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「眠い…」

 いつもの週末は明け方までゲームか、アダルトサイトを見て、その後は夕方まで寝てしまう。昨日は早めに寝たのに興奮して眠れなかった。これではいつもとほとんど変わらない。それでもベッドから起きて、出掛ける支度をしないといけない。

 鏡を見ながら、茶色く染めた髪を整えていく。マッシュスタイルがメンズの流行だと聞いて、気合いを入れて美容院に行ったのに、全然モテる事はなかった。髪型には全然意味がないという事が分かっただけでも、失った8000円の価値はあったはずだ。

『ガタァン…ガタァン…』

 アパートから出ると、最寄りの駅から電車に揺られながら、目的地の○●町に向かう。天気は晴れ。体調は悪くはない。念の為に財布には1万5000円と避妊具を入れている。もしもの為にホテル代ぐらいは持って行く必要があるかもしれない。

(あれかな? 如何にもチャラチャラしている)

 待ち合わせの駅前には金髪ウルフカットの19歳ぐらいの男と、ガッチリとした体格の黒髪ベリーショートの20歳ぐらいの男が椅子に座って待っていた。二人の第一印象は遊び人と体育会系だった。怪しいと言えば、怪しいけど、同い年ぐらいだから、そこまで用心する事はないと思う。変な建物に連れて行かれそうになったら全力で逃げるしかない。

「あのぉ~、すみません。金髪狼野朗さんと若山筋肉君わかやまきんにくくんさんですか?」

 聞いている自分が恥ずかしい。これでもしも人違いだったら、僕が喧嘩を売っているようにしか見えない。

「おおっ! 千葉雄大ちばゆうだい(自称)さん。あっはは、確かにこれは自称だな。マジで笑えるよ」

「すみません。自称で…」

(笑い過ぎだよ。あんたもそこまでイメケンじゃないし)

「今日はよろしく、雄大さん。偽名だけど俺の事は翔太しょうたと呼んでくれ。こっちは友哉ともやだ。早速だけど、今日やる事を説明させてほしい。それを聞いて出来そうならば協力して欲しい。無理そうならば、帰ってくれても構わない。説明をしてもいいだろうか?」

「はい、もちろんです。よろしくお願いします」

 こっちの体育会系の人は見かけ通り、しっかりとしている。何でこのチャラ男と知り合いなのか分かんないけど、大学生達の悪いサークル活動とかじゃないようだ。

「その前に500円玉と50円は用意しているだろうか? それが無いとこのゲームは出来ないんだ」

「はい、持って来ています。一応、念の為に3枚ずつ持って来ました」

「それは良かった。本当は1枚ずつでもいいんだが、相手によっては持ち逃げされてしまうかもしれないからな。実は多い方が有利なんだよ」

「持ち逃げですか?」

 何だろう。合コンだと思っていたけど違うみたいだ。ゲームで、持ち逃げされる? それに何で500円玉と50円玉じゃないと駄目なんだろう。硬貨を使うなら100円玉でもいいはずなのに。
 
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