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26日目

ならず者・廃都支配

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「うーん、ならず者ですかぁ~?」

 母親の部屋を出ると、カノンは訓練所に向かった。
 ロクサーヌの助言を思い出しているが、ならず者を知らない。
 ミランダを男にしたのが、ならず者だと教えれば一発で分かる。

 使用人と13歳の少女を交換して、ベッドに添い寝させるのがならず者だ。
 知らない女性からお金を貰って、浴場で足踏みマッサージするのがならず者だ。
 酒場で冒険者をビンタで気絶させるのもならず者だ。

「二人とも食べ終わってますね。これから食事後の運動に行きますよ」
「クゥ~ン」「グガァッ!」

 カノンが訓練所の扉を開けると、パトラッシュが擦り寄って来た。
 ドラゴンは進化して、ちょっと反抗的になっている。
 二匹を飛行船と鳥籠に入れると、廃都に向かって出発した。

「ならず者って、どこにいるんでしょう?」

 飛行船を飛ばしながら、カノンは考えている。
 ならず者を用意したいけど、出来そうにない。ならず者は図鑑に表示されない。
 改造スライムなら、たくさん用意できる自信がある。

「ならず者よりは、やっぱり魔物の方が楽ですね。パトラッシュに頑張ってもらいましょう」
「クゥーン?」

 ならず者は用意できない。カノンは魔物を用意することに決めた。
 廃都を調教した魔物で支配すれば、何も問題ない。

 あとは魔物達のリーダーになって、言うことを聞かせられる存在が必要だ。
 手始めに地獄の猛犬のリーダーに、同じ犬のパトラッシュが選ばれた。
 食べられないように頑張らないといけない。

「まずは牧場を作りますか」

 廃都に到着した。魔物牧場は何度も作っているから慣れている。
 カノンはパトラッシュとドラゴンの縮小化を解除して、ヘルハウンドを捕まえに行かせた。

 次はその辺の建物を修復して、作った檻の中にヘルハウンドを閉じ込める。
 あとは家の中に檻を運んで、大人しくなるまで調教するだけだ。
 すぐにボロボロの猛犬が、ドラゴンに咥えられてやって来た。
 
「はい、巨大マグロの姿揚げです。骨までパリパリですよぉ~」
「……」

 猛犬を捕まえて来た良い子のドラゴンに、カノンは油で揚げたマグロを渡した。
 ドラゴンは魚よりも鳥派だ。それでも食べるしかない。
 頭から齧り付いて、尾びれに向かって食べていく。

「グガァ~」

 海鳥よりも美味かったようだ。次の猛犬を捕まえに飛んでいった。
 パトラッシュも連れて来たので、ジャガイモと魚のすり身を合わせた『ジャガカマ』を渡した。
 漁村で売られている揚げ物料理だが、材料があれば、買いに行かなくても作れる。

 ♢

「困りました。お利口な犬だけ残したいのに、お利口な犬がいません」
「ガルルルッ!」

 無理矢理に檻に入れられたら、こうなるに決まっている。
 捕まった猛犬50匹以上がカノンに向かって、唸り声の合唱を上げている。
 皆殺しにあいたいようだ。

「まずは食べ物で仲良くなりましょう。ビリビリはその後です」

 猛犬達はお腹が空いていて、イライラしているだけ——カノンはそう思うことにした。
 檻の隙間から牛肉ステーキを投入してみる。夢中で食べているから、やっぱりお腹が空いている。
 食べなくなるまで、全部の檻に投入を続けてみた。

「第一段階は上手くいきました。次は第二段階です」

 お腹いっぱいになったようだ。誰も牛肉ステーキを食べなくなった。
 カノンはパトラッシュを飼っているから、犬の世話は完璧だ。
 今度は汚れた身体を綺麗にする。身体がスッキリすれば気持ちが良い。

「ぐ、ぐががが~」

 神水の杖を取り出して、ちょうどいい水圧の水柱を出し続ける。
 水柱をヘルハウンドの黒い身体に当てて、身体から汚れを追い出していく。
 完全な水責めだが、数が多いから手洗いはしない。

 水責めが終わったら、神風の杖で濡れた身体を強風で乾かしていく。
 建物の床が水浸しになっているから、終わったら引っ越ししないといけない。

「最後は躾です。お手です」
「ガルガァ! ガアガアッ!」
「……」

 安全の為にクリスタル手袋をつけている。
 カノンは檻の隙間に右手を入れたが、めちゃくちゃ噛まれている。
 何故、お手すると思ったのか、逆に恐ろしい。

「違います」
「クキャン‼︎」

 ヘルハウンドは神雷の杖で感電させられて、気絶させられた。
 檻から引き摺り出されると、待機していたパトラッシュとドラゴンに渡された。
 建物の裏に連れて行かれて、ちょっと特別なお勉強を受けることになる。

「お手です」
「グガラァ! ガグガァ!」
「……」

 どうやら皆んな勉強熱心みたいだ。2匹目もめちゃくちゃ噛み付いている。
 カノンは容赦なく感電させたが、ヘルハウンドは野良犬だから、お手を知らない。
 誰もビリビリからは逃げられない。
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