『私、シン・デレラさん。今から、継母と2人の義姉を殺しに行くの』

もう書かないって言ったよね?

文字の大きさ
72 / 84
最終章 愛と憎悪の結末

『禁じられた恋』

しおりを挟む
 あれは数百年前の出来事。エルフとドワーフとの戦争終結1000年をお祝いする記念式に、17歳ぐらいの若い女性が、一人でエルフの里を訪れていました。退屈そうにエルフの男女が演じる戦争芝居を見ています。
 (随分と脚色されたものね。実際はドワーフの酒樽に呪いをかけて、少しずつ中身の酒を呪って飲ませていただけでしょうが……)
 エルフもドワーフもどちらも長寿の種族です。魔法のエルフに、戦士のドワーフとお互いが切磋琢磨して、ある事件が起こるまで高め合っていました。

 一人の若いエルフの女性と、一人の若いドワーフの男性が恋に落ちました。この事がバレたら別れさせられるだけでは済みません。
 そんな危険な二人の恋に問題が起こってしまいました。エルフの女性がドワーフの子を妊娠してしまいました。
 エルフの里の男達は、父親として誰も名乗り出ません。エルフの里以外の父親かもしれないと、里の者は疑いますが、生まれた赤児を見れば、分かる事です。
 純粋なエルフの赤児なら、里の男の不誠実を罰し、人間とのハーフならば赤児と一緒に追放処分。万が一にも魔物やドワーフとのハーフならば、赤児と一緒に火炙りになります。
 徐々に追い詰められる二人でしたが、お互いの里に伝わる禁術に救いを求めました。
 エルフの里に伝わる禁術には、魂を花の形に結晶化する方法と、魂を別の身体に定着する方法がありました。
 ドワーフの里に伝わる禁術には、成長するゴーレムの作り方と、最強のエルフの作り方がありました。
 どうやら、二つの禁術は元々は一つの術だったらしいです。
 二人は誰にも見つからない場所に隠れて出産の準備を進めました。

 「オギャーオギャー!」
 元気な女の子が無事に生まれました。

 ⚫︎???:エルフとドワーフの子供。強靭な肉体に優れた魔法の才を備えている。レベル=1。状態:空腹。

 愛しい我が子ですが、このまま見つかると焼き殺されてしまいます。エルフの女性は生まれたばかりの赤児に術を使って、魂を取り出します。ドワーフの男性はこの日の為に自分の全ての技術を一つの人形に注ぎ込みました。
 二人の愛の結晶が赤児ならば、この日の儀式は二人の技術の結晶と言えるものでしょう。
 「完成した!」
 ドワーフの男性は儀式が無事に終わって一安心しました。これで見つかっても、エルフの子供だと言い逃れが出来ます。

 ⚫︎???:ファントムエルフ。レベル80。状態:怒り。

 生まれたばかりなのに、別の赤児の身体に無理矢理入れられた魂は、酷い空腹と不快感で激しい怒りを感じていました。
 目の前を『わぁ~、わぁ~』と楽しそうに動き回る2匹の動物に、魔力の塊をぶつけて焼き殺すと、部屋の中に食べ物がないか探します。
 部屋に散乱している本や食べ物を見つけると、パクパクと果実を食べながら禁術が書かれた本を読み始めました。

 ・
 ・
 ・
 
 まだ意識がはっきりとしません。ライラの記憶とデレラの記憶がごちゃごちゃに混ざって、上手く思い出せません。
 隣にいたゴブリンは知っているような、知らないような不思議な感覚です。けれども、少し先で戦っている二人の男女は知っています。とりあえずは止めないと駄目な気がしました。
 「ライラなのよね?いえ、ライラね!あの時、ワザと負けたのは間違った選択じゃないと今でも思っているわ。私が勝っていたら、今のあなたと同じ目に遭っていたんだから。」
 「ア~ちゃんは昔から頭が良いって褒められていたけど……私から見たら、ただの臆病者だったわ。今もビクビクと怖がって誰かに褒められたく必死なのね?」
 「ええ、そうよ!あの時、勝った方も負けた方も地獄よ!今だにあの女に支配され続けているわ。」
 「ねぇ、一緒に戦わない?私とア~ちゃんが力を合わせれば」
 ビュー、ザシュ!
 アリエルに剣で斬られて、ライラの左腕から血が少し流れます。
 「夢のような事を言ってないで、掛かって来なさい!里のエルフ全員で戦っても勝てなかった相手に勝てるわけないでしょう!来ないなら、もう一度殺して、材料にしてやるわ!」
 ガァン!ガァン!ギャァーン!魔力がほとんど底を尽いているアリエルですが、立っているのが、やっとのライラは防戦一方で反撃しません。
 「その剣は飾り?さっさと反撃してきたらどう!あっははは、それとも、剣の使い方も忘れちゃったの?」
 ガァン!ギィィ、ザシュ!ガ、ガァン!防戦一方のライラを容赦なく攻撃します。お腹の表面をルーンブレイドが薄く斬りつけます。
 「うっっ!ふっふっ。ちょっと見ない間に腕を上げたね。剣は得意じゃなかったのに。」
 「好きで練習した訳じゃないわ。あんたの代わりに生き残った若いエルフを指導していたら、こうなっただけ!知っている生き残りは、もうミランダとエレノアの二人だけだけどね……」
 里の優秀なエルフから順番に魂の材料に変えられていったけど、レベル100を超えられたのは、あの女だけ!おそらくは最高の魔力と最高の人形に問題ないのなら、魂の問題。ただのエルフの魂ではレベル80が限界なのは、これまでの実験で分かっている。
 あの女は、自分の魂が純粋なエルフの魂だと考えているようだけど、もしかすると人間とのハーフかもしれないし、もっと別の亜人や魔物とも考えられる。その事を提案したエルフは殺されたけど、実際はその可能性の方が高い。
 今なら、エルフが生き残れる可能性が残されている……。

 次回もあります。作者の一人『確かに【魔法師アシュト】は面白いです。でも登場人物が多過ぎると、キャラ設定の管理が難しいので、真似しません!真似できません!】
 
 
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...