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27日目
三本勝負決着
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「リンゼルさんというんですね。表を出してくれたら、あちらの袋に入っているお金を全部差し上げます。絶対に表を出す方法は知っていますよね?」
「ごくり……」
ミランダが微笑みを浮かべて、おじさんに近づくと買収を始めた。
金貨を投げずに表の状態で地面に置けば、絶対に表になる。
簡単な仕事で大金が手に入る、唾を飲み込みたくなる恐ろしい誘惑だ。
「おい、汚いぞ。だったら俺が投げる」
「それこそ汚いんじゃないですか。ズルしない保証はないでしょう。家族も同じです」
「選ぶ権利はこっちにあるんだろ?」
リンゼルが不正しそうだから、ルセフは投げる人を自分に変更した。
かなり失礼な態度だが、それは無理そうだ。
ミランダはイカサマすると言って、変更を認めない。
「ええ、そうですね。でも、不正したら負けなのを忘れていませんか? 私や使用人が投げて、表が出ても、不正していないと言えますか? 私は言えません。不正したとハッキリ言います」
「お前の方が不正だろうが」
「言い掛かりはやめてください。私は表を出してくれるようにお願いしただけです。それだと明日天気にしてくださいも不正になりますよ。あっはは、子供みたいなこと言わないでくださいよ」
急に言葉使いが上品になったが、言っていることは下品だ。
この運比べ——不正比べで絶対に勝つつもりが伝わってくる。
もちろんこんな負けると分かった、イカサマ勝負を受ける人はいない。
「こんな勝負やってられるか。別の勝負に変更しろ」
「では、私の不戦勝ですね。どんなお願いにしましょうか?」
「おい、人の話を聞いてんのか!」
「人もいますから、三回まわってワンワンでも良いですね」
ミランダの耳は都合の良い耳だ。もう勝ったことになっている。
ルセフは勝負内容を変更しろと言っているのに、聞くつもりがない。
「カノンお嬢様、止めた方がいいです。いくら何でも汚すぎます」
「分かっています。姉様を勝たせるつもりはないです。これをおじさんに見せてください。買収返しです」
言われなくても分かっている。カノンは大金貨が入った袋を取り出した。
野次馬の中に戻ったリンゼルおじさんに、ナンシーが届けに走っていく。
買収は成功したようだ。おじさんが素敵な笑顔で親指を立てている。
「ちょっと待てくれ!」
ミランダとルセフが言い合いを続けているが、黒髪パーマにモッサリ口髭おじさんが乱入した。
「ルセフ、見っともないぞ。お前が俺を選んだんだ。最後まで勝負しろ。なあ、お嬢さん。表を出せば、まだ564万ギルド貰えるんだよな?」
「ええ、そうですね。でも、勝負は私の不戦勝で決まりました。さっきの話はなかったことになりますね」
意地汚い庶民が金欲しさにやって来たと、ミランダは呆れて冷たい感じに言っている。
用済みになったおじさんには、偽りの微笑みを浮かべるのも、勿体ないらしい。
「そう言わずに良いじゃないですかぁ~。ルセフ、半分やるから勝負を受けろ。悪くない話だろ? 弟と妹に美味いもん食わせられるぞ。負けるが勝ちだ。大人になれ」
大金がかかっている。おじさんはミランダに勝負させたい。ルセフにも勝負させたい。
ミランダに商売人のような笑顔を見せて、向かい合ったルセフの肩をポンポン叩いて説得する。
「くぅぅ、三回まわってワンでいいんだな?」
「ワンワンです。私も庶民と遊んでいる時間はないんです。三回まわってごめんなさいワンワンと言えば、それでいいですよ」
より屈辱的な内容に変わったが、やれば、おじさんから282万ギルド貰える。
ルセフはイカサマ勝負を受けることにした。さっさと面倒ごとを終わらせたい。
「分かった、やるよ。約束は守れよ」
「もちろんです。ベアトリス、小金貨をリンゼルさんに渡してあげなさい」
「はい、お嬢様」
勝利を確信して、ミランダは笑みを浮かべている。
おじさんはベアトリスから、小金貨を一枚受け取った。
王妃の肖像画が表で、美しい花束が裏になる。
リンゼルが小金貨を投げずに、地面に置いた。
結果が分かっているから誰も興味がない。
でも、野次馬の一人が小金貨を確認して叫んだ。
「裏だ、裏だぞぉー!」
「ななっ! ちょっとどういうつもり⁉︎ 間違ったのなら、やり直しよ‼︎」
「間違っているのは、お嬢様、あんただよ。俺を買収したいなら、1億ギルド持って出直してくるんだな。庶民を舐めるな!」
動揺するミランダに、リンゼルは格好良く言い放った。
これで金で買収されなかった男として、近所でも大評判になる。
1000万ギルドの大金も入って、気分はウハウハだ。
「リンゼルさん、済まなかった。買収されると疑ってしまった」
「気にするな。ほんの少しだけ心が動いたのは事実だ。はっはは。俺もまだまだだな」
姉妹の間でめちゃくちゃ動き回ったが、買収したのは内緒だ。
このまま良い格好をさせるしかない。そして、敗者には罰が待っている。
おじさんとの会話を終わらせて、ルセフはミランダに近づいた。
「さてと、三回まわってワンワンでもいいが、お前にはもっと相応しいのがありそうだ」
「ぐぬぬぬぬっ!」
ぐうの音も出せずに、ミランダは凄く悔しそうな顔をしている。
流石に自分が許可した相手が裏を出したら、ズルしたとは言えない。
表が良くて、裏が悪いと言うのは、明らかにおかし過ぎる主張だ。
【終わり】
「ごくり……」
ミランダが微笑みを浮かべて、おじさんに近づくと買収を始めた。
金貨を投げずに表の状態で地面に置けば、絶対に表になる。
簡単な仕事で大金が手に入る、唾を飲み込みたくなる恐ろしい誘惑だ。
「おい、汚いぞ。だったら俺が投げる」
「それこそ汚いんじゃないですか。ズルしない保証はないでしょう。家族も同じです」
「選ぶ権利はこっちにあるんだろ?」
リンゼルが不正しそうだから、ルセフは投げる人を自分に変更した。
かなり失礼な態度だが、それは無理そうだ。
ミランダはイカサマすると言って、変更を認めない。
「ええ、そうですね。でも、不正したら負けなのを忘れていませんか? 私や使用人が投げて、表が出ても、不正していないと言えますか? 私は言えません。不正したとハッキリ言います」
「お前の方が不正だろうが」
「言い掛かりはやめてください。私は表を出してくれるようにお願いしただけです。それだと明日天気にしてくださいも不正になりますよ。あっはは、子供みたいなこと言わないでくださいよ」
急に言葉使いが上品になったが、言っていることは下品だ。
この運比べ——不正比べで絶対に勝つつもりが伝わってくる。
もちろんこんな負けると分かった、イカサマ勝負を受ける人はいない。
「こんな勝負やってられるか。別の勝負に変更しろ」
「では、私の不戦勝ですね。どんなお願いにしましょうか?」
「おい、人の話を聞いてんのか!」
「人もいますから、三回まわってワンワンでも良いですね」
ミランダの耳は都合の良い耳だ。もう勝ったことになっている。
ルセフは勝負内容を変更しろと言っているのに、聞くつもりがない。
「カノンお嬢様、止めた方がいいです。いくら何でも汚すぎます」
「分かっています。姉様を勝たせるつもりはないです。これをおじさんに見せてください。買収返しです」
言われなくても分かっている。カノンは大金貨が入った袋を取り出した。
野次馬の中に戻ったリンゼルおじさんに、ナンシーが届けに走っていく。
買収は成功したようだ。おじさんが素敵な笑顔で親指を立てている。
「ちょっと待てくれ!」
ミランダとルセフが言い合いを続けているが、黒髪パーマにモッサリ口髭おじさんが乱入した。
「ルセフ、見っともないぞ。お前が俺を選んだんだ。最後まで勝負しろ。なあ、お嬢さん。表を出せば、まだ564万ギルド貰えるんだよな?」
「ええ、そうですね。でも、勝負は私の不戦勝で決まりました。さっきの話はなかったことになりますね」
意地汚い庶民が金欲しさにやって来たと、ミランダは呆れて冷たい感じに言っている。
用済みになったおじさんには、偽りの微笑みを浮かべるのも、勿体ないらしい。
「そう言わずに良いじゃないですかぁ~。ルセフ、半分やるから勝負を受けろ。悪くない話だろ? 弟と妹に美味いもん食わせられるぞ。負けるが勝ちだ。大人になれ」
大金がかかっている。おじさんはミランダに勝負させたい。ルセフにも勝負させたい。
ミランダに商売人のような笑顔を見せて、向かい合ったルセフの肩をポンポン叩いて説得する。
「くぅぅ、三回まわってワンでいいんだな?」
「ワンワンです。私も庶民と遊んでいる時間はないんです。三回まわってごめんなさいワンワンと言えば、それでいいですよ」
より屈辱的な内容に変わったが、やれば、おじさんから282万ギルド貰える。
ルセフはイカサマ勝負を受けることにした。さっさと面倒ごとを終わらせたい。
「分かった、やるよ。約束は守れよ」
「もちろんです。ベアトリス、小金貨をリンゼルさんに渡してあげなさい」
「はい、お嬢様」
勝利を確信して、ミランダは笑みを浮かべている。
おじさんはベアトリスから、小金貨を一枚受け取った。
王妃の肖像画が表で、美しい花束が裏になる。
リンゼルが小金貨を投げずに、地面に置いた。
結果が分かっているから誰も興味がない。
でも、野次馬の一人が小金貨を確認して叫んだ。
「裏だ、裏だぞぉー!」
「ななっ! ちょっとどういうつもり⁉︎ 間違ったのなら、やり直しよ‼︎」
「間違っているのは、お嬢様、あんただよ。俺を買収したいなら、1億ギルド持って出直してくるんだな。庶民を舐めるな!」
動揺するミランダに、リンゼルは格好良く言い放った。
これで金で買収されなかった男として、近所でも大評判になる。
1000万ギルドの大金も入って、気分はウハウハだ。
「リンゼルさん、済まなかった。買収されると疑ってしまった」
「気にするな。ほんの少しだけ心が動いたのは事実だ。はっはは。俺もまだまだだな」
姉妹の間でめちゃくちゃ動き回ったが、買収したのは内緒だ。
このまま良い格好をさせるしかない。そして、敗者には罰が待っている。
おじさんとの会話を終わらせて、ルセフはミランダに近づいた。
「さてと、三回まわってワンワンでもいいが、お前にはもっと相応しいのがありそうだ」
「ぐぬぬぬぬっ!」
ぐうの音も出せずに、ミランダは凄く悔しそうな顔をしている。
流石に自分が許可した相手が裏を出したら、ズルしたとは言えない。
表が良くて、裏が悪いと言うのは、明らかにおかし過ぎる主張だ。
【終わり】
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