マスターズ‼︎老人達のサバイバル奮闘記‼︎〜ヌイグルミ達の異世界で一流職人を目指します〜

もう書かないって言ったよね?

文字の大きさ
3 / 58
第1章・異世界転移編

第3話・孤独な人生

しおりを挟む
『パチパチ♪パチパチ♪』

 緑の草綿だけが燃えて行きます。どうやら土綿は燃えないのか、燃えにくい性質のようです。

「よし、もう安全確認はいいだろう?服は燃やしたくないし、火を焚けば煙で誰かが俺達に気付いてくれるだろうよ。」

 亜紀斗は焚き火を起こしたのは初めてのようです。今の時代は焚き火も簡単に出来ません。洗濯物に煙の匂いがつくとか、有害物質とか、とにかく駄目駄目な世の中になりました。

「痛たたたた……馬鹿野郎!こんな得体の知れない場所で煙なんか上げてみろ、敵兵が寄って来たらどうすんだ。」

「鉄さん、もう21世紀なんですよ。今の平和な世界でいきなり襲って来るような野蛮な人達はいませんよ。まったくもぉ~♪」

 敵地で潜伏中ならばいざ知らず、戦争が終戦してから75年も経っています。地面で腰を押さえて寝ている鉄男は当時はたったの3歳です。それでも、あの頃の日本の姿はありありと思い出す事が出来ました。誰かを助けるような余裕もなく、誰かに助けを求める事も出来ない、辛く貧しい生活でした。いえ、あんなもの、とても生活していると、言えるようなものではありませんでした。

「小夜さん、確かにアンタの言う通り戦争は終わったかもしれねぇ。でも、ここが日本だとは俺は思えないんだよ。いざという時に戦える準備はしておこうじゃねぇか。ハチ、亜紀斗、弦音ちゃん、いま満足に動けるのは俺達4人だけだ。大丈夫だとは思うが、いざという時はよろしく頼むぜ。」

「任せとけ。」「はいはい。」「頑張ります!」

 最年長の柳源造は終戦当時は11歳でした。竹槍を持って近所の防空壕で暮らしていた日々もありありと思い出す事が出来ます。戦争で敵兵を殺した経験はないものの、いつでも戦えるように毎日毎日、母親達や近所のおばちゃん達と一緒に訓練を繰り返していました。あの日々は本当に忘れられません。

 ❇︎

「ルミルミ、あのモクモクしているのは何だタヌ⁇」

「モクモク?………って⁈アレは煙ルミ‼︎誰かがあそこで火を焚いているんだルミ。この世界に火は存在しないルミ。つまり、侵入者ルミ‼︎」

 二足歩行のタヌキのヌイグルミと、宙に浮いている金色のハーピーのヌイグルミが話しています。ハーピーとは顔と上半身が人間で、四肢が鳥の鳥人間です。どうやら2人はこの世界の住民のようです。この世界ではヌイグルミ達が人間のように街を作って、共同生活しています。

「こんな時に侵入者なんて最悪ルミ。早くこの世界の危機を救う7人の勇者を探さないといけないルミなのに………」

 もしかすると、これが予言にあった世界の危機なのかもしれません。街の危機を察知して、凄腕の2人の戦士が現れました。

「ルミルミ、準備出来たクマ。いつでも戦えるクマよ。」

「僕も一緒に戦うピョン。侵入者なんて皆んなで倒すピョン♪」

 斧を持ったクマのヌイグルミと、長槍を持ったウサギのヌイグルミが侵入者と戦うようです。武器も布と綿で作られているようです。こんな可愛い武器で侵入者を倒せるとは思えませんが、2人は本気の本気のようです。

「駄目ルミ‼︎侵入者がどんな奴らかも分からないの、もしも捕まったら大変ルミ。まずは僕が空から様子を見て来るルミ。1時間で僕が戻って来ない時は、皆んなで安全な別の街に避難するルミ。クマクマ、あとの事は任せたんだルミよ。」

「分かってるクマ。でも、何人かは言う事を聞かずに勝手に戦いに行くかもしれないクマ。その時は僕も一緒に戦いに行くんだクマ。」

「僕も行くんだピョン♪」

「勝手にするルミ。でも、危ないと思ったらすぐに逃げるんだルミよ。」

 ルミルミは両手の翼を広げると、バサバサと翼を羽ばたかせて煙の上る方向に飛んで行きました。

 ❇︎

『パチパチ♪パチパチ♪』

 燃える焚き火の中に、草綿を引っこ抜いては次々と放り込んで行きますが、濡れた服を乾かすには火力が足りないようです。自力で歩くのが困難な小夜とハナの女性2人は車椅子に乗せられると焚き火の側まで連れて行かれました。

「ありがとうね、弦音ちゃん。とっても暖かいよ。ほら、ハナちゃんもいつまでも黙っていないで何か4人で話しましょうよ。」

「……………」(あーあ、何やってんだろう私。)

「やめとけ、やめとけ。ショックで何も話せなくなってんだろうよ。そのうちに話せるようになるか、そのままか……まあ、今はそっとして置くんだな。」

 ガタガタと平野ハナは車椅子の上で寒くて震えています。やっと死んで父と母、兄と会えると思ったのに、まだまだ何処かも知れない場所で生きなくてはいけません。旦那に死なれて6年。2人の子供達は早くに独立して他県に住んでいました。もう、1人で暮らすのは正直我慢の限界でした。

「どうして生きてるの?何で死んでいないの?どうして死なせてくれないのよ。……うっ…うっ……」

 ハナは築40年の旦那が建てた家で6年間も孤独な生活を続けていました。また家に戻るぐらいなら崖から落ちた時に死んだ方が良かったと泣き出してしまいました。

「はぁっ~~~?そんなの知るかよ‼︎死にたきゃ、首でも吊って死ねばいいだろう。でも、今まで生きて来たのは死にたくねぇからなんだろ!どんなに寂しくても、辛くても、惨めな人生でも、それでも生きたいと思える人生だったんだろ!生きていても何の意味もねぇかもしれねぇけど、俺達は心臓が動いているうちは生きないといけないんだよ!分かったら、メソメソしてないで仏様に念仏でも唱えてやがれ!」

「鉄さん、少しは言い方というものを考えたらどうなんですか?でも、その通りよ。いつかはお迎えが来るんだからね。だから、その時までは生きないと駄目なのよ。私達は生きる事が仕事なのよ。生きられなかった人達の分まで、1日でも長く、1分でも長く生きないと駄目よ、ハナちゃん。」

 自分の意思で死ぬる事はある意味、幸せかもしれません。でも、他人の意思で殺される事は幸せでしょうか?孤独や不幸という目に見えぬ意思に負けて殺される事が幸せな死に方な訳がありません!いつの日か訪れる心臓が止まる瞬間まで生きる事が、本当の意味で自分の意思で死ぬという事なのではないでしょうか。

 ◆次回に続く◆
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

ハイエルフ少女と三十路弱者男の冒険者ワークライフ ~最初は弱いが、努力ガチャを引くたびに強くなる~

スィグトーネ
ファンタジー
 年収が低く、非正規として働いているため、決してモテない男。  それが、この物語の主人公である【東龍之介】だ。  そんな30歳の弱者男は、飲み会の帰りに偶然立ち寄った神社で、異世界へと移動することになってしまう。  異世界へ行った男が、まず出逢ったのは、美しい紫髪のエルフ少女だった。  彼女はエルフの中でも珍しい、2柱以上の精霊から加護を受けるハイエルフだ。  どうして、それほどの人物が単独で旅をしているのか。彼女の口から秘密が明かされることで、2人のワークライフがはじまろうとしている。 ※この物語で使用しているイラストは、AIイラストさんのものを使用しています。 ※なかには過激なシーンもありますので、外出先等でご覧になる場合は、くれぐれもご注意ください。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...