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最終章 愛と憎悪の結末
『禁じられた恋』
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あれは数百年前の出来事。エルフとドワーフとの戦争終結1000年をお祝いする記念式に、17歳ぐらいの若い女性が、一人でエルフの里を訪れていました。退屈そうにエルフの男女が演じる戦争芝居を見ています。
(随分と脚色されたものね。実際はドワーフの酒樽に呪いをかけて、少しずつ中身の酒を呪って飲ませていただけでしょうが……)
エルフもドワーフもどちらも長寿の種族です。魔法のエルフに、戦士のドワーフとお互いが切磋琢磨して、ある事件が起こるまで高め合っていました。
一人の若いエルフの女性と、一人の若いドワーフの男性が恋に落ちました。この事がバレたら別れさせられるだけでは済みません。
そんな危険な二人の恋に問題が起こってしまいました。エルフの女性がドワーフの子を妊娠してしまいました。
エルフの里の男達は、父親として誰も名乗り出ません。エルフの里以外の父親かもしれないと、里の者は疑いますが、生まれた赤児を見れば、分かる事です。
純粋なエルフの赤児なら、里の男の不誠実を罰し、人間とのハーフならば赤児と一緒に追放処分。万が一にも魔物やドワーフとのハーフならば、赤児と一緒に火炙りになります。
徐々に追い詰められる二人でしたが、お互いの里に伝わる禁術に救いを求めました。
エルフの里に伝わる禁術には、魂を花の形に結晶化する方法と、魂を別の身体に定着する方法がありました。
ドワーフの里に伝わる禁術には、成長するゴーレムの作り方と、最強のエルフの作り方がありました。
どうやら、二つの禁術は元々は一つの術だったらしいです。
二人は誰にも見つからない場所に隠れて出産の準備を進めました。
「オギャーオギャー!」
元気な女の子が無事に生まれました。
⚫︎???:エルフとドワーフの子供。強靭な肉体に優れた魔法の才を備えている。レベル=1。状態:空腹。
愛しい我が子ですが、このまま見つかると焼き殺されてしまいます。エルフの女性は生まれたばかりの赤児に術を使って、魂を取り出します。ドワーフの男性はこの日の為に自分の全ての技術を一つの人形に注ぎ込みました。
二人の愛の結晶が赤児ならば、この日の儀式は二人の技術の結晶と言えるものでしょう。
「完成した!」
ドワーフの男性は儀式が無事に終わって一安心しました。これで見つかっても、エルフの子供だと言い逃れが出来ます。
⚫︎???:ファントムエルフ。レベル80。状態:怒り。
生まれたばかりなのに、別の赤児の身体に無理矢理入れられた魂は、酷い空腹と不快感で激しい怒りを感じていました。
目の前を『わぁ~、わぁ~』と楽しそうに動き回る2匹の動物に、魔力の塊をぶつけて焼き殺すと、部屋の中に食べ物がないか探します。
部屋に散乱している本や食べ物を見つけると、パクパクと果実を食べながら禁術が書かれた本を読み始めました。
・
・
・
まだ意識がはっきりとしません。ライラの記憶とデレラの記憶がごちゃごちゃに混ざって、上手く思い出せません。
隣にいたゴブリンは知っているような、知らないような不思議な感覚です。けれども、少し先で戦っている二人の男女は知っています。とりあえずは止めないと駄目な気がしました。
「ライラなのよね?いえ、ライラね!あの時、ワザと負けたのは間違った選択じゃないと今でも思っているわ。私が勝っていたら、今のあなたと同じ目に遭っていたんだから。」
「ア~ちゃんは昔から頭が良いって褒められていたけど……私から見たら、ただの臆病者だったわ。今もビクビクと怖がって誰かに褒められたく必死なのね?」
「ええ、そうよ!あの時、勝った方も負けた方も地獄よ!今だにあの女に支配され続けているわ。」
「ねぇ、一緒に戦わない?私とア~ちゃんが力を合わせれば」
ビュー、ザシュ!
アリエルに剣で斬られて、ライラの左腕から血が少し流れます。
「夢のような事を言ってないで、掛かって来なさい!里のエルフ全員で戦っても勝てなかった相手に勝てるわけないでしょう!来ないなら、もう一度殺して、材料にしてやるわ!」
ガァン!ガァン!ギャァーン!魔力がほとんど底を尽いているアリエルですが、立っているのが、やっとのライラは防戦一方で反撃しません。
「その剣は飾り?さっさと反撃してきたらどう!あっははは、それとも、剣の使い方も忘れちゃったの?」
ガァン!ギィィ、ザシュ!ガ、ガァン!防戦一方のライラを容赦なく攻撃します。お腹の表面をルーンブレイドが薄く斬りつけます。
「うっっ!ふっふっ。ちょっと見ない間に腕を上げたね。剣は得意じゃなかったのに。」
「好きで練習した訳じゃないわ。あんたの代わりに生き残った若いエルフを指導していたら、こうなっただけ!知っている生き残りは、もうミランダとエレノアの二人だけだけどね……」
里の優秀なエルフから順番に魂の材料に変えられていったけど、レベル100を超えられたのは、あの女だけ!おそらくは最高の魔力と最高の人形に問題ないのなら、魂の問題。ただのエルフの魂ではレベル80が限界なのは、これまでの実験で分かっている。
あの女は、自分の魂が純粋なエルフの魂だと考えているようだけど、もしかすると人間とのハーフかもしれないし、もっと別の亜人や魔物とも考えられる。その事を提案したエルフは殺されたけど、実際はその可能性の方が高い。
今なら、エルフが生き残れる可能性が残されている……。
次回もあります。作者の一人『確かに【魔法師アシュト】は面白いです。でも登場人物が多過ぎると、キャラ設定の管理が難しいので、真似しません!真似できません!】
(随分と脚色されたものね。実際はドワーフの酒樽に呪いをかけて、少しずつ中身の酒を呪って飲ませていただけでしょうが……)
エルフもドワーフもどちらも長寿の種族です。魔法のエルフに、戦士のドワーフとお互いが切磋琢磨して、ある事件が起こるまで高め合っていました。
一人の若いエルフの女性と、一人の若いドワーフの男性が恋に落ちました。この事がバレたら別れさせられるだけでは済みません。
そんな危険な二人の恋に問題が起こってしまいました。エルフの女性がドワーフの子を妊娠してしまいました。
エルフの里の男達は、父親として誰も名乗り出ません。エルフの里以外の父親かもしれないと、里の者は疑いますが、生まれた赤児を見れば、分かる事です。
純粋なエルフの赤児なら、里の男の不誠実を罰し、人間とのハーフならば赤児と一緒に追放処分。万が一にも魔物やドワーフとのハーフならば、赤児と一緒に火炙りになります。
徐々に追い詰められる二人でしたが、お互いの里に伝わる禁術に救いを求めました。
エルフの里に伝わる禁術には、魂を花の形に結晶化する方法と、魂を別の身体に定着する方法がありました。
ドワーフの里に伝わる禁術には、成長するゴーレムの作り方と、最強のエルフの作り方がありました。
どうやら、二つの禁術は元々は一つの術だったらしいです。
二人は誰にも見つからない場所に隠れて出産の準備を進めました。
「オギャーオギャー!」
元気な女の子が無事に生まれました。
⚫︎???:エルフとドワーフの子供。強靭な肉体に優れた魔法の才を備えている。レベル=1。状態:空腹。
愛しい我が子ですが、このまま見つかると焼き殺されてしまいます。エルフの女性は生まれたばかりの赤児に術を使って、魂を取り出します。ドワーフの男性はこの日の為に自分の全ての技術を一つの人形に注ぎ込みました。
二人の愛の結晶が赤児ならば、この日の儀式は二人の技術の結晶と言えるものでしょう。
「完成した!」
ドワーフの男性は儀式が無事に終わって一安心しました。これで見つかっても、エルフの子供だと言い逃れが出来ます。
⚫︎???:ファントムエルフ。レベル80。状態:怒り。
生まれたばかりなのに、別の赤児の身体に無理矢理入れられた魂は、酷い空腹と不快感で激しい怒りを感じていました。
目の前を『わぁ~、わぁ~』と楽しそうに動き回る2匹の動物に、魔力の塊をぶつけて焼き殺すと、部屋の中に食べ物がないか探します。
部屋に散乱している本や食べ物を見つけると、パクパクと果実を食べながら禁術が書かれた本を読み始めました。
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まだ意識がはっきりとしません。ライラの記憶とデレラの記憶がごちゃごちゃに混ざって、上手く思い出せません。
隣にいたゴブリンは知っているような、知らないような不思議な感覚です。けれども、少し先で戦っている二人の男女は知っています。とりあえずは止めないと駄目な気がしました。
「ライラなのよね?いえ、ライラね!あの時、ワザと負けたのは間違った選択じゃないと今でも思っているわ。私が勝っていたら、今のあなたと同じ目に遭っていたんだから。」
「ア~ちゃんは昔から頭が良いって褒められていたけど……私から見たら、ただの臆病者だったわ。今もビクビクと怖がって誰かに褒められたく必死なのね?」
「ええ、そうよ!あの時、勝った方も負けた方も地獄よ!今だにあの女に支配され続けているわ。」
「ねぇ、一緒に戦わない?私とア~ちゃんが力を合わせれば」
ビュー、ザシュ!
アリエルに剣で斬られて、ライラの左腕から血が少し流れます。
「夢のような事を言ってないで、掛かって来なさい!里のエルフ全員で戦っても勝てなかった相手に勝てるわけないでしょう!来ないなら、もう一度殺して、材料にしてやるわ!」
ガァン!ガァン!ギャァーン!魔力がほとんど底を尽いているアリエルですが、立っているのが、やっとのライラは防戦一方で反撃しません。
「その剣は飾り?さっさと反撃してきたらどう!あっははは、それとも、剣の使い方も忘れちゃったの?」
ガァン!ギィィ、ザシュ!ガ、ガァン!防戦一方のライラを容赦なく攻撃します。お腹の表面をルーンブレイドが薄く斬りつけます。
「うっっ!ふっふっ。ちょっと見ない間に腕を上げたね。剣は得意じゃなかったのに。」
「好きで練習した訳じゃないわ。あんたの代わりに生き残った若いエルフを指導していたら、こうなっただけ!知っている生き残りは、もうミランダとエレノアの二人だけだけどね……」
里の優秀なエルフから順番に魂の材料に変えられていったけど、レベル100を超えられたのは、あの女だけ!おそらくは最高の魔力と最高の人形に問題ないのなら、魂の問題。ただのエルフの魂ではレベル80が限界なのは、これまでの実験で分かっている。
あの女は、自分の魂が純粋なエルフの魂だと考えているようだけど、もしかすると人間とのハーフかもしれないし、もっと別の亜人や魔物とも考えられる。その事を提案したエルフは殺されたけど、実際はその可能性の方が高い。
今なら、エルフが生き残れる可能性が残されている……。
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