アマゾネスの異男児

もう書かないって言ったよね?

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23・魔氣

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「せ、先生……た、助けてください」

 近くだし、これは仕方ない。
 出て行ったばかりの家に負け犬として戻ってきた。

「うわぁー血だらけじゃないか。さあ、中に入って」
「は、はい……」

 身体痺れてボロボロだけど、なんとか歩いて帰還した。
 そんな僕に先生は優しく手を差し伸べて、家に迎えてくれた。
 やっぱりこれが正しい判断だった。

「傷はないみたいだね。服は私が綺麗にするから、すぐに火炙りに行けるよ」
「ふぇっ? せ、先生?」

 行きたくないから戻ってきたのに、先生が何を勘違いしたのか恐ろしいことを言ってきた。
 僕は死んだことにしていいから、出来れば永遠にここで保護して欲しい。

「あの先生、僕、今魔法が使えないんです。悪魔に抗魔力抑制薬って薬を打たれちゃって」

 行きたくないから、行っても意味ないことを教えてあげた。
 今の僕に火炙りを乗り越える力とやる氣は残ってない。

「抗魔力抑制薬……? ああ、薬星が作ったエルフの魔封じ薬か。噂で聞いたことあるよ。一等星試験で試験官のエルフに使って、魔法使えなくなった後に半殺しにしたものだね。確か別のエルフが試験を強制終了させたって聞いているよ」
「そうそれです! そのヤバイ奴にそのヤバイの打たれたんです! いや、今回は刺されたんです! しかも二本も!」

 知っているなら話が早い。先生に僕がそのヤバイ状態だと急いで教えてあげた。
 半殺しから先生の所に戻って小殺しぐらいには回復したけど、ここで無理して師匠の所に戻れば半殺しに逆戻りだ。

「まあ、平気なんじゃないかな。薬なら効果時間があるだろうし。長く効く薬じゃないと思うよ。多分、1時間ぐらいで消えるんじゃないかな?」
「……」

 ここに来るまでに1時間は経っていると思う。
 魔法が使えるか両手を擦り合わせて確認すればいいけど、そのつもりは微塵もない。
 何度も言うけど、今の僕に火炙りを乗り越える力とやる氣は残ってない。

「はい、これ茶葉ね。食べながら帰るといいよ」
「……」

 それなのに服の血を水魔法で綺麗に洗濯して、火魔法で乾かすと、先生が笑顔でさっさと帰れと言ってきた。
 しかも、乾燥させられたお茶の葉まで渡されてだ。これで魔力補給しろということだ。
 魔法と薬で治せるのは身体だけで、心は治せないんですよ、先生。

「チッ」

 魔星様の家を出ると、少し進んだ森の中で両手を擦り合わせて確認してみた。
 ボッと両手が炎に包まれた。もう帰らないという選択は残ってない。


「また無断外泊か。ルモ、覚悟は出来てんだろうな?」

 今日は火炙りの刑中止で師匠と強制組み手かな?
 家に生還した僕を拳をバキボキ鳴らして、怒りの形相の師匠が待ち構えていた。

「違います。鍛錬してきたんです! 僕を火炙りの刑にしてください。必ず脱出してみせますから!」

 そんな師匠に殴られる前に僕は言った。

「ほぉー凄え自信だな。いいだろう。すぐに用意してやるよ。ただし出来なかった時は分かってるよな?」
「覚悟は出来てます」
「フンッ、自信はあるってか。用意するのも面倒だ。そのまま私に見せろ」
「なっ⁉︎」

 なんてことだ。火炙りの火で誤魔化せると思ったのに、このままやれと言ってきた。
 師匠が要求しているのは剛氣と柔氣を合わせた《合氣》なのに、僕のは偽物だ。
 こんなの見せたら半殺しどころじゃない。死刑だ。

「わ、分かりました。い、行きます」

 だけど、あんな自信満々に言って、今更出来ませんとは言えない。
 フゥーと集中すると両手を合わせた。あとは擦り合わせるだけだ。

「アチチチチィ、あ、熱いい‼︎」
「……」

 師匠の前でやってしまった。両手は熱いのに師匠の無言の視線が非常に冷たい。
 早く紅蓮拳まで持っていかなければ。

「で、出来ました。この手ならロープも引き千切れると思います」
「……なるほど。《魔氣まぎ》か」
「えっ?」

 魔力強化と剛氣を加えてみた。すると真っ赤な両手を見て師匠が言った。

「知ってるんですか?」
「氣と魔法を組み合わせた技だろ。エルフの奴らが魔力持ちのアマゾネスに教えていたからな。まあ、普通に氣を使った方が良いけどな」
「えっ、どうしてですか?」

 師匠の火炙りに二ヶ月耐えても手に入らなかった力だ。
 それがたったの二日で楽に手に入ったんだ。
 こっちの魔氣の方が良いに決まっている。

「そんなの決まってるだろうが。剛氣と柔氣、二つに分けていた氣を一つに戻した合氣なら、身体の限界点を上げられるからだ。その魔氣は身体に負担がかかるし、限界以上の力を出そうとすれば身体がぶっ壊れる」

 先生にも身体が爆発するとは聞いていたけど、僕の身体は薬漬けで頑丈になっている。
 たまにしか使わないなら、やっぱり火炙りになり続けるよりはとっても良いと思う。

「まあ、せっかく覚えてきた技だ。俺が練習台になってやる。さあ、どこからでもかかって来い」
「そ、そんなぁ、師匠を殴るなんて出来ま——」

 両手を横に広げて、師匠が殴って来いと要求してきた。
 師匠を殴るなんて僕に出来るわけ……決まってるだろうが!

「シィッ!」

 出来ない素振りで油断させると、素早く身体の重心を右足と腰にかけて落として、その反動を乗せて前に踏み込んだ。
 灼熱の右拳が師匠の腹に向かって真っ直ぐ飛んでいく。

「ぐっ……」
「や、やった!」

 まさか当たるとは思わなかった。僕の紅蓮拳が師匠の腹に直撃——

「クソ甘ええツ‼︎」
「はばああん‼︎」

 判断間違った。僕の顔面に師匠の拳骨がぶち込まれた。
 あまりの衝撃と威力に頭から地面に激突して飛び跳ねた。
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