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27・風魔法習得
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「ガアツ! ガアツ!」
デカ赤がダンジョンに帰らずに結界に爪を振り回している。
その度にキラキラ光る結界が台座の周囲に浮かび上がっている。
「これって……」
あっちが出られないなら、こっちから一方的に攻撃できないだろうか。
「あっ」
結界の中に手が入るか試してみた。
すると見えない壁のようなものに手が触れた。
結界だ。一方的に攻撃できるとか、そんな上手い話はなかった。
「うん、帰ろ」
デカ赤がダンジョン塞いでいるし、勝てる気がしない。
まだ結界を壊そうと暴れているデカ赤を放置して歩き出した。
「先生、無事に卒業しました」
結構苦労したけど、何とか師匠の家に帰って、先生の家までやって来れた。
本当に苦労した。僕も目印をたくさん用意しておこう。
「えっ……ああ、君か」
服が変わっただけで分からなくなるなんて酷い。
一瞬、僕が誰なのか分からない顔してた。
「卒業したってことは何か貰えたの?」
「はい、あの服からこの服になりました。可愛いですか?」
「うん、何って言っていいのか分からないけど、可愛いとは思うよ。それで服を見せに来たの? もちろんそうじゃないよね」
先生に聞かれたので答えた。もちろん服を見せに来るほど暇じゃない。
Fランクダンジョンで超雑魚に逃げ出したことは言わないで、魔法を教えてほしいとお願いした。
「なるほど。私が教えた魔氣は欠陥品か……」
「はい、師匠がそう言ってました」
多分、超雑魚に勝てなかったのは、これが原因だと思う。
それ以外に雑魚を倒せない理由に心当たりがない。
「確かにその通りかもね。合氣は肉体を強化するもので、魔氣は魔法を強化するものだ。合氣ならば、攻撃力・防御力・素早さ・回復力を一つで上げられる。
けれども、魔氣で身体能力を上げるには魔法の属性を変える必要がある。それを瞬時に行なえるなら、合氣と同じぐらいの身体能力は出せるようになれるけど、それには素早く切り替える練習が必要だ」
属性変化は前に教えてもらったから知っている。
足に風魔法をかければ、素早く走れるようになれる。
拳にかければ、素早いパンチが打てるようになれる。
でも、軽いパンチじゃ、あのデカ赤は倒せない。
今よりももっと強い攻撃力が必要だ。
「ふむ……魔法を教えるよりは今の戦闘スタイルを崩さない方が良いのかも。とりあえず基本の四属性を習得した方が早いかな。最低でも風魔法は覚えてみようか。移動が速くなると便利だよ」
「うーん、まあ、そうですね……」
さすがの先生も簡単にもっと強くなれる方法は知らなかった。
納得できないものの、確かに素早さを身につければ移動時間が節約できる。
使った魔力は先生のお茶葉で取り戻せるし。
——四時間後——
「ぐぁぁ、もう無理……」
走り疲れてもう限界だ。バタンと地面に倒れた。
「ふむ。風魔法も習得完了っと」
先生に背中を押されて、家の周りを延々と走らされた。
慣れるより慣れろ、使いたければ使えだ。
無理矢理風魔法を発動させられて、もう身体が風になってしまった。
今にも空の一番高いところまで飛んでいってしまいそうだ。
「よいしょ、と。今日もここに泊まるのかい?」
「はい、よろしくお願いします」
「やれやれ、ダラシない弟子だ」
僕の両手を持って、家に向かって引き摺りながら先生が聞いてきた。
ご飯タダだし、疲れたし、歩きたくない。この判断が大正解だ。
「それは構わないけど、四等星試験は明日だよ。遊んでいてもいいの?」
「へぇっ? 明日?」
「あれ、知らなかったの? だから、最終調整に来たと思ったのに」
全然知らなかった。まさか明日が試験日だったなんて。
あーでも、どうせFの超雑魚も倒せないなら来月でも良いかも。
行ったところで失格になるだけだもんね。
「いえ、試験はいいです。身の程は分かっていますから」
「フフッ。謙虚だね。四等星ぐらいならイケると思うんだけどな、私は」
「いえ、無理です。絶対無理です」
何を言われてもやる氣は回復しない。
「うーん、昨日まではあんなにやる気だったのに、よっぽど手酷くやられたみたいだね。まあ、私も中途半端な強さよりも、安定した強さを目指した方が良いと思うよ。試験は長時間戦う場合もあるからね」
「そうですね。僕もそう思います」
僕の頑なな意思に先生も納得してくれたみたいだ。
たった一匹の超雑魚に苦戦するんだから、それよりも強い魔物何十匹と連戦できるわけがない。
囲まれたりしたら、それこそ試験じゃなくて人生終わりだ。
う~~ん、と背伸びして朝起きた。
良いベッドと美味しい食事で僕の疲れも吹っ飛んだ。
今日は何して遊ぼうか、とそんなことを考えている暇はない。
もちろんFランクダンジョン攻略の為に鍛練だ。
「ふわぁ~、早いんだね。もっと寝てていいんじゃない?」
早朝ランニングに家を出ようとしたら、まだ眠そうな顔で先生が言ってきた。
「ちょっと走ってくるだけです。すぐに戻ってきます」
「それなら朝ご飯を作っておくよ。まあ、昼ご飯になるかもしれないけどね」
「それはないです。今日はイケそうな気がするんです」
「そう。頑張ってね」
先生に自信を持って、そう言うと家を出た。
風魔法で僕の足はまさに風になった。しかも、服も羽根になった。
今日なら悪魔からも逃げ続けることが出来るはずだ。
「ほっほっほっ」
まずは風魔法は使わずに軽くランニングだ。
悪魔が現れたら、この状態から風魔法を使って、僕の本気の走りを見せてやる。
「やあ、坊や。今日は可愛い服だね」
「……」
もしかしたら、僕だと気づかないで見逃してくれると思ったのに無理だった。
木の陰からスッと白い悪魔が現れた。でも、ここからが予想外だった。
「まったく俺を待たせるとは偉くなったもんだな」
「えっ、何で……」
さらに右横の木の陰から師匠まで現れた。
どういうことか説明してほしい。
「まあいい。四等星試験に行くぞ」
はい、分かりました。
師匠の超分かりやすい説明で僕の人生が終わるのが分かった。
デカ赤がダンジョンに帰らずに結界に爪を振り回している。
その度にキラキラ光る結界が台座の周囲に浮かび上がっている。
「これって……」
あっちが出られないなら、こっちから一方的に攻撃できないだろうか。
「あっ」
結界の中に手が入るか試してみた。
すると見えない壁のようなものに手が触れた。
結界だ。一方的に攻撃できるとか、そんな上手い話はなかった。
「うん、帰ろ」
デカ赤がダンジョン塞いでいるし、勝てる気がしない。
まだ結界を壊そうと暴れているデカ赤を放置して歩き出した。
「先生、無事に卒業しました」
結構苦労したけど、何とか師匠の家に帰って、先生の家までやって来れた。
本当に苦労した。僕も目印をたくさん用意しておこう。
「えっ……ああ、君か」
服が変わっただけで分からなくなるなんて酷い。
一瞬、僕が誰なのか分からない顔してた。
「卒業したってことは何か貰えたの?」
「はい、あの服からこの服になりました。可愛いですか?」
「うん、何って言っていいのか分からないけど、可愛いとは思うよ。それで服を見せに来たの? もちろんそうじゃないよね」
先生に聞かれたので答えた。もちろん服を見せに来るほど暇じゃない。
Fランクダンジョンで超雑魚に逃げ出したことは言わないで、魔法を教えてほしいとお願いした。
「なるほど。私が教えた魔氣は欠陥品か……」
「はい、師匠がそう言ってました」
多分、超雑魚に勝てなかったのは、これが原因だと思う。
それ以外に雑魚を倒せない理由に心当たりがない。
「確かにその通りかもね。合氣は肉体を強化するもので、魔氣は魔法を強化するものだ。合氣ならば、攻撃力・防御力・素早さ・回復力を一つで上げられる。
けれども、魔氣で身体能力を上げるには魔法の属性を変える必要がある。それを瞬時に行なえるなら、合氣と同じぐらいの身体能力は出せるようになれるけど、それには素早く切り替える練習が必要だ」
属性変化は前に教えてもらったから知っている。
足に風魔法をかければ、素早く走れるようになれる。
拳にかければ、素早いパンチが打てるようになれる。
でも、軽いパンチじゃ、あのデカ赤は倒せない。
今よりももっと強い攻撃力が必要だ。
「ふむ……魔法を教えるよりは今の戦闘スタイルを崩さない方が良いのかも。とりあえず基本の四属性を習得した方が早いかな。最低でも風魔法は覚えてみようか。移動が速くなると便利だよ」
「うーん、まあ、そうですね……」
さすがの先生も簡単にもっと強くなれる方法は知らなかった。
納得できないものの、確かに素早さを身につければ移動時間が節約できる。
使った魔力は先生のお茶葉で取り戻せるし。
——四時間後——
「ぐぁぁ、もう無理……」
走り疲れてもう限界だ。バタンと地面に倒れた。
「ふむ。風魔法も習得完了っと」
先生に背中を押されて、家の周りを延々と走らされた。
慣れるより慣れろ、使いたければ使えだ。
無理矢理風魔法を発動させられて、もう身体が風になってしまった。
今にも空の一番高いところまで飛んでいってしまいそうだ。
「よいしょ、と。今日もここに泊まるのかい?」
「はい、よろしくお願いします」
「やれやれ、ダラシない弟子だ」
僕の両手を持って、家に向かって引き摺りながら先生が聞いてきた。
ご飯タダだし、疲れたし、歩きたくない。この判断が大正解だ。
「それは構わないけど、四等星試験は明日だよ。遊んでいてもいいの?」
「へぇっ? 明日?」
「あれ、知らなかったの? だから、最終調整に来たと思ったのに」
全然知らなかった。まさか明日が試験日だったなんて。
あーでも、どうせFの超雑魚も倒せないなら来月でも良いかも。
行ったところで失格になるだけだもんね。
「いえ、試験はいいです。身の程は分かっていますから」
「フフッ。謙虚だね。四等星ぐらいならイケると思うんだけどな、私は」
「いえ、無理です。絶対無理です」
何を言われてもやる氣は回復しない。
「うーん、昨日まではあんなにやる気だったのに、よっぽど手酷くやられたみたいだね。まあ、私も中途半端な強さよりも、安定した強さを目指した方が良いと思うよ。試験は長時間戦う場合もあるからね」
「そうですね。僕もそう思います」
僕の頑なな意思に先生も納得してくれたみたいだ。
たった一匹の超雑魚に苦戦するんだから、それよりも強い魔物何十匹と連戦できるわけがない。
囲まれたりしたら、それこそ試験じゃなくて人生終わりだ。
う~~ん、と背伸びして朝起きた。
良いベッドと美味しい食事で僕の疲れも吹っ飛んだ。
今日は何して遊ぼうか、とそんなことを考えている暇はない。
もちろんFランクダンジョン攻略の為に鍛練だ。
「ふわぁ~、早いんだね。もっと寝てていいんじゃない?」
早朝ランニングに家を出ようとしたら、まだ眠そうな顔で先生が言ってきた。
「ちょっと走ってくるだけです。すぐに戻ってきます」
「それなら朝ご飯を作っておくよ。まあ、昼ご飯になるかもしれないけどね」
「それはないです。今日はイケそうな気がするんです」
「そう。頑張ってね」
先生に自信を持って、そう言うと家を出た。
風魔法で僕の足はまさに風になった。しかも、服も羽根になった。
今日なら悪魔からも逃げ続けることが出来るはずだ。
「ほっほっほっ」
まずは風魔法は使わずに軽くランニングだ。
悪魔が現れたら、この状態から風魔法を使って、僕の本気の走りを見せてやる。
「やあ、坊や。今日は可愛い服だね」
「……」
もしかしたら、僕だと気づかないで見逃してくれると思ったのに無理だった。
木の陰からスッと白い悪魔が現れた。でも、ここからが予想外だった。
「まったく俺を待たせるとは偉くなったもんだな」
「えっ、何で……」
さらに右横の木の陰から師匠まで現れた。
どういうことか説明してほしい。
「まあいい。四等星試験に行くぞ」
はい、分かりました。
師匠の超分かりやすい説明で僕の人生が終わるのが分かった。
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