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第47話 車にお宝積んで逃走開始

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『パァン! これで九十二人目』

 時折り聞こえてくる無線機越しの発砲音とパトリの声は、出来るだけ気にしない。
 二百人中九十二人なら、まだ半分以上は生きている。
 私は左手が無い戦闘機で積み込み作業に集中した。

 大型トレーラーの荷台に解体した骸骨をギュウギュウに押し込んでいく。
 荷台が悲鳴を上げ始めたら、荷台の蓋を閉めて、更に屋根の上に積んでいく。

「ボス、どうしたんですか? 無線機に答えてくださいよ」
「コイツら、急に動かなくなったんですよ」
 
 積み込み作業中、動かなくなった人型メタルスライムを持って来たWBが何組もいた。
 首の骨が折れたバイアスをバイクに座らせているので、報告に近づいてくる。
 本体を倒した事で分身も停止したようだ。
 戦いが終わって司令部にやって来るのは、当然の結果だったと予想するべきだった。

「助けて! 助けてぇ! 助けてええええええ!」
「はぁ、はぁ、武器は捨てた! 降参する! 誰にも言わないから⁉︎ ふぐっ!」

 金髪パーマの眼鏡に白シャツ、ジーンズのメタルモヤシ小僧は荷台で保護した。
 上半身裸でジーンズにサスペンダーを付けた巨漢のメタルハム男も荷台で保護した。
 それ以外の価値の無い人達は例外なく、狙撃手と戦闘機が排除して、草の茂みに放り込んだ。
 ここでは人間の命の価値は、あまりにも低過ぎる。

「よし、終了ぉ~」
「もぉ~、駄目。今すぐに眠りたいよぉー」
「まだ、安心するのは早いぞ。安心するのは町に逃げた後だ」

 やっと積み込み作業が終わった。時刻はそろそろ午前三時になる。
 戦闘機から降りたミアは地面に座り込んで、寝ようとしている。
 流石に敵がまだまだいるのに油断し過ぎだ。

「えっー! これ貸すから、ギルっちが皆殺しにしてきてよ。そしたら、安心して眠れるでしょう」
「私も疲れているんだ。絶対にやらないぞ」

 私の忠告に嫌な顔をするミアは戦闘機を指差して、残り百人程の惨殺を命じてきた。
 私も本気で嫌そうな顔をして断った。
 
「はいはい、残党狩りなんてやるだけ無駄よ。どうせ、白魔石ぐらいしか持ってないんだから」
「そういう事だ。今すぐに町に逃げるぞ。もちろん別の町に逃げるんだぞ」

 白魔石は一万五千ドルの価値がある。
 二十個集めれば、炎の魔石と同じ値段になる。
 残り百人以上いるなら、手に入る可能性はある。

 でも、流石のケイトもお金パンパンで、胃袋と言うか金袋が破裂寸前なのだろう。
 大型トレーラーにメタルスライムをパンパンに積み込んだ。
 炎の魔石二個、白魔石十九個を手に入れた。残党狩りはしないようだ。

「何、仕切ろうとしてんのよ? 腕へし折るわよ」
「すみません。参考になると思って、出しゃばりました」

 金が入って上機嫌だから許されると思っていたが、私への怒りは別腹らしい。

「まったく……そんな事、あんたに言われなくても分かっているってーの」
「そうそう。ギルっちじゃないから、誰だって分かるよ」
『戦う前に逃亡先を決めるのは常識だよ』
「くっ……」

 何という一体感のある私への侮辱。
 ケイトの所為で私をゴミ屑に扱っていい雰囲気になっている。
 この職場には、もう私の味方をする仲間や安らげる居場所はない。
 それと逃亡先は悪い事をしようとする人間しか考えない。
 
「逃げるなら北と東の二択しかない。海沿いの町と内陸の町。二人はどっちがいい?」
「私は海が良いかな?」
『私も海でいいよ。船旅も楽しいよ』

 聞かれてないけど、お父さんも海で良いと思うぞ。

「じゃあ、海で決定ね。海沿いのリゾートで少しのんびりしましょう」
「わぁ~い!」

 なるほど。療養という名の潜伏だな。
 これだけの事をやったんだ。
 しばらくは人目に付かないように身を隠したいんだろう。
 これは長期療養になりそうだ。
 
「さてと、トレーラーはあんたが運転するとして……問題は私達のキャンピングカーね」
『それなら私が運転するよ。ケイトとミィーはトレーラーで先に行っていいよ。すぐに合流するから』
「ありがとう、パトリ。助かるわ」
「やったぁー! ありがとう、パトリ」
「……」

 私に感謝の言葉は一切ない。でも、これがここの普通だ。
 何も言わずにトレーラーのドアを開けて、運転席に座った。
 このメタルスライムの金属を売れば、どのくらいの金になるだろうか?

 ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ考えてみた。
 二人を合流したキャンピングカーに乗せて、私だけ東の町を目指す。
 そうしたら、大金を独り占め出来るかもしれない。

「ほら、さっさと出発しなさいよ。積荷を一つでも落としたら、あんたの腕も切り落とすわよ」

 広い助手席にケイトとミアが乗り込んで来たと思ったら、早速ケイトが脅してきた。
 私を馬だと思っているようだ。鞭の代わりに脅して走らせようとしている。
 馬だって、無意味に鞭で叩かれまくったら、怒って、乗っている人間を振り落とす。

「大丈夫だ。さあ、出発するぞ。合流したら起こすから寝ていていいからな」

 でも、私は人間なので、素直に鍵を回してエンジンをかけた。
 さあ、安全運転で安全な町に行こう。

「馬鹿なの? まだ敵がいるのに寝る訳ないでしょう。奇襲されたらどうするのよ」
「そうだよ。油断して居眠り運転したら、ブン殴るよ」
「すみません。油断してました」

 優しさって何だ? 優しくしたら、怒られた。
 何だ? 私が募金箱に寄付したら、汚い金だと投げつけられるのか?
 私は黙って、言われるままに動くロボットになればいいと言うのか? 
 私は人間だぞ! 私は自分で考える力があるんだぞ!

「あっ!」

 ゴリゴリゴリ。右折しようとして、壁に車体が擦られた。

「このド下手!」
「おぐっ!」

 積荷を落としてないのに、隣のケイトに脇腹を殴られた。
 車体の損傷も厳罰対象になるらしい。

「あんたは運転手、クビよ。さっさと交代しなさい」
「はい、無免許ですみません」

 トレーラーを一時的させて、ドアを開けて、一旦外に降りてから席を交代させられた。
 狭い車内で交代しようとしたら、私の身体が触れるから嫌だそうだ。
 じゃあ、ハンドルと運転席に触れるのは問題ないのかと聞きたい。

「ちっ……」
 
 ゴリゴリゴリ。新しい運転手も壁に打つけながら、住宅街を走り抜けていく。
 当然、私が腹パンチする事も文句を言う事も出来ない。
 なので、「ド下手!」と心の中で言うだけにした。

「とりあえず、町に着いたら魔石と金属の鑑定をしてもらうわよ。未確認だったら当分は使えないけど、分かっているのなら、すぐに使えるから」
「なるほどな。でも、分からない時はどうするんだ?」

 廃都を出て、障害物の少ない荒野に出た事で安心したようだ。
 ケイトがこれからの予定を話してきた。
 そういう事は私の左隣で、スゥースゥー寝ている猫娘にも聞かせた方がいい。
 でも、起こしたら、二人がかりでリンチされそうだ。

「分からない時は仕方ないから、金額次第で売るしかないわね。でも、貴重な物なら売った後に後悔したくないから、出来るだけ調べてもらうわ」
「ふぅーん……」

 多分、ケイトはファクトリーで調べてもらうつもりだろうけど、多分、無理だな。
 バイアス達は未確認のメタルスライムを倒そうとしていた。
 WBは色々な町を回っている集団だ。
 その集団が分からないのなら、間違いなく中心地の街で調べてもらうしかない。
 専門家と専門機関で一から調べてもらうなら、最低でも二週間ぐらいはかかると見た方がいい。
 つまり、長期療養は確定だ。

「まったく、オリハルコンを取りに来ただけなのに、最悪よ。あとで回収しないといけないじゃない」

 ケイトは怒りながら運転している。
 回収する事はまだ諦めていないらしい。
 ほとぼりが冷めたら、最初の仕事はオリハルコンの回収になると思ってよさそうだ。
 もしかしたら、自分達が楽しんでいるうちに、私に単独で回収に行かせるかもしれない。
 娘はそういう奴だ。

『ケイト、廃都から出たよ。追い付くまで待機していて』
「うん、分かった。廃都から二十三キロ地点だと思うから」
『了解。二十分ぐらいあれば、見つけられると思うから待ってて』
「はぁーい」

 ケイトの理不尽な回収命令に怯えていたら、パトリから連絡が来た。
 ケイトがトレーラーの走行距離を見ながら、だいたいの現在地を教えている。
 予想よりかなり早い連絡だ。
 てっきり残党狩りを楽しんでから、一週間後、町で合流すると思っていた。

「さてと……トレーラーは私が運転するから、あんたはキャンピングカーを運転しなさい。積荷を持ち逃げされたら大変だから」
「まったく、そんな事、考える訳もないだろう。もう少し信用しろ!」
「はいはい、じゃあ小さじ一杯ぐらいは信用するわ」
「なっ⁉︎」

 私の信用度は五グラムだ。相当に軽い信用度だ。吹けば飛んで行ってしまう。
 ケイトはトレーラーを停車させると、私を外に追い出した。
 同じ空気を近くで吸いたくないのか、体臭が臭いのか、理由は色々とあるのだろう。
 私としては、キャンピングカーに拾われずに、このまま置き去りにされなければ問題ない。

「おっ、早いな」

 私の心配をよそに白いキャンピングカーが見えてきた。
 凄いスピードでやって来る。パトリは最高速度で走らせるレーサータイプのようだ。
 トレーラーの点滅するテールランプを目印に真っ直ぐに向かって来る。
 轢き殺されたら大変なので、やって来る車の前には立たずに避難しよう。

 ♢
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