、そこには薄暗く
上の階より異様な空気を感じた。

「おや?こんな場所にお客さんかね?」
僕は息を飲んだ。突然掛けられた声は、
何故か生気を感じさせないものであったからだ。
「すみません、勝手にお邪魔してしまって。」
「まぁ、そんなに謝ることはないよ、君。
  ところで君は一体何者なのかね?」
唐突な質問に僕は、
「弥朶 蛍と言います……」
と答えた。
そしたら彼(?)は、
「そんなことを聞いているんじゃないよ、
   君が何者なのかを聞いているんだよ?
   君は君が何者なのかも知らないのかね?」
「じゃあ、あなたは何者なんですか?」
少し僕は強い声色でそう言い放った。
「私かね?
   私は人間とはどれだけ、脆く儚く愚かなもので
   あるかを、証明するためにここにいるものだ。
   では君にもう一度聞くが、君は何者だね?」
この人が何を言っているのか僕には全く理解ができなかった。
「それじゃあもう一つ質問だ、
   君が最初に弥朶 蛍と名を名乗ったね?」
「はい……」
「君、名というのはなんだと思うかね?」
「えっ……名前ですか?」
僕は困った。今までそんなこと考えたことがないからだ。
「わ……わかりません……」
「これは私の持論だが、
   名前とはこの世でいう肩書きなのだよ、
   君は弥朶 蛍という肩書きで、
   弥朶 蛍という人間なんだ。
   君はこの世で弥朶 蛍と言う役職について
   その役職をまっとうするのだよ。」
「じゃあ、その肩書きは僕が何者であるかと
   一緒なんじゃないんですか?」
「私が聞いている何者なのかと言う質問だけだと
   そうなるのも違いない、
   私が聞いている何者とは、肩書きとは違い
   何のために、何をしにこの世にいる者なのか
   というものなのだよ。」
全く言っていることがわからない、
僕の理解の範疇を超えている。

  その時薄暗かった、部屋がいきなり明るくなった。
「君は自分が何者か未だわかってないらしいね。
   なら、答えが出るまで私と一緒に考えようじゃな
   いか。
  私は‘‘K’’天才学者だ!」

今まで暗くて見えなかったが、そこには
黒いボサボサの髪を腰ぐらいまで伸ばし、
色は白くガリガリで背が高めの男性が立っていた。

  
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