アマゾネスの異男児

もう書かないって言ったよね?

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24・修業着卒業

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「……あれ、ここ……何処?」

 目が覚めると何故か地面に寝ていた。
 それに右頬がめちゃくちゃ痛い。

「ようやく起きたか。女みてえなパンチ打ちやがって。たったの一発で失神とか情けねえ奴だな」

 女みたいなパンチって、それってヤバイパンチってことかな。
 師匠も一応女だし、褒められてんだよね。

「すみません。鍛錬不足でした」

 もちろんそんなわけないのは師匠の顔を見れば分かる。
 ここは両手を地面に合わせて謝罪だ。
 ついでに師匠の服に焦げ穴開けちゃったのも謝罪だ。

「自覚はあるみたいだな。よし、その服脱いでいいぞ」
「えっ……なんでですか?」

 この寝る時も着ないといけないクソ重いだけの服を脱いでいいだって。
 まさか、僕殺されるんじゃ。死体に服は必要ないし。

「なんでって、そりゃー合格祝いに決まってるだろ。今のお前なら火炙りぐらいは脱出出来るからな。その基礎鍛錬用の修業着はもう必要ないってわけだ」
「えっ、本当にいいんですか⁉︎」
「いいって言ってだろ」

 な、な、なんて優しい師匠なんだ。こんな人、見たことない。

「ありがとうございます!」
「……おい、蹴り潰すぞ」
「ひぃぃ!」

 さっそく服を脱ごうとしたら、師匠が恐ろしい顔で睨んできた。
 僕の股間の××××が恐怖で縮こまった。
 理由は知らないけど、僕の××××を見ると師匠がキレる。

「着替えるなら自分の部屋でしろ。誰にも見られるんじゃねえぞ」
「は、はい。あっ、でも僕、この服以外持ってないです」

 最初に着ていた服は捨てられてしまった。
 今は同じ修業着が四着、予備で部屋に置かれているだけだ。

「それなら俺が子供の頃に着ていた服をセラに用意させている。アイツの部屋にあるはずだから貰って来い」
「ありがとうございます!」

 やったぁー。火炙り卒業に重い服も卒業だ。
 走って家に入るとセラさんの部屋に向かった。

「セラさん、いますか? 入りますよ」

 扉を必ず叩いてから入れ。この家の基本ルールは知っている。
 叩いたのでさっさと入ろう。

「早いわよ。いいって言ってないでしょ」

 開けようとしたら扉の方から開いてくれた。
 中から濡れた紫髪にタオルを乗せたセラさんが出てきた。

「それで何か用なの? こっちは走ってきて疲れてんだから早くしてよね」

 お風呂入る元気はあるんですね、とは言わないでおこう。
 僕もさっさと服を貰って風呂に入って、ベッドでゴロゴロしたい。
 組み手があるから、ゴロゴロは許されないだろうけど。

「師匠の子供服を貰いに来ました」
「ああ、あのめっちゃ可愛い服ね。あの服着る勇気は私にはないわね」
「そんなにヤバイんですか?」

 師匠の子供服だ。今の師匠は黒い服を着ている。
 その黒い服の背中側の裏地には、何か金色に輝く生き物が刺繍されている。
 何度も見ようとしているけど、何の生き物なのか未だに分からない。
 師匠が言うには「これが見れるのは俺が本気で相手する時だ」らしい。

「それは自分で着て確かめるのね。ほら、あの箱に着れそうな服集めておいたから、部屋に持っていきなさい」
「はぁーい」

 言われた通りに長方形の木箱を抱えると、僕の部屋に運んでベッドの上に置いた。

「どんなのかなぁ~?」

 今の師匠のカッコいい服と違い、セラさんが言うには可愛い服らしい。
 そういえば初めてこの家に来た時にも、師匠が可愛い服と言っていた気がする。

「……えっ、嘘だよね」

 期待しつつ蓋を押し上げて開いてみた。
 すると、中に信じられない服が入っていた。

「ス、スカートだって⁉︎」

 赤と黒のチェック柄のミニスカートが出てきた。
 水色と白も出てきた。ワンピースまで出てきた。
 膝上までしかない短いズボンまで出てきた。
 まさか子供時代の師匠が露出狂の変態だとは思わなかった。
 こんなの足の下半分以上を見せているようなものだ。

「ごくり……確かにこれは勇気がいるかも」

 長袖長ズボンから、いきなりミニスカートは流石に抵抗がある。
 
「やるしかないか」

 だが、それでも着ないという選択はない。
 着る勇気もないが、師匠が用意した服を着ないという勇気もない。
 だったら殴られたくない勇気を出そうと思う。
 重い修業着を脱ぎ捨てると、一番スカートの裾が長かった青と白のワンピースを着てみた。
 袖は肩を隠せる程度に短い。けれども、スネを半分隠せる程度には長い。
 これなら両袖を引き千切られた修業着みたいなものだ。

「ヤバイ。超軽い」

 その場でクルッと一回転してみた。
 羽根だ。羽根になった。服の裾が舞っている。
 重かった修業着ではありえない動きだ。

「あっ、靴下だ。靴もある!」

 もっと何かあるかと下の方も探してみた。箱の中から縞々の靴下を発見した。
 サンダルと黒いブーツも入っていた。蝶ネクタイや髪留めなんかも入っていた。
 師匠も可愛い物に興味があったんだな。……なんて月日は残酷なんだ。

「よし、行こう」

 装備は整えた。
 少し伸びた青黒い髪には植物で編まれた帽子、足には靴下と黒いブーツを装備した。
 箱に入っていた手鏡で何度も姿を確認して、ようやく師匠に見せる覚悟が出来た。
 
「お待たせ……」

 覚悟を決めて家の外に出たのに誰もいなかった。
 師匠は自己鍛錬、姉弟子達は一人を除いてサボっているのだろう。
 仕方ないから姉弟子達にこの服の感想を聞いてみよう。
 まずはセラさんの部屋だ。

「すみません。いいですか?」

 扉を優しく叩いて、ちょっと可愛い感じの声で言ってみた。
 ちょっと待つと部屋の扉が開いて、顔を出したセラさんがジッと僕を見た後に言ってきた。

「……だれ?」
「僕ですよ。ルモです」
「えぇー嘘ぉー」
「本当ですって。僕ですよ」

 きちんと名乗ったのにセラさんが信じられないって顔で言ってきた。
 なのでもう一度名乗った。もしかするととんでもなく可愛いのかもしれない。

「そういう意味じゃないわよ。何でこんなに肌が綺麗なのよ。毎日焼かれて、殴られているのに」
「さあ、そんなこと言われても」

 僕の腕を撫で回して文句を言われても、これは僕の所為じゃない。

「それよりも可愛くないですか?」 

 文句よりも服の感想を聞きたい。

「あーそうかもね」
「やっぱり可愛いんですね。困ったなぁ~、モテモテになっちゃうかも」
「……」

 聞いてみた結果、僕は可愛いみたいだ。
 セラさんもあまりの可愛さに黙ってしまった。
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