『私、シン・デレラさん。今から、継母と2人の義姉を殺しに行くの』

もう書かないって言ったよね?

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最終章 愛と憎悪の結末

『幸福な時間』

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 首を握り潰されて力尽きたと思っていたビクターが、平然と笑い出しました。レイアは手を離して後ろに飛び退きました。
 「やあ、お嬢さん。私は神ゴブリン!君の願いを一回叶えたよ!他に叶えて欲しい願いはないかい?」
 「……一体いつから、もしかしてあの時のあれだけで……」
 「そうだよ!命令でも、命令口調でもいいんだけど、私に『死ね』ってお願いしたから、 叶えてあげたよ!さあ、他の願いを聞いてあげるよ!」
 神ゴブリン、フェイス、ビクターの死体は白い煙になって消えてしまいました。代わりに無傷の神ゴブリンがスタスタと暗闇の中から平然と現れました。
 「あなたの正体はゴースト系の魔物の上位種かしら?でも、私を幻の中に閉じ込めるには力不足よ。私がちょっと本気で暴れたら、精神を通してあなたの肉体に深刻なダメージを与える事が出来る。」
 いくつもの魔力の塊を精神世界の四方八方に撃ち出して、大爆発させます。神ゴブリンの身体は爆発に飲み込まれた瞬間にバラバラに砕けてしまいました。
 
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 「ゴォボォ!」
 現実世界では神ゴブリンはロキオスに背負われています。身体を大きく仰け反らせると口から血を吐き出しました。
 すぐさま待機していたリィファ、アリエル、エレノアの3人が、回復魔法で肉体と精神の両方を治療します。
 「まだ、1分も経ってないのに死にそうよ!回復魔法じゃ、精神までは十分に回復できないし、このゴブリンの勝手な判断に付き合って死にたくはないわ!」
 神ゴブリンの役目はテレポートでの移動でした。けれども、その役目を無視してレイアを自分の精神世界に連れて行きました。
 「上手くいけば、このまま全員が助かる可能性がある。それに洞窟を出ても、山と森に囲まれたこの場所から街までは距離がある。お前達がどうやってここまで来たかは知らないが、人数が多い方が生存率を上げられる。」
 ビクターは気を失っている勇者を抱えながら走ります。幻術の中では勇敢に戦って殺されましたが、現実ではあばら骨を数本折られて吹き飛ばされた後に『あとは任せた……』と安らかに気絶しました。
 「彼なら大丈夫だよ。彼は神ゴブリン、絶対に負けたりしないはずだよ。」
 「ロキオス、前から聞きたかったけど、アイツは何と融合させたの?外見はゴブリンだから分からなかったけど、明らかに他のゴブリンとは違う能力よね?」
 「正確には彼はゴブリンじゃない。呪われてゴブリンになったドワーフでもない。彼は……」

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 「4回目♬ふっふふ。この世界が壊れると僕は死んでしまうけど、君も死んでしまうよ!もう君の身体は亡霊達に囲まれている頃だね。魂と呼ばれる君の精神は私の頭の中にあるから、今のところは大丈夫だけど、亡霊達はカンカンに怒っているはずだよ。だって、せっかく生きているエルフを見つけたのに身体だけなんだもの。」
 レイアは幻術世界に引き込まれてから、感覚的には30分は経っていると思っています。
 実際にはどのぐらい経過しているのか分かりませんが、もしも30分も経っているのなら、今、この世界から出るのは賢い判断ではありません。
 「私と永遠にこの世界で暮らすつもり?でも、そんな事は無理でしょう。精神は空腹や疲労を感じないかもしれないけど、確実に生身の肉体には影響を及ぼす。……いずれは限界がやってきて、あなたは死ぬ事になる。私と一緒にね!」
 「ずいぶんと冷静なんだね?もしかして何か助かる方法があるのかな?でも、そんな方法はないから諦めた方がいいよ。死が待っている君には、特別に幸せな過去をプレゼントするね!あの日、もしも君が間違った選択をしなければ……」

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 「よし、完成だ!金の髪に美しい白い肌。エラに似て実に可愛い!」
 「ちょっと、ゴードン!私達の子供にしては綺麗すぎるわよ。もうちょっと不細工にしないと怪しまれるわよ。」
 「…………」
 2人の夫婦が仲良く完成した人形を見て喜んでいます。まだ、生まれてくる子供の魂が入っていないので、人形は意思を持っていません。
 「何を言っているんだ!僕と君の子供なんだぞ!これでも妥協した方なんだぞ!」
 「はいはい。それよりもまだ女の子かも分からないのに、なんでこの娘を作ったの?男の子だったらどうするつもり?」
 「…………」
 女の子の方が作りやすいと、ゴードンは妻を説得しましたが、本当は最初の子供は女の子と決めていたので、妻に内緒で作ってしまいました。
 「もう、仕方ないんだから!女の子の名前を考えないといけないわね。私と同じような名前ならエリー、エミリーが一般的だけど、あなたは何かないの?」
 「ふっふふ。実はもう決めているんだ!この娘の名前は『イヴ』神々の時代の最初の人類、アダムとイヴからとったもので、これから始まるエルフとドワーフの新しい時代の申し子になるはずだよ。」
 「うっふふ。なら私達は神様かしら?この娘の親なら、当然そうなるでしょう?」
 「…………」
 ゴードンは妻の膨らんだお腹を優しく摩りながら、胎児に優しく話しかけます。
 『自分達は神様と女神様で、君は神の子供だから、きっと幸せになれる。誰からも愛される素晴らしい人になるんだよ。』
 「…………」
 
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 ・

 「イヴ。君は幸せになれたかな?私達の所為で不幸になってしまったよね。あと少しの時間だけなら、この世界を維持できる力があるけど、君が望むなら、もう少しだけ、このくだらない家族ごっこに付き合ってくれないかい?」
 いつの間にか、幸せそうな夫婦から、妻の姿は消えてなくなり、ゴードンと呼ばれていたドワーフの男だけ立っていました。
 「もしかして、あなたが私のお父さん?でも、あの時に確かに殺したはずなのに?」
 「ああ、とても驚いたよ!突然、訳も分からずに死んじゃったからね。死んでしまったショックよりも、愛する子供を一人にしてしまった事が何よりも辛かった。何年も側で見守る事しか出来ない無力な自分を呪ったよ。いつしか、エラは精神を病んで天国に旅立ったけど、私は何とか地上にとどまって、君を助ける方法を探し続けた。やっと見つけたのが、呪いがかけられた酒樽に溶け込んで、一人のドワーフの精神を中から乗っ取るという残酷な方法だったよ。」
 ゴードンの話を聞き終えると、レイア(イヴ)は父親のドワーフに向かって歩き出しました。二人の距離が身体が触れ合えるまで縮まりました。そっと父親の手を握ると、レイアの口が開いていきます。
 「ありがとう、お父さん。私、とっても幸せだよ!本当にありがとう!」
 暗闇だった、この幻術世界に光が溢れ出しました。

 次回もあります。作者の一人『やっぱり、ハッピーエンドはいいですね。悲しい結末は書きたくありません。』
 
 
  
 
 
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