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第1章・冒険者編
第12話
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彼は何を言っているのか訳が分かりませんが、黙っていると次々に別の男達も話し始めました。
「便利なスキルだよな。物だけじゃなくて、経験値やスキル、記憶まで盗めるんだろ?さっきの蜂の巣も街の外で盗んで来たのか?」
「違うよ!僕が自分で取って来たんだよ!」
「ああ、盗って来たんだろ。返してくれないか?」
どう話しても、会話が成立しません。
説得する方法を考えますが、スキル『交渉』や『説得』を使おうとしたら、すぐにバレて疑いが深まるだけです。
「僕のステータスを全部調べれば分かるから、『盗む』スキルなんって無いよ!」
『鑑定』スキルを持った人が何人かいるようで、椅子に座っている彼をじぃ~っと見ています。
「……っ……くっ……あぁ……ちっ……ふざけんな!多過ぎだ!」
余りにも多過ぎるスキルの数に、ついに1人がキレてしまい、ボォカァと彼の顔面を殴ってしまいました。
「何個あるんだよ?200個以上は見たけど、『盗む』系のスキルは無かったぞ!」
「やっぱり『????』が怪しいな。自信満々で『全部見ろ』なんて最初から怪しいと思ってたんだよ!」
(……ちょっと痛いけど、大人に殴られても平気みたい……)
彼は殴られた右頬を、右手の手の平で摩ると、『続きをどうぞ』と『鑑定』の再開を求めました。
・
・
・
数時間に及ぶ『鑑定』の結果、彼の無罪が証明されました。
『盗む』のスキルは持っていませんでした。
でも、一部の人というよりも、全員がスキル『????』が怪しいと最初から思っていました。
彼は依頼の報酬は結構ですと、ギルドから出て行こうとしましたが、ボォカァ、ドォス、ガァツンと数人から殴られると、力尽くで椅子に引き戻されました。
「ぐっす……こんなことして許されると思っているのか!今すぐに僕を解放しないと役所に訴えるぞ!」
流石にちょっと痛かったです。涙は見せないように我慢しますが、大勢の大人に囲まれる恐怖は、4人のイジメっ子とは比較になりません。
(……全員倒して逃げれば罪を認めているようなものだし、空に飛んで逃げても、なんか指名手配されそうだし……)
いきなり男の1人にドォス、バァカーンと鞘に入ったままの剣で突かれて殴られました。
「何時間、待たせるんだよ!さっさと締め上げて吐かせるぞ!」
彼がギルドに来てから、もう4時間は過ぎました。彼もそろそろ限界でした。
「うっうっ、ぐっす……すみません。トイレに行きたいんですけど……」
「チッ、そこの通路の奥を右に行けばあるから、さっさと済ませて来い!」
彼は『すみません、すみません』と謝りながら、トイレに走って行きました。
「……トイレの窓から逃げるんじゃないのか?」
筋肉ガチムチの冒険者がなんとなく思った事を話しました。
何人かのならず者が急いでギルドの外に出てから、外側からトイレの窓を見張っていました。
「このクソ餓鬼!ぶっ殺すぞ!」
「てめぇ~暴れるんじゃねぇ!」
どうやら予想が当たったようです。彼が再び引き摺れながらギルドの建物に入って来ました。
ドォカァと椅子に無理矢理、座らされると、口を真っ黒なマスクで隠しているならず者の男が近付いてきました。
「盗みは1回目は利き手の切断。2回目は反対側を切断。3回目は死罪だ。右手と左手どっちだ?」
「本当にやってません……僕は無実です。」
「だったら逃げんじゃねぇ!」
どうせ逃げなくても結果は遅かれ早かれ同じだったと思いますが、この人達は彼に簡単に短時間でいくつもの依頼を達成されたのが悔しいのです。
しかも、正体不明のスキルの事になると、一切話そうとしません。
「「「切れ!切れ!切れ!切れ!」」」
このままだと右手が無くなってしまいます。
彼は女神様との約束をもう一度だけ、破る事に決めました。
「待って!僕の固有スキルは『絶体絶命』このスキルを使ったら、僕もピンチになるけど、おじさん達もピンチになる危険なものなんだ。だから女神様がスキルを見えないようにしているんだ。だから『盗む』スキルじゃないよ。分かったら僕を解放して、しないならスキルを使うよ?」
シィ~~んとさっきまでの騒ぎが嘘のように静かになりました。
(……やっぱり普通は信じないよね)
彼も言ったものの信じてくれないのが当たり前です。
建物の中の人も、隣の人と顔を見合わせて、どうしようかと考えているようです。
「嘘付くなら、もっとマシな嘘を付くんだな」
「「「舌!舌!舌!舌!」」」
建物の中で『舌』という単語が響きます。
どうやら、嘘つきの泥棒は舌も切られてしまうようです。
チョキン、チョキンと音を鳴らして、紙を切るために使っていた鋏を、元冒険者のおじさんが引き出しから持ってきました。
「坊主……今なら本当のことを話せば右手だけで済むんだぞ?怒らないから本当の事を話すんだ」
彼の耳元で、彼にだけ聞こえるように小声で聞きました。
「信じて、おじさん。本当に盗んでいません!僕が頑張って、森や海岸まで行って取ってきたものです!」
彼も最後まで本当のことを言い続けますが、元冒険者のおじさんは怒りを滲ませながら言い放ちました。
「クソッタレ!……今のがラストチャンスだった!どうやら一度、本当に痛い目に遭わないと分からないようだな!」
黒マスクのならず者に鋏を渡すと、おじさんは離れていきました。
「便利なスキルだよな。物だけじゃなくて、経験値やスキル、記憶まで盗めるんだろ?さっきの蜂の巣も街の外で盗んで来たのか?」
「違うよ!僕が自分で取って来たんだよ!」
「ああ、盗って来たんだろ。返してくれないか?」
どう話しても、会話が成立しません。
説得する方法を考えますが、スキル『交渉』や『説得』を使おうとしたら、すぐにバレて疑いが深まるだけです。
「僕のステータスを全部調べれば分かるから、『盗む』スキルなんって無いよ!」
『鑑定』スキルを持った人が何人かいるようで、椅子に座っている彼をじぃ~っと見ています。
「……っ……くっ……あぁ……ちっ……ふざけんな!多過ぎだ!」
余りにも多過ぎるスキルの数に、ついに1人がキレてしまい、ボォカァと彼の顔面を殴ってしまいました。
「何個あるんだよ?200個以上は見たけど、『盗む』系のスキルは無かったぞ!」
「やっぱり『????』が怪しいな。自信満々で『全部見ろ』なんて最初から怪しいと思ってたんだよ!」
(……ちょっと痛いけど、大人に殴られても平気みたい……)
彼は殴られた右頬を、右手の手の平で摩ると、『続きをどうぞ』と『鑑定』の再開を求めました。
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数時間に及ぶ『鑑定』の結果、彼の無罪が証明されました。
『盗む』のスキルは持っていませんでした。
でも、一部の人というよりも、全員がスキル『????』が怪しいと最初から思っていました。
彼は依頼の報酬は結構ですと、ギルドから出て行こうとしましたが、ボォカァ、ドォス、ガァツンと数人から殴られると、力尽くで椅子に引き戻されました。
「ぐっす……こんなことして許されると思っているのか!今すぐに僕を解放しないと役所に訴えるぞ!」
流石にちょっと痛かったです。涙は見せないように我慢しますが、大勢の大人に囲まれる恐怖は、4人のイジメっ子とは比較になりません。
(……全員倒して逃げれば罪を認めているようなものだし、空に飛んで逃げても、なんか指名手配されそうだし……)
いきなり男の1人にドォス、バァカーンと鞘に入ったままの剣で突かれて殴られました。
「何時間、待たせるんだよ!さっさと締め上げて吐かせるぞ!」
彼がギルドに来てから、もう4時間は過ぎました。彼もそろそろ限界でした。
「うっうっ、ぐっす……すみません。トイレに行きたいんですけど……」
「チッ、そこの通路の奥を右に行けばあるから、さっさと済ませて来い!」
彼は『すみません、すみません』と謝りながら、トイレに走って行きました。
「……トイレの窓から逃げるんじゃないのか?」
筋肉ガチムチの冒険者がなんとなく思った事を話しました。
何人かのならず者が急いでギルドの外に出てから、外側からトイレの窓を見張っていました。
「このクソ餓鬼!ぶっ殺すぞ!」
「てめぇ~暴れるんじゃねぇ!」
どうやら予想が当たったようです。彼が再び引き摺れながらギルドの建物に入って来ました。
ドォカァと椅子に無理矢理、座らされると、口を真っ黒なマスクで隠しているならず者の男が近付いてきました。
「盗みは1回目は利き手の切断。2回目は反対側を切断。3回目は死罪だ。右手と左手どっちだ?」
「本当にやってません……僕は無実です。」
「だったら逃げんじゃねぇ!」
どうせ逃げなくても結果は遅かれ早かれ同じだったと思いますが、この人達は彼に簡単に短時間でいくつもの依頼を達成されたのが悔しいのです。
しかも、正体不明のスキルの事になると、一切話そうとしません。
「「「切れ!切れ!切れ!切れ!」」」
このままだと右手が無くなってしまいます。
彼は女神様との約束をもう一度だけ、破る事に決めました。
「待って!僕の固有スキルは『絶体絶命』このスキルを使ったら、僕もピンチになるけど、おじさん達もピンチになる危険なものなんだ。だから女神様がスキルを見えないようにしているんだ。だから『盗む』スキルじゃないよ。分かったら僕を解放して、しないならスキルを使うよ?」
シィ~~んとさっきまでの騒ぎが嘘のように静かになりました。
(……やっぱり普通は信じないよね)
彼も言ったものの信じてくれないのが当たり前です。
建物の中の人も、隣の人と顔を見合わせて、どうしようかと考えているようです。
「嘘付くなら、もっとマシな嘘を付くんだな」
「「「舌!舌!舌!舌!」」」
建物の中で『舌』という単語が響きます。
どうやら、嘘つきの泥棒は舌も切られてしまうようです。
チョキン、チョキンと音を鳴らして、紙を切るために使っていた鋏を、元冒険者のおじさんが引き出しから持ってきました。
「坊主……今なら本当のことを話せば右手だけで済むんだぞ?怒らないから本当の事を話すんだ」
彼の耳元で、彼にだけ聞こえるように小声で聞きました。
「信じて、おじさん。本当に盗んでいません!僕が頑張って、森や海岸まで行って取ってきたものです!」
彼も最後まで本当のことを言い続けますが、元冒険者のおじさんは怒りを滲ませながら言い放ちました。
「クソッタレ!……今のがラストチャンスだった!どうやら一度、本当に痛い目に遭わないと分からないようだな!」
黒マスクのならず者に鋏を渡すと、おじさんは離れていきました。
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